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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
0-1幕 ゲームスタート、王都への道のり

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9.にゃーん

 お肉集めをしていれば先に夕飯の時間が来てしまいました。ちょうど必要数が集まったところで妹と共に一旦ログアウトです。

 夕飯の席に向かえば、そこには帰宅した父の姿もありました。すごく楽しそうに母と話しているところで、席へと着きます。


「や、深冬と千夏。……いや、クレハとジュリアって言った方が早いかな?」

「もう。それはゲームの中での名前ですよ。現実(こっち)でくらい、ちゃんと名前で呼んでください」

「あっははは。それもそうだね、ごめんよ」


 分かれば宜しい。って、ちゃんとそのキャラクターネームを知っているということは見てたんですね。

 まあ、オープン日であり各種調整が特になければゲーム内を見ておくのかいいでしょうしね。何かトラブルがあっては困るでしょうし。

 母の配膳が終われば、一斉に食べ始めます。最近は父の仕事が落ち着いたのもあって、ここ数日は団欒は皆一緒でです。

 たまに食事中に電話がかかって来て会社からの呼出しもありましたが。その時は苦笑しながらお見送りでしたね。


「ゲームの調子はどうかな。夕方までしか見てなかったから」

「はい、すこぶる順調ですよ。今のところ不具合やバグもないですから」

「ま、あったら俺にまず電話が来るんだけどなぁ、ははは……」


 メインのシステムエンジニアの一人ですからね。それはまあ、はい……。

 手に入る限りの情報でも特に何もありませんでしたからね、このあとゲームに戻れば溜め込んだお肉を納品して売り払って次の街へ、です。

 本来一日で進むにしては相当なところではありますが、そこのところはどうなのでしょうか……?

 余裕があれば次の街まで進んでおきたいところですが。朱音はもう到着したようですしね。


「そういえば割とペース早いなーって思うけど、この調子でいいの?」

「ああ、いいぞ。ベータって言ってもたっぷりシナリオは盛ってある。どんどん進んでくれ」

「よかったー、みんな進むペース早いから焦っちゃった。えへへ」


 聞こうか迷っていれば、千夏が先に聞いてくれました。問題はないそうです。

 ……しかし、ストーリーたっぷりですか。これは相当長くなりそうですね、ベータテストは。

 

「千夏はこの後どうするの?」

「そうだなぁ……お姉ちゃんと納品してから次の街に行って……うん、多分お姉ちゃんとやる事一緒だと思う」

「わかった。じゃあ私はそのあと取得したアーツを確かめてから学校の課題ね」

「ふぁっ……あっ、紫音に一緒に課題やるの誘われてたんだった!いけないいけない……」


 学校の課題をすることも忘れてはいけません。いつものトレーニングはゲーム内でやっているとはいえ、です。

 ついでに軽く身体も動かしてからの睡眠も、ですね。あまりゲーム内にばかり慣れてしまって運動不足になっては意味がないですから。

 千夏は紫音ちゃんととても仲がいいですから、こうして一緒に課題をするのもいつものことです。やるのは何時も通り《VRクラブハウス》ででしょうね。

 学校もVRの普及や電子機器の発展につれて教科書は紙媒体の書籍から電子書籍に移り変わり、課題のデータもプリント用紙からデータになっていきました。

 なので《VRクラブハウス》など、VR上で集まる事が出来るツールでは課題データを呼出して、みんなで出来るように、などという配慮がされています。

 もちろん不正なものや丸写し、なんてことをすれば先生方にバレてしまいますが。その辺は当然のことですね。


「じゃあ、22時までに切り上げよっか。その方がいいだろうし」

「うん、そーする……といっても、午前中にそれなりに片付けちゃったしね」

「それでもあんまり夜更かししちゃ駄目よ?」

「「はーい」」


 姉妹揃って返事をしながら、夕飯の残りを食べ進めます。塩鯖美味しいですね、出来る限り脂を落とし醤油の量も少な目で味はしっかり付いています。

 ゲーム内でも料理をしてみましょうか。とは言っても、遠出をして手に入る肉を適度に調理するくらいで、本格的な調理はしませんが。

 となると、調理用の器具も必要ですね。調理本やレシピなどもありそうですが……次の街でそれも調べてみましょう。

 今日の残りでやることが決まる頃には夕飯を食べ終えていました。手を合わせてご馳走様。


「お粗末様でした。お風呂も沸いてるから、入ってからやりなさいな」

「はーい」


 先に其方も済ませておきましょうか。しばらくはこんな生活が続きそうですね。

 ある程度調子を整えておけば崩れる事はありませんし、ゲームの方もそんなに早く早く行くわけではありませんから。

 地道にゆっくりやっていきましょ……あ、お風呂、妹に先越されました。課題でもして待っていましょうか。



――◆――◆――◆――◆――◆――



 というわけで戻ってきました。


「お姉ちゃんおかえりー!」


 先に戻って来ていたジュリアと合流。肉屋と運び屋の処に向かいましょう。

 ちょうどお互いが持っている量でクエスト終了のようですから、終わらせるものは終わらせておきます。


〔〔グランドクエストが完了しました:村の皆の晩御飯〕〕

〔〔参加者に報酬が配布されます〕〕


「いやー助かったよ!ありがとうな。これでしばらくは食いつないでいける。ハンターさんが快復するまではもうちょっと買い取りは引き続き行うが」

「いえいえ、これくらいでしたら。まだまだ後続も来ると思いますので、お願いします」

「おうわかった。任せろ。兎の肉だけじゃ飽きるからな、たまには違う肉も持って来てくれると嬉しいぞ」


 同じ肉だけでは確かに飽きますからね……わからなくはありません。

 それでは次、運び屋さん達の方です。所持しているお肉を売り払って、合わせて40000と言ったところでしょうか。

 兎肉が120個と鹿肉が20個でしたからね、いい額になりました。ジュリアと折半して残金は33000エルです。

 少し手元に残しておきたいですが……まあ、こちらは二つ目の街への通り道で稼ぎましょう。

 

〔〔クエストが完了しました:運び屋たちのごはん〕〕

〔〔参加者に報酬が配布されます〕〕


「ありがとうありがとう、村の方には迷惑かけたな。今度王都の方から何か村に運んできておこう」

「はい、しっかりお仕事頑張ってくださいね。……って、王都から来られたんですね」

「ああ、そうとも。可愛らしい猫の女王様が統べる《幻昼界》の首都さ、ここから北東に三つの街を越えた先にある」


 ……猫の女王様が統べる、ですか。綾鳴さんとは違う方が統治をしているのですね。或いは、二手に分かれてか。

 本来の統治者とは別の方が統治しやすい、もしくは綾鳴さんは神様としてももっと高位の方……ありえますね、ひとつ考察として置いてきましょう。

 と、いい情報が手に入りました。王都まであと二つ街があるというわけですね、王都に着いたから終わりというわけでもなさそうです。


「……意外と距離がありますね」

「そうでもないさ、今みたいに魔物に溢れてなければ全力で走って半日だからな。それでもお嬢ちゃんみたいなのだと時間は掛かるか」

「はい、まだ戦い慣れてもいませんから……あはは」

「それじゃあひとつだけ。多分女王様の使いが見に来てるかもしれないから、兎と間違えて手を出すんじゃないぞ。ひどい目に遭う」

「わかりました。ありがとうございます」


 私達がぺこり、と一礼をすれば運び屋さんは荷を纏めに戻って行ってしまいました。

 それにしても兎と見間違えるくらいの女王様の使いですか……間違えて手を出すと大変な事になりそうですね、しっかりとターゲットを見て行きましょう。

 ひどい目に遭うという程度ならいいのですが……流石にこんな序盤で即死攻撃とかないですよね、あはは……。


「それじゃあ次の街に行こっか。もうここも大分人が少なくなってきたね」

「そうしましょう。もう始まって6時間が経ちそうなくらいですからね、大方の人は一番道路か次の街でしょう」


 そうなるとこの二つのグランドクエストを大半の人が無視して行ってしまったことになります。悲しいですね。

 ですが、これをの達成をキーとして発生したクエストもきっと……《世束》を見回しますが、発生していませんね、本当にこれだけだったようです。

 私達も遅れず先に行きましょう、目指せ次の武器。目的が変わっている気がします。

 と、その前にお肉集めで再び上昇したステータスを確認しておきましょう。後半はほとんど適当に振っているだけで兎肉を量産していました、レベルは十分でしょう。


 クレハ Lv.8

 性別:女

 種族:人間

 属性:水

 特殊:


 VIT:36

 STR:88(+16)

 AGI:52(+4)

 DEX:52(+4)

 INT:36

 MND:36

 種族スキル:

 汎用スキル:《剣術》Lv.5 《刀術》Lv.7 《歩法》Lv.8 《居合術》Lv.5 《解体》Lv.7 《索敵》Lv.7 《採掘》Lv.1 《回避》Lv.8


○刀術

行月(ゆくづき)

 一歩前進するように前方へ踏み込んでの斬撃。


○居合術

・弾き返し

 《抜刀術》により自分に対して行われた遠隔攻撃を居合ゲージを消費して弾き返す。範囲系の魔法攻撃には無効。


 踏み込んで斬る事は身体の癖でやっていましたが、《行月》習得して明らかに威力が増えました。

 おそらく普段からしている動作もアーツを習得することで補正が掛かるんですね。

 《居合術》のスキルレベルの上昇に併せ、カウンターが鹿相手にも発動するようになりました。

 それとまだ遠隔攻撃を行う相手が存在しないので試せませんが、《弾き返し》という遠隔対策を習得しました。そのうち使う事になるでしょうね。

 ただ兎と違い手数は必要なので、やはりもう少し威力が足りないということでしょうか。武器を変えれば安定するとは思いますが。

 この調子で色々上げていきたいですね。まだまだ先は遠いのですから。

 それに配信の方だと……その三つめの街にボスがいるそうです。間に合えば一太刀、幾らか試してはみたいものです。


 さて、三度目の一番道路へとやってきました。

 ここも大分人が減り、多数が次の街へと向かったことが分かります。取り残されないように先に行きましょうか。

 時間もあるのでおそらく夕飯時、或いは今日は切り上げてしまっているというのも考えられますが。人が密集している訳でもないので通行もだいぶ楽です。

 ただ問題があるとすれば、陽が暮れて夜道の為に兎の視認が少し辛くなっているところでしょうか。これはこれでダンジョンの探索練習になりますが。

 整備されている道に沿って歩きます。ここを歩いている最中はあんまりモンスター、というか兎には遭遇しません。

 索敵にも引っかからないんですよ。ですが、少し道を外れた途端に遭遇率がぐーんと上がってどんどん沸いてきます。

 ちょうど、或る程度の人数が次の街に辿り付いた辺りから自然とこうなったようです。まだほんの僅かですが、なんだか開拓している感じがあっていいですね。


「ここが最初の一歩、って感じですね」

「ええ、姉様。だんだんとこれを広げていくのが目標になりますね……」

「モンスターが減少すれば往来も楽になる。目に見えてわかります」


 ちょっとだけRPを忘れかけていたジュリアがようやく再開します。姉としても見ているの楽しいんですよね、これ。

 ただ姫プレイというものを嫌う層というのも一定以上はいますから、心配なのはそのあたり……と言いたいですが、ジュリアの場合、荒々しいので関係なさそうです。

 そしてこの時間までプレイして気づいたのですが、今時点でこうしてパーティプレイをしているというだけでも意外と目を引きます。

 単純にお友達と一緒に応募したけど当選しなかった……という方もいるのでしょうね。ちょっぴり羨ましがられているのでしょう。


 と、ふと。丘の向こうから戻ってくる人たちもちらほら。

 ログアウトする先を探しているのかも知れませんね、画面端にちょこんとある現実時間を示す表記……LTを見ればもうすぐ21時です。

 意外とフルダイブ型というものは体力は使いませんが、その分集中力や精神力を使います。

 慣れている人はその精神力、或いは長時間の集中を意に介さない人か、リアルで体力も付けて、長時間のゲームに身体を対応させている人か、です。

 私やジュリアは後者で、フリューやルプスト、ルヴィアはきっと前者のタイプでしょう。それでも、適度な休息は大事なのですが。


「……あら。あれは……なんでしょうか?」

「あれは……猫、かしら。でも尻尾が二本……猫又?」

「でも猫ってここに沸いたという話は……」

「ないですね。もしかして……?」


 ごそ、と草叢から黒い子猫が。毛先が白く金輪を付けられた二股尾がゆらゆらと揺れ、金色の瞳がこちらや周囲のプレイヤーをじーっと見つめています。

 一番道路に猫なんていましたっけ? と頭を傾げながら見ていれば、可愛らしく音もさせずにとことことこ、と草原を歩きながら見て回っている様子。

 しばらく見ていてホップしたネームタグは、"???"です。あ、ついでにステータスも見られるようですが、どれどれ……?


 ??? Lv.??

 属性:闇


 ……見事なまでにクエスチョンマークだらけですね。HPとMP、表記あったら六桁とかあるんでしょうか。

 ひょっとして、先に運び屋さんから聞いた猫姫様の使いってこれだったりするんでしょうか。猫ですしね。


「……んっ?」


 猫と視線が合いました。しゃがんで誘う様に指をくいくい……としても頭を傾げるだけで寄って来てもくれませんね……。

 その上鳴きもしませんか、使いとしてとなら、さすがと言いましょうか……。と、そう思っていれば。


「うーさぎうーさぎ……っと」

「あっ」


 ひゅん、と猫に目掛けて矢が射られましたが猫が感知した途端、その先端が勝手に逸れて掠っていきました。傷はないようですが……明らかに矢が今変な動きしましたね?

 それを追求するのは置いておくとして、矢を放ったのは向かいからやってきた男のエルフでした。

 戻ってくる最中からと考えると、どうやら後半の闇属性の兎と勘違いしたようです。なんてひどいことを。


「って、あれ。丘の手前側で黒兎なんていたっけ…?」

「あー……なるほど。そこの方、今射ったのは兎ではなく猫ですよ……」

「へ、猫? そんなのここにいたっけ……。うわ……いるわ……」


 半身半疑のエルフさんにちょいちょい、とその方向を指さして見せます。

 猫は動かずに、きょろりと自分に矢を射かけたエルフさんの方へと向き直って見つめていますが……明らかに怒ってますよね、これ。

 じっと子猫の閉じたままだった口が開いたと思えば、



「にゃーん」



 あら、かわいい。怒ってなんかなかったようです。

 一鳴きするなり、すぐに夜闇に紛れていくようにどこかに行ってしまいました。なんだったのでしょうか。

 結果的にこちらからすると威嚇して追い払う形になってしまったようです。子猫ちゃんには悪い事をしましたね……。


「うっわ!? なんだこの状態異常!?」

「おや?」


 声の主は先に矢を射かけたエルフさんのようです。確かに彼の方を向いて一鳴きしましたが、何かあったのでしょうか?

 状態異常、とは言いますがこちらからは確認することはできません。とりあえず落ち着かせて聞いてみましょう。

 軽いパニックになるほどとは、一体本当に何が……。


「……えーっと、[ドロップ率低下(中)][取得経験値低下(中)][命中率低下(小)]で、持続時間は10分間……ですか」

「これはえげつない……しかも中……多分レアドロップとか経験値、雀の涙になるくらいですわね……」

「もう切り上げるつもりだったからいいけどよー……なんだよこれー……」

「御愁傷様です……あはは……」


 がっくりと肩を落とした様子なエルフさんです。それはちょっとしたミスでこんな強力なデバフが飛んで来たら……ですね。

 一応、後続への注意も兼ねて掲示板に上げていいかと聞いたところ、大丈夫だという返事が返って来ました。自分で上げるのは不注意からだったため、少し恥ずかしいとか。

 デバフの状態のみをスクリーンショットしてから掲示板に書き込みます。その間にエルフさんと別れ、彼は《世束》の方へと歩いて行ってしまいました。

 ……しかし、初日にこんな凶悪な状態異常を仕掛けてくるMob……いえ、NPCでしょうか、出現させるとは油断なりませんね。


「姉様、さっきの」

「はい、矢が触れる前に角度が変わりましたね。防御力が到底まだ到達しえない高さ、あるいは能力か、ですね」

「それにあの呪いですね。あれで本気とはまだ思えません」


 再び次の街へと歩きながら、さっきの一幕で得た情報の精査を始めます。これも癖のようなものですね……。

 キャスタータイプの方など遠距離攻撃を主とする方には対象を誤射しない技術も頑張って身に着けてください……というところかも知れません。

 結論としては、相当先にもしかしたら相対するかも知れない相手。あるとすれば呪い対策の装備は必須、というところでしょう。

 丘を越えて歩き続けていれば、次の街が見えてきました。まずは冒険者組合、それから装備更新ですね。


にゃーん。ねこはいます。

本編で言及されていたデバフの黒猫です。

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