36話 ちびシャドウ
「と、言う事だってさ」
「クルミ」
リナでもなくモモでも無い、クルミに聞こえる様に大きな声で僕は叫ぶ。
「……」
すると塔の入り口の端にある柱の影からシャドウが姿を現した。
「シャドウ!ってクルミ?」
「あんたクルミがいた事気付いていたの?」
リナが驚きながら僕に向かって叫ぶ。
正直言うとクルミが近くに居ること自体は、昔の僕が作ったゲームなので知っていた。
気配とか分からないから多分近くに居るだろうな〜位だけどね。
「クルミ……なんですね」
おずおずと姿を現したシャドウを見てモモが呟く。
するとシャドウの後ろからクルミが出てくる。
「……」
何か言いたそうな顔をしつつも、黙ってモジモジしているクルミ。
うんカワイイね。
なので僕は助け舟を出すように話かける。
「言いたい事が、あるんだね」
「……うん」
クルミは静かに口を開き、喋り始める。
「……黙ってて、ごめん……なさい」
「これが私なの」
僕達から目を逸らしながらもクルミはちょっとずつ話す。
モモとリナは口を挟むことなくそれを静かに聞いている。
「こんな影の力……」
「こんな闇の魔力……気持ち悪いよね」
悲しそうな目をしながらも勇気を出して話してくれているのがわかる。
「……まったく」
するとリナが口を開き、クルミに話かける。
「今まで沢山助けてくれたじゃない、クルミとしてもシャドウ……としてもね」
「それにね!」
リナの声のトーンが一段上がり、それを聞いてクルミがビクっと緊張するのがわかる。
「そんな力よりよっぽどコイツの方が気持ち悪いわよ!」
そう言って指差したのは僕だった。
「ぅえぇ!?」
不意打ちを食らって変な声を出す僕。
「影の力とか闇の魔力とか、気持ち悪いとか恐ろしいとか」
「コイツの力の方がよっぽど意味不明でキモいのよ!」
「なんなのよ」
「光輝闇暗なんちゃら剣とか、光なのか闇なのか意味不明だし!」
「邪王暗黒流ってむしろ魔王が使う技なんじゃないの!?」
攻撃の矛先が僕に向かってフルボッコにされる。
まぁ確かに意味不明なのは認める、だって昔の僕が深く考えずにノリノリで作った物だし。
「……だから」
「クルミはそんな事気にしなくていいのよ」
「文句言う奴が居るかもしれないけれど、私がぶっ飛ばして上げるから」
そう言いながらリナの十八番なドヤ顔が飛び出す。
「ふふっ」
「そうです、永太様が使ってる位なので」
「クルミも安心して下さい」
モモも天使の様な笑顔でクルミに語りかける。
「……」
僕達の反応や態度を伺うクルミ。
「だから……」
僕がそこまで言って、
「「クルミは僕達の仲間だよ」」
僕達三人は声を合わせてクルミに自分達の気持ちを伝える。
「……いいの、かな」
「私も……みんなと一緒に居て、いいのかな」
クルミが泣きそうな声で呟く。
【はい】
【いいえ】
【うんこ】
ここで空気読まない昔の僕が作った選択肢が現れる。
僕はノータイムで選択肢を選ぶ。
→【うんこ】
「うん、これからもよろしくね、クルミ」
デリカシーの無い選択肢を選び無理やり話を繋げ、僕はクルミに手を差し伸べる。
「……はい」
クルミのジト目がウルウルしながら僕の手を取る。
そんなクルミに僕は微笑みかける……と、
「……なんか笑顔がキモい……」
涙目になりつつも微笑んで僕にそう言った。
「ぐふっ!」
感動的なシーンでクルミにキモいと言われたダメージで僕はよろける。
ぁ、あれだ照れ隠しだきっと!
「ね、クルミのなんちゃら力よりこっちのほうがよっぽどキモいでしょ」
リナも笑いながら僕に追い打ちをかける。
「ぐふぁ!」
「ふふっ」
「みんな仲良しですね」
モモが勘違いして上手いことまとめようとする。
「クックック」
モモでも無くリナでも無い、僕でも無ければクルミでも無い笑い声が聞こえる。
「ってか、シャドウにまで笑われてるし!」
不敵に笑っていたのはシャドウだった……というか、
「笑ってるのクルミやん!」
腹話術の要領でシャドウが喋ってる風に見せて、クルミがジト目でニヤけているのがわかる。
笑いものにされるのは不本意だが、クルミに笑顔が戻ったのならまぁいいかなって思った。
「それより……流石にシャドウと一緒に歩くのはマズイかもね」
リナもモモもクルミの影の力を気にしていないとはいえ、他の一般人が居る所ではシャドウは目立ってしまう。
「……大丈夫」
元気を取り戻したクルミがいつもの様にクールに呟くと……
ニュニュニュニュ、
っとクルミより大きかったシャドウが小さくなっていき、まるで魔法少女のマスコット的な大きさになりクルミの肩に乗っかる。
「これで大丈夫だよ!」
なんか声まで高くなり、クルミの肩の上で可愛らしいちびシャドウが喋る。
「カワイイ〜」
その姿を見てモモが叫ぶ。
「ほぅ、可愛らしく……なれるのね」
実はカワイイ物好きな所がある……リナも呟く。
「オイラ共々クルミの事、よろしくな!」
なんてちびシャドウが生意気で可愛らしく喋る。
……なんか、キャラが変わってる気がするが、そもそもちびシャドウとか腹話術設定なんて昔の僕が作ったゲームには入ってないぞ!
このゲーム内の辻褄合わせも結構はっちゃけて来たのかな?なんて思ったりもする。
「まぁ、これで一件落着かな」
なんてまとめようと思ったら、
「なんか上手いこと言ってまとめようとしてるけど、あんた」
「今回全然働いて無いよね」
「最後だけ締めて働いた感出そうとしてもバレてるわよ」
僕があえて触れずにうやむやにしようとしていた事がリナに気づかれている!
確かにこの東の塔で僕は全く活躍していない。
クルミのイベントの件もあり多少意図的ではあるが状況を静観していたのも影響している。
「大丈夫です!永太様は居るだけで心の支えとなりますから!」
モモが何とかフォローしようとしてくれているが、なんか逆にヒモっぽいダメ人間アピールみたいになっている。
「確かにゴブゾウ戦でもやられっぱなしで文句しか言って無かったな〜」
クルミの肩の上のちびシャドウがいらん事を言う。
「……うむ」
クルミもそれに同調する……っていうかそれ腹話術でシャドウに言わせているのはクルミなのでは!?
「こうなったらアレしか無いんじゃないんか?」
ちびシャドウ(クルミの本音)が僕に何か問いを投げかける。
「アレ?」
僕がちびシャドウに聞き返す。
「ほら、みんなの好感度を上げる時に使う黄金色の賄賂だよ」
ちびシャドウがなにやら、いやらしい顔で僕に向かって語りかける。
「グゥ〜〜」
それと同時にどこからともなく轟音が響き渡る。
「……この音、クルミか!」
「ってかお腹空いて食べたいだけやん!」
ちびシャドウをいいように使い、本音を代弁させていたクルミに向かって叫ぶ。
「ふふっ」
そのやり取りを聞いてモモが微笑む。
「そうね」
リナも何か察して謎に同意する。
「みんな頑張ったって事で、お茶会で休憩しますか」
モモがそこまで言って、
「「お茶菓子はよろしくね」」
リナとちびシャドウとクルミが僕に向かってニヤけながら話す。
「くっ」
「くりきんとんか!」
そう、難しい話の時や食事の締めで出していて大好評だったあの和菓子。
【無限くりきんとん】というアイテムに大量の魔力を消費して作り上げるお菓子。
「ぁ、あれ一杯魔力使って疲れるんだよね……」
なんて誤魔化そうとするが、
「大丈夫、ゴブゾウ戦では魔力消費してないでしょ」
サラッとリナに丸めこまれる。
「……くっ」
確かに活躍してなかったし、なによりみんなの食べたい感が凄いので……僕は観念した。
「……うま〜」
「美味しいです」
「相変わらず美味いわね」
「……最高」
オアシスの水場の側でちびシャドウとモモとリナとクルミは僕の創り出したくりきんとんを頬張り、お茶をすすって満足気な顔をしている。
「ってか、ちびシャドウとクルミ!」
「一人で二人分食べてるやん!」
危うくスルーしそうになったが、クルミとシャドウは同じ胃袋なんじゃないんか!?
「まぁまぁ、細かい事は気にするなよ」
「せっかくのピクニックが台無しだぜ!」
なんてちびシャドウが減らず口を喋る。
「……そうそう」
クルミが満足気にくりきんとんを頬張りながら同意する。
「ピクニックじゃ無いし!」
すかさずその減らず口にツッコミを入れる僕。
「器がちっちゃい男はモテないわよ」
リナも合わせて僕にツンドラしてくる。
「ふふっ」
モモがこっちを見て微笑むけど、仲良しじゃないからね!いや!仲良しだけど!
「うき〜!」
なんて僕は叫びながら自分で作ったくりきんとんを頬張る。
「うん、うまい!」
こうして無事?に東の塔の闇は祓われたのであった。




