13話 智将ゴブニー
「これは……ひっかけ問題」
クルミが冷静なトーンで解説を始める。
「えいた君は青果屋でリンゴを三つ、イチゴを五つ買いました。」
「帰り道でお腹がすいたのでイチゴを一つ食べました」
「家に着いた時、果物は全部で何個でしょう?」
「この問題文」
「個数を問われているのは果物だから」
「リンゴのみの三個になる」
クルミがそう説明をするが、
「ぇ、イチゴは?」
リナがクルミに問いかける。
「イチゴは……野菜だから」
クルミがリナを見ながらそう告げる。
「ぇえ〜?」
「なんで?イチゴはフルーツでしょうに!」
またもやリナがキレ散らかしている。
「イチゴさんは果物じゃ無いんですか?」
イチゴにさん付けするモモは可愛らしいな、と思いながら僕は眺める。
「イチゴは果実的な野菜……」
クルミが解説を続ける。
「はぁ?なにその意味不明な分類は!」
「この問題作った人間はひねくれてるんじゃないの!?」
はい、ゴメンなさい。
昔の自分に成り代わって僕が謝ります。
「さすがクルミは物知りです」
さすがモモ、褒め上手の姫君。
「魔導図書館で色々と本を読んでいただけ……」
モモに褒められて、クルミがちょっぴり照れながら謙遜する。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
問題に正解したので、扉が開き次の階へと続く階段が現れた。
「まったく……」
「さっさと次の階に行くわよ!」
ストレスフルなリナがご機嫌ナナメで進行する。
「は〜ぃ」
モモも空気を読んで素直について行く。
しかし問題文に思いっ切り【えいた】って出ていたのにはヒヤヒヤしたが、誰もツッコまなくて良かったと思う僕であった。
そんな事を考えながら階段を登ると三階に到着する。
この階も再び同じ様な作りで僕達は扉の前に立つ。
ジャカジャン!
出題効果音が流れる。
「今度はどんな問題?」
「変なのだったら許さないわよ!」
段々怒りっぽくなって来たリナが問題犬に向かって叫ぶ。
「第三問」
「ピザって10回言ってみて」
凄い定番の奴が来た!と僕は心の中で思った。
「ぇ、えぇっと……」
「ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ!」
リナが素直にピザ、と10回言っていてちょっと微笑ましい。
「ここは?」
目の前に肘が表示される。
「ひざ!」
もはや様式美の様にリナがひざ、と答える。
ゴィィイイィィィン!
そして当たり前の様にタライがリナの脳天を直撃する。
「うきぃぃいいぃぃい!」
リナが顔を真っ赤にして激怒する。
なんか可愛らしい。
「答えは……ひじ」
クールにクルミが答える。
「なるほど〜」
モモが感心している。
いゃ〜、微笑ましいですな。
なんて思っていると、
ピンポン、ピンポ〜ン
正解の効果音が流れ、扉が開き次の階へと続く階段が現れる。
「なんなのよ!もぉ〜!」
どんどんリナのストレス値が上がっていっている気がする。
しかし、本当にこの智将は小学生並みですな。
僕は謎のダメージを自分に受けながら次の階へと上っていく。
次は四階、再び僕達は扉の前に立つ。
ジャカジャン!
「第四問」
「パンはパンでも食べられないパンは?」
また定番なぞなぞが出て、昔の自分は相当ネタ切れなんだろう感が凄いなぁ〜と思う僕。
【フライパン】
【残飯】
【パンツ】
【最後の審判】
と四択の選択肢が出てきた。
「全部食べられないわよ!」
リナが選択肢にツッコミを入れる。
「新鮮な残飯なら食べられるかもしれない……」
クルミが冷静にとんでもない事を言う。
「いや、ダメだから!」
「お腹壊すから!」
リナが優しい事を言う、いや当たり前か。
「パンツは……食べられ……ませんね」
モモもとんでもない事を言いかけるが、思い留まってくれた。
「モモはお姫様だから!そんな事言っちゃダメだから!」
リナがツッコミで大忙しである。
「っていうか、【最後の審判】ってなによ!意味不明なんだけど!」
「いや、全部意味不明なんだけれど!」
ツッコミって大変だなぁ、などと思いながら生暖かい目で見守る。
「あんたもちゃんと考えなさい!」
ツッコミの矛先がこっちにまで飛び火してきた。
「じゃあ、僕がいくか……」
そう言って僕は【最後の審判】を選択する。
「何勝手に選んでいるのよ!」
リナが僕の行動に驚いて怒ってくる。
「ぁ、また不正解でタライが降ってくるのね!」
急いで頭を抱えるリナ。
「……」
「……?」
ピンポンピンポ〜ン
「なんで正解なのよっ!」
正解してもブチ切れるリナ。
ツッコミって大変だなぁ。
正解の効果音が流れたので、扉が開き次の階へと続く階段が現れる。
「ハァハァ」
「もぅ、一体なんなのよ!」
リナが連続ツッコミで息が上がってきた。
「さぁ、行くよリナ〜」
僕がリナにそう言うと、
「うっさい!見習いのくせに〜!」
地団駄を踏みながら階段を上っていくリナ。
そんなこんなで僕達は五階へと到着した。
「ここが最上階、ですね」
五階の様子を見てモモが呟く。
五階は今までとは違い大きな扉は無く、広間の奥にはゴブニーが見える。
「くっ、よくぞここまで登って来たな」
「まぁ、褒めてやろう」
ゴブニーが噛ませ犬みたいな台詞を言い始めた。
「だが、ここに上がって来るまでに喰らったタライダメージの蓄積があるだろう!」
「そんな体でこの智将ゴブニーに勝てるかな!?」
暗黒四天王のゴブニーがやけに自信満々に吠える。
だが……
「ほぅ……あんたなのね、あれ考えたのは……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「タライの恨み……」
「百倍にして返してあげるわ!!」
そう言って、リナのストレスが有頂天に達した。
「覚悟しなさい!!」
剣を振りかざしゴブニーに突撃するリナ。
「え、ちょ……」
「タライの蓄積ダメージは……?」
智将ゴブニーとやらが、ものすごい形相で襲いかかって来るリナに思いっ切り怯む。
「私のタライの蓄積ストレス!!」
「喰くらいなさぁぁぁぁあぃいい!!」
ズシャァアァァァアアァァァァァァァアッ!!
「ゔぶぉぇえぇえぁあ!!」
と言った感じでアッサリ倒された智将ゴブニー。
「ふぅ、ふぅ……」
「どうよ!あんたの力も借りずに暗黒四天王」を倒したわよ!」
興奮気味のリナが僕に向かって叫ぶ。
「ぁ、うん」
「さすがリナ、素晴らしい!!」
リナの凄まじいストレスパワーで智将ゴブニーを瞬殺してしまった。
さすがは王国騎士団長様だ。
僕の光輝闇暗炎竜剣の出番が無かったが、使わずに倒せればそれにこした事は無い。
なんてったってついこの間、力加減間違えて洞窟の天井を破壊してしまったし(汗
さらには興奮している怒りの矛先がこっちに向かないように気をつけながら、リナを褒める。
「凄いです〜リナ」
モモは素直にリナを褒めちぎる。
「力こそパワーよ!!」
剣を振りかざし満足気に叫ぶリナ。
頭ばかり使ってよっぽどストレスが溜まっていたんですね〜。
「あとは、浄化を」
クルミがモモに向かってそう告げる。
「ぁ、そうですね」
モモはそう言って黒く輝くクリスタルに向かって手をかざす。
するとモモから出た光が徐々に闇を浄化していき、クリスタルは明るい光に変わっていった。
「これでここの塔の結界は大丈夫です」
そう言ってモモは一息つく。
「さすがモモ、治癒と浄化の聖女ね」
リナが僕をドヤ顔で見つめる。
「ありがとう、モモ」
何はともあれこれで南の塔もクリア出来たかな、とリナの落ち着いてきた顔を見ながら胸を撫で下ろす僕であった。




