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私の頭の中

『流れ星を食べた魚の黒っ小』

作者: 木尾方

とある湖に一匹の真っ黒な小魚が兄弟たちと住んでいました。


真っ黒な小魚は、黒く小さかったので兄弟たちに、

くろ』と呼ばれイジメられていました。


「やい、黒っ小 お前は一緒に泳ぐな」2番目のお兄さんは言います。

『そうだ、そうだ』と、ほかの兄弟たちは言いました。

「黒すぎて目立つから離れてよ」真ん中のお姉さんが言います。

『そうだ、そうだ』と、ほかの兄弟たちが言いました。

「小さくてジャマだからついてくるなよ」少し上のお兄さんも言います。

『そうだ、そうだ』と、ほかの兄弟たちも言いました。

そんな調子で、仲間外れにされていました。


「お母さんが居たときは、お母さんが助けてくれたけど・・・」と黒っ小は嘆きます。


小魚達の母親は、人間にとらわれて帰ってきません。


真っ黒な黒っ小は、昼間に泳ぐと黒さが目立ちすぎて、大きな魚から狙われてしまいます。だから、兄弟たちとも泳げません。昼の間は、暗く奥が見えない湖の穴の入口で静かにして寝ています。そして、日が沈み湖が黒くなり他の魚が みんな寝てから ひっそりと一匹で泳ぎます。


今日も日が沈み始め、住処すみかに みんなが帰ってきました。

「黒っ小、なんでお前が居る?」3番目のお兄さんが言います。

『そうだ、そうだ』と、ほかの兄弟たちが言いました。

「ここは、僕たちの寝床だぞ」真ん中の お兄さんがいいます。

『そうだ、そうだ』と、ほかの兄弟たちが言います。

「お前は、お似合いの真っ暗な穴に住んでろよ」下から10番目のお兄さんも言います。

『そうだ、そうだ』と、ほかの兄弟たちも言いました。

「ボクもみんなと いたいよ。夜だけならいいでしょ?」黒っ小は お願いをします。

『ダメだ、ダメだ』と、兄弟たちが言いました。

「なんで、お兄ちゃん、お姉ちゃんたちと一緒に いたらダメなの?」黒っ小は聞きます。

『なんで?なんでだろう?』と、兄弟たちは、不思議がりましたが、

「きっと、私たちも黒くなるからダメよ」と大きいお姉ちゃんは言いました。

『そうだ、そうだ。黒くなったら、大きな魚に狙われるから、ダメだ、ダメだ』兄弟みんなが口をそろえて言いました。

「あっちいけ、黒っ小」小さい妹も言いました。

「・・・わかったよ」黒っ小は、今日も泣きながら一匹で暗くなった湖に出て行きました。




スイスイ、スーッ「泳ぐのは、楽しいけど やっぱり1人は寂しいなぁ。ボクも、お兄ちゃんたち と みんなで泳ぎたいなぁ・・・」




しばらく泳ぐと黒っ小は、湖の様子が いつもと違うことに気がつきました。

「あれ?なんだろう。上が明るいぞ」

黒っ小は水面みなもに上がってみました。


チャプッと黒っ小が顔を出すと ゆらゆらと波紋が広がります。揺らぎが無くなると水面には星が、たくさん映っていました。

「うわぁ!すごくキレイだなぁ お星さまが降りてきた」


その日は、なぎで、黒っ小以外、湖も山も風も みんな止まっているように静かな夜でした。


しばらく黒っ小は、空の星と水面に映る星に挟まれながら、その美しさを眺めていました。


「そうだ!このキレイなお星さまを食べたら、黒くなくなるかも」

黒っ小は、近くに映っている星を食べようとパシャパシャパシャっと動きますが水面に波が立ち星がゆらゆらと消えて逃げて行きます。何度やっても星は逃げていきます。


「あぁ、食べられないよ」


次に黒っ小は潜って下から星を食べようと考えます。ですが、ザブンっと水面に上がる時にやはり星は逃げて行ってしまいます。

「えぇ、これもダメかぁ、やっぱり、お星さまもボクたちと一緒で食べられたくないんだ」


水面に顔を出して映った星をジッと見つめる黒っ小。すると、黒っ小の横を流れ星が勢いよく通りました。

「わぁ、なんだ?お星さまが泳いだよ」


空を見上げると、たくさんの流れ星がシュン、ササーっと流れていきます。

「うわぁ、お星さまって空を泳ぐの速いんだなぁ。すごいなぁ。あんなに速いんじゃ小さなボクなんて追いかけても捕まるわけないよ。」


また、黒っ小の横を流れ星が通ります。いくつも、いくつも。シュン、ササーっと・・・


「そっか!もしかしたら、口を開けて待っていれば、お星さまの方から飛び込んでくれるかもしれない」

黒っ小は小さな体で、めいいっぱい口を開きました。

横を流れる星たちをジッと我慢して待っています。

(がまん、がまん)

たくさん、たくさん星が水面を流れて行きます。

たくさん、たくさん時間が過ぎて行きます。


そろそろ、東の山の向こうが白くなりかけたころ、1つの大きな流れ星が水面を走り黒っ小の口にギュンっと入ってきたのです。

「うわぁぁ」黒っ小は、あまりの大きさと星の輝きにビックリして目をギュッとつぶってしまいました。しばらくして目をゆっくり、ゆっくりと開けてみると空が白くなり、西の山が明るくなり、風が出て、湖に光が指していて水面の星は みんな消えていました。


黒っ小は、その場でクルクルと泳いでみましたが、黒い体は黒いままでした。

「なんだ。やっぱり、お星さまを食べても変わらないや」

黒っ小は、がっかりして真っ暗な穴に戻って行きました。


おや、おや?真っ暗な穴が いつもと違います。

「あれ?穴を まちがえたかな?」

明るい穴に黒っ小は、戸惑っています。

外に出てみる黒っ小

「あれ?やっぱり、真っ暗な穴だ」

再び穴に入る黒っ小

「あれ?なんで明るいの?」


どうしたことでしょう。真っ暗な穴に入ると明るく、外に出ると真っ暗な穴に戻ります。


また、穴に入ると黒っ小は気がつきました。

「あ!ボクの体が光ってる!」

黒っ小は、あまりの嬉しさと驚きにグルグルと穴の中で泳ぎました。

グルグルと黒っ小が泳ぐと暗かった穴も光で照らされます。

「すごい、すごい、穴の中ってこうなっていたんだ」

黒っ小は、どんどんと穴の中を進みます。

奥は入口より広くなっていて、いくつもの大きな穴と小さな穴が開いていました。

黒っ小は、大きな穴の1つに入ってみることにしました。

くねくねと進むと、じょじょに狭くなり小さな穴から出ましたが、また広いところに戻って来ました。

「あれ?さっきの場所だ」

黒っ小は、違う大きな穴に入りました。

ぐねぐねと進むと、だんだんと狭くなり小さい穴から抜けると、また広いところに戻って来てしまいます。

「あれ?おんなじ場所だ」

黒っ小は、今度は小さな穴に入りました。

ぐいぐいと進むと、次第に広くなり大きな穴から抜けると、また広いところに戻って来てしまいます。

「あれ?もどっちゃうぞ。おもしろいやぁ」

黒っ小は、次に下の方にある1番小さな穴に入りました。

ズンズンまっすぐに進みます。ズンズン、ズンズン・・・

(長いなぁ、まだつづくのかなぁ)っと黒っ小が思い始めたとき、穴の先がかすかに明るくなってきました。

「あれ?穴の出口にでたよ」黒っ小は出口の入口付近で辺りをキョロキョロと見渡しました。

「大きな魚はいないみたいだな。よし」黒っ小は、ゆっくりと外に泳ぎだしました。


「どこの湖だろう。ボクが住んでいるところより狭いなぁ」辺りをウロウロ泳いでいると、下の方から声がしました。


「これこれ、坊主、見かけない顔だね。どこから来たんだい?」声をかけたのは、年を取ったドジョウでした。

「こんにちは、ドジョウのおじさん。ボクは、長い長い暗い穴の先の湖から来ました」

「な、なんと!入ったら出れないと言われておる暗い暗い長い穴の奥から来たじゃと!」

「はい!」黒っ小はドジョウのおじさんに、どうやって来たのか説明しました。

「な、なんと!流れ星を食べて体が光るようになったじゃと!どれどれ、見せてみなさい」

ドジョウのおじさんは、湖の仲間を集めました。

「光る小魚ってどこだい?」クチボソのお兄さんが言いました。

「光ってないじゃん」モツゴのお姉さんが言いました。

「まてまて、暗くないと光らないらしいのじゃ」ドジョウのおじさんが言います。

「こっちです。ついてきて」黒っ小は、暗い穴にみんなを連れて行きました。

「ここは、入っちゃダメだってお母さんが言ってた場所だ」メダカの兄弟が言いました。

「大丈夫。だってボクここから来たから」そう言って穴に入ると、黒っ小は1番星のように輝き始めました。

「わぁ、キレイ!」タナゴのお姉さんが言いました。

「ほんとじゃったわい」ドジョウのおじさんが言いました。

『わはははは』ドジョウのおじさんの言葉にみんな笑いました。黒っ小も久しぶりに笑いました。


「・・・ねぇ、みなさん。ボクここに住みたいです」黒っ小は勇気を出して聞いてみました。

『いいよ。いいよ。ここは、大きな魚のいない小魚たちの湖さ歓迎するよ。一緒に楽しもう』みんなが応えます。

「ありがとうございます」黒っ小は穴から出てみんなの輪に入りました。


人気者になった黒っ小は、いろんな小魚に新しい湖を案内されました。

日の当たる場所、藻が美味しい場所、鳥に狙われやすい場所、みんなが集まる場所

たくさん教えてもらいましたが、黒っ小の寝床だけは、来た場所の暗い穴の中でした。


暗くなる頃、黒っ小が一匹で穴に戻って行きます。

すると、また下の方から声がしました。

「坊主、坊主」声をかけたのはドジョウのおじさんでした。

「あ、ドジョウのおじさん こんばんは」黒っ小は少し元気なく挨拶をしました。

「坊主、すまんな。1人で寂しく穴で寝させて」

「ううん、大丈夫です。夜になるとボクが眩しくて、みなさん眠れないですからね」

「すまんな。明日は、水草が沢山生えてる水の美味しい場所に連れていってやるからな」

「はい、ドジョウのおじさん ありがとうございます。それでは、おやすみなさい」


黒っ小は考えてしまいました。「ここでも、ボクは ひとりぼっちなんだ」涙が水に溶けていきます。そう考えながら黒っ小は穴の奥へ奥へと戻って行きました。


フラフラと泳いでいると、広い場所まで来てしまいました。

「あ、こんなところまで戻ってきちゃった・・・ボクだけの場所」今日はここで寝ることにしました。


翌朝、暗い穴で自分の光りに照らされた場所で黒っ小は目覚めました。

「今日は、水の美味しい水草の場所か・・・」黒っ小は、あまりの乗り気じゃありません。

「そうだ、お兄ちゃんたちにボクは違う湖に行くからって伝えないと」きっと伝えても厄介者がいなくなって喜ばれるだけだと分かっていても、兄弟たちに お別れ言葉を伝えなくちゃと黒っ小は思いました。


黒っ小は元いた湖へと泳ぎ始めました。

暗い穴の出口から飛び出ると、数日前までいた湖と様子が違っています。

「ど、どうなっているの?」

水は濁り、土が舞い、水草はボロボロ、息も苦しい。

こわごわ泳いでいると、黒っ小に近づく大きな大きな影がありました。

その気配に黒っ小が気づきました。

「うわぁ!なんだ!」必死に逃げます。影も追いかけて来ます。

黒っ小は出てきた暗い穴に戻ろうと思いました。そこなら安全だと思ったからです。

穴に入ると黒っ小は輝き始めました。すると、影は驚きます。

「げぇ!ま、眩しい!なんだ!なんだ!目が!目が!」影は逃げて行きました。


「びっくりした!あんなに大きな魚 初めて見た。なんで?今までいなかったのに」

黒っ小は、おそるおそる穴から顔を出します。キョロキョロと見渡します。

「い、いないみたいだ」ドキドキしながらも丁寧に穴から出て来ました。

石に隠れ、岩に隠れて、木に隠れて、徐々に兄弟たちの寝床に到着しました。


「お兄ちゃん!お姉ちゃん!みんな平気?」突然の声に黒っ小の兄弟たちは驚きました。

『黒っ小!無事だったのか!よかった!』兄弟たちが喜んでくれました。

黒っ小も驚きました。まさか兄弟が喜んでくれるなんて思いもしなかったからです。

「え?ど、どうしたの?」黒っ小は兄弟たちに聞きました。

『・・・・』みんな黙っています。

「ごめんな。黒っ小」1番上のお兄さんが言いました。

『ごめんなさい。ごめんなさい』と、みんなが言いました。

「お前を今までイジメごめん。黒っ小があまりにもお母さんに気に入られて、甘えられていて、みんな やきもちやいてたんだ。お母さんが居なくなって、どうしたらいいのかわからなくなって、黒っ小に あたっていたんだ。本当にごめんなさい」1番上のお兄さんが言いました。

『ごめんなさい。ごめんなさい』と、みんなが泣きながら言いました。

「ボク嫌われていたんじゃなかったんだね」黒っ小は大きな声で泣きました。濁った水がそこだけ綺麗になりました。


みんな、仲直りをしました。


黒っ小が聞きます「お兄ちゃん、ここどうなっちゃたの?」

4番目のお兄ちゃんが答えます。「黒っ小が居なくなってすぐにアイツらが来たんだ」

「アイツらって?」

「人間とブラックバスの連中さ」下から13番目のお兄ちゃんが答えます

「なんでも、たいかいって言うのがあって人間たちが湖をめちゃくちゃにして、ブラックバスを連れて来たのよ」上のお姉ちゃんが言います。

「たいかいって?」

『さぁ?さぁ?』みんな分かりません。

「でも、ここにいたらいずれアイツらに食べられてしまうし、水も濁ったままだ」2番目のお兄ちゃんが言いました。

『イヤだ!イヤだ!』兄弟たちが言います。黒っ小も言います。

「どうする?」細いお姉ちゃんがいいました。

『逃げよう。逃げよう』

「どこへ?」小さい妹が聞きました。

『どこへ?どこに?ここ以外って?ないよ。ないよ』みんなが騒ぎます。

「・・・・ねぇ!お兄ちゃん、お姉ちゃん!ボクに考えがあるんだ!聞いてくれる?」

『・・・・・・・・・』

「いいよ。黒っ小言ってごらん」1番上のお姉ちゃんが聞いてくれます。

『うん、聞こう、聞こう』


黒っ小は、流れ星を食べて暗い場所で光ること、その体で暗い穴の中を探検したこと、そして、その先は別の湖に繋がっていて、小魚たちが たくさん住んでいる事を話しました。

『ほんとに、ほんと?』兄弟みんなが、目を輝かせてます。

「うそじゃないよ」

『行こう、行こう』

「うん。いこう」

小魚たちは、1番上のお兄ちゃん、大きいお姉ちゃん、2番目のお兄ちゃん、1番目のお姉ちゃん と、10のグループに分かれて行動することにしました。


『ゆっくり、ゆっくり』そろり、そろりと。

『静かに、静かに』ひそひそと。

『よく見て、よく見て』キョロキョロ、キョロキョロと。


もうじき、全員が暗い穴に着きます。兄弟たちが、安心したと思いきや、暗い穴の近くにブラックバスたちが隠れていました。

「いましたぜ、ボス!」頭の上にキズがあるブラックバスが言います。

「アイツらが、ボスの目を痛めた奴らか!」右の頬にキズがあるブラックバスが言います。

「うまそうだな」左の頬にキズがあるブラックバスが言います。

「オレは、あの小さくて大きな子がいいな」両方の頬にキズがあるブラックバスが言います。

「いいか!お前ら!あの黒い小僧は俺様が食べるから、お前らは逃げられないよう、あの穴に追い込め!」と体中にキズがあるボスのブラックバスが言いました。

『了解だ!ボス!』ブラックバスたちが小魚兄弟たちに襲いかかります。

「逃げろ!」一目散に兄弟たちは、暗い穴に向かいました。

「ははは、自分たちから穴に飛び込みやがった」ボスたちは後を追います。

黒っ小が言いました。「ボクが先頭になるから、みんな付いてきて!」

『わかった!』

暗い穴に入ると、黒っ小は星のように輝きだしました。

『うわぁ!まぶしい!』兄弟たちはビックリします。

「ごめん。でも、がんばって!」黒っ小は応援します。

『うん。頑張る』兄弟たちは頑張り励まし合います。


「ちくしょう、やっぱり、あの小僧の仕業だったんだな!」ボスが怒ります。

「ボス。あの小僧を食べたらボスも光りますかね?」背びれにキズがあるブラックバスが言いました。

「・・・おう!きっとそうだな。やっぱり1番頭がいいな。背びれ」

「ありがとうございます。ボス」

「よし、あの小僧を丸飲みにすれば、夜でも狩りができるぞ。がはははは」


黒っ小の先導で、暗い穴でも小魚たちはスイスイと泳いで行きます。でも、その光を目印にブラックバスたちも追いかけて来ました。

「ねぇ、黒っ小!アイツらも追ってくるよ!」真ん中からすぐ下のお姉ちゃんが言いました」

「もう少し先に行くと広い場所に出るから、そしたら、みんな・・・」ゴニョゴニョとみんなに作戦を伝えました。

『オッケー、わかった!』

広い場所が見えて来ました。中に入ると「みんなお願い!」黒っ小が言います。『それ!』兄弟たちが作戦通りに動き出します。

ブラックバスたちが広い場所に追いつきましたが、小魚たちを見失っています。

『なんだ!なんだ!急に真っ暗になったぞ!』ブラックバスたちは突然の暗闇に戸惑います。

『見えない、見えない!痛い!どこだ!どこだ!痛い!』暗闇を泳ぎ壁や天井にぶつかってしまいます。

「どこに!隠れやがった!小僧!!!!」ボスが大激怒します。


小魚たちは、黒っ小を中心として周りをギュッと囲い光を漏らさないように固まりました。

『いいよ。いいよ。作戦通りだ』。

「そしたら、このまま水底をゆっくりと泳ぎ、右の方へ行こう」ひそひそと黒っ小が言います。

『オッケー、オッケー』ひそひそ声で兄弟たちも答えます。


頭上で暗闇を右往左往して泳いでいるブラックバスたちに気づかれないよう、慎重に慎重を重ねて右に泳いで行きました。


「みんな、ここ、ここ。この小さい穴に入って真っ直ぐ真っ直ぐ泳げば新しい湖に着くよ」

『やった!やった!』

「黒っ小、私でも入れる?」大きいお姉ちゃんが聞きました。

「大丈夫だよ。この小石を退かせば通れるよ」

大きいお姉ちゃんは安心しました。

「でも、黒っ小。小さな弟、妹を先に行かせて、どんどんと囲いが小さくなると光が漏れちゃうぞ」1番上のお兄ちゃんが聞きました。

「うん。そこでね。また、作戦があるんだ」

『どんなの?どんなの?』兄弟たちは興味津々です。


「え!そんなのダメよ。黒っ小がおとりになるなんて!」1番上のお姉ちゃんが心配そうに言いました。

「でも、これしかないし、それに、お兄ちゃん、お姉ちゃんも危険だよ」

「・・・よし、やろう」3番目のお兄ちゃんが言いました。

『よし、やろう』上の兄弟たちが言いました。

『お兄ちゃん、お姉ちゃん、黒っ小、頑張れ!』下の兄弟たちが応援します。

「うん。頑張るよ」


ブラックバスたちに気づかれないように、小さい小さい兄弟たちから1匹ずつ、穴に入って行きました。「先は暗いからゆっくりでいいからね」1匹、2匹、3匹・・・順序良く穴に入っていきます。そして、とうとう大きな兄弟たちでは、囲えなくなりました。黒っ小の光が漏れてしまったのです。


「見つけたぞ!小僧!そこだな!」ブラックバスたちが再び襲ってきました。

「それ、みんな逃げろ!」小魚の兄弟たちが散り散りに分かれます。

『待ちやがれ!』ブラックバスたちが追いかけます。


「こっちまでおいで!」と1番上のお兄ちゃんが右の頬にキズがあるブラックバスを挑発します。「なんだと!」


「捕まるかよ。まぬけ」と2番目のお兄ちゃんが、左の頬にキズがあるブラックバスを挑発します。「ふざけやがって!」


「こっちに来ないでよ」と大きいお姉ちゃんは挑発しなくても両方の頬にキズがあるブラックバスが追って来ます。「へへへ、美味しそうだなぁ」


「やーい、やーい。のろま」3番目のお兄ちゃんが背びれにキズがあるブラックバスを挑発します。「なに?後悔させてやる!」


「鬼さん、こちら」と1番上のお姉ちゃんが頭の上にキズがあるブラックバスを挑発します。「オレ様から逃げられると思うなよ」


ほかの兄弟たちも、それぞれブラックバスたちを挑発しました。

『こっち、こっち~』 『待てや!こら!』


そして、ブラックバスのボスは、光輝く黒っ小を追いかけます。

「待て小僧!丸飲みにしてやる!」

「丸飲みにしてやるって待つかよ!バカ!」


広い場所は、皆が皆それぞれを相手にしています。


黒っ小が一瞬だけ止まりました。合図です。

その合図で、兄弟たちは一斉にそれぞれ別の大きな穴に飛び込みます。ブラックバスも兄弟たちを追って大きな穴に入って行きました。ぐねぐね、くねくねと、進んでいきます。


広い場所には、黒っ小とボスだけになりました。

「いい加減にしろ!小僧!」

「いやだ!」

黒っ小は必死に逃げます。シュン、ササーっとまるで流れ星のような速さです。

「すばしっこい、小僧だ!」

シュン、シュン、サッ、ササーと広場を泳ぎます。


大きな穴に入った兄弟たちは、広場で懸命に泳いで明かりを灯している黒っ小の元に急ぎます。黒っ小のおかげで出口がかすかに明るく照らされてます。

「もうじきだ」

兄弟たちを追ったブラックバスたちが悲鳴をあげました。

『な、なんだ?ドンドン、グングンと狭くなるぞ!し、しまった!身動きがとれない』

黒っ小たちの作戦が成功しました。黒っ小が言った通り、広場の大きな穴は広場の小さな穴と繋がっていて大きい方から入ると先が細くなっていき、大きな魚は詰まってしまいます。しかも、暗いのでブラックバスたちは気づきもしませんでした。

『や、やられた!!!』


兄弟たちは小さな穴から出ると辺りが急に真っ暗になってしまいました。


「やったぞ!とうとう小僧を飲み込んでやった!」

逃げ回った黒っ小でしたが、ボスに飲み込まれてしまいました。

『黒っ小!』『そんな!』兄弟たちは嘆きました。

「ん?どうした?光らないぞ。暗いままだ。真っ暗なままだ」

ボスの当てが外れました。光り輝く黒っ小を飲み込んでもボスは光りません。


暗闇の中で泣く兄弟たちですが、下の方の穴から出てきた大きいお姉さんが気づきました。

ボスのお腹がかすかに白くなっていることを。

大きいお姉ちゃんは、全速力で泳ぎボスの腹めがけて体当たりをしました。

「ぐえぇぇぇ」突然の攻撃にボスは驚きます。

大きいお姉ちゃんは兄弟たちに言いました。「うっすらと白い場所に黒っ小がいるよ!みんなで助けるんだ!」

『わかった!助けるぞ!』兄弟たちはボスのお腹めがけて次々と突進します。

「ぐぇ!ぐぇ!」ボスは、自分のお腹がかすかに白いのが見えません。暗闇の中どこからか分からない攻撃がどんどん続きます。

「た、助けてくれ」とうとうボスは泣き言を始めました。

「みんな!コイツを天井まで押そう!」真ん中より上のお兄ちゃんが言いました。

『オッケー!せーの!』力を合わせてボスを天井に押し付けます。お腹を押されたボスは、黒っ小を吐き出しました。

「うげげげげえぇぇ」

辺りが明るくなります。黒っ小は無事でした。

『やった!やった!』『早く、逃げよう!』『穴に入ろう!』

兄弟たちは、大急ぎで新しい湖に繋がる小さな穴へと向かいました。

残っている兄弟の小さい順から穴に入って行きます。

「黒っ小。さあ、入って」1番上のお姉ちゃんが言いました。

「ううん。ボクは照らさなければいけないから最後でいいよ」

兄弟たちが入っていきます。

大きいお姉ちゃんの順番になりました。

「えーん、やっぱり入れないよ」大きいお姉ちゃんは泣いてしまいました。

「小石を退かそう」上のお兄ちゃんたちが小石を退けようとしますが動きません。

『どうしよう』もう、小魚たちは数匹しか残っていません。

「この人数じゃ、動かせない」兄たちは困ってしまいました。


「おい!」ボスが声をかけて来ました。

『うわぁ!!!』逃げようとする兄、姉。

「待ってくれ。俺が、その小石を動かすから助けてくれないか?」

「助ける?」1番上のお兄ちゃんが聞きました。

「あぁ、助けてくれ。その輝く小僧が居なくなったら、俺たちは、ここで死んでしまう。仲間を引っ張りだし、湖に帰る為には小僧の光が必要だ」ボスは頭を下げてお願いをします。

『・・・・・』兄、姉は黙っています。

「・・・いいよ。ボク、君たちを助けるから、大きいお姉ちゃんも助けてくれる?」

『黒っ小!いいのか?』兄、姉は驚きます。

「大丈夫だよ。」ニッコリする黒っ小

「ああ、約束する。もう、お前たちを狙わない」約束をするボス


そして、ブラックバスのボスは、ひょいと小石を動かしました。大きいお姉ちゃんとお兄ちゃんたちが新しい湖に続く穴へと入って行きます。

『黒っ小、先に行って待ってるよ』兄、姉が穴から叫びました。


黒っ小とボスはブラックバスの仲間を後ろから引っ張り出し、元の湖へと帰って行きました。その途中でボスが黒っ小に声をかけます。

「ひどいことをして、すまなかった」

「ううん。ひどいのは人間さ。ボスたちだって、無理やり連れてこられたのだから」

「・・・ありがとう」

「ねぇ、ボス、たまにはこっちの湖に帰って来てもいい?」

「なんでだ?向こうの方が安全だろ?」

「うん。それでも生まれた場所だから」

「・・・そうか。よし!戻った時は俺たちが他のブラックバスどもから守ってやるからな」

「ほんと!ありがとう。ボス!」

「あぁ、約束だ」


黒っ小は入口の出口までブラックバスたちを送ると、引き返し、小さい穴の入口まで、流れ星のようにスーッと気持ちよく泳いで行きました。


新しい湖に出ると、兄弟たち、姉妹たち、新しい湖の仲間が出迎えてくれました。


『おかえり黒っ小』『ありがとう黒っ小』「坊主よかったな」「仲間が増えて賑やかになるわ」黒っ小は嬉しくて泣きました。


『わはははははは』みんな、みんな、泣きながら笑いました。


もう黒っ小はひとりぼっちじゃありません。

夜も兄弟たちが湖の仲間が眩しくてないように、黒っ小を尾っぽで囲い丸くなって みんなで寝てます。


黒っ小は、とても幸せです。



~おしまい~


読んで頂き誠にありがとうございます。


童話になったのか分かりませんが、初挑戦の童話ですw


もっと短くするつもりだったのですが、同じ言葉を連発したら10,000字になってましたw


少しでも、楽しんで頂けたら幸いです。


木尾方きおかたm(._.)m

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― 新着の感想 ―
[一言]  ブラックバスの親分が、率先して自分の非を認められるいい人(魚)なのがよろしいなあと思いました。
[良い点] 最初、うん、スイミー?と思ったら、とても素敵なお話でした。 流れ星を食べて光る魚になるのも面白かったし、兄弟達と和解して、みんなで協力して逃げたり、黒っ小を一生懸命隠したりするのも微笑ま…
[一言] ハッピーエンド良かったです! 楽しく読ませていただきました。
2021/12/19 17:19 退会済み
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