判決
「死神、ミエト。以上をA級戦犯とし、ザスマン城地下監獄『ザクラ 』への永久投獄を言い渡す」
裁判官の老人は伸びきった眉の間から僅かに見える鋭い目で少年を見下ろした。
銀髪の少年は何も言わずに法壇の座る老人を見ている。
「殺せ!!!」
観衆の男が言った。城の広間。終戦から1ヶ月後に刑の執行と同時に行われた戦後裁判には、多くのザスマン国民が詰めかけていた。
「そうだ!なぜ生かす!?」
「そいつは…私の父を…兄を…!!!!!」
銀髪の少年、エミトは不適に笑った。
「生かすのか?俺を」
絶え間ない怒号に掻き消させれた容姿に似合わない少年の言葉を老人は聞き逃さなかった。
「生かす?はき違えるなよ小僧」
それまでとは違った老人の声色に観衆は静まり返った。
「死んで許されると思うな…貴様は死すら愚弄した死神だ。一切陽の当たることない牢獄でただ生かされ、愚弄した死にすら相手にされず、最後のひと時まで暗闇で罪を償う一生を過ごすのだ!!連れて行け!!!」
再び衛兵に連れて行かれる少年を広間の上から青年と少女が見下ろしていた。
「死神…」
青年が呟く。
「私は、奴が我が軍の死んだ兵士を使役する光景を見ました。奴は人という生き物がもってはならない力を持っています。王子…なぜ王は奴を生かすのですか」
少女は青年に訴えた。10歳にも満たないその少女は鎧を身にまとい歴戦の戦士の表情で目は怒りに燃えていた。
青年は答える。
「慎め盾姫。貴様は私の盾だ。それはつまり王の盾でもある。王に疑問をもつのは貴様の任務の範囲を超えているぞ」
「申し訳ございません…どうかお許し下さい」
頭を下げる少女は歯を食いしばりなから銀髪の少年の後ろ姿を睨み続けるのだった。
地下監獄ザクラ
「相変わらずここは熱いな」
2人の衛兵が額の汗を拭う。
「火山の熱の影響だろ?ここで一生とは、食事や水が出されるとはいえ、お前何年生きられるだろうなぁ??」
銀髪の少年エミトを牢獄に入れた衛兵は吐き捨てるように言った。
「さすが死神。子供の目じゃねえわ。あーおっかねぇ」
銀髪の前髪から除く少年の目には寒気を感じ、衛兵がは去っていった。
しばらくして俯いていたエミトの表情が一変する。
「なぜ…どうしてここに…?」
少年は鉄格子越しの通路を見つめた。
エミトの視線の先には誰もいない。
通路のロウソクの火が消え、暗闇となった。