25話 チンプンカンプン化
「モモが伝承の勇者を探しに出立した後……」
「魔王軍がこの王都に辿り着く迄に対策を考える必要があった」
国王がそう呟く。
「その件につきましては、私から」
魔導師団副団長であるミアさんがそう言う。
「うむ、よろしく頼む」
国王はそう言ってミアを見る。
「まずは大きく分けて二つの案がありました」
「一つ目は、こちらから撃って出て魔王軍に損害を与え、あわよくば魔王自体を討ち取ってしまう……という案」
僕はミアさんの話を静かに聞いているつもりでも、撃って出るというワードに目を輝かせているのがバレバレのリナをチラ見する。
「二つ目は、王都に籠り籠城戦で時間を稼ぐ、という案です」
ミアさんの言葉に今度はちょっぴり不満気なリナ。
うん、分かりやすい。
「一つ目の案、こちらから撃って出る作戦を行った場合」
「魔王軍との戦力差が問題となりました」
「魔王軍の戦力は確認されただけでも現状、王都で揃えられる戦力の数倍」
「騎士団長の不在もあり、まともに戦ってはこちらの全滅は必死……という状況」
リナの戦力を高く評価している感じで話すミアさん。
「私が撃って出れてば、魔王の首が取れたかも!」
「って事ですね」
リナがいい方に解釈して意気揚々と話す。
「……普通に王都の最大戦力でも勝てる見込みはありませんでした」
「ので、幸いにも無謀な突撃案を主張する強行派もおりませんでしたので無事却下されました」
そう言ってミアさんはリナを軽くあしらう。
「ガーン(涙」
「相変わらずミアさんはキビシー」
珍しくリナがションボリしていて面白い。
「となると残るは二つ目の案、籠城戦」
「結論から言うと、こちらの案も却下されました」
リナのションボリをスルーして話を続けるミアさん。
「籠城戦で時間を稼ぎ、その間に勇者様を見つけ出せればとのかと私は思ってましたが……」
今度はモモが話に参加する。
「確かに籠城戦を行えば、数週間は耐えれる可能性がありました」
「ですが……」
そこまで言ってミアさんは国王様を見る。
「うむ、籠城戦をした場合、攻めあぐねた魔王軍はどうなるかわかるか?モモ」
静かに説明を聞いていた国王が口を開く。
「魔王軍は……」
モモは暫く考え込んだ後、
「……王都を取り囲んだ後、周囲の町や村へ侵略を始める?」
モモが少し恐ろしげな顔で話す。
「そう、たとえ王都を多少の期間守れたとしても」
「籠城している騎士団と魔導師団ではまともに戦う事も出来ず」
「その間、国土は蹂躙される」
「さらに言うなら、勇者殿を探しに出たモモにも魔王軍の手が及ぶ事になる」
「一縷の望みであるモモすら魔王軍の手に落ちる様な事となれば、もはやこの国は終わりだ」
国王が真剣な眼差しで説明をする。
「攻めても、守っても手詰まり……どうすれば」
モモが真剣な顔で悩んでいる、うん可愛らしい。
なんて僕が思っているとリナが、何変な目でモモを見ているのよ!と言わんばかりに睨む。
「そこで第三の案だ」
イケオジな国王の顔に謎の影が入る感じで、さらなるイケオジ化する。
「その案とは……?」
モモが問いかける。
「……その案は」
「王城を魔王軍に明け渡す」
両手を組みテーブルに膝を立てて口元に当てるその様は、まるでどこかのゲンドウ……もとい司令官、いや国王でした。
「「な、なんだって〜!」」
分かりやすく揃って驚いてくれるモモとリナ。
微笑ましいですな。
「どういう事ですか?父さま」
「みすみす王城を明け渡すなど」
モモがそう言って国王に問いただす。
「ふっ、ただで明け渡す訳ではないさ……モモ」
国王なのに悪巧みしている様な顔をしてモモに返事する。
「……?」
国王である父さまのその表情にモモは息を飲む。
「ここからは、私が」
「王城を明け渡す……その作戦を提案したのは私です」
含みのある笑い方をして溜める国王に代わり、魔導師団副団長のミアさんが喋り始める。
「最初聞いたときは私も驚いたよ」
国王が静かにそう呟く。
「攻めても、守っても手詰まり……ならばあえて魔王軍を王城内に引き込み」
「……そして王城そのものを媒介として、魔王軍丸ごと封印し足止めをする」
ミアさんがそう話すと、その内容に皆が驚く。
「魔王軍丸ごと封印って、そんな事可能なんですか?」
モモが驚きながらミアさんに問いかける。
「普通に考えれば……不可能でしょうね」
ミアさんが含みを持たせて返答する。
「いったいどうやって?」
リナもミアさんに向かって問いただす。
「この王国の結界の要」
「コアクリスタルを使ったのです」
なにやら中二病的フレーズが出てきて僕はちょっぴりワクワクする。
「この国の四方にある塔を起点に王国を守る聖なる結界が張られているのはご存知の通りですが」
「その結界は主に外部から魔物など外敵の侵入を防ぐ為の結界でした」
「結界内部にも聖なる光が差している為、多少の弱体効果はあるものの」
「大規模転移魔術と思われる方法でその結界をすり抜け、結界内部に侵入してきた魔王軍への効果は微々たるものでした」
何だか難しい話でリナがチンプンカンプン化し始めていた。
こういった作戦会議ではリナのチンプンカンプン化はよくある事といった風に、ミアさんはリナの事をスルーして話を続ける。
「そこで通常は外からの侵入を防ぐ結界の効果を、反転させて王城に張ることで王城に魔王軍を閉じ込める方法を取ったのです」
ミアさんがそう言ってみんなを見て話す。
「……そんな方法が」
リナとは違いちゃんと話を聞いて理解していたモモがそう呟く。
「ぇ、でも王都民は?そんなうまく王城に誘い込めるの?」
「そもそも王城丸ごと結界って?どうやって?」
チンプンカンプン化していてもそれなりに話を聞いていたリナが、ミアさんを質問攻めにする。
「順を追って話しますね」
リナの質問攻めも慣れた言動であしらい、説明を続けるミアさん。
「当面の問題は王都に住む民の避難からでした」
「魔王軍は北から進軍し、王都に辿り着く迄の期間は数日程度」
「それまでに王都の南側から、出来るだけ多くの人を避難させました」
「避難しきれなかった人や取り残された人などは一時的にシェルターに匿う事で王都を空っぽにしたのです」
そこまで話した所でモモが問いかける。
「シェルター?」
「はい、この地下大聖堂の様な設備が王都の地下にいくつかあり」
「この地下設備、有事の際の避難場所や備蓄倉庫」
「地下大聖堂等として利用されます」
「このミーカワは王都と似た造りをしており、この都市の地下にも同じ様な設備があるのです」
ミアさんが饒舌に話す。
「へぇ~」
この地下施設、下水道と繋がっていたり、なんでこんな広い空間が地下にあるのか細かく考えると意味不明だった。
なぜなら、昔の僕はそんな構造とか機能とか難しい事など全く考えていないから!
適当に合言葉を考えて、思いつきで下水道を歩き、王様と会う場所は広間と自由に作り出しただけの代物である。
なのに、のばらしかりシェルターしかりと辻褄が合わせられている。
なんかゴメン、と僕は適当に作り出した昔の僕に代わって何故か謝った。
「四つの塔と結界の核であるコアクリスタルにより結界が張られていました」
「そこでコアクリスタルの力を使い、王城を起点として結界の効力を反転させたのです」
「王国全土とは違い、その力を王城と言うエリアに収束させるので」
「結界の力は高まり、魔王軍本隊を閉じ込める程の効果を得ることが出来ます」
モモが感心しながら話を聞いている。
「二つ目の問題は王城に引き込む方法」
ミアさんがちょっぴり真剣な顔になり静かに喋る。
「そうよ!どうやって?」
リナが野次馬かガヤ芸人みたいになって来ている。




