11話:三者三様
一方その頃、ワイルド・スピードを使用しながらも男に追いついたみつねは、男と対峙していた。
「ワイルド・スピード…驚異的な速さが売りだが、所詮テレポートの敵ではない。こっちは点の移動だが、そっちは直線的な移動でしかない!」
男はそう言って能力を発動し、みつねの背後に移動する。みつねはそれに対応できず、男の蹴りをもろにくらってしまう。
「ぐはっ!」
みつねはワイルド・スピードで距離をとりながらも体勢を立て直そうとする。しかし、行く先々に男がテレポートしてくるのである。
(かなり不利な対面だ…)
みつねは逃げながらもどうしようか考える。
ビジョンジャックにより3人目を追跡していた善俊は他の2人同様、男を人気のないところまで追い込んだ。
「ぐぬぬ。」
「ようやく追い込んだ。さあ素直に捕まりなさい。たとえ君がどのような能力を使おうと、僕には敵わないよ。」
それを聞いた男はにやりと笑った。
「それはどうかな?」
男は能力を発動したが、スライムを出したり瞬間移動したりする様子はない。タッチ・アンド・ゴーの使い手であると察知できた。
「無駄だよ。兆能力を使役させる通行人がいないのだから。」
男はまたもにやにやしながら、目にも止まらぬ速さで善俊に近づいた。
「いるじゃないか。目の前に。」
男は善俊に触れビジョンジャックを発動させる。
「勘違いしているようだが、タッチ・アンド・ゴーは相手の兆能力を使役するんじゃない。暴走させるんだ。本人がコントロールできないほどな。お前は今目をつむっているな?ビジョンジャックってところか。」
善俊らがいる場所は人気こそないものの、建物はある。善俊のビジョンジャックは暴走し、建物内にいる人物の視界をジャックし始めた。本を読んでいる男性、パソコンに打ち込む少年、シャワーをあびている女性など、テレビをザッピングするように視界が変わっていく。善俊はその情報量に対応できないでいた。
「ぐわああああ!」
男は笑いながらそれを見ていた。
「ははははは!これは面白い光景だなあ!このまま続けるとどうなるのか、見てみよう。」
秀助はダストメイカーを発動しながらもスライムから逃げていた。
「おまわりさんが市民に攻撃するつもりかな?まるでダーティハリー2の新人警官だな。」
「ダーティなのは行動だけじゃないぜ。」
秀助はスライムから逃げながらも周囲に落ちていたゴミを集めていた。そのゴミをスライム向かって勢いよく飛ばす。しかし、スライムはそれを受け止めた。
「スライムってのは弾力があるからね。そんなゴミで攻撃できるわけないだろ。」
男はスライムから逃げ惑う秀助をにやにやしながら見ている。
「そうかよ。それだったら…」
秀助は近くにあったグレーチングを取り外し、水路に落ちていたゴミを集める。そして、それをスライムにぶつけた。
「水気の多いゴミで粘性を上げてやるよ。とろいスライムの完成だ。」
スライムの変化しやすい性質を利用し、スライムをどろどろにした。しかし、スライムはすぐさま元通りになった。
「何!?」
「スライムの粘性や弾性は、こちらで自由に設定できるに決まっているだろう?」
スライムはついに秀助の体を捉え、纏わりつく。
「そんなにねばねばにしたいのなら、お望み通りしてやるよ。」
まとわりついたスライムはねばねばになり、秀助を動けなくした。
「くっ!この野郎!」
秀助は暴れるが、逃れることができない。男はどこからともなくナイフを取り出し、じりじりと秀助に近づいていった。
善俊は相変わらず視界が暴走し、苦しんでいた。そしてそれを男が笑いながら見ているのである。善俊はそろそろ気を失いそうになっており、大口を開けて唾液をたらしていた。そんなとき、どこからともなく誰かがが飛び込んできた。男はそれに驚き善俊に触れていた手を離した。
「誰だ!」
そこに立っていたのは…雄康であった。手には日本刀を持っている。ついに「準備」ができたのである。
「…どうやらこっちに来て正解だったようだな…善俊、助けにきたぞ…」




