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82.後日における討伐数最上位勢の狩り方

「……っ、《降月》!」

「《ダブル・ボルトプロード》……!」


 ルナさんとの雷属性攻撃の連携でまた一体の《メイルベア》が地に伏せました。それから、額を一拭いしつつ、次の標的を探します。

 戦闘開始して一時間、前線ではずっと戦いっぱなしの状況が続いていました。流石にひっきりなしに来ると大分疲れるというか。

 時折戦線から下がって休んではいるのですが、それでも一向に魔物の勢いは止まらないんですよね。そろそろ途切れそうなものですが……


「《速癒》……ふむ、大型が出たようじゃの」

「掲示板情報ですか」

「前線に出たルヴィアが戦闘開始したみたいじゃ、こっち側も……うむ、猪頭の方が来ておるの、もう騎士団の指示する遊撃隊が戦っておるようじゃ」

「うーん、対処に出ているなら私達は中型と小型に勤しみますか」

「賛成。結構消耗してるから、大物は控えたい」


 映していた配信の方をチラ見すると、大型の鎧熊……《ヘビーメイルベア》と対峙しているルヴィアの姿がありました。

 その巨躯もさながら、重厚な鎧に身を纏った大熊ですね。レベルも50とあの手加減状態の《千歳姫》さんよりも上になります。

 まあ、あの時と違い結構平均レベルも上がっていますから、止めようとするとそれくらいのレベルは必要なのでしょう。

 ちなみに戦闘の最中、中型の鎧熊こと《メイルベア》と猪頭こと《ボアファイター》のステータスも見ておきました。


メイルベア Lv.40

属性:氷

状態:汚染


ボアファイター Lv.40

属性:氷

状態:汚染


 氷属性持ち以外に闇や水属性持ちが居ましたが、概ねレベルはこんなものでした。水に近い属性を持っているのは《万葉》は海と近いのもあるからでしょうか。

 どちらにせよ、標的によって属性の傾向が固まっているのは処理が楽でいいですね。その分小型については属性に規則性が無くかなりバラついているのですが。

 レベル差ついては……まあ、近いレベルのものを散々相手にしてきていますから。これくらい差であれば早々気になる事はありませんでした。

 と、探しつつ寄って来た狼の群れを撃退する最中、私達に近づいてくるパーティがありました。


「おーい、クレハ! そっちのパーティにそろそろ合流するぜ」

「ああ、サスタさんとカルパさん達。そちらはもういいんですか?」

「おうさ。だが俺らが暴れすぎてポーションの残量が不安でなぁ……パーティは別だが、そっちと合流して、万全に戦い抜こうってな」

「それは構いませんし、むしろこの数なら大歓迎ですね。とはいえ、私達もそろそろ補充に一度下がりますが……」

「大物が出てから数が減ってるから、一度補充に戻るつもりなら今のタイミングだな」


 寄って来たのはサスタさんが率いていたパーティでした。私達よりも少し前の方で戦っていましたからね。

 前衛の壁となるサスタさんと共に組んで特攻野郎をしていたカルパさん。斥候役として走り回りつつ、小型を倒していたアマジナさんとタラムさん。

 それと……おや、後方にもう一人。確か出発の際に組んだヒーラーさんでしたね。今はカエデさんと交代して休憩に回っている様子で、一人で四人を支えていたようです。


 大物が出てからぐっと小型と中型の魔物の数が減っているようで、そのお陰で合流が出来たようですね。

 その隙に一度撤退して消耗品を補充の方針を殆どが取るようですので、私達もそれに乗りましょうか。


「そちらの方はヒーラーさんですか?」

「はい! 私ですか……!?」


 私はちょっとだけ下がって、ちょっと休憩されているヒーラーの方へと話しかけます。なんだか話しかけた途端びくりと反応されましたが……

 ちょっとおどおどとしながら、私の方へ。……なんでしょう、私に呼ばれた途端、顔を輝かせてどことなくフリューと似たような雰囲気がするんですが……?


「クレハさんですよね!? 私あなたのファンでイチョウって言います!!」

「っ、あー……はい、そうです。イチョウさんでいいんですね?」

「はい! 今回は皆さんの後ろでヒーラーをさせていただいてます!」


 ああ、なるほど……ちょっとベクトルは違いますがファンの方でしたか。癖の強いウェーブにシルバーカラーの髪色をした獣人……狐人の方ですね。

 どうにも《巫術》使いの方はそれに向いた狐人か天使を選ぶ傾向があるそうで……彼女もその一人のようです。

 同じ狐人でもカエデさんは黒基調の巫女服ですが、こちらは名前に合わせたのか銀杏(いちょう)色の狩衣を纏っています。平安時代の道士風……といった衣装ですね。


「クレハさんの事はルヴィアさんの配信の時から見てました!」

「その時からでしたか……ということは、第二陣の?」

「はい! クレハさんに憧れて《DCO》を買いました!」


 イチョウさんはとても目を輝かせながら、私の手を握って頬ずりをし始め……私や同じく休憩するルナさんも苦笑しながら見つめます。

 見てますか、ルヴィア。どうやら私にもフリューめいた何かが憑いたようですよ。


 とりあえず前線から下がり、補給地点に到着。《生い茂り過ぎた樹海》の時と同じく、コシネさん達が補給班をしているようですね。

 ポーション類を補充しながら、組んでいたサスタさん達に彼女(イチョウ)についてちょっと聞いてみましょうか。


「組んでいる感じ、どうだったんですか?」

「ん? ああ……俺達は輸送護衛の時に知り合ったんだ。なんか二回目から参加してたみたいなんだが、お前達に逢うのが目的だったぽいな」

「こないだすれ違っただろ、あの時は悔しそうな顔してたよ。輸送護衛の後に追いかけていったみたいだが……まあ、《緊急退避(しにもどり)》してきたが」

「ああ……肉ロードにヒーラー単騎で突っ込めばそうもなるでしょうね……」

「一応だが《クイックチェンジ》で弓も使えるみたいだったぞ。ヒーラーとしても大分イケてるが、本職は後方からの射撃だろうなあ」

「へぇ……? ちなみにパーティを組んでないのでわからないのですけど、彼女のレベルは?」

「俺とタラムと同じ28だな。色んなパーティに入って結構な廃レベリングをしてたみたいだぞ」

「最前線級ですか……」


 結構彼女もやり手なようですね。それにしても、メインは《弓術》とは……フリューとはちょっと違った趣向が見え隠れします。

 あとは、ファンだとしても追っかけ程度なのか、私が感じた通りのフリュー級なのか、それとも……?

 その辺に関しては、この戦いが終わってからにしておきましょうか。今は戦闘に集中しておかないと。


「……お、どうやら大型が片方倒されたみたいだな。そろそろ戻った方が良さそうだ」

「こちらも補充は終わりましたし、皆さんももう大丈夫そうですね」

「うむ、ばっちりじゃぞー。念の為に多めにしておいたからのう」


 少しばかりの休憩を挟んでから、すぐに再び前線へ戻ります。二つのパーティに割り振る形はそのままに人員を少し入れ替え。

 おおよそ前衛組パーティと後衛組パーティに分かれた割り振りへと変更しました。

 前衛組が私、カルパさん、サスタさんにカエデさん。後衛組がタラムさん、アマジナさん、ルナさん、それにイチョウさん。

 ちょうど4人ずつに分かれた形で、アマジナさんは接近してきた小型を遊撃してもらう役回りとなります。


「そんじゃ、前衛組は気にせずガンガン狩っていこうか」

「おうよ! 後衛組もどんどんやってけ、後ろに獲物をやらん勢いでな!」

「戦線もだいぶ押してるからその辺は余裕だと思うよ」

「容赦は、しない」


 皆さん士気は高めなようです。これならどんどん押して行けそうですね。

 早速小型の魔物の群れがやってきました、我々前衛組は駆け出しながら武器を抜刀。真っ先に飛び込んだのはカルパさんでした。


「うおっりゃあぁぁッ!」

「わ、相変わらず豪快ですね……!」


 鉄製の大斧を構え、踏み込み左足を軸にフルスイング。同時に振るわれた鉄の嵐によって、群れの先頭にいた二体の狼が吹き飛びました。

 流石に暴力的な一撃とはいえ、それだけで倒れるほど魔物側もヤワではありません。吹き飛んだ魔物はそれに合わせてルナさんから魔術攻撃とタラムさんの射撃でトドメを刺されました。

 カルパさんに続けて飛び出たサスタさんがシールドバッシュで襲い掛かった兎を跳ね飛ばしたところに今度はカエデさんからの魔術が直撃。

 前と後ろでしっかりと無言の連携が取れているのはいいですね。こういった動きが出来るのはこれはこれで燃えます。


「私も負けてられませんね……!」

「きゃー! クレハさんっ、頑張ってくださいっ!」

「あ、あはは……《八卦・光》」


 踏み出す構えをした途端に後ろから飛んで来た声援に内心苦笑しつつ、二人に遅れつつ《飛行》を起動し、地を滑走するように大熊三体の間へと吶喊。


「―――ッ!!」


 懐に飛び込んできたところを叩こうと腕を振り上げた熊三体が振り下ろす前に《月輪》を繰り出し―――その名の通り、輝く光輪を描く斬撃で先制攻撃。

 鋭い斬撃を喰らい面食らった三体のうち、正面にいる一体へと狙いを絞って地を蹴り跳ね上がり。その脳天へと振り抜くような軌跡を取りつつ遠心力を宿した刃が直撃し、喰らった熊は昏倒しました。

 改めて攻撃を仕掛けてこようとするサイドの熊二体へと狙いを切り替えれば、先の一連の行動で跳ね上がったそのままに落下しつつ右隣の熊へと向けて《降月》を喰らわせます。

 二体目が倒れれば、最後の一体へと視線を向け―――れば、既に殴りかかるモーションに切り替わっていたので一気に飛び下がって回避し、一息ついて対峙。


「―――っは―――」

「前より動きが洗練されてんなぁ……!」

「こっち来て知り合ってからクレハはずっとあんな調子だぜ……!」


 間近で戦う二人も脇目でこちらを見ながら話しています。随分と余裕があるようですが……私は目の前の獲物に集中しないと。

 息を吸い込めば二度吶喊。今度は《瞬歩》を使い、一瞬で距離を詰めての四連続攻撃の剣舞である《月天》。速度を上げた四連斬撃によって一瞬で葬り去ります。

 昏倒させただけだった一匹目、気絶させて倒しただけの二体目にはアマジナさんが飛びついてトドメを刺していました。いいですね、有り難いですが……

 その後方にまた大きな影が二つ。それが見えていたからこそ、私はこの三体へと向かったのですから。


「鎧熊、来ますよ」

「よっしゃあ俺達は猪頭だァ!」


 その後方には一体ずつ鎧熊(メイルベア)猪頭(ボアファイター)。それに備えて既にこちらは《八卦・光》を予め使っておきました。

 猪頭には既にサスタさんとカルパさんが向かったので、こちらは鎧熊を担当しましょう。物理一辺倒の二人は猪頭の方に向かって貰った方が早いので、ある意味当然でしょう。

 後衛組もこちらのサポートに狙えるという様子を見せていますし、そうなら私だけで挑んでも大丈夫そうでしょう。


「では、っと」


 再度。しっかりと獲物を見据え、今度は納刀したままに向かい―――《新月》を使い、一撃の威力を高め。

 狙うはその腕の鎧。属性を前提とすれば、鎧熊は体を纏う鎧部分を狙った方がダメージが出るのは先に試した通り、なので……


「……《剣閃一刀》……!」


 飛び込み、鎧熊が肩鎧を盾に体当たりを仕掛けようとするのに合わせて抜刀。輝く刃がその肩鎧ごとその下の肉を裂き、強烈なダメージを与えます。

 頑強な鎧熊であれど早々この一撃をまともに受ければタダでは済まず、先の一撃で体力の六割を消し飛ばしました。

 が、それでも残りは四割。体当たりこそ仰け反らせて止めましたがまだ健在。抜刀したままにもう一足踏み込んで《薄月》による一撃。

 関節部を狙ったとしてもダメージの通りが悪いのは試した通り。実際にそう多くは削れていないのでアーツを使わずに三撃加え、攻撃の素振りを見せた瞬間に納刀。


「グルァ!」

「……っ、せい!」


 振り下ろした左腕の爪に対し、《居合術》のカウンターが起動して再び剣閃が瞬き、その手を跳ね上げました。

 あとは―――トドメを刺すのみ。本来はトドメの用途ではありませんが、残った体力を削るのにはこれで十分でしょう。

 納刀したままに腹下まで潜り込めば、再び抜刀し、アーツを繰り出します。


「《月蝕(げっしょく)》」


 光属性の粒子を纏った斬撃が放たれるも、削ったのは残りの体力の内二割。残すはほんの僅かなのですが、すぐに飛び下がって鎧熊と距離を取ります。

 先の斬撃は光の粒子を纏ったままに鎧熊の胸部へと残ったままで、一秒を刻んだ瞬間―――その残り僅かの体力削り取られた鎧熊が崩れ落ち、大地へと倒れ伏しました。

 《刀術》のスキルレベル50で習得したアーツ、《月蝕》。これを使って攻撃した対象に暫くの間継続ダメージを与えるというものです。

 アーツでのダメージの何割かを継続して与えるので、《八卦・闇》を併用した時はまさしくやどりぎのタネになりますし、属性付与していればその属性のダメージを与え続けるので便利なアーツです。


 鎧熊が完全に倒れたのを確認すれば、すぐに皆の処へと合流して次の魔物へと立ち向かっていきます。

 そうして魔物達の勢いがようやく収まり、防衛戦が大勝利に終わったのはそれから一時間半後のことでした。


〔〔GRAND QUEST CLEAR !!〕〕

〔〔CLEAR LANK:S〕〕

〔〔参加者に報酬が配布されます〕〕

〔〔《万葉》のセーフティエリアが拡大しました〕〕

〔〔スキル《農業》が開放されました〕〕

新キャラがごりっと出てきた上に、パーティメンバーも充実。

説明文に明記してるパーティプレイは少なくなりそう記述はどこへやら……まあ、人が多いに越したことはないのですが。


次回は如良への道中になります。

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