8 後日
学校の窓から、外を見る。
昨日受けた傷はもう治ってはいるもののジンジンとした痛みは依然として残っている。
昨日の一件の直後、魔導国は帝国からの工作行為に対し外交ルートでの抗議をしてきたものの、確認された工作員が既に亡くなっている人物であること、また、証言しているのが一人であり、その証言にも不確実な点が多々あることから、魔導国内の反体制派の仕業ではないかという結論に落ちいた。
帝国内においても俺達について知っているのはごく一部のもののみであり、作戦の詳細についてはクラウスに一任されているので、実際帝国にとってみても今回の一件は寝耳に水だったわけだが。
それでも、両国間の緊張を大きく高める出来事となり、戦争への歩みを大きく進めていることは明らかだった。
「お前に落ち度はない」
帰還して早々、クラウスは俺にそう言った。
実際、あの状況では精いっぱいのことはしたし、俺にしては上出来な結果だったと言える。
「あの時、死ぬ気だったろ。俺もレイナも軍人である以上作戦を第一に考える必要がある。だからこそ、お前だけはお前の命を優先してくれ。」クラウスはそうも告げた。
死ぬ覚悟はできているはずだった。国を、あいつらを、あの場所を守るためなら命を懸けられる、そう思っていた。それでも、あの時考えたのは明日の学校のことだった。スバルの、ギルの、そしてフランの顔だった。命を懸けるための理由が、命にすがる理由になっていた。
朝日を浴びる校庭を眺めながら、そんなことを考える。
上級騎士ルル・マグゼル。
若干22歳にして上級騎士に任命され、今では第4騎士団の副団長にまで上り詰める。
「だーかーらー 小柄な方は顔も何となくしか覚えてないですよ。」
狭い部屋の中で、数人の調査官を相手に聴取を受けている。
「もう一人の方ははっきり覚えてるのにか?」目の前に座る陰気そうな調査官が尋ねる。
「覚えてるっていうか、あれはクラウス・バーテミアスで間違いないです。」
「でもねぇ、奴は先の大戦での死亡が確認されている。」
「知ってますよそんなこと。でも間違いないです。戦闘資料は擦り切れるほど見てますし、何よりあの圧力。たまんなかったなぁ」
「それは俺よりもか?」
傍らで話を聞いていた男が割り込んでくる。第4騎士団の団長を務める男。
「まず間違いなく」ルルは考える間もなく即答する。
「面白い」
長い取り調べが終わり、ようやく解放されると、ルルは男と一緒に廊下を歩く。
「そういやあの手紙何が書いてあったんです?」
「極秘事項」
「だがな、時代が動くぞ。」




