【再!!】 ハチ男と呼ばれるHUMAN 〜無駄で無能な能力があるとしたら――まず君はどうしたい〜
第一章:【蜂山くん、また羽音してるよ】
俺の名前は、蜂山蓮司。
高校二年。異能アリ。彼女ナシ。
特技は――羽音がすることだ。
最近の日本は、ちょっと変だ。
「異能」ってのが、わりと普通になってきてる。
カマキリになれるやつとか、手から雑草生やせるやつとか、スマホと話せるやつとか。
ほんとにピンからキリまで、異能の種類はほぼ無限大だ。まあ生物関連の異能がこの世では大半なんだけどな。
で、俺はというと――蜂だ。
いや、正確に言うと、**「体の一部が蜂の機能に変わる」**みたいな微妙な能力を持ってる。
背中に羽が生えたり、
脚がやたら強くなったり、
複眼で目がめっちゃ良くなったり。よく見ると、めっちゃ気持ち悪いけど。
だから……地味。
強いのか弱いのか、自分でもわからん。
今日も学校に行くと、クラスのいつものメンツが騒いでた。
「おい見ろよ、蜂山がまた背中から羽出てんぞ!」
「うわマジだ、バサバサいってる! 音うるせぇ!」
俺はため息をついた。
「……出てるのか、また。無意識で……」
異能ってやつは、感情とリンクしてたりする。
緊張したり、興奮したりすると、勝手に変形しちゃうのだ。
「いや今日、先生に提出するプリント忘れてさ……それ思い出してビビった」
「ビビったら羽出るのかよお前!」
そういうシステムなのだ。
ちなみに、俺の異能には**二つの種類がある**。
《ミツバチ》:目が良くなる。細かい字もバッチリ読める。
→ テストのカンニングに使えそうで使えない(倫理的に)
《アシナガバチ》:脚がバカ強くなる。跳躍力すごい。
→ 体育のハードルで勝手に飛びすぎて減点された。
──というように、日常ではけっこう邪魔。
放課後。
いつもの公園のベンチで、ポテチを食ってたら、
「やばいよ蜂山くん! ちょっと来て!」
クラスの女子、豚崎ちげが血相変えて駆け寄ってきた。能力はトン。要するに――豚。まっすぐに進むことができる。だから正確も真っ直ぐだ。まあかわいそうな点も多々あるが、そこはあえて言わない。
「どうした。火事か」
「違う、異能暴走!」
「もっと日常的に言って」
「いやだから、異能発動しちゃったの! あいつの! トイレで!」
「どこだそれ」
そう。
こういうのが日常茶飯事。
誰かの異能が暴走する。
たとえば今日みたいに、隣のクラスの男子がテスト返却の緊張のあまり、教室の床で苔になってしまったとか。
で、ちげが言うには――
「今、男子トイレに“花”咲いてるの! 蓮の花!」
「それは俺のせいじゃないからな?」
「犯人はたぶんアイツ、池谷くん。異能が水+熱で多分おいだき」
「風呂かよ」
そんな感じで、今日も異能はそこらじゅうで小さく暴れている。
テロとか戦争とか、そんな大きな話じゃない。
でも、俺たちの“いま”の中で、確かに異能は生きている。
だから俺は、ちょっとだけ強くなろうと思う。
蜂として。
第ニ章:【深夜2時、蛾が光にレッツゴーしていた件】
夜中、寝ようとしてたらスマホが鳴った。LINEじゃない。電話だ。しかも音がデカい。
「やばいよ、蜂山くん!! 今すぐ来て!!」
画面に出てるのは豚崎ちげ。夜のテンションとブタのスタンプが、すでに騒がしい。
「……LINEと電話、同時に送ってくるなよ。あと、今何時だと思ってんだよ」
「2時!」
「いや、知ってるけど。」
「あいつが出たんだ!! ほら、異能がガのアイツ!!」
「ガ? ……蛾?」
「そう! あ!って言う前に街灯へ集まっちゃったの」
意味が分からない。でも、ちげが夜中に電話してくるのはわりとマジな事件なのかもしれない。曲がれないから。
俺はため息をついて、パーカーを羽織った。
現場は近所の公園だった。街灯の下に、何かが……いた。
パジャマ姿でフラフラと飛び回っている男子。髪はボサボサ、手には虫カゴ。そして、何より目を引くのは――背中の羽。
**ふわっ……ふわっ……**と、柔らかくて繊細な粉を撒き、蛾みたいな羽。
「……蛾!」
俺は小声でつぶやいた。
名前は月原 周吾。クラスは違うけど、有名な異能少年。そう、彼は珍事件を起こす天才だ。天災、なんちって……やかましい!
「で、能力は《ガ》――蛾になる異能」
簡単に言うと、深夜になると勝手に光に向かって歩き出す。
まじアンドがちで蛾。
「ひかりくーん!? だめだってばー!!」
ちげが公園の木の陰から呼びかけるが、返事はない。
……彼はただ、街灯の真下で立ち尽くしていた。目はうつろ。口元はゆるく笑っている。
「……気持ちよさそうだな、でも危ないぞ」
「そうじゃなくて! ここに猫いたの! 野良猫! 狩られそうになって逃げたの!」
「いや蛾よ? 猫に狩られるのは自然の摂理だろ」
「人間だってば!!」
俺はしぶしぶ近づいた。羽音を響かせながら――
「……おーい、しゅうご。起きてるか?」
「…………あ」
ピクッと反応した。
その目がこっちを見た。
「……あ」
「え、なに。怖。なにその“あ”」
「……あ」
「こっち来るなよ!?」
ガサッ!
ひかりが急に駆け寄ってきた。
手を広げて、羽をばっさばっささせながら!
「……あ……ああ……あああああ!!!」
「やめろ、やめろ、やめろおお!!」
俺はとっさにジャンプした。
俺!――《アシナガバチ》、起動!
脚が光って、瞬間加速。木の上に一気に登る!
「くそっ、なんで深夜にこんな逃げ回ってんだ俺……!」
下では、ひかりが街灯にしがみついていた。
「あ……ああ……あかるい……」
もう完全に、虫のテンションになっている。
「捕まるな! 燃えるぞお前!!」
そして5分後。異能停止剤(ちげが勝手に持ってた)を使って、月原はようやく正気を取り戻した。
「え……僕、また……?」
「おう。公園で街灯に抱きついてた」
「うわあああ……最悪……!」
ちげがため息をつく。
「……ほんと、異能ってめんどくさいよね」
俺は空を見上げた。夜の空には、虫たちの羽音だけが静かに響いていた。
「……うん。俺の羽音もだいぶめんどくさい」
こうして、夜中の“光に群がる異能少年”事件は、無事に収束した。
「なあ、はじめから殺虫剤使えばよかったんじゃね?」
「いや、それ死ぬから」
第三章:【黒い服のやつ、だいたい敵】
俺は、今の学校を気に入っている。
理由は単純。
黒い制服じゃないからだ。
蜂ってさ、黒い服に反応すんだよ。
巣に近づいた登山客とかがよく刺されてんの、だいたい黒い帽子とか服のせい。
で、俺は蜂だ。
異能としてもそうだし、性格的にもたぶん蜂寄り。
だから――黒い服を見ると、むかつく。
前の学校は、制服が黒だった。学ラン。ガチで地獄。
「お前何見てんだよ!」って言われる前に、「俺が聞きてぇよ!」って感じだった。
見てなくても、黒が視界に入ると本能的に戦闘態勢に入ってしまう。
しかも体育でジャージ上下黒の集団が走ってきた日には、俺が勝手に《アシナガバチ》発動して暴走する。
「これは……無理だな」と思って、転校した。
今の学校は、紺色ベースのブレザー。
落ち着いた。マジで色って大事。
先生もネイビーのスーツ。最高。
おかげで毎日羽音が静かだ。
そして、三年生に上がる頃のクラス替え。
一人ひとり教卓の前で自己紹介するらしい。
「蜂以上、蜂以下。蜂です。特技蜂。好きなものオレンジ色。よろしく」俺は自己紹介を済ませて、担任の先生に席を案内された。
「じゃあ、蜂山くん。あの窓際の席ね。黒川くんの隣」
……ん?
「く、く、黒?」
席に行くと、やつは、やつは――そこにはいた。
全身、黒ずくめの男。
黒髪、黒いシャツ、黒いリストバンド。
その名も――黒川くろま(本名)。
俺の羽が、小さく震えた。
(あ……これ、ヤベい)
「よろしく、蜂山くん。俺、黒川」
笑顔が眩しい。
でも服が黒い。めちゃくちゃ黒い。いや、なんでだよ。
「……うん。よろしく」
目を合わせずに答える俺。
本能が『そこ刺せ』って言ってる。
やめてくれ、脳。NO!
そしてその日の放課後。
またしても、ちげから電話が来た。
「蜂山くん! 黒川くんの家、異能のせいで玄関から出られないんだって!」
「黒川って、あの黒?」
「そう! 異能がカラスで、玄関のドアがどこかわからないらしい」
「ん? どういうことだよ」
「カラスって人間よりも多くの色を認知できるの。あと、視力も五倍になってるから、フッラフラなんだって。だからずっとパニックで常時異能を発動させてるんだって!」
「意味わかんねぇよ。なんで俺が助けに行くんだ。豚崎がいけばいいじゃんか」
「無理なの! いま友達とセブンにいるから。お願い行って!」
「いや随分身近なところに――」
とその時、電話はプツリと切れてしまった。
黒い部屋。
黒い服の男。
黒い能力……
いやいや、無比無比! 聞いてませんって。
本能的に、俺の羽が最大音量を叩き出している。
でも――
「……まあ、行くか」
俺はパーカーを羽織って、背中の羽を静かに展開した。パーカーは羽がでる部分のちょうどが、破れている。だっせーぇ。
その後、黒川の家に突入した俺は、勝手に《アシナガバチ》形態になって壁を蹴り抜き、黒川を見つけた。
「目が、目ぇがぁー!!」
黒川が目を抑えながら悶えているところを見たが、
「あ、やべ」
ついでに黒川の黒いシャツも引きちぎってしまった。
「おぅああああ。ごめんまじごめん!!」
俺は土下座した。
「そ、それより目、目が! 目が!」
「ど、ど、どうしたらいい?」
「目薬! 目薬を」
「こ、これか」キッチンにあった目薬を俺は取った。いや黒っ!
目薬をした黒川は笑っていた。安心したようだ。でも黒い。
「いや、ほんとにありがとう。この異能まだ使いこなせて無くてさ。ねぇ、それよりこれから友達になろうよ、蜂山くん」
うぇ? いや――うん無理。俺、本能で刺しかけたやつと、友達になれるとは思わないもん。
第四章:【蜂山くん、女子の香水に群がる】
俺は今、人生でいちばん誤解されている。
「……変態!!!!」
女子の怒号が飛び、廊下をドカドカと逃げる俺。背中の羽が全力でバッサバサ言ってる。
「違う! 俺は! 匂いに反応しただけで!!」
「匂いに反応って何!? 気持ち悪っ!!」
「それはちょっと否定できないけど!」
ことの発端は、今朝の教室である。
「蜂山くん、転校してきてしばらく経つけどさー。好きな女の子とかできた?」
なぜか突然そんなことを聞かれた。
聞いてきたのは、クラスの女子・上原かえで。
異能はカエデになること。顔は良い。性格もわるくない。が、香水がエグい。
「あー、別にいないよ」
「ふーん。じゃあ私とかは?」
ドヤ顔で髪をかき上げる。
――!?
その瞬間、俺の鼻にあま〜い香りが飛び込んできた。
「来た!!!!」
はちみつ+花の香り。
完全に俺にとっての“ご褒美 せ い ぶ ん”。
「……あ」
「え、なにその目。え? なんか目がキラキラしてない?」
「いや、ちょっと待って……今、感情が勝手に」
ブオン!!!
羽が展開された。
「うわあっ!! 出てる出てる!! 羽出てるよ!!」
「落ち着け俺!! 嗅覚嗅覚! あーでもいい匂い……じゃなくて!」
だが、完全に遅かった。
俺の体は、本能的に“蜜のある方向”に前傾姿勢になっていた。
かえでの周囲をくるくると回り始める俺。
「やめろやめろやめろ、俺はそういうつもりじゃない!!」
その時、後ろから声が飛んできた。
「おい蜂山、お前また羽出てるぞー」
黒い人、黒川くろま。
この人は相変わらず全身黒いけど、ツッコミの安定感だけは光ってる。
「違うんだ、これはそういう意味じゃなくて――」
「うん、もう全部アウトね。その状況説明しようがないもん」
結果発表。
俺は女子から**「蜂系フェロモン痴漢」**という謎のあだ名をつけられかけた。
でも唯一信じてくれたのが、豚崎ちげだった。
「ちげはわかってくれるよな?」
「うん、虫ってそうだもんね。わかるよ。私はトンだけど」
「そこは関係ないよね?」
「いやでも私もね、最近パン屋の前を素通りできないんだよね。匂いで」
「それ、異能じゃなくて食欲だよね?」
となんだかんだ次こそ、静かな日常が欲しい。
そう考える蜂山だった。
第五章:【若干、社会に刺さってます】
朝のHRで、先生が言った。
「今日は教育管理局から“異能観察官”の方がいらっしゃってます。ちょっとしたチェックがあるので、落ち着いて受けるように」
――異能観察官。
異能者を管理するための行政機関、その下にいる検査官みたいなもので、わりとマジで怖いやつららしい。
「チェックって……テストとかじゃないよな……?」
俺はつい羽音を鳴らした。
昼休み。
廊下に現れたその人物は――異常に黒いスーツを着た男だった。
痩せていて、眼鏡が光っている。
そしてやたらとピチピチの白い手袋をしている。
「君が……蜂山くんだね」
声は静かだった。でも、俺の背中の羽はザワッと反応していた。
こいつ――危ないやつだ。黒いぞ!!
そのまま、保健室での面談に連れていかれた。
室内には、黒川とちげも座っていた。
黒川が片手に水筒を持ちながら言った。「……なんで俺まで呼ばれたんだ」
ちげが肩甲骨をぐるぐる動かしながら「“関係者”って言われた! なにそれ、関係者ってブタなのに!!」と。
「うるさい、羽が揺れる……」蜂山は少し焦る様子で注意する。
観察官は、タブレットを取り出した。
そこには、俺の異能プロファイルが表示されていた。
「蜂に変異……君の能力は非常に興味深い。第一、第二形態まで確認済み。多様な形態変更が可能になるのか……どれも、刺突本能と防衛反応の混合型だ」
「……うん。まあ、刺しがちなんで」
「問題はね、“刺しがち”じゃないんだ。君の中にあるのは――“刺したい”という本能的衝動だ」
「……」
観察官は、じっと俺の目を見た。
「刺したくなったことは、あるだろう?」
背筋が、ぞわっとした。
ちげと黒川にゆっくりと視点を移すが、俯いていた。
俺はゆっくり答える。
「……毎日一回は思ってます。でも、我慢してますよ。ずっと。」
観察官は静かにうなずいた。
「我慢。そう、“それ”をどう処理するかが、今後の鍵になる。君のような生物に変身できる異能は、世界の大半だ。しかしいずれにせよ――君の能力は少し強い。もしかしたら、いや今後100%で自身にも危険が及ぶと捉えて良い」
「……え?」
「敵じゃない。社会が君を排除しようとするんだよ。社会を揺るがすかも知れない強き存在を」
そう言って、観察官は一枚の紙を出した。
それは、「異能監視候補者通知書」。
監視対象:蜂山蓮司
理由:若干の暴走傾向、および若干脅威があるため、管理命令。
俺は言葉を失った。若干多いわ。
黒川がドたんと勢いよく立ち上がった。
「ふざけんなよ。こいつが今までどれだけ自分を抑えてきたか、見てんだよ俺は。あの日だって俺を助けてくれたんだ。黒い俺を!」
ちげが鼻を鳴らした。
「本能が刺せって言ってるのに、刺してないんだからいいじゃん。危険じゃないよ!」
「なんか若干説得力ある……」
しかし観察官は微塵も笑わなかった。ただ、淡々とタブレットを閉じて言った。
「今日の判断は持ち帰ります。君の羽音が、いつか本当に響き出した時――また来るよ」
そう言って、彼は出て行った。保健室に残った俺たちは肩をおろした。
「ふぅー息苦しかった」
「まじそれ」
「……」
なぜか俺は"普通"というレッテルを剥がされたらしい。
つづく。
下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします! 面白いと感じたなら5つ、つまらなかったな〜と思ったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です! ブックマークもしていただけると、めっちゃうれしいです!
よろしくおねがいします。
また、【連載版】ゼルの掌握 ~Fランク冒険者は、ハメ◯された魔王~ をぜひ見てくれたら、嬉しいです!!!!!




