16話 シュミラクラの森
橋にからまる大量の木のツタを切ろうとしたリナは、ツタの反撃にあう。
「そのツタを切ろうとしても無駄ですよ」
そう言って街道の木の陰から現れたのは……黒いマントに黒いフード、黒い仮面のシャドウだ。
「どういう事?」
リナが警戒しながらシャドウに話かける。
「ツタは植物、木も植物……つまり木は森に、という事ですよ」
シャドウがまた意味深な事を言っている。
僕はというと先程までクルミが居た場所をチラ見して、居ない事を確認する。
……何故なら、シャドウの正体はクルミだからね。
「なんかよく分かんないんだけど!」
「あんたは敵なの?味方なの?」
リナが剣を突き出して叫ぶ。
「さて……どうでしょうかね」
シャドウになると流暢に喋るんだなぁと思う僕。
「なんかよく分かんないから退治してあげるわ!」
「行くわよ、モモ!クルミ!」
と、深く考えない猪突猛進リナが叫ぶものの、
「あれ、クルミが居ない」
クルミの姿が見えず、一瞬固まるリナ。
目の前に居るシャドウがクルミなので、当然僕らの側にクルミが居ない。
シャドウがそれに気付き一瞬動揺した様に見えた気がしたので、僕は咄嗟にアドリブを効かせる。
「ぁ、クルミはさっきトイレ行くって言ってたよ」
「あの感じはきっと【大】だね」
と、今思いついた言い訳で誤魔化そうとする。
「はぁ?デリカシー無いわね、あんたは!」
「お花摘みとか気の利いた事言えないの!?」
リナがシャドウそっちのけで僕にツッコミ始める。
その隙にシャドウは木の陰に引っ込んで隠れた。
「しかも大って!」
「あんたは乙女心ってもんを……うんたらかんたら!」
リナが相変わらずキレ散らかしていると、スッと音も立てずにクルミが現れる。
「トイレじゃ無いし、大でもない……」
いつもより数段クールな眼差しで僕を視殺しそうな勢いだ。
「ぁ、クルミちょうど良い所に……」
そう言ってリナがシャドウの方を向くも、当然シャドウは居ない。
「……」
「居ないし」
やり場のない怒りが溜まっていたリナは、
「よし、じゃあ代わりにこいつを締めますか……」
リナが怖い目で僕を見てくる。
「わかった……」
クルミも鋭いジト目で僕を見る。
「ぁ〜、と、とりあえず橋の事、村長さんに聞いて見ましょう〜」
ただならない雰囲気にモモが話題を変える。
ナイス!モモ。
「……そうね」
リナはモモの国の騎士団長なのでモモの言う事はよく聞く、ありがたい。
「……そう」
クルミもなんだか村長に聞きに行くことに賛成って雰囲気を醸し出している。
「村長か……」
一転僕は村長に聞きに行く事を少々渋る。
「モモが聞きに行くって言っているのよ!」
「見習いならちゃんとついて来なさい」
なんとなく嫌な予感がしたのだが、リナが騎士団長風を吹かして来るので僕は仕方なく行く事にした。
「ぉお、ようこそいらっしゃいました!」
「閃光の解放旅団の皆様」
村長の家に着くとお髭を生やした、ザ村長という感じの村長が大喜びで大歓迎してくれる。
「シャ……なんだって?」
謎の呼び名で呼ばれて困惑するリナ。
「あなたが閃光の解放旅団のリーダー、光輝闇暗竜炎主の永太様ですね!」
続いて僕も謎の二つ名で呼ばれる。
「で、こちらかお供の御三方ですね」
モモとリナとクルミはアッサリ紹介で流される。
「はぁぁあ!?」
「なんでこいつがリーダーでマスターでシャイニングなのよ!」
リナが相変わらずキレ散らかしている。
「ぇ?そうではないのですか?団員のお方」
リナを一般団員呼びしたのでさらにキレが良くなる。
「はぁぁあ!?」
「こいつは見習いよ!私が王国騎士団長でリーダーでシャイニングよ!」
いや、シャイニングでは無いと思うよリナ。
「で、こちらが癒しと浄化の聖女モモ姫様で」
「こっちが魔導師団のクルミ!」
リナがヒートアップして説明してくれる。
「それで……こいつがシャイニング見習いの永太よ」
何故かシャイニング見習いにされた僕。
というかこの閃光の解放旅団のリーダー、光輝闇暗竜炎主とかいう謎紹介文、昔の僕がノリノリで考えた文なので面と向かって言われると凄く恥ずかしい……。
旅団という名前やレジスタンスって言いたかっただけな感じが照れくさい(汗
さすがにリナのツッコミはこの世界のアドリブの様だが。
「おぉ、そうだったのですかスミマセン騎士団長様」
「それにモモ姫様だったとは申し訳ないです」
騎士団長やお姫様という身分に村長が平謝りしている。
「なるほど、王国騎士団だったのが閃光の解放旅団に変わったのですね!」
また村長がシャイニング勘違いしている様だ。
「いや!変わっていないから!王国騎士団だから!」
リナは相変わらず元気にツッコミに励む。
「大丈夫ですよ、それよりリナ橋の件を」
リナの取り扱いに慣れている様で、ヒートアップリナを落ち着かせてモモが話を変える。
「そうそう、橋にツタがいっぱい生えていて通れなくなっているんだけれど」
落ち着いてきたリナがようやく本題に入る。
「あのツタですね……あれには大変困っておりまして」
「ツタのせいで橋の向こうからの人も物も行き来が出来なくなってしまっているのです」
村長が橋の状況を説明してくれる。
「あれ、でも魔物がいるって噂でしたけど」
モモが昨日の夜に酒場で得た情報を話す。
「そうなんです」
「実はこの村の近くにある森に魔物が現れ、その魔物の影響で周囲の森や橋にツタが伸びてきて大変な事になっているのです」
村長はお髭を手で撫でながら困り顔で説明を続ける。
「なるほどね、その魔物が元凶なのね」
「つまり魔物を退治すればいいってことね!」
リナは退治系のクエストの理解が早い。
「森……そうなんですね、さっきのシャドウの台詞は」
モモが何かに気付いて呟く。
「どういう事?」
リナは説明系の理解が遅い(笑
僕がほくそ笑んでいる事になんとなく気づいてこっちを睨む。
ツッコミ系の理解は早い(汗
「ツタは木、木は森って言っていたので」
「つまりツタの元凶は森にあるとツタえたかったのでは」
「ツタなだけに!」
珍しくモモがジョークを交えて説明する。
「ツタなだけに……上手い!」
リナはモモには甘い、王国騎士団長なだけに。
そんな僕の心を先読みするように再びこちらを睨むリナ。
僕は苦笑いで誤魔化す。
「そう……それ」
静かだったクルミが会話に参加してくる。
つまりクルミがシャドウになって伝えたかったのはそう言う事だったのだ。
なんでわざわざシャドウになって伝えるのかは僕も思い出せていないが、洞窟の案内といい今回の森といいヒントを伝える役割といった所だ。
「それで魔物はどの辺りに現れたの?」
リナが村長に問いかける。
「この村の北にある、シュミラクラの森です」
「どうかお願い致します」
「閃光の解放旅団の皆様」
村長がそう言うと、
「任せて!このシャイニングリナ様に……」
「違う!王国騎士団だから!」
リナがいい感じのノリツッコミしている。
こうして僕達は村の北にあるシュミラクラの森へと向かう事になった。




