116話:しぶとい白猫
「久蔵、ちょっと離れてて。」
「智子、お前何を…?」
智子は体を無理に起こしていた。久蔵は心配していたが、お構いなしだ。
(まだよ…こんなとこで倒れてたまらない…!)
猫は、立ち上がろうとしている智子に再び雷を落とそうとする。
「ごろにゃ...にゃっ!?」
しかし、菊千代のダーツに邪魔をされる。
「あなたには、二度と落雷させないわよ。」
菊千代は手に数本のダーツの矢を持っていた。猫が落雷させようとしたときに、ダーツの矢を投げて止めるという考えだ。それは、確実に猫の動きを限定させることに成功させていた。すると、猫は菊千代のもとに向かっていく。しかし、恐竜、ケラトサウルスがそれを邪魔した。
「!」
「こっちは3人いるんだ!もうお前の思う通りにはさせないぞ!」
「『側』!」
智子は、①側を銃弾のように発射することで猫に攻撃しようとした。
(大丈夫…側は加減ができる…)
「にゃー!」
猫は前足にオーラを纏わせて、飛んできた①側を破壊しようとした。それをケラトサウルスに妨げられる。①側は、そのまま猫に命中した。
「ふにゃあああ!」
猫は吹き飛ばされ、壁に衝突した。しかし、すぐに体勢を立て直した。
「おいおい!なんて耐久力だよ!」
「にゃあああああああああああ!」
猫は鬼のような形相で鳴いていた。そのとき、荒れていた天候がさらに荒れ始めた。雨は強く降り、雷が猫の意思に関係なく落ちている。風はあちらから吹いたり、こちらから吹いたりしている。
「な、何よ!これ!」
「ぐっ!激しい嵐だ!」
『風雷雨荒大迷惑』
天候を暴走させるΕ技。この技を使ってしまえば、もはや猫でも天候を操ることはできない。数多の雷が落ちる中、猫もそれをジャンプしながら回避していた。
「これじゃあ、動けないわ!」
そんな菊千代に雷が落ちようとしていた。
「!ケラトサウルス!」
ケラトサウルスは、久蔵の声を聞いて、菊千代の方に向かう。雷は、菊千代ではなくケラトサウルスに命中した。そして、そのまま消滅していった。
「久蔵君!ありがとうね!あっ!これはケラトサウルスちゃんにも言っておいてね!」
「!…わかってるよ…んなこと...」
久蔵は照れながら返事した。
(とはいえ、困ったな。これで、手元に残った恐竜のカードは一枚…そのカードは…)
久蔵が手に持っていたカード。それはディノニクスが描かれたカードであった。久蔵が召喚できる恐竜の中でも、スピードと攻撃力が優秀なのは間違いない。しかし、久蔵の言うことを聞かず、敵味方関係なく手あたり次第に相手を攻撃する。その結果、仲間を窮地に立たせたのは記憶に新しい。
(それでも、ないよりはましだ!)
久蔵はカードを掲げた。
智子は、「永」の振り回し、打撃攻撃ができる⑤策をぶつけようとした。猫も自身の発生させた天候をかわすのに精いっぱいで、そこをついた智子が猫に接近できていたのだ。
(打撃技・策なら、加減ができて、命を奪うことなく相手を気絶させることができる!猫ちゃん、これで倒れて!)
智子はあれだけやられておきながら、まだ猫に対する情が残っていた。そんな智子は何者かによってダメージを受けた。それは、雨でも、風でも、雷や猫そのものによるものではなかった。ディノニクスがその鋭い爪で攻撃してきたのである。
(!こいつ!空気の読めない奴!)
ディノニクスが智子に攻撃しようとしたとき、久蔵が立ちはだかった。智子を庇おうとしたのだ。
「!あんた...!」
「攻撃する相手はこいつじゃない!こいつは仲間だ!」
すると、ディノニクスは動きを止めた。
(!止まった…?今までは止まらなかったのに…!)
智子は、困惑したものの、猫の方に目を向けようとする。しかし、猫は既に離れた位置にいた。目の前には雷が落ち、いつ自身に命中してもおかしくない。それでも、智子は雨に打たれ、強風に吹かれながらも猫の方に向かっていこうとする。そのとき、智子の頭上がぴかっと光った。
(まずい!雷が落ちようとしている!)
智子は目をつむった。雷が落ちた…はずなのだが、智子には落ちていない様子だった。
ディノニクスが盾となったのだ。
「!あんた!」
智子はディノニクスを心配する。
(珍しい!何もかもが!なぜ…言うことを聞かないあいつが、あんなに協力的に…!)
久蔵が一番驚いていた。ディノニクスは久蔵の方を見た。
「!お前…!」
ヴェロキラプトルは穏やかな表情をしていた。少なくとも、久蔵にはそう見えた。
(今までそんな顔、俺には見せなかったろう...)
久蔵はその理由をすぐには理解できなかった。以前は攻撃対象であった智子を後押ししているのを見ていて、ただ呆気にとられていた。
(どうした、指図するのが、お前の役目だろ?)
「!」




