29話 オアシス
東の塔の側まで来ると、今までの砂漠の風景とは打って変わって緑溢れるオアシスが広がっていた。
ひとまず東の塔の周囲を確認してみたのだが、西や南の塔とは違い雑魚ゴブリンの姿は見当たらなかった。
その為、一旦水場のあるオアシスまで戻り僕達は腹ごしらえをする事にした。
オアシスには結構な大きさの水場があり、そこで顔や手の砂を洗い落とす。
「それにしても砂漠の真ん中なのに、こんなに草木が生えてるなんて不思議ね」
リナの言う通り豊かで緑溢れるオアシスである。
「東の塔の力も影響していますから」
モモが東の塔の方を見ながらそう言う。
「塔の力?」
リナがモモに問い返す。
「この東の塔は土や大地の力に満ちているのです」
「砂漠の真ん中なのに緑がいっぱいなのは、その大地の力の影響ですね」
モモはリナにそう説明する。
「……土属性」
クルミも説明するように呟く。
僕が王国騎士団なのにそんな事も知らないの〜なんて顔でリナを見ていると、
「うっさいわね!知ってたわよ、それくらい!」
「あんただって知らなかったでしょ!きっと!」
何も言ってない僕に突っかかって来る。
「フフフ、常識だよこのくらい」
「ここは土属性の塔、南の塔は水属性だよね」
僕はニヤニヤしながらリナを見る。
「そうです、さすが永太様」
モモがいつも通り手放しで褒めてくれる。
「うきー!」
リナがお手本の様に悔しがって面白い。
まぁ、知っていて当然なのだ。
なんせこの世界は昔の僕か作ったゲーム……らしいのだから。
この王国の四方にある塔、それぞれ火水風土と属性が割り当てられているのだ。
ここ東の塔は土や大地の属性、海を渡って行った南の塔は水属性。
いわゆる四大元素と言われているやつで、もはや伝統芸能とも言える定番設定だ。
うん、好きだよねこういう四大元素とか五行とかの属性。
「昔、この塔の力がもっと満ちていた頃はこの辺り一帯豊かな森だったという伝承もある位ですし」
モモは伝承好きなのか嬉しそうに話す。
「へぇ~、じゃあ今は力が弱くなってるって事?」
リナが砂漠を思い出しながら問い返す。
「この塔自体が失われた技術で作られた物をですから、私達はその一部を少し使わせて貰って結界とかを張っているに過ぎないのです」
モモは真剣な顔で話す。
うん、嬉しそうで何よりだ。
「……オーパーツ」
クルミも説明なのか補足なのか呟く。
うん、ロストテクノロジーとかオーパーツとかロマンだよね!
魔法なのに科学的遺跡ってのもアンバランスだが、それがまた良い。
と、昔の僕を褒め称える。
「なんなのよ!そのどストライクテクニシャンとか、オシリパーツとか!」
リナが意味不明な下ネタを喋り始めた。
「リナが意味不明な下ネタを喋り始めた」
「あんた!心の声がダダ漏れだから!」
リナがいつも通りキレ散らかしてる。
「……お腹すいた」
そんなリナを他所にお腹を鳴らしながらクルミが呟く。
「そうですね、難しい話はご飯の後にしましょう」
モモがそう言ってまとめた。
水場の周囲には芝生が生えていて、天然のクッションとなって座り心地が良い。
そこにレジャーシートっぽい物を広げ、みんなで座った。
「じゃん」
モモがお弁当の入っていそうな伝統的なバスケットを取り出し、みんなの前に出した。
もはや完全にピクニックである。
うん、悪くない。
パカリ
モモがバスケットを開けるとそこには、サンドウィッチが入っていた。
「何があるか分からないので片手でも食べられるものを、とクルミが手配してくれていたんです」
モモはそう言ってメイドスキルもある食いしん坊クールなクルミを見る。
「……じゅるり」
クルミがモモのお世話をしていたのではなく、クルミがモモに餌付けされていたのではないかと……ちょっと思った。
「お好きなのをどうぞ〜」
モモがそう言うと、各々サンドウィッチを手に取る。
「ハムチーズね」
リナが取ったのはハムとチーズをサンドしたハムチーズ。
「私のはハニーチーズ」
モモのはチーズとハチミツのハニーチーズ。
「……タマゴサンド」
クルミはたっぷりタマゴのタマゴサンド。
「ツナサラダか」
僕はツナマヨとキュウリが入ったツナサラダ。
「「いただきます」」
みんながそう言うと、僕はサンドウィッチをパクりと食べる。
「うん、美味しい」
控えめに言ってツナマヨは最強だし、キュウリのシャキシャキ感が美味しさを引き立てている。
「やっぱりここは定番のハムチーズが一番よ」
何故かリナが僕に対抗心を燃やしてハムチーズを推してくる。
確かにハムチーズも安定した美味しさがあり、控えめに言って一番だ。
「ハニーチーズも美味しいですよ」
美味しそうな笑顔で話すモモ。
やはり甘い物と程よい塩味のコンビネーションは控えめに言っても最高だと思う。
「……タマゴサンドも素晴らしい」
食べ物の事になると饒舌なクルミ。
確かにタマゴサンドも控えめに言って究極の味だ。
モグモグ
モグモグ
「飲み物もありますよ」
モモが出した飲み物をクルミが受け取り、小さな氷を作って入れた。
「……はい」
「あ、ありがとう」
何だかクルミの対応が優しくなった気がしてニヤニヤしていると、
「……なんかキモい」
クルミがクールなジト目で睨んでくる。
うん、いつも通りだね!
「ぁ〜、冷たくて美味しい」
リナも受け取り、その冷たさに喜んでいるようだ。
「ありがとう、クルミ」
そう言ってモモも受け取る。
こうして僕達はピクニックを楽しんだ。
「……って、ピクニックじゃないわよ!」
先程まで満喫していたリナが、思い出した様に叫ぶ。
「ぁ〜、そうだった〜」
僕がやる気なくリナに返事する。
「……塔に向かう」
クールなクルミが冷静に話す。
「そうですね、ここからです」
それを聞いてモモも真剣な顔になる。
「それじゃあ、行くわよ!」
騎士団長風を吹かせながらリナがみんなを仕切る。
「へ〜い」
さっきまでくつろいでいた重い腰を上げながら、僕は呟く。
というわけで再び東の塔の近くまで来た僕達。
「やっぱり雑魚ゴブリンは居ないみたいね」
周囲を警戒していたリナが皆にそう言う。
東の塔の扉の前に立ち、扉を開けようとするリナ。
「ふんぬ〜、ふんぬ〜!」
リナが面白い声で扉を開けようとする。
「面白そうだねリナ」
僕はイタズラっぽくリナにそう言う。
「うっさいわね!開かないのよ!」
楽しそうにキレ散らかすリナ。
「楽しくないわよ!」
「変な解説つけるんじゃない」
今日もリナは元気で何よりだ。
「それにしても開かないわね」
不満気なリナが呟く。
「開けっ放しだった今までの塔がおかしかったんだよ」
「観光地じゃあるまいし」
僕がリナに突っ込む。
「いや、南の塔は観光地だったから!」
「この東の塔も元々オアシスと塔からの眺めが評判のスポットよ!」
リナが以外な反論をしてきた。
「ほぅ、そうなんだ」
僕の知らない情報が出て来て新鮮な気持ちになる。
「サンドウォームとか居たのに、良く観光客が来れたね」
ここまで来るのに割と大変だった事を思い出し、そう問いかける。
「東の塔が暗く陰った影響ですかね……」
「前は嵐も魔物もそんなに居なかったと聞いています」
モモが親切に解説してくれる。
確かに砂漠前の宿場町からそんなに時間もかかっていない。
本当にどこぞやの砂丘的な観光地なんだ、と僕は思った。
「ホント開かないわね」
「こうなったら……強行突破よ!」
リナが物騒な事を言って腰の剣に手をかける。
「フッフッフ、そんな事をしても無駄だ」
どこからともなく声が聞こえる。
このワンパターンな展開、南の塔でも見た気がする……と思った。
だが、僕はツッコまない。
昔の僕にツッコむ、それはつまり自分にダメージが帰って来る事になるからね!
「我は鉄壁のゴブゾウ、この塔は完全に封鎖した」
「自慢の防壁は貴様ら如きに突破などできぬわ〜」
つまりこの扉は開けれないと詳しく説明台詞を喋る。
「はぁ、どういう事?」
ちゃんと説明してくれたのに理解していない所がリナっぽい。




