表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神なき世界の設計者 ~奴隷の知識が非合理な絆と最強国家を鍛え上げる~  作者: Ken
第二幕:産業革命の設計図

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/86

第四十七話『工場は飢えている』


王都からの帰り道。


馬車の中は静寂が支配していた。

ゼニスは目を閉じている。ギデオンは沈黙している。


彼はリリアナとの「狂った商談」を反芻はんすうしていた。


「(…あの女は、『論理ロジック』を買わなかった。…『夏至の夜会の支配』という物語ロマンに契約した。…俺はカネを計算していた。…だが、ゼニスはリリアナを計算していた…!」


ギデオンは乾いた喉で唾を飲み込む。


「…利益とは何だ?……人を動かすパワーそのものか…!?」


それは、CFO(最高財務責任者)が「覚醒」した瞬間だった。





「(絶叫)…うぉぉぉぉぉぉ!」


マルコの叫びがこだまする。第三陣の仕込みが始まっていた。

聖母エララ」による「調停おやつ」の結果、狂人スペシャリストたちは喧嘩をやめている。やめて、団結していた。


「…おい、マルコ!温度が下がる!麦芽をもっと早く入れろ!」

「…違う、マルコ!攪拌かくはんが足りん!風味が死ぬぞ!もっと手を動かせ!」

「…待って、マルコ!この酵母を入れるタイミングがずれる!計算(わたし)を信じてその速度で!」


狂人たちは喧嘩をやめ、団結したのだ。

その結果。プロセスの全てのしわ寄せ(ボトルネック)が、唯一の調整役(労働力)であるマルコに集中していた。


「(…カオス(喧嘩)の方がまだマシだった…!)」

「(…調停だんけつされた結果、俺の仕事量が三倍になってるじゃねぇかぁぁぁ!!)」



ゼニスとギデオンが工場に帰還した。

二人が見た光景は、完璧な連携コンビネーションで、マルコを地獄の歯車のように酷使し、第三陣を製造する狂人たちの姿だった。


CFOとして覚醒したギデオンは、そのあまりに牧歌的な手作業アルチザンの光景と、ロイドの「連続式蒸留器パテントスティル」の圧倒的な生産能力を見比べ、新たなる絶望に気づく。


「…ゼニス……詰んでる」


ギデオンは工場(蒸留器)ではなく、その手前の製麦所モルトハウスを指差した。


「…工場(システム)は一日中稼働できるのに!原料(糖化麦芽)を造るのに五日もかかっている!」


ギデオンはゼニスに絶望を叩きつける。


「…カネの問題ではない!時間の問題だ!工場(システム)が飢えている!これでは夏至の夜会の100個の納期に間に合わない!リリアナとの契約に負けるぞ!」



「ボトルネック」が牙を剥いた。

蒸留器(工場)は完成した。だが製麦所モルトハウスはまだ手作業アルチザンのままだった。


その絶望を、製麦の責任者であるボルカスがさらに裏付ける。


「…待てゼニス!製麦所のフロアを増設して並列化したとして…!(マルコを指差し)…あの攪拌かくはん地獄も五倍になるんだぞ!…マルコだけではない。俺も部下も全員死ぬ!」


「攪拌だけじゃないだろ!粉砕ミルも手作業だ!間に合わない!」



ゼニスは、その二つの絶望的なボトルネックを聞く。

そして彼は、製麦所ではなく、稼働中の蒸留器パテントスティルを指差した。


「…ロイド。…あの工場(システム)を見ろ」


「…あ?俺の最高傑作がどうかしたか?」


「…その工場(システム)の心臓は何だ?」


「…熱交換器と冷却ポンプだ」


「…そのポンプを動かしているのは?」


「…!…(ニヤリ)…あんたが設計した水車ウォーターホイールだ」


ゼニスは頷く。


「…あの水車(動力源)は今、水を汲み上げるためだけに使われている。…動力パワーが余っている」


ゼニスはロイドに、真の指令を下す。


「…ロイド!あの水車の動力パワー分岐ぶんきさせるぞ!」


「…(歓喜)…動力を分岐…!?」


「…お前の鍛冶場フォージの技術で歯車ギア伝達軸シャフトを造れ。あの蒸留器の水車から五層に増築した製麦所まで、動力パワーを引っ張るんだ!」


ゼニスは最後に、絶望していたボルカスに向き直る。


「…ボルカス。お前の地獄は終わりだ。その動力で攪拌かくはんくわと粉砕の石臼ミル自動オートで動かす!」


職人芸アルチザンの終わり。

動力パワー自動化オートメーションを生み出す、「産業革命インダストリアルレボリューション」の始まりだった。



狂人スペシャリストたちが新しい挑戦カオスに目を輝かせる。

灰色谷の全員が、この巨大プロジェクトに動員される。


…その「熱狂」の中で一人。第三陣の地獄の真っ最中だったマルコが震えている。


「(…自動化…?五層…?水車…?)」

「(…つまり俺はもうくわを持たなくてもいい…?)」


マルコが、恐る恐るゼニスに尋ねる。


「…あ、あの、ゼニス…」

「…自動化ってことは…俺はもう…?」


ゼニスは当然、という顔でマルコを見据え、ひまを持て余しているカエルを指差した。


「…ああ、そうだ。マルコ。お前を全工程(フルオートメーション)ラインの総監督(マネージャー)に任命する。…お前の部下は(カエル)だ」

「…カエル。護衛はもういい。マルコの指示に従い、五つの工程ラインが止まらないよう監視しろ」


「…(歓喜)…!!はっ!お任se…!」


「(絶叫)…いやぁぁぁぁぁぁぁ!!部下(カエル)総監督(マネージャー)は死ぬぅぅぅ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ