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兆兆発止  作者: ぱんろう
最終決戦編
108/150

108話:エンタングルメント

そのとき、デイヴィッドの全体野状態が解除された。

「!」

デイヴィッドは立ち上がる。目の前では、十兵衛が腕を組んで仁王立ちしていた。

「もしや、時間が経つと解除されるようになるのかな?」

デイヴィッドはにやにやしながら言った。

「違う。わざと解除したのだよ。」

「ほう?」

デイヴィッドは十兵衛の体を歪ませようとする。しかし、十兵衛が呟いたのを聞いて、止めた。


『エンタングルメントパシー』


「!」

十兵衛は、デイヴィッドの方を見た。

「攻撃できるものならやってみろ。ただし、同等の痛みがお前さんに返ってくる。逆も然りだがな。」

エンタングルメント―日本語では、量子もつれと言う―は、主に量子力学で見られる概念である。2つの粒子が存在しており、片方の粒子の状態を観測するとき、もう片方の粒子の状態も確定する。十兵衛のエンタングルメントパシーは、この概念から着想を得た奥義...任意の対象とあらゆる感覚を共有する、まさにエンタングルメント。


「なるほどな…任意の対象と痛みを伝え合うってわけか。」

デイヴィッドは拳にオーラを纏わせていた。

「その痛みに耐えれば、どうということはないな。リード?」

十兵衛は笑っていた。同様に、拳にオーラを纏わせながら。

「察しがいいな、デイヴィッド。さあ、根性比べといこうじゃないか!」

共有するのは感覚のみ。耐久力を持つ者だけが生き残る、根性比べの戦いが始まる。

「いくぞ!デイヴィッド!私は相当打たれ強いからな!」

「それは私もだ!リード!覚悟しろ!」

2人はそれぞれ相手の顔を狙って、壱極集中のパンチを打ち当てようとする。どちらもかわさず、それぞれの拳がそれぞれの顔に命中する。2人は後方に勢いよく吹き飛ばされた。

「ぐぬぬぬぬ!」

「うおおおお!」

2人とも、痛みに悶えている。涙を流すほどに。それでも、再び立ち上がろうとする。デイヴィッドによって、空間は歪められたままのため、十兵衛は立ち上がるのに精いっぱいだ。一方、デイヴィッドは全速力で十兵衛の方に向かう。十兵衛は、走ってくるデイヴィッドを迎え撃とうとする。そのとき、十兵衛は腕にオーラを纏わせるのではなく、デイヴィッドを抱きしめた。

「!」

デイヴィッドは構わず十兵衛の腹部に壱極集中のパンチをぶつける。

「ぐぬぅ!」

十兵衛は、吹き飛ばされることなくその場に踏みとどまった。

「!ぐはぁっ!なぜだ!なぜもっと苦しまない!」

「デイヴィッド!私だって、「社会のため」なんてくだらない大義で頑張ってきたんじゃない!」

「!なんだと!」


「『笑顔』だ!人の喜ぶ顔が見たいから、私は死ぬ気で頑張ってきたんだ!それは、俳優のお前さんならよくわかるだろう!?そして、お前さんもそうしてきたはずだったんだ!」


「!うるせえええええ!知ったような口を利くなぁぁああああ!」

十兵衛は拳にオーラを纏わせ、お返しするかのように、叫んでいるデイヴィッドの腹部にぶつける。デイヴィッドは後方に勢いよく吹き飛ばされた。

「ぐわぁぁぁぁ!」

「ぐっ!」

十兵衛は痛みを感じつつも、立ち続けていた。吹き飛ばされたデイヴィッドは倒れたままだ。

「まだだ…!まだ…!俺は…!」

それでも、デイヴィッドは立ち上がろうとした。ついに立ち上がったとき、デイヴィッドは何かを悟った。

「!…そうか…No.1が許さなかったか…」

「!まさか!」

デイヴィッドは明るい表情で、そして涙を流しながら十兵衛の方を見た。


「悔しい…心の底から羨ましいよ…ミスター・リード…その輝きが...」


「デイヴィッド…!」

そう言った瞬間、デイヴィッドは爆発した。空間の歪みが収まり、十兵衛は普通に立てるようになった。

「デイヴィッド…お前さんは、スターであり続けたかったんだな…」

十兵衛は、しばらくデイヴィッドがいた場所を見ていた。しかし、ずっとそうしているわけにはいかないと、皆が向かっていった方に進むのであった。


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