ワンモアプロポーズ!?
時系列としては、本編最終話のその後ですわよ!
「ふふっ、まぁまぁ。オケアノスも悪気があった訳じゃないのですから、許してあげてください」
マグノリアにて、仕事終わりのフレイヤさんとお茶会をしていると、昨日のオケアノスによる地獄の人生ゲームの話になった。
「あれは本当に酷かった。幸せな俺に絶望を見せてきやがったからな」
「いや〜、許してちょんまげ!」
「ぶちのめすぞテメェ!! アァン!?」
「父様、落ち着いてください。モフらせませんよ?」
「うん、落ち着いた」
嫌なことはリルの耳に顔を埋めて忘れよう。モフモフは正義だ。誰が何を言おうと、モフモフの力は最強なのだ。
そんな事を思っていると、植物園の方から緑色の小人がちょこちょこと歩いてきた。
「あら『ルナ様へプレゼント』だそうですよ?」
「俺に?......おぉ」
ぴょんぴょんと足元で跳ねる小人にタッチしてあげると、俺の前にウィンドウが現れ、小人は満足そうに帰って行った。
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『100本の薔薇を咲かす種』Rare:10
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「ソルさんにプロポーズ......したんですよね?」
「何で知ってるんですかねぇ? ねぇ、リルさんよぉ」
「......し、シリマセン」
「勝手に人のプライベートを話すな。お前の耳がもげるまで撫で回すぞ?」
「まぁまぁ、取り敢えずその種を育ててあげください。ソルさんに渡せば、きっと喜んでくれますよ?」
「はぁ......そうだな。ありがとう」
俺は貰った種を大切にインベントリへ保管すると、リルの耳をコネコネしてお仕置をしてやった。
全く、『プロポーズはどんな言葉で?』とか聞かれたら恥ずかしいんだから。次からは辞めてくれよ?
「じゃあそろそろ帰りますかね。オケアノス、次にあのゲームやらせようとしたら全力でキレるからな」
「あはは、もうしないって! 次はハッピーエンドの人生ゲームにしよっ!」
「極端なシナリオだな。それじゃ、またな」
「楽しかったです!」
俺はリルを膝から降ろして立ち上がると、2人に挨拶をした。
「私も楽しかったです。是非、また来てください」
「今度はソルちゃんも連れて、ね!」
「はいよ。目の前でイチャついたるわ」
「「うっ......」」
「大ダメージですね、父様」
「あれが上級神だ。よく見ておけ、リル」
最後に、お礼としてセレナが品種改良したモスベリーの紅茶の茶葉を机に置き、俺達は転移の魔法で下界に帰ってきた。
◇◇
「おっ、おっ、おっかえり〜!」
家に帰ると、ダボッとした服を着たソルが抱きついてきた。
「ただいまソル。どうしたんだ?」
「幸せの水分補給」
「普段と変わらないだろうに......可愛いな」
俺もちょうどソルニウムが足りなかったので補給していると、隙を見たリルが、トコトコとリビングの方へと行ってしまった。
「隙ありッ!」
「んむっ......」
そんなリルを目で追っていた隙を突き、ソルは俺の唇を奪った。それも、結構激しく。
完全に口の中がソル一色に染まると、蕩けた顔で再度抱きついてきた。
「大好き」
「俺もだよ。愛してる」
「んふ〜」
可愛い狐耳をグリグリと押し付けてくるソルを、俺はギュ〜っと抱きしめ、お姫様抱っこをして外に出た。
「ど、どこに行くの〜!?」
「どこにも。ただ、こうしたかっただけ」
結構ユルい服を着ているソルは、あと数センチズレたら健全な男子が死ぬような状況なので、ここでソルを連れ出すことはしない。
そもそも独り占めしたいし。
「そうだ。セレナの所に行って場所を借りないと」
「何をするの?」
「秘密。また今度のお楽しみだ」
「え〜? 気〜に〜な〜る〜!」
「こ〜ら、暴れるな。見えるぞ?」
「見せてあげよっか?」
「そもそも存在しないけどな。ゲームだし」
「よし、ログアウトして見せたげる」
「やめなさい」
コツん、とソルの頭に軽く頭突きをしてから、俺はソルを家に戻し、セレナの管理する農場......いや、大農園へとやって来た。
色とりどりの果実と野菜が実るこの地を1人で管理するセレナには頭が上がらない。
「お〜い、セレナ〜!」
「あら、どうしたの? 寂しくなっちゃったの?」
「誰がじゃ。それよりこれ、植えたいんだけど場所くれない?」
「100本の薔薇......いいわよ。なるべく私達にも見えずらい、魔力の豊富な位置に植えましょう」
「配慮助かる。ありがとう」
「いいのよ。ルナの緊張する姿が見れそうなんだもの」
クスクスと笑うセレナに着いて行くと、果樹園エリアの奥の方へと案内された。
そこは海の見える位置にある農地で、どこか他とは違う、神聖な空気を感じる場所だった。
「ここは多分、島が最初に出来た場所。だから長い年月......多分、1万年くらい? まぁ、私からしたら短いけど。それぐらいの時間をかけて出来た魔力の豊富な場所よ」
「凄いな。逆に、こんな所に植えてもいいのか?」
「いいのよ。ここの主はルナ。それに、その薔薇を植えるなら最高の土地じゃないと」
「分かった。なら、有難く植えさせてもらう」
俺は既に耕された土にスコップで穴を掘り、小人から貰った『100本の薔薇を咲かす種』を植えた。
「えぇ。ちゃんと水と血をあげなさいよ?」
「何で血を?」
「その方がルナの求める薔薇に咲きやすいわ。早咲きも色も、ルナの意思次第だから」
「そういうことなら、まぁ。『アクアスフィア』」
俺は極小サイズのアクアスフィアを2〜300個ほど作り、それを地面にばら蒔いた。そしてそれを数回繰り返すと、きちんと土が湿ってくれた。
「うんうん、それでいいわ。あとは血ね」
「ほいよ」
インベントリに眠っている愛剣を取り出し、俺は左腕を切って血のポリゴンを垂らした。
すると種のあった場所が小さく光り、発芽した。
「は、早っ!!!」
「早いわね。どれだけ我慢できないのかしら」
「いやいやいや! 俺は1週間はかけるつもりだったんだが!?」
「そうなの? でもこれじゃあ......3日かしら」
「早すぎんだろうが......はぁ。仕方ない」
「ちゃんと服の用意もしなさいよ? 心配なら見てあげるから」
「あぁ。そこら辺はしっかりするよ。ありがとう」
何だかんだで俺の面倒を見てくれるセレナにお礼を言い、俺は家に帰った。
道中、ヒカリやラース君と遊んだので、少し遅い帰りとなってしまった。
「ただいま〜」
「おかえり〜。遅かったね?」
「ちょっと遊んでた。これから落ちる?」
「うん。もう晩ご飯の時間だし」
「了解了解。俺も手伝う」
「フッ、貴様の腕を楽しみにしておこう」
「何キャラだよ。全く......んじゃ」
流れるように着替えを済ませた俺は、寝室のベッドでログアウトした。
明日の朝には、薔薇が咲いている事だろう。
本編には無いR15なので、少しだけディープにしてやりました。はい。それぐらしか書けませんでした。はい。
次回は続きです。裏話た〜のし〜!