5話 二ヴァーンの町
その夜僕達四人は浜尻の町の宿屋に泊まった。
ぁ、モモ達と僕は当然別部屋で僕の部屋は一番狭いボロ部屋でしたよ。
そして翌朝僕達は浜尻の町を後にした。
町を出る前に武器防具屋に寄り、ヨレヨレのスーツ姿から冒険者風の服に着替えた。
武器もショートソードをこしらえて、まさに冒険者といった感じだ。
さすがにヨレヨレスーツで歩くのはこの異世界では目立ち過ぎるかと思ったからね。
「剣は、なんちゃらフレイムソードがあったんじゃないの?」
リナが少し不満げに問いかける。
「あの剣は目立ち過ぎるし、なにより大技で魔力を使い過ぎるから普段はこっちの方がいいんだ」
なんて言い訳を僕はする。
本音は毎回あんな長い名前と長い技名を言い続けていたら、恥ずかしさの謎ダメージを受けてしまうからだ。
なるべくなら普通の技で行きたいものだ、と思った。
「次の目的地は……」
街道を歩きながらモモが僕の顔を見て話し始める。
「南の塔だと、まずは二ヴァーンの町かな」
僕はモモに向かって答える。
「そうですね、永太様」
モモが笑顔で返答する。
「いざ二ヴァーンの町へ」
僕とモモがそうやって話している後ろからリナとクルミが冷たい目で見つめる(汗。
道中、雑魚ゴブリンが何回か出てきたが殆どリナがやっつけてくれた。
よっぽど僕に貸しを作るのが嫌だったのだろうか。
なんて事を考え歩いていると日が暮れ出した頃には二ヴァーンの町が見えて来た。
二ヴァーンの町、まぁそのまま二番目の町。
昔の僕がつけた安直な名前である。
最初の町が【浜尻】で漢字なのに、【二ヴァーン】はカタカナと統一性の無さが小学生っぽい。
うん、恥ずい。
「よヴこそ、二ヴァーンの町へ」
町の入り口に居るお約束台詞の人だ。
「ここは港町だからヴみの幸が美味しいよ」
説明してくれる人も居る。
それを聞いてリナが、ボソリと呟く。
「南方訛りというやつかな」
先程からここの町の人の喋り方が、【ヴ】なのは昔の僕が悪ふざけで【う】を【ヴ】に変えて楽しんでいた。
なんて事はとても言えずにいたのだが、なんだか上手いこと誤魔化された様だ。
「南の塔は……遠くに見えるアレか」
僕が海の方を見つめ、小さく見える塔を指差す。
「そうですね、船があると良いのですけど」
そう言ってピンク色のロングヘアーをなびかせながらモモは港を眺める。
目指す南の塔は離れ小島にあり、船などの移動手段が必要なのだ。
「南の塔に行きたいんだけど、船はあるかしら」
海風に赤髪のポニーテールが揺れる。
リナが珍しく丁寧な口調で、近くの漁師に聞いた。
「ぁ〜、ダメだダメだ」
「今はヴみに船は出せないよ」
見た感じ港には沢山の船が停留しているのだが、手を横に振りながら漁師が困った顔をする。
「どヴいヴこと?」
「いや、どういう事?」
リナが南方訛り?につられて【ヴ】と言ってしまったのをすぐさま修整する。
「なによ!」
僕が心の中でニヤニヤしていることを察したのか、リナが僕を睨む。
「いや、なんでもないよ(汗」
「それより、なんでだろうね〜」
僕は白々しく答える。
「そうよ、何で船が出せないの?」
その漁師にリナが詰め寄る。
「リヴァイアサンだよ」
「南の塔が黒く光る様になってから、リヴァイアサンが出るようになっちまって」
「船が出せなくなって、ヴちも商売上がったりだよ」
手を横に広げて困ったポーズする漁師。
「リヴァイアサン……、海の魔物」
喋らなさ過ぎて居ないのかと思っていたクルミが、リヴァイアサンの説明をしてくれた。
「南の塔が闇に染まった影響でしょうか」
薄暗い雲に覆われている南の塔を見てモモがそう言う。
「……そうかもね」
いや、単純に【ヴ】の付く名前の敵を出したかっただけなんだよな〜。
と、当時の僕を思い出す。
「そのリヴァイアサンとやらは何処にいるの?」
リナが漁師に問いかける。
「詳しい事は町長に聞いてみてくれ」
「ほら、あれが町長の館だ」
そう言って町の中央にある大きな館を指差した。
「それじゃあ、行ってみましょう」
僕達は館に向かって歩き出す。
町長の館に着くと直ぐ様お出迎えが来る。
「モモ姫様に勇者様、よゔこそいらっしゃいました」
僕達を迎えてくれたのはテンプレお髭顔の町長。
「勇者様ぁ?」
リナが勇者という肩書に不満を顔に出しながら聞き返す。
「西の塔を解放した噂、既に聞き及んでいますぞ」
ニッコリ微笑む町長。
「そうなんです!この永太様が暗黒四天王を退けてくれたのです」
モモが嬉しそうに話に乗っかる。
ちょっと照れくさい顔をする僕だが、それを冷ややかな目線で睨むリナとクルミ。
「ちょっとキモいけどね」
相変わらずのツンツンリナである。
「海に魔物が現れて大変だと聞いてきました」
「そのリヴァイアサンは何処に」
モモが話を進める。
「リヴァイアサンはこの町の南にある入り江、そこの側の洞窟に棲み着いているのです」
「勇者様、お願いです」
「リヴァイアサンを退治してください」
港町に海の魔物が現れて困っているというこの安定したテンプレに、お使いクエスト展開。
うーん、まさに古き良きRPG。
なんて考えていると再び選択肢が現れる。
【はい】
【いいえ】
【ヴん、任せて!】
……、どんだけ【ヴ】が使いたいんだよっ!と昔の自分にツッコミを入れつつ選択する。
「ヴん、任せて!」
「おお、ありがとうございます」
「さすが永太様」
町長とモモにそう言われて少々調子に乗る僕。
町長が宿を取ってくれたとの事で、その宿に向かう途中、
「港町だし、今日の夕食は海鮮かな〜」
僕が浮かれていると
「リヴァイアサンが居るから船が出せないって言ってたでしょ、船が出なけりゃ漁も出来ないわよ」
リナが冷たい目でツッコむ。
「くぅ、そうだった(涙」
「リヴァイアサンめ〜」
僕は地団駄を踏みながら悔しがる。
「なおさら退治しないとですね」
モモが僕を励ましてくれる。
「……海鮮」
残念感を出しつつクールに答えるクルミ。
結局、その日の晩御飯は海鮮では無くパンとスープでしたとさ。




