4話 無限くりきんとん
西の塔のゴブイチを倒し、浜尻の町まで戻って来た僕達三人にまた一人仲間が加わった。
小柄な青髪の子、クルミである。
「クルミはなんで浜尻の町に?」
リナがクルミに話かける。
「モモを追って来ただけ」
クルミがクールに返答する。
そんな話をしていると日が暮れてきた。
「へぇ~、ちゃんと日が暮れるんだ」
僕がそう言うと、
「当たり前でしょ、なんで日が暮れる事に驚いているのよ」
リナがツンツン成分で攻撃してくる。
まぁ当たり前といえばそうなのたが、レトロなゲームで制作したこの【エイタークエスト】。
時間経過なんてそんなシステムすらなかった代物なのに、この世界ではちゃんと時間がたって日が暮れる。
モモもリナもクルミもドット絵だったのに自分の考えで動き、喋っていることに僕は少し感動していた。
「取り敢えず今日は浜尻の町に泊まるわよ」
リナが団長風を吹かして僕達を仕切る。
「そうですね」
「わかった」
モモとクルミも同意する。
「あんたはその辺でいいでしよ」
リナが指差した先はただの草むらだった。
「なんで草むら!」
僕はすかさずツッコむ。
「草のベッドって気持ち良さそうですね」
「私も一緒にここで寝てみましょう」
モモがリナのボケに乗ってくる。
「いや!こんな所で寝ちゃダメだから!」
「ちゃんと宿屋に泊まって!」
すかさずリナがモモにツッコむ。
「ふふっ」
「永太様、よろしければご一緒にどうですか?」
リナのツッコミを使ってモモが優しくそう言ってくれた。
確かにこの世界に来て、住所も無ければ家も無い。
「……じゃあ、お言葉に甘えて〜」
リナとクルミの視線が痛いが、さすがに草むらで寝るのは勘弁だ。
こうして浜尻の町で宿を取った僕達は、宿屋に併設されている酒場で食事を取る事になった。
「モモに感謝して食べなさいよ」
リナはずっとツンツンしている。
「……いただきます」
クルミはずっとクールだ。
「永太様もどうぞ〜」
モモはずっと優しい。
「ありがとう、いただきます」
僕はそう言って食事を始めた。
ここは自作のゲーム内の筈だが、目の前には美味しそうな料理が並んでいる。
料理の設定とか全然考えていなかったのにちゃんとした料理が出てくる。
この世界、製作者の僕が作った表面的な設定は分かっているが、それ以上に深いのかもしれない。
香ばしく焼かれ、塩コショウされたこの美味しい串焼き、
「モグモグ、……これは何の肉だろう」
そう不意に呟くと。
「これは、ジャイアントトードの串焼きよ」
リナが説明してくれる。
僕に対してツンツンはしているものの、騎士団長ということもあり結構面倒見は良い。
「ってカエル!?」
ちょっとびっくりして不意に声に出してしまう。
「嫌なら食べなくていいわよ」
リナの僕を見る目が怖い。(だがそこがいい)
「あ、食べます、美味しいです」
奢って貰っているし、なにより美味しい。
「よかったらこちらもどうぞ」
モモが飲み物を渡してくれる。
「あ、ありがとう」
僕はそれを受け取る、が見た目が凄い。
さっき食べたのがジャイアントトードの串焼きだから、この飲み物は言うなれば泥水とカエルの卵。
まぁ、元の世界にも似たようなものはあったし、串焼きが美味しかったから大丈夫だろう。
そう自分を納得させてその飲み物を飲む。
モグモグ、モグモグ。
うん、完全にあれです。タピオカミルクティー。
そうして食事を終えた所でモモが話し始める。
「じゃあまずは私からですね」
「私はこの国の姫であり、聖女のモモです」
「浄化と癒しの奇跡を使えます」
手を胸に当てながらモモが自己紹介をしてくれる。
「次はリナですよ」
モモがリナを見てそう言う。
リナが僕をチラ見して自己紹介を始める。
「私はツンデリーナ、この国の騎士団の団長よ」
「リナって呼ばれているけれど、あんたに呼んでいいって許した覚えは無いからね!」
うーん、相変わらずのツンデレっぷり。いや、まだデレていないからただのツンドラか。
次はクルミかな?と見てみると、
「……クルミ」
自己紹介が一言だけかぃ!ってクールキャラにしたのは自分だけど凄まじいクール。
「ほら、クルミ」
モモが話しかけるといい笑顔するのに、
「魔導師団所属の魔道士……です」
僕を見る時はジト目が凄い。
「さぁ、私達の自己紹介はしたわよ!」
「白状しなさい!魔王軍のスパイなんでしょ?」
「もしくは魔王軍のスパイね!」
リナが僕に向かって叫ぶ。
ここは異世界っぽく転生者みたいな説明をしておくか、製作者とか言っても信じてくれなさそうだし何かと面倒そうだ。
「えと」
「僕は違う世界、異世界から来たんだ」
「はぁ?違う世界?隣の大陸とかじゃ無くて?」
リナが予想通り信じてくれなさそう。
「では異世界から来られた勇者様と言う事ですね」
モモは凄く物分かりが良くて助かる。
「……」
クルミは黙って僕を見つめる。
「そのお召し物も異世界だからというわけなんですね」
異世界に不釣り合いなワイシャツとズボンという格好を僕が言わずともモモがほぼほぼ説明してくれる。
「確かに、ここいらでは見ない服ね」
モモが説明してくれるおかげでリナが納得しかけている。
「そう言う事だからリナ、よろしく」
この流れならいけるか?と思い、仲間になった風に話す。
「はぁ?あんたに呼んでいいって許した覚えは無いからね!」
まずった、また振り出しに戻った感じだ。
「も〜、リナ先程助けて貰ったでしょう」
モモが西の塔のゴブイチ戦の事を再び持ち出す。
「くぅ!確かに、でもなんか貸しを作った感じになっていてなんかムカつく〜!」
リナが、恨めしそうな目でこちらを睨む。
「じゃあ、その貸しはリナって呼ぶ事を許してくれる事でチャラにするってのはどうかな?」
僕は落としどころを探ってリナに提案する。
「ぅ〜ん、ぅ〜ん」
リナが納得しそうでしない。
でももう一押しかな?僕はそう思い最後の一押しをする。
「はい、どうぞ」
僕は西の塔で手に入れた【無限くりきんとん】の箱に魔力を込めて蓋を開くと、中から【くりきんとん】が現れた。
「……これは?」
モモとリナが不思議そうに覗き込む。クルミもチラチラ見する。
「食後のデザートだよ、これが美味しかったら納得してくれるかな」
女の子の大好きな甘いものなら納得してくれるかな?と
「……何これ?怪しいわね」
僕がみんなに配ったくりきんとんを見つめ、怪しむリナ。
「ほら、美味しいよ」
モグモグ
「お茶にも良く合うし」
僕が試しに食べてみて美味しさをアピールする。
「……では私も」
モモがそう言って一口食べる。
「……!」
「……美味しい!」
モモが頬に手を当てて満面の笑みで美味しさを現す。
「……そんなに?」
リナが少々疑いの眼差しを見せるが、モモが言ったことで自分も一口食べてみた。
「うま!」
秒でリナの美味しいいただきました。
「うま!」
クルミも何気に食べていて感想もまったく同じだ。
「お茶にも凄く合うし、これは一体」
いつもクールなクルミが目を見開いてくりきんとんを見つめる。
うんうん、美味しいよこれは。
いわゆる正月のおせちとかに入っている栗金団では無く、和菓子のくりきんとんなのである。
栗を練り上げたものであり、栗の美味しさが存分に味わえるのだ。
現実世界では少々高価な和菓子の為、特別な日などでしか味わえない至高の和菓子なのだ!
それが大好きな僕がこの世界のアイテムとして【無限くりきんとん】を作り上げたのだ!
ドゃあ!
なんて僕の顔を見ることも無く、みんなくりきんとんに夢中である。
「ごちそうさま」
食後のデザートも満喫し、みんな満足気である。
「美味しかった?リナ」
僕がわざとリナに聞く。
「……まぁ、ね」
今度はリナ呼びを否定されなかった。
よっぽど美味しかったのであろう。
「ふふふ」
そんなリナを見てモモも微笑む。
横目で見たクルミも満足そうだ。
これで一応仲間?になれたのかな、と僕は思った。




