10話 ヴィーナスの入り江
なんやかんやあったものの、魔物を退治する事が出来た僕達はヴァルハラの洞窟から脱出した。
洞窟から出るとヴィーナスの入り江が広がる。
「ふぅ〜」
「ここまで来れば安心」
そう言って僕は一息つく。
パァァァ
リナに向かって手を当てて魔物との戦いの傷を癒してくれているモモ。
さすが浄化と癒しの聖女である。
「よし、ありがとうモモ」
モモの治癒の力で立ち上がり、歩ける程に元気になったリナがお礼を言う。
「まったく……」
「もうちょっとで土の中に生き埋めになる所だったんですけど〜」
ファヴニールを倒す際に、勢い余って洞窟の天井まで破壊してしまった僕に向かって鋭い目で睨むリナ。
「ぁはは……」
そんなリナを見て苦笑いする僕。
ゲーム内ではどんなに大技を使っても何の影響も無いが、ここでは色々と違うので使い方をちゃんと考えないと。
そんなふうに考えを巡らせていると、
「まぁ、でも」
「……ありがとう、助けてくれて」
リナがボソリと呟き照れ隠しなのか、プイと横を向くリナ。
「……ん?」
珍しくお礼を言った事にちょっぴり驚きリナを二度見する僕。
「あ!でも」
「三匹いた魔物の内、あんたが倒したのは一匹だけだから!」
「私は二匹倒しているから私の勝ちよ!」
すぐにいつものリナの調子に戻って、まくしたてるように喋りなぜか勝利宣言するリナ。
「ぁ、うん……そうだね」
反論すると面倒そうだし、実際リナの方が多く戦っていたから僕は素直に認める。
「……まぁ、助けてもらったのは確かだし」
「騎士団見習いにはしてあげるわ!」
「きっちり働きなさいよ!」
僕を指差しながらリナがそう言い捨てる。
勇者なのに騎士団見習いになってしまったが、いいのだろうか。
「ふふっ」
そんなリナを見てモモが微笑む。
モモも笑ってくれてるって事で、あまり深く考えない事にして僕もつられて微笑む。
ちょっぴりリナの顔が赤かった気がするが、入り江から照らす夕日のせい……かなと思うことにする。
グゥ〜
どこからともなくお腹の鳴る音がする。
「リナ、お腹すいたの?」
僕がそう声をかけると。
「私じゃないわよ!」
「デリカシー無いわねあんたは!」
僕に向かってリナがプンスカ怒る。
「……」
音のした方向を見るとクルミが居て、スッと顔を背ける。
お腹の音はクルミかな。
「……そろそろ町に戻る」
夕日で顔が赤く染まっているクルミがボソリと呟く。
「そうですね、魔物も退治出来た事ですし」
モモが嬉しそうに返事する。
「じゃあ行くわよ、ボーッとしていたら置いていくわよ」
すっかり元気になったリナが団長風を吹かせて仕切り、二ヴァーンの町へと歩き始める。
モモもクルミもリナの後を追う。
「ほ〜ぃ」
僕は気の抜けた返事をして皆についていった。
二ヴァーンの町に戻って来た頃には日もすっかり暮れていた。
とりあえず魔物退治の報告をする為に町長の館へと向かう。
僕達は町長の館で今までの経緯を説明する。
「二ヴァーンの町長、ヴィーナスの入り江にあるヴァルハラの洞窟でリヴァイアサンと戦ったんだけどヴァンパイアが出てきたりファヴニールが現れたりと……」
なんてリナが説明していたのだが、途中で……
「ヴが多すぎて下唇噛むわ!」
一人でキレ散らかしていた(笑
うん、なんかごめん。
昔の僕に代わって今の僕が、心の中でリナに謝っておいた。
説明を終えた僕達は再び町長の用意してくれていた宿屋へと向かう。
「とりあえずリヴァイアサンを倒したし、船は準備してもらえる事になったし」
「これで南の塔のある離れ小島に向かえるわね」
キレ散らかしてスッキリしたのか、ちょっぴりご機嫌なリナ。
「そうですね」
リナが元気になって嬉しそうなモモが相槌を打つ。
「うん」
クルミはいつだってクールに答える。
そんな話をしながら僕達は宿屋へと向かった。
宿屋にはファンタジー定番の酒場兼食堂が併設されている。
クルミのお腹も鳴っていたので、そこで晩御飯を頂く事にした。
リヴァイアサン(その他二匹含む)を倒したものの、未だ南の塔は暗い闇に覆われている。
こんな状態では漁に出れない為、港町二ヴァーン名産の海鮮はまだお預けである。
とは言えパンやスープ、肉料理もそれなりにあったので
美味しい晩御飯となった。
「ごちそうさま」
そう言えばクルミ、ちっちゃくて可愛い感じなのにご飯は結構食べるんだな〜と、そんな事を思い出しながら僕は宿の部屋へと向かう。
部屋のベッドに横になるとすぐに眠気が襲ってくる。
「ふぁ〜、明日は南の塔か〜」
「南の塔ってどんな感じだったかな〜」
と、自分が昔作ったゲームの内容を思い出そうとするが、
グゥグゥ……
いつの間にかグッスリと眠ってしまった。




