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ゲーム攻略が拷問と化す世界 〜目覚めたら昔作った中二病全開の自作ゲーム内だった〜  作者: チームつちのこ
七章 塔の影

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35話 影法師

 時は少し前に遡る。


 ゴブゾウが自分の名前をもじったダサげな技を叫んだ辺りである。

「くらえ!このゴブゾウ最大の奥義!」


「ゴブゾーン!」

 



 ゴゴゴォォォォオオォォォォ!


 ゴブゾウを中心に暗い闇が広がり、やがて塔内部の広間全体が暗闇に包まれる。




「ぇ、何よこれ?」

 光も差さない暗闇の中、何も見えない状態でリナの動揺する声が聞こえる。


「真っ暗で何も見えなくなっちゃいました」

 モモが相変わらず丁寧に状況を説明してくれる。



「この暗闇の中何も出来ずに倒されるがいいわ!」

「くらえ!」

 ゴブゾウがそう叫んで反撃を始める。




 ゴスッ!


「うわぁ!」


 ガスッ!


「きゃあ!」


 ドゴォ!


「いゃん」



 暗闇の中、ゴブゾウのタックルの音とみんなの悲鳴が響き渡る。



 その中、クルミだけが攻撃を受けずにいた。

 ゴブゾゾーンをする直前でのリナのグーパン、その反撃の糸口を見出したクルミの攻撃。

 その攻撃は完全に気配を消した上での不意打ちだった。

 実際には間一髪で防がれてしまったものの、その不意打ち自体にゴブゾウが動揺してリナのグーパンに繋がった。


 その時と同じ様にクルミは気配を消していた。

 意図的に姿を隠そうとしたのでは無く、いつもの癖で存在感を普通に消していたのである。


 ゴブゾウも反撃に成功した事もあり、存在感の無いクルミを失念して調子に乗っていた。


 暗闇の中での行動は慣れており、さらには影探知(シャドウサーチ)の能力によりゴブゾウの位置も皆が攻撃を食らっている状態もクルミには認識出来ていた。


 この闇の中ゴブゾウに攻撃し、みんなを助ける事が出来るのはクルミだけだとクルミ本人が一番理解していた。


 ……だが、攻撃に移らないクルミ。


 クルミは迷っていた。


 この暗闇の中みんなを助けるために攻撃に移ることは容易だ。

 だが、それを行うと闇の中で動けた理由やシャドウ自体を皆に晒すことになる。


 かつて幼い頃、影の力が覚醒した時にその力を見た人々が恐れおののきクルミから去って行った事。

 闇の魔力を目にした人達がクルミを迫害した記憶。

 それらが蘇り、クルミの足を止める。



 今までリナやモモにこの影の力を見せた事は無い。

 二人に隠し事をしている後ろめたさはあったが、それ以上に影の力を見せた場合の反応が怖かった。


 魔導師団としてリナと話し、メイドとしてモモと会う。

 その平和な日常をクルミは気に入っていた。


 でもこの影の力を知られたら、その平和な日常が消えてしまうかもしれない。


 今まで見てきたリナやモモの性格からして、クルミの影の力を見ても態度を変えたりしないとは思う。


 でも……


 万が一……


 そんな気持ちがクルミを包み、二の足を踏む。




「あんたのお尻の心配より暗黒四天王(ダークフォース)をなんとかしなさいよ!」

「あの何とか剣とかあるでしょ!」

 リナがそう叫ぶ。



  シュミラクラの森で皆がピンチだったあの時、私がこの影の力で打開しようとした瞬間に勇者である永太がみんなと私の秘密を守ってくれた。


 今回も私の力をみんなに見せなくて済むなら……と永太の方を見るクルミ。




「この暗闇の中じゃ敵の位置がわからないから、おいそれとは使えないよ」

「さっきのリナのお尻タッチみたいに仲間攻撃(フレンドリーファイア)しちゃう」

 そう永太がリナに向かって話す。

 


 確かにこの暗闇の中では敵も味方も分からず、無闇に攻撃すれば味方にも被害が出てしまう。

 クルミの様に暗闇で自由に動ける方が特殊なのだ。



 暗闇の中、ゴブゾウのタックルの音とみんなの悲鳴だけが何度も響き渡る。


「はぁはぁ」

「うへぇ」

 みんな何も見えない暗闇の中、ゴブゾウの攻撃を喰らい続けている。



「もぉ……本当にヤバいわよ」

「どうにかしなさいよ、勇者なんでしょ!」

 元気だったリナも何度も攻撃を受けてヘロヘロになってきている。


 

「ハッハッハ」

「無駄だ無駄だ!」

「貴様らはここで終わりだ!」

 ゴブゾウが超絶イキリ始めて有頂天だ。



「さぁ、トドメだ!」

「くらぇぇぇぇえ!」

 ゴブゾウが渾身の一撃を食らわそうと叫ぶ。


「ちょ、ヤバいわよ!」

「何も見えないし、どうすんのよ!!!」

 リナが動揺する声が塔の中に響き渡る。



 このままでは本当にみんながやられてしまう。

 シュミラクラの森の様に他からの助けは期待できない。

 

 影の力を見せたら二人に嫌われてしまうかもしれない。

 もう楽しかったお茶会も出来なくなるかもしれない。


 クルミはそこでジト目開眼し決断する。

 そもそも二人がやられたらお茶会も出来なくなるし、この国が魔王の手に落ちたらみんなで楽しく食事も出来なくなる。


 私しかこの状況を打開出来ないと言うのなら、私が二人を……この国を、ご飯を守る。



 そう思ったらクルミは自然と体が動いていた。

「ちょ」

「うわぁ!」

「この暗闇の中なぜ見えている!?」

「うぼぉ!」

 暗闇の中で調子に乗っていたゴブゾウに不意打ちをかける。



 陰の調律者No.3シークレットナンバーズ影法師(シャドウ)】のコードネームを与えられたクルミは暗闇戦のエキスパートである。


 たとえそれが究極の引きこもりで暗闇に慣れているゴブゾウだったとしても、シャドウとクルミの二人羽織?二人同時攻撃は防ぎきれない。

「くっ!」

 ガィイイン


「ぐあっ!」

 ゴィィイイン!


 そのシャドウとクルミの攻撃は普段クルミが使っている初歩的な氷魔法単体とは比べ物にならない程の猛攻であった。

 


「……ぐあぁぁぁあぁあ!」

 ゴブゾウと思われる悲鳴が暗闇の中響き渡り、やがて静かになった。


 

 すると暗闇が晴れていき、広間が明るくなっていった。

 急に明るくなって眩しさを感じる。



「……ぇ?」

 リナが何かを見て驚く。


「……あれは?」

 モモも同じ様に呟く。



 明るくなったそこには……



「シャドウ?」

 リナが驚きながらそう言う。


「クルミ?」

 モモも驚いて呟く。



 広間に立っていたのはゴブゾウに致命的な一撃を入れているシャドウ。

 その隣に立っているクルミとシャドウの影が繋がっている。


 ゴブゾウを倒したシャドウとクルミの影が繋がっていて、クルミがシャドウだという事が完全にバレた。




「その影、クルミがシャドウだったんですか……?」

 モモがクルミから伸びる影がシャドウなのを見て、驚きながらも静かに問いかける。



「……そう」

「私は特殊隠密部隊の陰の調律者シークレットナンバーズ、No.3【影法師(シャドウ)】」

 ここまで見られてしまってはもはや隠し通せない。

 そう思い、静かに自分の正体をバラす。


「でもなんで今まで黙ってて……」

 モモがそこまで言って口を止める。



 今までこの力を知っても受け入れてくれたのは特殊隠密部隊。

 それでも私のこの力を恐れ、警戒する様子は感じ取れた。

 影の力、闇の魔力を知ってなお態度を変えずに喋ってくれたのは師匠や陰の調律者シークレットナンバーズなどの同じ闇を抱えている様なメンバーだけだった。



「こんな力……見せられない」

「この影の力は忌むべき力」

「二人の住む光差す世界には無縁の力」

 私の生きてきた世界はいつも影の中だった。

 リナやモモの様な光溢れる世界とは程遠い。

 こんな陰の力で二人の顔を曇らせる必要は無い。



「……だから」

「……さよなら」

 だから姿を消そう。

 大丈夫、また昔と同じ暗い世界に戻るだけだ……。

 そう思いクルミはみんなの前から姿を消した。



 ……なのに


「魔族の血であろうが無かろうが、クルミは私達をずっと助けてくれていた」

「「だからクルミは私達の仲間よ」」

 東の塔の前でリナとモモがそう叫ぶ声が聞こえてくる。


 モモの護衛の任もあったので、姿を見せずにそっと見守ろうと物陰から様子をみていたら聞こえてきた声。



「と、言う事だってさ」

「クルミ」

 リナでもなくモモでも無く、私に向けて話す永太。



 思えば最初に出会った時からそうだった。

 自分の影の力、シャドウに気づいている様な素振り。

 

 私の心を揺さぶるような言動がキモかった。

 さらに私の心を甘い香りのくりきんとんで揺さぶって来る。


 シュミラクラの森の時もそうだ、巧妙に隠していたはずの正体がバレた。

 なのに怖がるのでも無く恐れるのでもなく、ただカッコイイと言って笑いかけてくれる笑顔がキモかった。


 今もそうだ、気配は完全に消していた。

 それなのに私がここに居ることを知った上で叫んでいる。


 キモい。


 ……そんなことされたら、


 期待してしまう。



 私の力を、正体を知ってもリナ、モモ、そして永太はきっと笑って受け入れてくれると……


 クルミの足は自然と歩み出していた。


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― 新着の感想 ―
ぉお❣❣なんだか良いお話ですね❣❣ 戦いの最中にこんなヒューマンドラマがあったなんて❣❣
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