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神なき世界の設計者 ~奴隷の知識が非合理な絆と最強国家を鍛え上げる~  作者: Ken
第二幕:産業革命の設計図

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第四十八話『自動化と棍棒』


マルコの絶叫が響き渡る。

だが、「産業革命」は待ってくれない。


狂人スペシャリストたちは既に動き出していた。

ロイドは油まみれで、水車の動力を分岐させる歯車ギアと、伝達軸シャフトの鋳造を開始している。

ボルカスは製麦所の、五層への増築を指揮している。


そして、マルコ(総監督)の仕事が始まった。

ゼニスがマルコに一枚の工程表マニュアルを叩きつける。


「…マルコ。お前の仕事はこれだ。ロイドが歯車を造る。ボルカスが床を造る。…おマルコはその二つが完璧に接続されるよう、全工程を管理しろ」


「(絶句)…は、はい!?(俺が!?)」


そしてゼニスは、マルコの唯一の部下を呼んだ。


「…カエル」


「(歓喜)…はっ!ゼニス様!」


「…お前の仕事はマルコの指示に従いこの革命を邪魔する害虫を監視することだ」


「(棍棒を握りしめ)…害虫をるのですねッ!お任せをッ!」


マルコの「新」たなる「地獄」が始まった。


「(…害虫って何だよ!?…てかこいつ(カエル)が最大の害虫なんじゃねぇか!?)」



地獄の工事が始まった。


ロイドが造った鉄製の伝達軸シャフトが、五層に増築された製麦所の各階層に貫通していく。

そして、バグ発生。


「…おいボルカス!床の穴がコンマ1ミリズレてるぞ!これじゃシャフトが通らねぇだろ!」


「…あぁ!?木の建築に鉄の精度を求めるな!そっちが叩いて合わせろ!」


狂人たちが、再び掴みかかろうとする。マルコがその間に必死に割り込んだ。


「(泣き)…や、やめてください!二人とも、害虫になっちまいます!」


その衝突を、即座にマルコの部下カエルが発見する。


「(絶叫)…害虫発見ッ!(棍棒を向け)…二人ともゼニス様のシステムを乱すかッ!」


「(絶叫)…違う!お前は黙れぇぇぇ!!」


マルコは、狂人(上司)と狂人(部下)の両方を同時になだめなければならない、中間管理職の地獄に叩き込まれた。



数日後。


マルコの胃が半分ほど犠牲になった頃。

水車(動力)から製麦所(五層)粉砕所ミルまでを繋ぐ自動化オートメーション・ラインがついに完成した。


建設に駆り出されていた、灰色谷の全員が固唾を呑んで見守っている。


「…ロイド。…動力パワーを繋げ」


「…おうよ。…クラッチ接続!」


ロイドが、水車の動力を製麦ラインの主軸メインシャフトに接続する、巨大なレバーを引いた。


――ガコンッ!


地響きと共に、水車のパワーが製麦所へと流れ込む。

伝達軸シャフトが回転を始める。


五層マルコ】:マルコが最上階に立つ。「(…動いた!)」

【四層(攪拌機)】:自動攪拌かくはんくわがギギギ…と動き出す。

【三層(攪拌機)】:順調に動く。

【二層(攪拌機)】:――ガキンッ!けたたましい金属音。歯車ギアがジャミング(噛み合い停止)した。

全体ライン】:動力パワーがせき止められ、水車が悲鳴を上げる。ライン全体が停止する。ロイドが叫んだ。


「クソッ!二層だ!二層が詰まった!」


「(…ダメだ…!自動化失敗だ…!)」


マルコが絶望したその瞬間。

二層で待機していた、部下カエルが動いた。


「(歓喜)…害虫(ジャミング)発見ッ!…お任せをッ!」


カエルは、ジャミングを起こした歯車ギアのド真ん中に、渾身のパワーを込めた棍棒を叩き込んだ。


――ゴッ!


「(絶叫)…やめろぉぉぉ!システムが壊れるぅぅぅ!!」


しかし、奇跡はカエルに微笑んだ。

棍棒マニュアルの物理的な衝撃ショックが、歯車オートメーションの噛み合わせ(ジャミング)を、強制的に解除したのだ。


――ガコンッ!


ラインが再び動き出す。動力パワーが再接続される。


水車の自動攪拌機オート・レイクと、カエルの手動棍棒マニュアル・スティック連携コラボレーションした、「半自動・カオス・ライン」が爆誕した瞬間だった。





「カエル・オートメーション」の誕生によって、製麦モルティングの効率は十倍に跳ね上がった。


工場(システム)はもはや飢えていない。原料(糖化麦芽)は山のように積まれていく。

連続式蒸留器は、その山を恐るべき速度で「燃える水(アルコール)」に変えていく。ロイドのガラス鋳造ラインも、瓶を吐き出し続ける。


納期まで、残り10日ほどになった頃に。

「夏至の夜会」に必要な百個が、ついに完成した。


マルコは、灰になって倒れている。

ボルカスは、自動化の恩恵に感謝する。

ロイドは、「俺のシステムだ」と胸を張る。


その大勝利の空気の中。


ギデオンからは、未だ緊迫感が漂っていた。

彼はゼニスの方を向くと、目をまっすぐに見据えて言った。


「…ゼニス。スタートラインには立った。だが、本番はここからだ。お前がリリアナに言った、『夏至の夜会』に打ち込む弾丸(戦略)とはなんだ?」


ゼニスもまた、その新たなるステージを冷徹に見据えていた。


「…ギデオン。お前の言う通りだ。…『工場(ここ)』での仕事は終わった」


ゼニスは王都の方向を見据える。


「…次の戦場は、王都だ」

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