9話 ファヴニール
海の魔物リヴァイアサンを倒したものの、そのリヴァイアサンを召喚したというヴァンパイアが現れた。
ヴァンパイアの出したコウモリにリナは苦戦するものの、モモの聖なる光の力によりなんとかヴァンパイアを打ち倒す。
だがヴァンパイアは最後の力を振り絞り、巨大な竜を召喚したのであった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「ぇ、まじ?」
目の前に現れた巨大な竜に愕然とするリナ。
「この竜って……?」
リナは僕に向かって問いかけた。
「ぁ、うん」
「ファヴニールだよ」
そんなリナに向かって僕は冷静に返す。
うん、また【ヴ】がつくモンスターだね。
「ぇえぇえ〜っ!」
先程迄のリヴァイアサン、コウモリ、ヴァンパイアとの戦いでボロボロになり疲労困憊のリナ。
「くっ、でもやらなきゃ……!」
ふらつく体で再び剣を構えて戦おうとするリナ。
「うっ……」
でも戦いのダメージは大きく、剣を地面に突き刺して杖代わりに倒れそうになる体を支える。
「リナ!」
それを見てモモが駆け寄り今にも崩れ落ちそうなリナの肩にそっと手を添える。
「……モモ」
モモの支えに少し安心したのか倒れ込む様に体を預ける。
パァァァァァァァ
モモの手から出た優しい光が輝き、リナの傷を癒してゆく。
「ぁ、ありがとうモモ」
モモは治癒と浄化の聖女、その力でリナを癒す。
だが連戦でのダメージは大きく、モモの癒しの力でもリナは直ぐには回復しない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
そんなリナを待ってはくれず、巨大な竜ファヴニールは僕達に気付き睨みつける。
「くぅっ!」
「リナ!その体では無茶です」
無理をして立ち上がろうとするリナを制止するモモ。
「でも……このままじゃ」
巨大な竜ファヴニールの威圧感に押し潰されそうになりながらも、立ち上がろうとするリナ。
「……ここらで僕の出番かな」
そう言って僕はリナとモモを守る様にファヴニールの前に立つ。
「永太様!」
僕の背中を見て安堵した様な声を上げるモモ。
「く、悔しいけれど……」
「あんたに任せるしか無さそうね」
悔しそうな声を出しつつも、少し安心した様に喋るリナ。
「仕方ないから、騎士団見習いにしてあげる!」
「だから、ちゃんと倒すのよ!」
なんだか成り行きで騎士団見習いになってしまったが、ちょっぴりリナがデレた?気がして僕は嬉しかった。
「クルミ」
「リナとモモを任せていいかな」
静かに話を聞いていたクルミに向かって僕は頼む。
「……わかった」
クルミは静かにそう言うとリナとモモの傍に行き詠唱する。
「氷盾」
リナとモモ、クルミを覆う様に氷の魔法障壁が展開される。
「……この盾だと、ドラゴンブレス防げない」
クルミがサラッと大事なことを言う。
「大丈夫」
「ドラゴンブレスは吹かせない」
僕は構えていたショートソードを鞘におさめながらそう言う。
だが、目の前に居る巨大な竜ファヴニールの口から薄い煙が出始める。
明らかにこちらへ攻撃をしようとする予備動作が見て取れる。
それでも僕は冷静にドラゴンを見つめる。
傷だらけのリナも、それを治療しているモモも魔法障壁を展開しているクルミもなぜか慌てずに僕の動向を見守る。
それに応えるかのように僕はアイテムボックスから一振りの剣を取り出した。
「光輝闇暗炎竜剣」
僕は光輝闇暗炎竜剣を掴みファヴニールに向かって構える。
「ヴヴヴッ……」
その剣の異様な雰囲気にファヴニールが警戒心をあらわにする。
「ヴァアアァァァァ!」
ファヴニールは巨大な体を震わせ雄叫びを上げると同時に口元が眩く光り始める。
次の瞬間、僕達に向かって終焉の咆哮を放とうとした!
「……させない」
僕はボソリと呟くと同時にファヴニールに剣を振り抜く。
「邪王暗黒流次元断層剣零式改!」
振り抜いた光輝闇暗炎竜剣から凄まじい衝撃波なのか次元断層波なのかわからない凄まじい何かが、ブレスを放とうとしたファヴニールに直撃する。
ズゴォォォアアァァァァアアァァァァ!
爆音と閃光と闇と炎と、もうなにがなんだかわからない攻撃がファヴニールを吹き飛ばした!
巨大な竜が居たはずの場所にその巨体は無く、何かの消し炭や破片やらが飛び散って居るだけであった。
「ふぅ~」
光輝闇暗炎竜剣をアイテムボックスにしまいながら、僕は息を整える。
「なんだかゴブイチの時より威力が出ている気が……」
「レベルが上がってるから?」
「モモ達は大丈夫だったかな」
そう言って振り返り様子を確認する。
「……」
「……相変わらずデタラメな技ね」
「威力も技名も」
土煙の向こうからリナの声が聞こえてくる。
「やりましたね、永太様!」
モモの喜ぶ声も聞こえてくる。
「どうやら大丈夫みたいだね」
僕はその声が聞こえた方向を見ると、モモ達三人があ然としたり喜んだりしているのが見える。
モモ達の方へ僕が歩き出そうとした所でクルミの声が聞こえる。
「大丈夫じゃない」
「ぇ?大丈夫?怪我でもしたの?」
僕がクルミに問いかけると、クルミは僕の上の方を指さして口を開く。
「上、崩れる」
クルミが冷静に大変な事を言う。
「ぇ!?」
僕は上を見上げると……
洞窟であんな大技を放ったものだから、ファヴニールを突き抜けて洞窟に思いっ切り衝撃が当たっていた。
当然、洞窟は崩れる……よね〜
「まじか〜〜〜!!」
「ヤバい!退避〜!!」
僕はモモ達三人に向かって叫びながらリヴァイアサンが居た洞窟の広間から走って逃げ出す。
「ぇえぇえ!!ちょっと〜!!」
疲労困憊だったリナも緊急事態で飛び上がる。
「永太様ぁあ〜」
モモも叫びながら洞窟の広間から走って退避する。
「……急ぐ」
こんな時でも冷静クールに話しながら走るクルミ。
ドガァガガガァアアァァァァァァァア!!
広間の入り口の小道に退避した僕達。
ガガガ、ガラガラ
どうやら崩れたのは広間だけで洞窟自体が崩壊はしなさそうでちょっと安心する。
「ハァハァ」
久々に全力疾走した気がする。
「はぁはぁ」
「ちょっと!!」
「何やってくれてるのよ!!」
さっきまで疲労困憊だったリナが僕に向かって大声を上げる。
「ぁ〜、びっくりしました〜」
モモも荒い息遣いを整えながら、話す。
「うん、驚いた」
いや、クルミは驚いていないだろうって感じで喋る。
「いゃ〜、ゴメンゴメン」
「思ったより技の勢いが凄くて〜」
「テヘッ」
笑って誤魔化そうとする僕。
「ごめんじゃ無いわよ!!」
「生き埋めになる所だったじゃない!!」
リナが僕に向かって大声を上げる。
「まぁまぁ、リナ」
「永太様のおかげであの魔物を倒せたんですし〜」
モモが僕のフォローに回ってくれる。
うん、ありがとう。
「まったく、もう……」
疲労困憊を思い出したかのようにふらつくリナ。
「と、とりあえず魔物は退治したことだし」
「洞窟から出ようか」
僕は急いで話を変える。




