【閲覧注意!~新世界神話~外伝:人喰い鬼の恋絵巻】
不適切なら消される御話・・でも、これは、ありえたかも知れない恋話・・
・・これは、どこにでもある、ありふれた御伽話・・
人を喰う鬼の話なんて、今のご時世では珍しくもないモノでしょう?
「・・食べてしまいました・・これで、ずっと一緒ですね・・」
・・余りの恋しさに喰らってしまうなんて、日常茶飯事・・
貴方様が好きすぎて、恋い焦がれて・・これが愛のカタチの終着点?
アナタの味が残っている間に、思い返してみましょうか・・
私のウチで反芻してみましようか?・・私と貴方の出会いの話を・・
「あげませんよ?」
出会いは偶然?、それとも必然?
・・いつも変わらぬ食事中・・
ひょっこり出会ったヒトのアナタ・・
怖がりもせず、逃げもせず・・私を凝視するだけで・・
食事の邪魔をするのなら、容赦はしないのだけど・・
怖がりもせず、逃げもせず・・私を凝視するアナタ・・
だから、私は思わず言ってしまったわ・・
ふふっ、今、考えるとおかしな言葉・・
私は、どうしてそんな言葉をアナタにあげたのかしら?
「逃げないの?」
・・いつも変わらぬ鬼ごっこ・・
追うのどちら?、追われるのはどなた?
だけど、変わったヒトひとり・・
怖がりもせず、逃げもせず・・私を凝視するアナタ・・
動かなくなった肉のカタマリ・・アナタはどちら側かしら?
・・たまには、決まりを変えてみましょうか?
「変わった方ね?」
・・ならば、私も羽目を外してお祭り騒ぎ・・
だけど、楽しい祭りも喧騒も、いつの間にか終わりの時ね?
動くモノも、囀るモノもいやしない・・
だけど、変わったヒトひとり・・
怖がりもせず、逃げもせず・・私を凝視するアナタ・・
そのキレイな二つの玉を取り出して・・
転がしてみれば、どんな鈴の音、聞こえるかしら?
その何も言わない口を切り裂いて・・
広げてみれば、どんな笛の音、聞こえるかしら?
「起こして下さる?」
とらわれ、転げる鬼ひとり・・
・・いつもと変わらぬ鬼ごっこ・・
踊る足先、泥濘へ・・
怖がりもせず、逃げもせず・・私を凝視するアナタ・・
終わる気配もなんのその・・差し伸べたるは鉄でなく・・
無骨な手のひら何のため?
「考えてしまうわ」
握った手のひら、あたたかく・・
・・いつもと変わらぬ鬼ごっこ・・
怖がりもせず、逃げもせず・・私を凝視するアナタ・・
・・いつでも終わりを告げるのに・・
「アナタのせいよ?」
斬られ、血の花咲かせる鬼ひとり・・
・・いつもと変わらぬ鬼ごっこ・・
怖がりもせず、逃げもせず・・私を凝視するアナタ・・
気も漫ろな鬼ひとり・・
・・囚われたのは、どちら様?
「私のウチに来て下さるって誓って・・」
囚われたのなら、囲いましょう?
・・いつもと変わらぬ鬼ごっこ・・
それが終わりを告げたなら・・新たな指切りげんまんを・・
「ウチに来て・・」
小指と小指を絡ませて・・新たな契りを結ばせて・・
契りは千切って、千切って契って・・どんなカタチになったとしても・・
決して変わらぬ貴方様・・
怖がりもせず、逃げもせず・・私を凝視するアナタ・・
やっと一言残した言葉は・・冥途の土産の世迷言・・
貴方を喰らう鬼に向ける言葉ではないはずなのに?
「これが、口惜しい、ということかしら・・」
ウチに残った貴方様・・
蕩けるように甘く、痺れるように苦く、焼け付くように熱く・・
だから、何も食べれない・・
どんなモノも貴方様には及ばない・・
二度と味わえない甘美な媚薬・・囚われたのは、いつからか?
「今から逢いに・・」
・・いつもと変わらぬ鬼ごっこ・・
だけど、鬼の役が出来ぬなら・・力を無くして討たれる私・・
でも、不思議と怖くはない・・不安はない・・
だって、貴方様に逢えるから・・
再び出逢った、その時には・・
・・人喰い鬼ではなくなった・・私の口から貴方へと・・
(了)
これもひとつの恋話・・貴方様は、どう思われますか?