113話:ジョージとの再会
トレイシーは、ジョージが死んだことを聞いて、その場で泣き崩れる。口を手で押さえ、嗚咽し続けている。ジョンはそのまま続けた。
「ジョージは手にこの携帯電話を持っていたんだ…きっと、トレイシーにかけようとしたんだろうな。」
トレイシーはさらに涙を流した。
「ジョージ…ジョージ…」
「…」
ジョンはかける言葉が無かったのか、しばらく黙り込んでいた。トレイシーは涙を流し続けていたが、ジョンのある発言を聞いて表情を変えた。
「ジョージをやったのは女だ。」
「!」
「ジョージを見つけたとき、猫耳をつけた奇妙な女が歩いていくのを見た。俺は、今からそいつを探しにいく。」
そのとき、ジョンは何かを発見し、焦燥し始めた。
「なんだ!あいつらは!」
「ジョン!どうしたの!?ジョン!」
ジョンは返事をしなかった。いや、できなかったのだ。電話から、何かにぶつかった音がしていたのである。おそらく、ジョンが携帯電話を落としたのだろう。トレイシーが何度かジョンの名前を呼び続けるが、やはり返事はない。しばらくそうしていると、電話の向こうから、聞いたこともないような声が聞こえてきた。それは、ジョンの断末魔だったのか、未だに判明していない。
しかし、確実に言えること、それはジョンの遺体がMI6の本部で発見されたことだ。その状態は酷いもので、何者かに噛み砕かれたようだった。一方、ジョージの遺体が見つかることはなかった。
(もしかして、本当はどこかで生きているのでは…?)
トレイシーは一縷の望みを見出すが、どれだけ捜索しても、ジョージの遺体は見つからない。最終的に、ジョージの捜索は打ち切られることになった。トレイシーは深い悲しみに明け暮れた。そして、次第に恨みを募らせていったのだ。
(猫耳の女…絶対に許さない…この手で…この手で!)
(ジョージの仇を討つため…そのために、来日してミスター・リードに協力してきた…!)
「そうか!あの男のフィアンセなんだにゃ!?殺すのも惜しいほど、いい男だったにゃ!」
「!貴様ぁ!」
逆上したトレイシーは、テンニャースに接近しようとする。そのとき、一体のゾンビが襲いかかってきた。トレイシーはそれをかわすために、後方にジャンプした。そのゾンビを見て、トレイシーは愕然とした。
「!…ジョージ…?」
そのゾンビは、変わり果てたジョージ・ハリソンであった。
「ジョージ!」
トレイシーは涙を流しながら変わり果てたジョージの名前を呼び続ける。それでも、ジョージが返事をすることはない。ただ、うめき声をあげながら、トレイシーのもとに近寄るだけであった。
「このゾンビは特にお気に入りだにゃ。MI6でも指折りのスパイってだけある!」
「…さない…」
「にゃ?」
「許さない!!!」
トレイシーは怒りで声のみならず、体までもが震えている。テンニャースは、トレイシーの怒号を嘲笑した。
「レベル2ごときが、私のゾンビに敵うと思うにゃ?愛する男に殺されるがいいにゃ!」
「狙いはゾンビではないわ!クソ猫女!お前よ!!」
「なら、ますます無理だぁ!ぼけ女がぁ!!おい!お前にとっては愛しい女と添い遂げてやれ!」
テンニャースに指図されて、ジョージのゾンビがトレイシーに襲いかかろうとする。トレイシーはそれをかわした、いや、かわさざるをえなかった。いくらゾンビとはいえ、ジョージを攻撃することなどできない。
「ふにゃー!どんな気持ちだにゃ!?ふにゃにゃにゃ!」
テンニャースは抱腹絶倒であった。トレイシーは涙を流していた。MI6の優秀なスパイだっただけある、ジョージは素早い動きでトレイシーに壱極集中のキックをぶつけた。トレイシーは吹き飛ばされ、壁に衝突する。意識はあるものの、涙を流して呆然とするだけであった。そうしている間にも、ジョージのゾンビはトレイシーのもとにじりじりと歩み寄る。
「ジョージ…」
そんなとき、中原がジョージを蹴り飛ばした。
「!?いつの間に!ゾンビどもは!?」
テンニャースは動揺し、辺りを見回す。しかし、殺し屋と元No.9のゾンビは見当たらない。
「やれやれ、相当に厄介な相手だ…」
中原がため息をつきながら言った。中原のオーラは、かなり肥大していた。
「この俺に…レベルΖを使用させるとはな…」




