11話 離れ小島
翌朝僕達は港に向かい、町長に教えられた場所に着く。
すると近くの船から声がする。
「ゔぁんたらか、リヴァイアサンを退治してくれたのは」
そう言ったのは、この町に来てリナが最初に声をかけた漁師だった。
「ありがとゔな、あの海の魔物にはほとほと困っていたんだ」
相変わらず南方訛りで喋る漁師さん。
「まだまだ、これからが本番よ」
リナはそう言って遠くに見える離れ小島を見つめる。
そこには南の塔が見える。
「……あれが南の塔」
元は王国を守る結界として光り輝いていたのだろうが、今は見る影もなく黒い霧に覆われている。
「やるわよ!あの塔の光をを取り戻すんだから」
リナがモモを元気づけるように叫ぶ。
「ですね」
モモもリナに元気を貰って微笑み返す。
「クルミも見習いも行くわよ!」
リナはそう言ってクルミと僕の方を見る。
「うん」
クルミはクールに返事する。
「ぇと、見習いって僕の事かな?」
わかっていてあえてリナに聞き返す。
「あんた以外に誰が居るのよ!」
リナは相変わらず僕にツンケンする。
が、なんだか昨日よりは棘が少ない気がした。
「町長に頼まれたからな、ゔちの船で島まで送るよ!」
そんな僕達に向かって漁師が威勢良く叫ぶ。
「ありがとうございます、助かります」
モモが漁師に向かって丁寧にお礼を言う。
「「ありがとうございます」」
僕とリナとクルミもつられてお礼を言う。
「どゔってこと無いさ!」
「リヴァイアサンを退治してくれて、近海の漁は出れるよゔにはなったが」
「南の塔があのままじゃ、危なっかしくてゔかゔか寝てもいられないしな」
「頼んだぜ!意気の良い姉ちゃん!」
漁師はリナが王国騎士団長とは知らない様だが、リナの気っ風の良さに惹かれたみたいだ。
「まかせて!」
リナも元気良く返事をする。
僕達は漁師さんの船、【紫勝丸】に乗り込む。
「さぁ、出航するぜ!」
漁師さんの声が海に響き渡った。
ザゥアァァァァッ
こうして僕達は南の塔のある離れ小島へと向かった。
途中で海賊のヴァイキングが襲って来たり、海賊の頭領ヴァッカスとの激しい戦い等があったりもしたが、置いておこう。
程なくして僕達は離れ小島へと到着する。
「気を付けてな、姉ちゃん達」
漁師が元気良く僕達を見送る。
そんな漁師さんに手を振り、僕達は南の塔へと向かう。
この南の塔がある離れ小島。
小島といっても結構な大きさがあり、黒い霧に覆われる前は南の島のヴァカンスを楽しめるリゾートヴィレッジでもあった。
海辺の近くには宿屋が何件もあり、観光地として賑わっていたのだが今は大半の島民が二ヴァーンの町に避難しているとのこと。
その為、建物にはひとけが無く静まり帰っていた。
「早いところ、塔の光を取り戻さなきゃね」
町の静まり返った様子を見てリナが呟く。
「……はい」
モモも静かだが力強く返事する。
「こっち……」
南の塔への立て看板を見つけたクルミが、看板を指差しながら呟く。
「塔までの案内看板があるなんてなんて親切なんだ、まるで観光地みたいだ」
看板を見て僕がそうつぶやくと、
「いや!元々観光地だから!」
リナが直ぐ様ツッコミを入れる。
ボケてすぐツッコミを入れてくれるなんて、リナもちょっぴり優しくなったかな〜と思う僕。
「ふふっ」
そんなやり取りを見て少しモモが笑い、僕は微笑み返す。
これで少しは重い空気が和らいだかな
なんて事をしながら看板の指し示す方向へ歩いて行くと、やがて南の塔が見えてくる。
近くで見てもうっすらと黒い霧に覆われていて、どことなく暗い雰囲気が漂う。
周囲を確認すると、西の塔の時と同じく雑魚ゴブリンが徘徊していた。
雑魚ゴブリンに見つからないように木陰に隠れて僕は作戦を考える。
「西の塔より敵の数が多いな……、猪突猛進で行くわけにもいかないし、ここは慎重に行こう」
そう言った矢先、
「私にまかせなさい!」
リナがまさに猪突猛進で雑魚ゴブリンの群れに突っ込む。
「ぇえぇえ!まじか」
まさに猪かと思うぐらいの勢いで突撃してゆくリナを見て、僕は変な声を上げる。
ズバァッ!
バサァッ!
まぁ姫様の守護騎士団長なだけはある。
雑魚ゴブリンをバッサバッサと倒していくが、思ったより数が多い。
「くっ、まだまだ」
なんて言ってはいるものの段々捌ききれなくなってくる。
「モモ、クルミ援護するよ」
僕はモモとクルミにそう言ってショートソードを構える。
「はい」
「うん」
モモとクルミも戦闘態勢に入る。
「光の女神よ、その加護にて彼の者を護りたまえ」
モモがリナに向かって詠唱をする。
パァァァ
リナの体がほのかに光り、加護の効果が与えられる。
「ありがとう!モモ!」
リナがモモに向かって叫ぶ。
「氷槍」
素早く詠唱し、クルミの手の先から出た何本もの氷の槍が雑魚ゴブリンに向かって飛んでゆく。
ズガガガガッ!!
何匹ものゴブリンに氷の槍が直撃し倒れる、それを見た他のゴブリンも怯んだ。
その隙を見逃さずリナが怯んだゴブリンに切りかかる。
ズバァァァァッ
ズシャァアッ!
「……ふぅ」
リナの猪突猛進と僕達の連携によって、塔の周りに居た雑魚ゴブリンをあらかた片付けた。
「まぁ、こんなものね」
リナがドヤ顔で僕を見る。
「割と危なっかしかったけどね」
僕はボソリと呟く。
「うっさいわね!ちゃんと倒したからいいじゃない!」
「力こそパワーよ!」
再び僕に向かってドヤ顔を決める。
「ふふっ」
リナの猪突猛進を見慣れているのか、僕とリナのやり取りを見てモモは笑う。
「いつもどおり」
クルミもクールに反応する。
「さてと……」
「なにが出るかわからないから、気を引き締めて行くわよ!」
そう言ってリナは南の塔の入り口を見つめる。
「何が出ても突撃するんだろうな……」
僕がボソリと呟いたのを見逃さず、
「……何か言った?」
相変わらずツンツンして僕を睨む。
僕は苦笑いしながら先陣を切るリナについていった。
「……これは」
塔に入ると西の塔の時とは違って、大きな広間が広がっていた。
塔の上階に上がる階段があるであろう場所には大きな扉があった。
「これじゃあ上に行けないわね」
「って事は扉をぶち破ればいいのね」
リナがまた物騒な事を言い始めた。
スチャ
リナが剣を構えて本当に扉を破ろうとしたその時、
「フッフッフ」
どこからともなく声が聞こえてくる。
「誰!?」
リナが声のする方向を探りながら周りを見渡す。
「我は暗黒四天王のゴブニー」
その声は広間全体から聞こえてくるようだ。
「暗黒四天王!ここで会ったが百年目!」
「あんたもゴブイチと同じ様に倒してあげるわ!」
「姿を現しなさい!」
リナはちょっぴり嬉しそうに叫ぶ。
なんだかリナは噛ませ犬っぽい台詞が良く似合うな〜と生暖かい目で見守る。
キッ
僕のそんな視線に気付いたのか、こっちを見て睨んでくる。
「フッフッフ」
再びゴブニーが喋り始める。
「ゴブイチを倒したぐらいでいい気になるなよ」
「奴は暗黒四天王の中でも最弱」
「な、なんですって!」
もはや形式美ともいえる四天王二人目の定番最弱台詞、それに素直に驚いてくれるリナ。
なんだか微笑ましいな、なんて僕は思っていた。
「我は力だけのゴブイチとは違う」
「智将ゴブニーの実力とくと見よ!」
そう叫んだと思うと、扉の手前に設置されていた二体で一対の狛犬っぽい像の目が光った。
「我を倒したければ塔を上がって来るがいい」
「お前らに出来たらの話だがな、ハッハッハ!」
ゴブニーがまるで悪役の様な台詞を放った。
まぁ、悪役なんですけどね。
「像が動く……?」
モモは目が光った像を見て呟いた。
「来るわよ!」
リナがいつもの台詞を言って剣を構える。
リナとモモ、クルミに緊張感が走る。
が、僕は剣も構えず生暖かくみんなを見守る。
「……?」
「襲って、来ない?」
クルミが全然動かない像をみて口を開く。
ジャカジャン!
突然広間に大きな効果音が流れた。
「第一問!」




