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ひとまず第二階層――居住エリアにいる全員の身体チェックを済ませたが、例の魔道具は確認されなかった。
「後日回収して、蓄えた魔力を使って侵入でもしようとしてたんですかね」
通信の向こう側で、マイロがそう言う。
「おそらくな。そっちはどうだ?」
「何も。未登録の魔力反応は確認できませんし、整備ももう完了しそうです。屋敷も問題なく機能しています」
預言者への直接的な攻撃を想定していたが、現状これといった動きは見られない。
となると、想定そのものを広げる必要があるのかもしれない――カースはそう考えた。
「……泳がせるか」
「そうですね。この魔道具からは、これ以上なにも引き出せそうにありませんし」
敵の目的も全体像も掴めない以上、警戒を強めるしかない。
だが、守りに徹するということは、それだけ敵に準備の時間を与えることにもなる。
ここは予言局。
こちらが圧倒的に有利な状況だ。
だからこそ、多少のリスクを踏み倒してでも、先に動くべきだ――カースはそう判断した。
だが、
「……少し引っかかるな」
「え?」
「タイミングだ。今日ほど侵入しやすい日はないだろう。計画が少し遅いと思わないか」
「逆に、こちらの気が緩んだタイミングを狙っているのでは? 現に今日は、カース卿が付きっきりですし」
「……考えても仕方ない、か」
そう言い終えた瞬間、耳元の魔道具から、けたたましい警戒音が鳴り響く。
「どうした?」
「第一階層、A4区画で未登録の魔力反応を確認しました」
「俺が出るか?」
「いえ。反応はそこまで大きくありません。近くの警備を向かわせます。カース卿は、預言者の護衛を」
カースはその的確な指示に満足する。
最上位騎士に任命され日の浅いマイロのことをカースは案外買っていた。実力、頭脳ともに申し分なく、少しの経験を積み冷静さを身に付ければ魔導国の未来を担っていく存在になるだろうと考えており、先の指示にその片鱗を垣間見たような気がしていた。
そうは言いつつ、念のため魔力探知の範囲を少し伸ばし、現場状況を確認する。
「……整備士のものだったようです。誤って魔道具でも起動したんでしょう」
マイロからの報告が入る。
「――毎度、必ず出てくるな。タイミングとしては最悪だが」
「現時点で問題は確認できないですね。」
「監視を付けておけ」
「既に2人付いてます」
点検が終了するまでおよそ30分ほど。その場には明確な形を持たない緊張感が漫然と存在していた。




