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34 交流会

「どうだった?」

俺と監察官の2人、レオとセレナ。ついでにレイナは一つの部屋に集まっていた。

部屋の内装は俺達の部屋と変わらない。唯一の差は部屋に置かれたベッドの数が一つであることのみ。

―――こいつらは個室かよ

なんてことを考える。

部屋に集まったのは今日の報告のため。

既にフォーラム初日はつつがなく終了し、もうすでに日が落ちようかとしている。


「その前に、この人はここにいてもいいの?」

セレナは不満げにレイナを指さす。

突然話を振られ、レイナがびくりと肩を跳ねる。

そんな彼女に代わり俺が口を開いた。

「口は固い」

俺はそう言うが

「そんなん関係ない。部外者は部外者でしょ。」

ぴしゃり、と切り捨てるような言い方だった。

そこに、

「いや、いてもらって構わない」

レオがはっきりとそういうと

「あっそ」

セレナはそう言い引き下がる。

依然として不満はある様子ではあったが。


現時点でもターゲットと魔導国側の接触はあるにはあるのだが、それだけでスパイと判断することは出来ない。

というより、スパイはそういった人間に成りすますことが多い。

関わる人間が幅広く、敵国との接触にも違和感がない人間。

情報の受け渡しや、自国の機密へのアクセスを自然に行える環境にいることが多い。

俺たちがここで、まどろっこしいことをしているのも同じ理由である。

スパイが持つ特有の反応、場が乱れた時に生じる変化をしっかりと観察することでスパイを炙り出す。

強引な手法に出る前に容疑を固めておく。


そして、そのためにも、些細な変化であっても見逃してはならないのだ。


「この後、一部の専門家が招待される交流会が開かれる。そして、そこには監察対象も参加する。」

一通りの報告が終わるとレオが言う。

「アラン、お前も参加しろ。」

「なにか行動を起こすのか」

「いや、まだだ。今回は関係値の把握に徹する」


◇◇◇


今夜の簡単な段取りを一応確認し部屋を後にすると、

たまたま、フランと行き会った。

「あれ!?アラン!!」

元気にそういうフランの姿はどこか久しぶりに感じられた。

制服のままの俺と違い、フランは私服。


「先戻ってるから。ゆっくり話しなさい」

レイナはそう断ると1人先に行く。

「確か、レイナさん?だったよね」

「よく覚えてんな」

特別話さないようしていたわけではないが、積極的に伝えていたわけではない。過去に2,3度話の中で出てきた程度だろうに。

「今日、この後予定有る?みんなでご飯行くことになってるんだけど」

「悪い、ちょっとな」

「そっか」

少し残念そうなフランを見ると申し訳なくなる。

「明後日は、」

「うん。覚えてるよ、ちゃんと」

俺が言い切る前に彼女は答えた。想定してかのように。

3日目の夜から4日目にかけては任務も終わり余裕がある。そのため、俺はフランと2人で食事する約束を取り付けていた。半ば、ルカとアカネに押し切られる形ではあったのだが。

「楽しみにしてるから」

最後に落ち着いていった彼女の声が耳に残った。


◇◇◇


交流会。

落ち着いた装飾が施され、明るい雰囲気の大広間に、100人程度が集まっている。みなそれぞれが正装をし、立食をしながら会話に興じている。

レオが付いているのは情報統括部所属の軍人エドワード・デニーロ。そしてセレナが付いているのは大学教授のヘンリー・マグワイア。

2人とも付かず離れずの距離にいながらもしっかりとターゲットをとらえ続けている様子だった。やはり本職なだけあって、立ち振る舞いや仕草に不自然な点が1つもない。

あれが相手では、俺であっても、自身が探られているなど気付くのには相当の時間がかかる。

俺も一応、監察対象のマクエルに目を光らせていた。

開始から30分ほど、特に動きはなく、俺はすっかり飽きていた。

今日1日マクエルを尾けていたのだが、それらしい兆候は一切見られない。俺自身が潜入する側なので心理はよくわかっているつもりだし相当な手練れである可能性も考慮したうえでの結論だが、とても彼にはスパイなんて真似は出来ないだろう。警戒心、対応力、瞬発性そのどれもが欠けているし、とても器用なタイプには見えない。

少なくとも、俺の知る限りの“潜る側”の人間ではない。

ただ、俺の本職を明かしていない以上、それを2人に伝えるわけにもいかず、俺は今絶賛退屈の中にいた。


そんな中、

「お前も来てたのか」

声をかけてきたのはスバルだった。こいつも交流会に参加していたらしい。

「任務でな」

「おっさんばっかで飽きてたとこなんだ」

「お前、そんなんでいいのかよ。」

「フランたちの方行けばよかったかな」

「それはそうだな」


「で、横の美人はどちら様?」

「部隊の先輩」

「……ども」

そう小さくレイナが返す。

レイナが自分から挨拶するなんて、珍しい。

立派になったもんだ。

俺はしみじみとそんなことを思ってしまった。

「収穫といえば、エイナル・アルギリスぐらいなもんだぜ」

確か先ほど見かけた魔道具のお偉いさんだったか。

「そんなすげぇの?」

「そりゃお前、帝国魔道工学の伝説なんだぜ」

傍で聞いているレイナが深く頷く。

「ここ数年での成果は帝国、いや世界随一。後世に名前が残るのはまず間違いないだろうな」

「へぇー」

一切の興味がない俺にスバルは熱く語る。自分のことのように誇らしげに。さらにはレイナまでも、どこかうれしそうな笑顔を見せている。

「で?そんなすごい奴と話さなくていいのか。せっかくの機会だろ」

「いや、周りに人多すぎて入り込めないんだよ。それに話の内容も難しいしさ。」

「ビビっちゃってるってわけね」

実際、会場には俺たちのように若い人間はほとんどいない。学生の中で特別に招待されたものや警備の人間がほとんどいるのみで落ち着いた空気が流れている。また、ところどころ熱い議論が交わされており、こいつが委縮してしまうのも無理はない。

話題に出たエイナルなんてのはまさにその通りで、常に人に囲まれとても学生が立ち入る隙など無いように思える。

「滅多に来ないんだろ」

「そうなんだよ。今までこういう場に顔を出すことなんて無かったし、実在してるかどうかすら疑わしかったのにな。ただ、」

「ただ?」言葉を切るスバルに俺は続きを促す。

「俺の見立てじゃ、もうちょっと若いと思ってたんだけどな」

―――お前もかよ

拍子抜けする俺に、レイナがそれ見たことか、と言わんばかりの表情を向ける。

「そんな老けてるわけでもないだろ」

とうのエイナルはというと、確かに若くはないだろうが体はいたって健康的、引き締まってすら見える。顔もそれなりにハリがはり、肌艶もいい。白髪交じりで灰色の髪もそれほど老けた印象は与えない。他の参加者と比べても特段老けているようには見えなかった。

「そうだけどさ、論文とか研究のイメージだともっとこう、斬新というか、革新的というかさ」

「なかなかわかる奴じゃない」

レイナもそれに同調する。珍しく同世代で話が分かる奴が出来て嬉しいのかもしれない「俺にはサッパリだ」

そういう俺のことを「わかってない」とでも言いたげに二人して見る。

「警備の数もかなり多いしな」

確かにエイナルと関係あるかはわからないが会場にはそれなりの人数が当たっている。

「あの人が死んだら、帝国の損失としては計り知れないからな。なんかあったら、死んでも守れよ」

「お前にとって俺とあいつどっちが大切なんだよ」

「お前は親友だ。だが、それを加味してもギリ、エイナルさん」

「オイ」

「しょうがないだろ、帝国の至宝だぞ」


「にしてもなんで急に出てきたんだろうな?」

スバルがポツリと呟く。

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