32話 鉄壁のゴブゾウ
「どうやってここまで来たのかは知らないが、ここで会ったが百年目!この暗黒四天王のゴブゾウが砂漠の塵にしてくれるわ〜」
東の塔で待ち構えていたゴブゾウが、昔の僕が入力した安っぽい悪役の様なダサい台詞を話す。
「しかし、ここに来るまでに喰らったトラップダメージの蓄積があるだろう!」
「そんな体でこの鉄壁のゴブゾウに勝てるかな!?」
なんか南の塔で聞いたような台詞を自信満々に喋るゴブゾウ。
どうやって来たのか知らないって言っておきながら、しっかりトラップの事は知っているって辻褄が合ってないやん。
なんて昔の僕の入力した台詞にセルフツッコミを入れる。
すると……
「ほぅ……あんたなのね、あれ考えたのは……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
リナがいつもより凄みのある声で静かに呟く。
「トラップの恨み……」
「百倍にして返してあげるわ!!」
そう言って散々トラップに悩まされ続けたリナのストレスが有頂天に達した。
この流れ……南の塔と同じだし。
「くらいなさぁぁぁい!!」
そう叫ぶとリナはゴブゾウに勢い良く向かって行き、素早く剣を振り下ろす。
ギィィィィイイン!!
「えっ!?」
鈍い音が響き渡り、リナの驚く声が聞こえる。
「フッフッフ」
「その程度の攻撃、この鉄壁のゴブゾウには効かぬわ」
ゴブゾウはその両手に一つずつ盾を持っており、二つの盾でリナの攻撃を防いでいたのだ。
「くっ」
攻撃を防がれて一旦距離を取るリナ。
「この程度ですって……?」
「あんたこそ、どの程度よ!」
リナが良くわからないキレ方をして再びゴブゾウに向かってゆく。
ギィイイン!
ガィイイン!
ゴィィイイン!
リナが何度も攻撃するが、ことごとくゴブゾウの二つの盾に防御される。
「ぅきー!」
リナが猿みたいな声を上げて悔しがる。
「なんなのよ、もぉ!」
「でも守ってもばかりじゃ私には勝てないわよ!」
リナが防御一辺倒なゴブゾウに言い捨てる。
「フッフッフ」
「そうでもないゾウ」
突然語尾にゾウをつけてキャラ付けをし始めたゴブゾウ。
「減らず口を!」
リナが言い返された事に腹が立ったのか、再びゴブゾウに襲いかかる。
ギィイイン!
リナの攻撃がまたもや防がれる……その時、
「シールドバッシュ!」
ゴブゾウがそう叫ぶと攻撃と共にリナが吹き飛ばされる。
ズサァ
「ぐふっ」
「なんなの……一体」
吹き飛ばされ、よろけながらもなんとか堪えるリナ。
「盾は防御だけじゃなく、攻撃にも使えるのだ」
「……ゾウ」
思い出したかのように語尾にゾウをつけている。
「どういう事ですか?永太様」
攻撃していた筈のリナが吹き飛ばされて、よろけている事に不思議がり僕に問いかけるモモ。
「あれは、シールドバッシュ」
僕は指を顎に当ててカッコつけながら喋る。
「シールドバッシュ?」
モモが問い返す。
「そう、盾を使った攻撃方法の一種で」
「盾で相手を吹き飛ばしたりする」
「反撃技だよ」
リナにも聞こえる様に解説役をする僕。
「ぉお、永太様はお詳しいんですね」
「さすが勇者様です」
モモは手放しで褒めてくれる。
「はぁ?盾で攻撃なんてありえないでしょ!」
地団駄を踏みながら、まさかの反撃にリナがまたもやキレ散らかしてる。
「リナ〜、手伝おうか?」
苦戦しているリナに向かって僕は叫ぶ。
「うっさいわね!」
「あんたは黙って見てなさい!」
「モモ、クルミ!行くわよ!」
僕に手伝うなと言っておきながら、モモとクルミの手を借りる所がリナらしい。
なので僕は静かにみんなを見守る。
「ぁ、はい」
「……わかった」
モモとクルミが苦戦しているリナの援護に入る事になり、再び剣を構えたリナにモモが近づく。
「光の女神よ、その加護にて彼の者の力となれ」
するとモモがリナに向かって詠唱をする。
パァァァ
リナの体がほのかに光り、加護の効果が与えられる。
「攻撃力アップよ!」
「これならどう!」
モモの援護を受けたリナが再びゴブゾウに向かって襲いかかる。
ガィィィィイイン!
攻撃力アップの加護があるにも関わらず、リナの攻撃を盾で防ぐゴブゾウ。
「さすが……暗黒四天王って所かしら」
渾身の一撃を防がれたにも関わらず余裕な表情のリナが叫ぶ。
「クルミ!」
「……りょ」
気配を消していたのか、ゴブゾウの側面にクルミが姿を現し叫ぶ。
「氷槍」
クルミの創り出した氷の槍がゴブゾウの側面から襲いかかる。
ギィィィィイイン!
「くっ」
二方向からの攻撃に咄嗟に反応し片方の盾ででリナの剣を、もう片方の盾でクルミの氷の槍の攻撃を防ぐゴブゾウ。
「盾は二つあるのだ!」
「残念だったなぁ!」
ゴブゾウはリナとクルミの連続攻撃を防ぎ、ちょっぴり慌ててたのか語尾にゾウをつけ忘れてる。
「……そうね」
「私の手も二つあるのよ」
「残念だったわね!」
リナはそう言って左手に剣を持ち、ゴブゾウの盾を釘付けにしたまま右の拳を振り上げる。
「ぇ、ちょ」
「まって!」
リナの剣とクルミの攻撃で両手が塞がり、ガラ空きのゴブゾウ顔面にリナのグーパンが振り抜かれる。
ゴィィイイィィィィィイイン!
「……うぼぉあ!」
盾で防げずリナのパンチがゴブゾウの顔面にクリーンヒットした。
ゴブゾウが吹っ飛ばされて壁まで転がる。
普通の女の子のパンチならそんなに大した事は無いが、あのリナのグーパンだ。
しかも攻撃力アップのおまけまでついて、見るからに痛そうである。
しかし騎士なのにグーパンってのも凄いが、その辺りがリナらしいというかなんというか。
「ふん、所詮この程度ってことね」
グーパンした拳を見せつけながらリナは悪役が言いそうな台詞を言って、勝ち誇っている。
「ぉ〜、さすがリナ」
「悪役っぽい」
と僕はガヤっぽくヤジを入れる。
「うっさいわね!黙らっしゃい!」
リナは慣れない江戸っ子みたいなツッコミを入れてくれる。
「まぁ、モモとクルミのおかげよ」
「ありがとう」
ちゃんと礼を言う所が騎士団長っぽくてカッコイイ。
「いえ〜、どういたまして」
「……どってことない」
モモとクルミも慣れた様子でリナに返事を返す。
それにしても息の合ったコンビネーションだ。
モモとリナは幼馴染だし、クルミもモモのお世話?してるらしいのでこの三人凄く仲がいいんだな〜、なんて僕は感心していた。
「……く、くっそぅ」
もう語尾にゾウはつけないのかな?なんて思いつつゴブゾウが悔しがってるのを眺める僕。
「よくもやってくれたなあ!」
「この鉄壁のゴブゾウに傷をつけるとは!」
なんかめっちゃ怒ってる。
まぁそうか、顔面にグーパンだしな。
僕なら可愛らしい美少女にグーパンされたらご褒美で喜んでしまいかねないが……
「……なんかキモい」
そんな僕のニヤついた変な顔を見ていたのか、クルミが呟く。
「うん、いつもキモい」
クルミの言葉にリナが乗っかって来る。
「ぐふっ」
僕はグーパンされてもいないのに謎ダメージを食らう。
「ふふっ」
そのやり取りを見て仲が良いと勘違いしたのか、モモが微笑む。
いや、めっちゃダメージ食らってますよ〜。
なんて思っていると、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「こうなったら……」
「とっておきのアレを出してやる!」
若干無視されて完全に怒っているゴブゾウがなにやら企んでいる。
「……何をするつもり?」
グーパンでご機嫌だったリナも、再び真剣な顔になり剣を構え直してゴブゾウを睨みつける。
「モモ、クルミ気をつけて」
僕の心配もして欲しいな〜なんて思ったり思わなかったり。
そんな事を考えているとゴブゾウが叫ぶ。
「くらえ!このゴブゾウ最大の奥義!」
「ゴブゾーン!」
なんか自分の名前をもじったダサげな技を叫んだ。




