12話 南の塔
ジャカジャン!
突然広間に大きな効果音が流れた。
「第一問!」
効果音の後、突然喋り出した狛犬っぽい像。
「はぁ?」
突然の不意打ちにリナが変な声を上げる。
「どういう事?」
状況を理解出来て居ないリナが喋り出した狛犬っぽい像に向かって叫ぶ。
「この塔を登る為には知力が必要なのだ!」
「上階に上がる階段には力で壊すことの出来ない扉を設置しておいた!」
「これが智将ゴブニーの力なのだ!」
広間に暗黒四天王ゴブニーの声が響き渡る。
「果たしてお前らに登ってこれる知力があるのかな」
「ハッハッハ〜!」
再びゴブニーが丁寧に説明してくれる。
うん、優しいのかもね。
「な、なんですって〜」
先程まで「力こそはパワーだ!」と息巻いていたリナには寝耳に水の試練だ。
「あの像が問題を出すみたいです」
モモが像を指差しながら話す。
「……知力」
クルミが冷静に状況を分析してる。
ジャカジャン!
改めて効果音が流れる。
「第一問」
「朝は四本、昼は二本、夕は三本。これは何か?」
扉の前にある狛犬っぽい像が、問題を出すと同時に目の前にモニターの様な感じで大きく表示される。
「ぇ?何?」
リナが問題を見て考え込む。
「何でしょう……?」
モモも一緒に考える。
「朝…昼…夕…」
クルミも同じく考えている。
僕はみんなを生暖かい目で見守る。
ちなみにこの問題、四択です。
【辞書】
【人間】
【イカの足の数】
「何?どういう事???」
突然現れる選択肢に驚くリナ。
四つめの選択肢は……
【食後の、んまい棒の数】
この問題、いわゆるスフィンクスの問題である。
当然答えも分かっているが、腑に落ちない点がある。
当時小学生だった僕は、この扉の前にある像をスフィンクスのつもりで設置したのだが、
「スフィンクスじゃ無くて狛犬じゃん!」
扉の前にある二体で一対の狛犬っぽい像についツッコミを入れてしまう僕。
「……狛犬じゃないし」
するとその像が返事をした。
「え?じゃあスフィンクス?」
僕が問いかけるとその像は答えた。
「ここは南国だからシーサーだ!」
その像が何故か自信満々に説明した。
「スフィンクスでも狛犬でも無くシーサーかよっ!」
ゲーム内でそんな台詞設定した覚えがないのだが、本人?本像が言うのだからそうなのであろう。
「あんた、さっきから何言ってるの?」
僕とシーサーのやり取りにリナが参加してくる。
「ぇ、だって」
「シーサーだよ?」
僕も段々何言ってるか意味不明になって来た。
「シーサーだろうがシーソーだろうがどっちでもいいわよ」
「あんたも考えなさい!」
そう言ってリナは再び考え込む。
「……本って言っているから、イカの足の数ね!」
「間違い無いわ!」
謎の自信で言い切るリナ。
「本って事は、辞書かもしれませんよ」
モモもひとしきり考えた後に話し始める。
「んまい棒、美味しそう……」
クールなはずのクルミのキャラが食いしん坊になりつつある。
それよりこの世界にも、んまい棒が存在しているのかと僕は思った。
まぁ、それより、
「答えは【人間】だよ」
僕はありもしない眼鏡を上げる動きをしながらそう告げる。
「え、なんでよ?」
「なんであんたにわかるのよ!」
リナがなんか怒りながら僕を睨む。
リナのツンツン具合に慣れて来た僕は、話を続ける。
「朝、昼、夕は人間の一生を表していて」
「朝は赤ん坊で、ハイハイするから四足歩行」
「昼は成長して二足歩行」
「夕は年老いて杖をついて歩くから三足歩行」
「……だから、答えは【人間】だ!」
僕はそう言って【人間】を選択する。
「……ピンポン、ピンポ〜ン」
正解の効果音が流れる。
まぁ、昔の自分が作った問題なので答えられて当然なのだが。
「素晴らしいです!永太様」
リナと違ってモモは凄く褒めてくれる、うん嬉しい。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
すると二階へと続く階段の扉が開いた。
「なんだか腑に落ちないけれど……」
「とりあえずこれで二階へと進めるみたいね」
リナが開く扉を見ながら説明してくれる。
「それじゃあ行きましょう」
モモがそう言うと僕達は二階へと続く階段を上っていった。
階段を登りながら僕は考える。
この世界は昔小学生だった僕が作ったゲーム【エイタークエスト】の様なので、大体の話の流れは覚えている。
けれども細かい部分、南の塔で言うと問題の詳細とかまでは覚えていないのよ。
まぁ、昔の自分(小学生)が作った問題なので凄い難問とか無いだろうし、問題を聞いたら色々思い出すでしょう。
などと楽観的に考えながら階段を登ると塔の二階へと着いた。
二階といっても一階と構造は一緒で、広間があり次の階へと続く階段の前には再び扉と狛犬っぽい像がある。
あ、狛犬じゃ無くてシーサーか。
僕達四人が扉の前に立つと、またもや効果音が鳴る。
ジャカジャン!
「また出たわね!問題犬」
なんかリナが勝手にシーサーにあだ名を付けている。
「問題、出ますよ」
モモは緊張しているようだ。
「うん」
うん、クルミはずっとクールだね。
「第二問」
「えいた君は果物屋でリンゴを三つ、イチゴを五つ買いました。」
「帰り道でお腹がすいたのでイチゴを一つ食べました」
「家に着いた時、果物は全部で何個でしょう?」
といった感じで第二問が出題された。
なんだか小学生の算数の問題文みたいだが、このゲームを作った自分は当時小学生だったな〜と自分で納得した。
「これは簡単ね!」
「リンゴ三個にイチゴ五個を足して八個」
「一個食べたから、八個から一個引いて……」
「答えは七個よ!」
リナが脳をフル回転させて答えを捻り出した。
「凄い、リナが計算してる……」
僕が謎に感心すると、
「うっさい!この位の計算、私でも出来るわよ!」
リナが相変わらずキレ散らかしている。
「リナ、凄いです〜」
モモは相変わらず褒め上手だ。
しかし、小学生並みの計算問題で智将って……。
昔の僕が小学生だから当然と言えば当然なんだけどね。
ブブーーーー!!
不正解の音が響き渡る。
「えぇ〜!なんでよ!」
頑張って計算したのに不正解で、リナが激怒する。
「なんででしょう?」
「計算は合ってそうですが……」
モモが表示されている問題文を見ながら首を傾げたその時、
ゴィィイイィィィン!
鈍い音が部屋に響き渡る。
「えっ?」
モモが音のした方向を見ると……
「いっっったぁぁぁあ!」
リナが頭を抱えてうずくまっている。
「どうしたんですか、リナ?」
モモがうずくまっているリナに近づき、声をかける。
カランガラン
リナの側で鈍い音を立てて転がっているのは……
タライ!
「なんで、タライが降ってくるのよ!!」
再びリナがキレ散らかしている。
「不正解の時のペナルティだよ!」
狛犬的なシーサー、改め問題犬が解説してくれる。
「なるほど」
クルミが冷静に状況を把握する。
「さぁ、不正解だとこういうペナルティがあるよ〜」
問題犬が引き続き説明してくれる。
「……なんか、腹立つ喋り方ね」
「イタタ……」
タライの直撃した頭をさすりながらリナが呟く。
ジャカジャン!
「再び第二問」
「えいた君は青果屋でリンゴを三つ、イチゴを五つ買いました。」
「帰り道でお腹がすいたのでイチゴを一つ食べました」
「家に着いた時、果物は全部で何個でしょう?」
といった感じでもう一度、第二問が出題された。
「ぇと、計算は合ってそうなのに何故不正解だったのでしょう」
モモが首を傾げながら悩む。
「もぅいいわ!扉をぶち破れば問題なんて関係無いでしょ!」
リナが物騒な事を言って剣を抜く。
「……待って」
問題文とにらめっこしていたクルミが何かに気付いた様だ。
「答えは三個……」
クルミが確信したような顔で答える。
「……」
「……ピンポン、ピンポ〜ン」
正解の効果音が流れた。
「ぇえ〜、なんで!?」
正解したのにリナが不満を露にする。
「これは……ひっかけ問題」
クルミが冷静なトーンで解説を始める。




