107話:堕落
薬売りの話を聞いて、デイヴィッドはある場所に来ていた。SOCIOLOGIの本拠地である。デイヴィッドは構成員に案内され、ある部屋に連れられた。そこにはSOCIOLOGIの幹部と、No.1のオーベルハウザーがいた。
「よく来た。ハンフリー・デイヴィッド。君の来訪を歓迎しよう。」
No.8は目を輝かせていた。
「本物だにゃ!」
「だが、映画で活躍していたときと比べると…」
デュルケームが困惑しながら口を開いていた。
「皆、静粛に。私が彼と会話しようとしているのだ。」
オーベルハウザーがそう言うと、幹部たちは黙り込んだ。
「すまないね。私どもの幹部が。」
「いいんです。それよりも、本題に。」
デイヴィッドはオーベルハウザーの方を見ながら言った。
「ああ、そうしようか。驚いたよ。あの名俳優がSOCIOLOGIに加入したいと言うではないか。」
「ええ、その通りです。」
「私は、その理由を概ね理解している。君は、きっとSOCIOLOGIの優秀な幹部として、その兆能力を最大活用できるだろう。」
こうして、デイヴィッドはSOCIOLOGIの幹部になったのであった。俳優としての仕事はほとんど無かったため、SOCIOLOGIの活動に専念していた。そこで稼いだ資金は、慈善活動に費やした。それにより、デイヴィッドは再び注目されるようになっていったのだ。
(デイヴィッド!お前さんの過去を見させてもらったぞ!)
(!)
デイヴィッドは、思わず攻撃の手を止めた。
(お前さんの私に対する感情は、ただの嫉妬だよ。それも、かなり醜いな。)
(!リード!)
(デイヴィッド、私たちが初めて出会ったときを覚えているか?)
慈善家としてのデイヴィッドが注目された頃、世界三大兆能力者という括りがいつの間にかできていた。アメリカのテレビが、その3人を集めたトークショーを開いた。
「さあ!今回のゲストは世界三大兆能力者の皆さんです!まずは、フェルナンド伯爵、自己紹介を!」
司会に呼びかけられたのを聞いて、フェルナンド伯爵が立ち上がった。
「私こそがフランツ・アウステルリッツ・フェルナンド伯爵だ。おそらく、この中で私が最強だろう。なぜなら、これまでに多くの大会で名を挙げてきたからだ。兆能力を使えるものなら、どれでもだ。特に皆の記憶に残っているのが…で。他にも…など様々な…」
「この馬鹿は一人で喋らせておいて、私とデイヴィッドさんでトークしましょうか。」
フェルナンド伯爵が自身の栄光をつらつらと話している間に、十兵衛がデイヴィッドに話しかけた。
「ええ、ミスター・リードさん。」
「リードで構いません。所詮偽名なので。」
「それでは、リード、一つ聞きたいことが。」
デイヴィッドは少し間を空けて、十兵衛に尋ねた。
「リードにとって兆能力を使用してよい境界線は、どこに?」
十兵衛は即答した。
「やはり、人のために使うときでしょうなぁ。」
「!それでは、さらに聞きたいのですが、自身のために使うことは悪なのでしょうか。」
こちらの質問も、十兵衛は即答した。
「どうでしょうな。悪いことではないと思いますが…うまくはやっていけないでしょう。」
「!」
デイヴィッドは唇を強く噛んだ。その後もトークショーは続けられたが、デイヴィッドの口数は減っていた。
(まさか、あの質問がそれほど重要な意味を持っていたとはな。)
(あれ以来、お前はメディアでめっきり見ることはなくなった。それでも、活躍し続けている!なぜだ!なぜ活躍できる!成功できる!)
デイヴィッドは攻撃を再開した。焦点が定まっていないため、十兵衛に命中しない。それでも、十兵衛の周りにあるものは歪められていった。
(これで終わりだ!ミスター・リード!)
(いいや、始まりだ。ハンフリー・デイヴィッド!)
「!」
「レベルΖ!」
十兵衛のオーラが肥大していた。




