雛祭り〜リルとメルの成長を祈る〜
3月3日、雛祭りです。
間に合い.....ましたよね!?
「雛祭りの日だぞ!!」
「え?私?」
「陽菜祭りではなく、雛祭りだ!!!」
今日は3月3日、女子の健やかな成長を祈る、春のイベントだ。
リルとメルの成長を祈り、楽しもうじゃないか。
「フー!米を用意しろ!シリカ!チェリの周りに台を設置しろ!セレナ!リルとメルに浴衣を着せろぉ!!!」
「「「は、はい!!」」」
「凄い気迫だね。そんなに楽しみにしてたの?」
「あぁ。こういう年中行事って、家族じゃないとほとんど縁がないだろ?でもここでは、俺達は家族だ。年中行事に親しみやすくて、丁度良いだろう?」
可愛い可愛いリルとメルの為だ。俺も全力で準備しよう。
「それもそうだね!2人の為に頑張ろっか!」
「あぁ!陽菜......じゃなかった、ソル。菱餅と雛あられ、それとちらし寿司ならどれを担当するか?」
「それじゃあちらし寿司をやろうかな。お餅とあられは任せるね!」
「任せろ!じゃあ早速取り掛かろうか」
「うん!」
そうしてフーがお米を持ってくると、俺達の料理は開始した。
「まずは餅作りだな。神米は餅米としても扱えるの、万能すぎて嬉しい」
「へぇ、お餅ですか。私も手伝いましょうか?」
「頼む。臼と杵は買っておいたから、そこに蒸した神米を入れてつくぞ」
「了解です」
俺は神米に水を吸わせ、米が膨らんだのを確認してからザルに上げた。
そして蒸し器に蒸し布をセットし、神米を広げた。
この時に、蒸気の逃げ道が出来るように空間を作りながら広げた。
そして沸騰した湯にかけ、1時間ほど蒸す。
「フー、臼と杵を温める為に、アクアスフィアを熱湯にしてこいつらを入れてくれ」
「分かりました。ソルさん、メテオラス借りますね」
「オッケー!はい、どうぞ!」
「ありがとうございます。『アクアスフィア』『ファイアランス』」
フーは臼と杵をアクアスフィアに入れると、ファイアランスを使って徐々に温度を上げ、温めていった。
そして神米が蒸し終わると、温めた臼に移し、俺は杵を手に持った。
杵はかなり熱いが、ブリーシンガメンによるゴリ押しで我慢する。
「じゃ、まずは米を潰すぞ」
「はい。頑張ってください」
まずはゆっくりと、体重をかけて神米を潰していった。
この時点ではつかずに、ゆっくりと。
「──よし、次はつくぞ。フー、合いの手はいるか?」
「まさか。私がルナさんと呼吸を合わせられないとでも?」
「良かろう。ペースは上げず、落とさないからな。そこだけは言っておく」
「分かりました。では、どうぞ」
ペタン!ドゴン!
「ッ......」
「......」
ペタン!ペタン!ドゴン!
「......」
「......」
ドゴン!
「......ぐすん」
ペタン!ドゴン!
「うわぁぁぁん!!ルナさんがいじめる〜!!!!」
フーが泣きながら出て行った。でも......ごめんな。
「顕現」
「きゃっ!」
「逃がすと思うなよ?リルとメルの為、頑張るんだ」
「嫌です!ルナさんがいじめますもん!」
「お前が合いの手は要らないと言ったからだろう?それに、なんで2回目でミスするんだよ。ちゃんと見ろ」
「かぁ!パワハラですよ!シリカさんに訴えてやります!」
「やるか?いいぞ。シリカ、顕現」
俺はシリカをこの場に顕現させた。
「どしたの?お兄さん。台の設置は終わったよ〜」
「お疲れ様。ありがとう。それでな、何やらフーがお前に訴えるらしいぞ」
俺はシリカの体の向きを180度反転させ、フーに向けた。
「聞いてください!ルナさんが餅つきでいじめてくるんです!」
「餅つきで?」
「はい!執拗に私の手を狙ってつくんですよ!しかも逃げ出したら強制的に顕現で戻されるんです!」
おい、尾ひれ付けんな。俺は餅を狙ってついてんだよ。
「じゃあまず、お兄さんとの餅つきを見せてよ。それから判断しよ!」
「いいでしょう。ルナさん、準備はいいですか?」
「あぁ。じゃあいくぞ?」
ペタン!ペタン!ペタン!ペタン!ペタン!
お、上手くいってる。よしよし、続けていこう。
ペタン!ペタン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!
「......ぐすん」
「......」
「......ぷふっ」
フー、途中から手を入れっぱなしにしてたぞ。そのせいで3回もぶっ叩いてしまった。すまん。
「お姉ちゃん、ふふっ、なんで、手を、ははははは!!」
「笑うなんて酷い!今のはルナさんが悪いでしょう!」
「お前、どこ見て餅を剥がしてんだ?」
「そりゃあ、ルナさんを見て餅を剥がしてますよ!」
「なんで俺を見てんだよ!餅を見ろよ!」
「だって......気になるんですもん。どのタイミングで来るか、分からないから......」
呼吸、全く合ってないんですね。フー、ここは潔く合いの手を入れるようにするのが手だぞ?
「もう。じゃあお兄さん、シリカが代わりにやるね!さ、ついてついて!」
「あいよ。そいっ!」
ペタン!ペタン!ペタン!ペタン!ペタン!ペタン!
「はい、一旦ひっくり返すね......はい!」
ペタン!ペタン!ペタン!ペタン!・・・・・・
そうしてフーからシリカに変わった瞬間、完璧に餅つきが出来るようになった。
「はい、完成だね!お疲れ様、お兄さん!」
「シリカもお疲れ。台の設置に続き、ありがとうな」
「ううん!フー姉ちゃんがポンコツなだけだったから、何ともないよ!」
「ポン......コツ......グハッ!」
あぁフー、可哀想に。頼みの綱であるシリカにまでポンコツと言われて......
「惜しい付喪神を亡くした」
「死んでませんよ!!!」
「なら立て。これから着色して重ねて蒸して、最後に切って完成だ。ポンコツじゃないフーなら出来るだろう?」
「......はぁ。それなら私とシリカさんでやるので、ルナさんはもう片方の作業に入ってください」
お、やる気が出てきたな。しかも最初からシリカとやるとは、フーも考えている。素晴らしい。
「あ、下は緑、真ん中が白、上がピンクの餅を重ねるんだが、緑の着色料はモスベリーの葉で。白はそのまま、ピンクはコイツを使ってくれ」
俺はあるアイテムをインベントリから取り出し、フー達の前に置いた。
「「これは??」」
「『新月の桜の花弁』だ。メルが集めた桜の花だ。こいつならピンクに染めるのも簡単だし、香りもつく。だからこれでやってくれ」
「分かった!」
「分かりました。使わせていただきます」
「あぁ。頑張れ」
それでは俺は雛あられの作成に入ろう。まぁ、こっちは超絶簡単で、神米を油で揚げるだけだな。
「おっ鍋に油を入っれま〜して〜♪」
「あっぶらっを徐っ々に〜あ〜たた〜めて〜♪」
「そっこにおっ米〜を......ぽぉぉぉぉん!!!!」
「「「何あれ......」」」
冷たい視線が飛んでくるが、俺には効かない。ルナちゃん☆クッキングは何があっても続けられるからな。例えゴブリンが襲ってこようと、神龍が襲ってこようと、このクッキングは続けられる。
「さっくら〜の粉を......バサァァ!!!」
「葉っぱ〜のこ〜なを......バサァァ!!!」
「最後に砂糖もバサァァ!!!」
「「「雑......」」」
「雑言うな!見ろよこれを。綺麗だろ?」
俺は揚げた神米に色の粉を纏わせた、雛あられを見せた。
「「「......綺麗」」」
「おい、なんだその『認めたくない気持ちだけど、本当に綺麗な物だった時の反応』みたいなやつは」
お兄さん、リル達の為に頑張って作ったんだよ?これ。
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『ルナちゃん特製☆雛あられっ』
Rare:21
製作者:ルナ
効果:食べると1時間、HPが10倍の速度で回復する。
また、STRとINTが600上がる。
サクサクしていて美味しい。
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シンプルに強い性能のお菓子だな。
ステータスの倍率アップではなく、数値がそのまま上がる、かなり使い所のある性能となった。
「ソル、ちらし寿司の方は出来たのか?」
「うん!寿司とは呼びにくいけど、食品店のお魚を使ってみたの」
「ならオッケーだ。さ、チェリの所で雛祭り兼花見をするぞ」
「「「お〜!!!」」」
そうしてチェリの元へ行くと、既にセレナとアルス、そしてリルとメルが待っていた。
ちゃんと布を敷いて、その上にちゃぶ台が乗せられていた。
「あ!父様!」
「リル。やっぱり似合ってるな、その浴衣。とても可愛いぞ」
「えへへ。ありがとうございます!」
「パパ」
「ああ。メルもとっても可愛いぞ。元気におっきくなれよ?」
「うん!」
そしてシリカに持ってこさせた台......もとい、ちゃぶ台の上に、先程作った料理達を出した。
「あら、綺麗ね!」
「主、この桃色のは?」
「それはお菓子だな。とりあえず座りなさいな」
そうして全員が布の上に座ると、何を言えばいいのか分からなくなった。
まぁ、リルとメルが、これからも元気で入れるように願うくらいか。
「雛祭りとしてリルとメルの健康と、更なる成長を祈ろう。2人とも、程々に頑張ってな」
「はい!」
「うん!」
「それじゃあ、飲み物を持って......乾杯!」
「「「「「「乾杯!!!」」」」」」
そうしてヴェルテクス全員で、雛祭りをお祝いした。
「実質私の祭りでもあるよね」
「名前を変えればな。ソルも健康でいられるように祈ってるよ」
「うん!ありがとう!」
ギリギリセーフ!!!