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トリック・オア・トリート

ハロウィンウィン



「父様父様!」


「どした〜?」


「トリックオアトリート! です!」


「あ〜、そういやハロウィンか。はいよ、飴ちゃん」


「ありがとうございます!」



 今日は10月の31日、ハロウィンだ。いつも通り、朝の時間にログインすると、魔女っ子の仮装をしたリルに定番の言葉を言われた。


 リルが身に纏うソルお手製の魔女っ子服は、ただの仮装と言うには防御力が高すぎる。


 戦闘用ハロウィンコスチュームだな。



「あの......父様」


「ん〜? 俺は行かないぞ〜」


「あうぅ......で、ではテスカちゃんで!」


「言うと思った。まぁ、それならいいぞ。行くか」



 反転の横笛で少女の姿になった俺は、容量無限のパンドラの箱からカボチャのヘルメットを取り出し、洋服は黒いスカートに変えた。


 ハロウィンらしい格好になった......よな?



「う〜ん......テスカちゃんの可愛いお顔が見れないのは残念ですね」


「いいのいいの。取り敢えず街に行こ? メル達とも合流したいし、ヴェルテクスのメンバーに強請りに行こう」


「強請るのではありませんよ? 選ばせるのです」



「「トリック・(死か)オア・トリート(施しか)」」




◇◇




「──で、次のイベントなんだが......ん?」



「「トリックオアトリート!」」



「おぉ! 可愛いねぇ! はい、お菓子あげる」


「待て、翔。そっちの魔女っ子がリルちゃんなのは分かる。分かるが......カボチャは誰だ?」


「メルちゃんかベルちゃ......いや、無いね。チェリちゃんもここまでアクティブに動かないし......もしかして」


「もしかして?」



「ルナの新しい子ども!?」



「なんでやねん! 俺だよ俺! ル・ナ!!!」



 会議室で次のイベントについて話している翔、アテナ、ソルの元へやって来たはいいものの、2人がアホすぎて思わずカボチャのヘルメットを放り投げた。



「ふふっ、はいお菓子。2人とも可愛いね!」


「ありがとうございます! 母様。今日はテスカちゃんとお菓子の搾し......徴しゅ......貰いに行くのです!」


「リル? 悪い子はハロウィン関係なく祓うぞ?」


「ごめんなさい」


「ふふふ、ほら。2人とも行っておいで」



 何か深い闇を感じる言葉を使うリルに魔法の杖(殴るヤツ)を見せ付けると、ソルが俺達2人を抱きしめてドアの方へ誘導した。



「しゃ〜ない。楽しむぞ、リル」


「はい!」



 さりげなくソルの香りを堪能した俺は、気持ちを切り替えてリルと共に会議室を出た。



「......後で襲っちゃお」



 あ、バレてら。ログアウトしたら襲われよう。


 多分、お菓子をあげてもイタズラするからな、ソルは。ここはひとつ、潔くイタズラを受けると可愛いソルを拝めるのだ。


 ハロウィンか......コスプレでもするのかな、陽菜。



「テスカちゃん?」


「何でもない。次は誰の所に行く?」


「そうですねぇ。フーさんとメルちゃん達がお買い物ですし、追いかけてみますか」


「了解なり」



 カボチャのヘルメットを被り直し、リルから魔女っ子の帽子を奪った俺は、リルの頭にドクロマークのヘアピンを着けてから次の目的地に向かった。


 リル、何を着けても似合うから困る。無限にアクセサリーを着けてあげたくなる。




◇◇




「えへへ〜、お菓子、いっぱい貰っちゃいました!」


「だね。皆優しい人達だった」



 あれから暫くして街の色々な人にお菓子を貰ったのだが、メル達とは合流出来ずに居た。


 昼ご飯にと貰ったオークの串焼きを食べながら、俺達は広場のベンチに座っている。



「ふぅ、ヘルメット外そ。暑いわ」


「でははい、あ〜ん」


「ありがとう。あ〜ん......ん〜、美味しい!」



 リルから貰った串焼きを咀嚼していると、3人の足音が聞こえた。


 歩幅的に2人は子どもで、1人は大人だな。



「パパ、おはよう。なにしてるの?」


「おはようございます、テスカさん。ハロウィンを楽しんでるんですか?」


「お父さんが小さ〜い」



 良かった。ほぼ分かってはいたが、メルとベルとフーの3人だった。


 フーは普通のメイド姿だが、メルは悪魔の角のカチューシャを着け、ベルはサキュバスのような格好をしている。


 皆、素晴らしく可愛いな。



「おっ、ととと。この状態でもベルは抱きついてくるんだな」


「まぁ〜、お父さんなのは変わらないし〜」


「今はテスカトリポカだぞ。テストプレイヤーでも、照り焼きチキンでもない。テスカトリポカだ」


「ん〜?」



 まぁいいや。体格的にベルにずっと抱きつかれるのは困るが、どうせフーが回収してくれるだろう。


 それより、3人の戦果を聞きたいな。



「メルさんや。どれくらい儲けましたん?」


「なんか......いっぱい。かたりびとがね、メルをみつけたらすぐにわたしてくるの」


「わぁお、人気者パワーが凄い」



 メルが懐という名のインベントリから、ドサドサと両手の上にお菓子の山を築き上げていった。


 どうやらこのハロウィン期間、モンスターからお菓子がドロップするようで、プレイヤー達はインベントリの圧迫を避ける目的と、メル達の可愛さに引き寄せられてお菓子をあげていたようだ。


 でもメルが好きなチョコが多いのを見るに、多分可愛いさ目当てが8割だろうな。



「いいですねぇ、私は1つも貰えませんでしたよ」


「そもそも言ってないんだろ?」


「よくお分かりで。メルさんは気付いたら語り人に集まられますし、ベルさんは私の背中にくっ付いて離れませんからね。言わない、というより言えませんでした」



 でもなぁ、フーが言ってもお菓子をくれる人は少ないと思うんだがなぁ。


 この3人......いや、5人の中で唯一の大人だし、相手が相当に優しくないとフーの望みは叶わないと思う。



「ですから、その............とりっく、おあとり〜と」


「はい、飴ちゃん。素直に言えて偉いね」


「うぅ......恥ずかしい!」



 顔を真っ赤にしたフーは、居ても立ってもいられず、俺の傍に刀となって戻ってきた。


 俺達、目立ってるもんな。お前がその言葉を言った時、かなりの人数がフーを見ていたし、当然と言えば当然だよな。


 面白い奴だ。



「さて、合流してどうするか、何も考えてなかった」


「テストちゃん、ギルドは? まほうしの」


「あ〜、アルカナさんか。いいね、行ってみよう。ベル? 自分で降りて歩いて。じゃないと戻すよ。あとメル、テストじゃなくてテスカだ」


「歩くのじゃ〜」


「のじゃ〜」



 素早く俺の膝から降りたベルは、俺の左腕をガッチリとホールドしながら歩き始めた。


 するとメルは俺の右腕に抱きつき、ベルと同じようにピッタリとくっ付きながら足を踏み出すのに対し、リルはグッと堪えてメルの右隣を歩いていた。


 我慢するとは流石。お姉ちゃんだな。




「「「「トリックオアトリート!!!」」」」




「む? おや、君達か。1人異物が混ざっているが、まぁ良いだろう。私特製のクッキーだ」



 魔法士ギルドに入ると、カウンターで昼からお酒らしき物を飲んでいるアルカナさんに出会った。


 明らかに俺の目を見て『異物』だと言ったが、俺の耳は都合がいいので聞こえなかったことにする。



「にしても可愛い4人組だな。これまでにも声をかけらたのだろう?」


「勿論です。道行く人にお菓子を貰ってますよ」


「やはりな。そうだ、トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃ魔界に飛ばすぞ?」


「こわっ!!! はい、飴ちゃんです」



 ダメだこの人。この人なら簡単に魔界、もしくは地獄に落とせるだろうからな。気を付けないと。



「うむ......美味いな。お前が作ったのか?」


「そうですよ」


「効果次第では買ってやるぞ。そうだな、1つ辺り500リテでどうだ?」


「高すぎますしあげませんし売りません。こちら、非売品となっております」


「......そうか」



 何でそこまで残念がってるのこの人!? どれだけ飴ちゃんを気に入ったんだ? 正直、めちゃめちゃビックリしている。


 仕方ない、今度差し入れに飴ちゃんを大量に持っていくとしよう。



「それではお暇しますね」


「あぁ。嫁によろしく」


「分かりました。リル、メル、ベル」


「「「は〜い」」」


「アルカナさんにありがとうを言ってから帰るぞ」


「「「ありがとうございました!」」」



 な、何だこれ。俺は幼稚園の先生になったのだろうか。ギルド内の人にめちゃくちゃ見られてるし、すっごく恥ずいんですけど!



「ははは! また来い」



 アルカナさんに見送られて、俺達は帰路についた。


 ここでも、4人で仲良くしていると色んな人からお菓子を貰え、俺のインベントリも結構圧迫されてきたな。


 消費に関してはメルが居るし、フリットやマサキ達にもお裾分けすれば大丈夫かな?




「「「「ただいま〜」」」」



「おかえり。楽しかった?」


「はい!」


「「うん!」」


「それは良かったね! じゃあ4人とも、手を洗ってきてね。もう直ぐご飯だから」



 魔境の島にある家に帰ると、エプロン姿のソルがキッチンから声をかけてくれた。


 このまま洗面所に行っても長いだろうし、キッチンで手を洗わせてもらうか。



 そうして、いつものルナの姿に戻った俺は、ソルを手伝うべく手を洗いにキッチンに来た。そしてしっかりと手を洗うと、横に居るソルに袖を引っ張られた。



「どうした?」


「イタズラ......するからね」



 妖艶な瞳で舌なめずりをするソルは、今日見た誰の仮装よりも1番サキュバスっぽく、仮装ではないと本能が知らせてくる。



「イタズラ勝負だな。絶対に勝つ」


「ふっふっふ。夜の試合も五分五分と言いたそうな顔だけど、こればっかりは負けないからね?」


「ま、まあまあ。そこは愛のレベルとかで勝負しましょうや」



 俺が負けそうな未来をイメージしていると、ソルは子ども達が戻ってくる前に俺の頬にキスをした。



「ふふっ......大好きだよ」


「俺もだ。愛してるよ」



 ソルの狐の耳と耳の間に顔を埋め、暫くのんびりしていると、リル達が洗面所からリビングにやって来た。



「あ! 父様が母様とイチャイチャしてます!」


「いいだろ? ソルを独り占めしてんの」


「パパ、つよき。なにかもらってる」


「愛を貰ったよ。メルにもあげよう。だから......こちらへ来い」


「じゃあね......リル、ちゃん......!」


「メルちゃ〜〜〜ん!!!」




 うん、今日も騒がしいな。ハロウィンも楽しんでくれたみたいだし、俺もこれからお楽しみがあるし、満足だ!

これが出ているのは2021年の10月31日。

私がなろうで活動を始めたのは2020年の11月24日。


そろそろ活動開始から1年という節目もあるので、ここらでいっちょ、新作の情報でも出しま.....いやダメかも。


現在連載中の『空色魔力の転生者』が終わったら、ユアストと同じ世界のVRモノに帰ってきます。とだけ、言っておきます!


楽しんでくれたら幸いです。では!

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