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22 対抗演習・前日

対抗演習、前日。

任務の合間を縫って、俺はアカネの特訓に付き合っていた。

数日に渡るそれも、時間にすればほんのわずかだ。

それでもアカネの動きは、目に見えて洗練されてきていた。

もともと筋は悪くない。

そこに、咄嗟の判断と反射的な動作が噛み合い始めている。

俺が意図的に癖を矯正し、選択肢を削り、余計な動きを殺すよう打ちこんでいるのだが、

何より目を引くのは、その執念だった。

回復できるとはいえ、痛みが消えるわけじゃない。

それでもこいつは一度も音を上げなかった。

むしろ、叩き伏せた直後にこちらを睨み返し、闘志を燃やすぐらいだった。


「いいんじゃないか。今日は意識が飛ぶこともなかったし。」

「ムカつく」

「……え?」

「最近になって、やっと分かったのよ。あんた、結構手加減してるでしょ」

剣を下ろしながら、アカネは吐き捨てるように言った。

「それに気づかなかった自分に一番ムカつく」


「今日はこれで終わりにするか」

「もう終わり?」

「明日が本番だ。今日は休め」

「……まぁ、そうね」


少し間を置いてから、アカネがこちらを見た。

「ねぇ。一回でいいから、本気で来てくれない?」

「いいぞ」


「じゃあ……やるか」


二メートルほど距離を取り、向かい合う。

アカネは剣を握りしめる。

静寂が場を支配した。

あえて隙を見せることはしない。お互いに相手の体、その細かな震えまではっきりと認識できるほど感覚を研ぎ澄ませ向かい合っていた。

アカネには、勝負が一瞬で終わることが理解できた。相手の初撃、それさえ突破できれば。そう考えた。


場の緊張は限界まで高まり、そして、


一瞬だった。カウンターに動き出したアカネの手は宙でその目的を失った。というより、動き出すことすら叶わなかった。


アカネが認識したのは、目の前のなにもない空間と首筋にある指の感覚。

自身の背後から伸びた手は自身の首に優しく、けれども確実に触れていた。

息がかかりそうなほどの近さに感じる気配が、先ほどまで視界にとらえていたはずの標的であることを認識すると、ゆっくりとアカネは呼吸を再開した。


この一週間、アカネは数十回は死を覚悟した。

それはアランによって設計されたものであることは理解していたが、

それが自信を強くしたと勘違いしていた。


「どう思った?」

「……怖い。ただ、それだけ」

「なら大丈夫だ」

俺は一歩下がる。

「思いっきり勝ってこい」

「……ありがと」


帰り道、アカネがぽつりと言った。

「ていうか、あんた強すぎじゃない?」

「上司がちょっとアレでな」

ここまで来るともう、どう誤魔化していいのかわからなかった。

「なにそれ。まぁいいけどさ」

少し歩いてから、アカネが続ける。

「私があそこまで頑張れたのも、あんただったからかもね」

「……え」

「同年代の友達があそこまで強かったら、負けたくなくなるでしょ」

日はすっかり落ち、

澄んだ夜空に星がくっきりと浮かんでいた。

「で、惚れたってわけ?」

「なわけないでしょ。そうやってすぐ茶化すから、フランと進展しないのよ」

「……うっ」

言い返せなかった。

「デリケートな問題なんだよ」

「はいはい」

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