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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
0.5章-幕間 公式配信に駆り出された姉妹たち
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66.ルプスト流魔術用法

「まずは新規追加される武器の種類から」

「今まではオーソドックスな剣に始まり、大剣、短剣、槌、斧、鈍器、刀、槍、格闘具、弓、魔導書、符、杖に他諸々……となっていましたね」

「これだけでも結構多そうに見えるのだけれども……増える? 増えちゃう?」

「はい、これが増えてしまうですわ」


 新しい武器ということで大いに盛り上がるコメント欄です。もちろん終了後のアンケートで多かったものを採用したとか。

 現時点でもそれなりに多いのですが、それはおそらく《バージョン1》で追加される新システムがあるからでしょう。

 さてこれらを扱えるのは誰になるかと言いますと……


「では、今度は私とルプスト姉様ですわね」

「わお、姉様って言われるのとっても新鮮? 新鮮ね?」

「あ、それだともうひとつ追加のシステムについても説明しておいた方がいいんじゃない?」

「二つずつですから……確かに出来た方が楽ですか。では先にこちらを説明しましょうか」


 私が一歩前に出て、プラクティスモードで適当にMobを出現させるようにコマンドを弄ります。

 出てきたのは見た目としても迫力がある《クレイジーベア》。今は停止状態ですが、動き出せばすぐにでも襲い掛かってくるでしょうね。

 比較的レアな類のMobではあるので、この狂熊を出すだけでもコメントが盛り上がります。私達にとってはそこまで珍しくは感じないんですけどね、主に《他無神宮への道程》のせいで……


「では、新システムのひとつなのですが……まあ見て貰った方が早いでしょう」


 まずはいつも通り、先程と同じように刀を構えてから《八卦・風》を付与。狂熊と同じ属性ですから、ダメージに変化はありません。

 停止状態を解除すれば、すぐに戦闘状態へ。すぐに放って来た木を一撃で抉り倒すような一撃を避けて、懐に潜り込んでからまずは一振りを当てます。

 その一撃が綺麗に入れば熊は仰け反り、反撃の準備をしている挙動が見えます。普段であればすぐに飛び下がって、次の一撃を見舞うところですが……


「《クイックチェンジ》」


 スキルを使用した瞬間手に持っていた刀が消えてインベントリへと収納。すぐにグローブのような《鉄拳》、《鉄靴》が装備されました。

 戦闘中の武器切り替え、これが《バージョン1》より追加される新機能のひとつで、コメント欄が一気に盛り上がったのを視線の端で見つつ拳を引き。

 そのまま狂熊の懐に潜り込んだまま、隙を見せず拳を振り抜いて狂熊の顎を打ち抜き。仰け反ったところに《サマーソルト》で追撃して後方へと押し出してから空中で一回転して眉間に踵落し。

 巨体を揺るがせ怯んでいる隙に後ろへ飛び下がってから再び《クイックチェンジ》を行い―――


「《アロースナイプ》、《クイックショット》」


 今度は弓へと切り替えて、先に踵落しを喰らわせた眉間に対して正確無比な射撃を行える《アロースナイプ》で射貫き、追撃に胴体へと《クイックショット》。

 立て続けの連続攻撃を喰らった狂熊は体力を簡単に削り取られ、そのまま大きな音を立てて倒れ込みポリゴン化して消えていきました。


「とまぁ、こんな風に」

「ものすごく使いこなしてなあい?」

「まだ実装前だよね、クレハ……」


 武器を刀に戻していれば、ルプストとフリューが若干ながら呆れた顔をしつつ寄ってきます。

 あまりにも使い勝手が良すぎたので、この配信前に幾度か練習して使っていたんですよね。そうしたら手に馴染んでしまったんですが。

 さて、切り替えて視聴者向けにこの新機能の説明をしていかないといけませんね。


「使ってみればわかりますよ。さて、先程使った《クイックチェンジ》について説明しますね」

「武器を三つまで指定しておけば、戦闘中に切り替えられる、というものですわ」

「もちろん、同じ種類の武器を複数個セットしておくのも可能です。例えば、火属性の剣と水属性の剣をセットしておけば、戦闘中にそれらを切り替えて戦う、ということも出来ます」

「まあ、色んな武器が扱えた方が良いのですけれども。人によって得手不得手があるでしょうから、そこは個々人の使い方によりますわね」


 慣れたら色んな敵にも柔軟に対応できるようになりますし、ひとつの武器しか扱えずとも予備や別属性の武器を入れてあるだけでも使い勝手は広がりますからね。

 先程実演して見せたようにスムーズに切り替えながらの連続攻撃に関しては少し難しいところもあります。《八卦》は付与されたまま切り替わるので、私は今後使用頻度は増えそうですが。


「では、それを踏まえたうえで……ジュリア、ルプスト。お願いしますね」


 説明を終えて一歩下がり、ジュリアとルプストを前へ。ある種不利とも思えるマッチアップに見えますが、これでもベータ終了後に度々行った試合だと勝ち負け五分なんですよね。

 コメント欄では先の戦いもあってルプスト不利の票が多いのですが、実際の戦いを見て驚くといいかと思います。


「はぁいはぁい、それじゃあやってみましょう」

「ルプスト姉様だからって手加減はしませんわよ?」

「あらー、それじゃあ私も頑張るわぁ? わよぉ?」


 《決闘》フィールドが広がり、私とフリューは一歩下がって配信カメラをフィールドの上の方へ。ルプストはまずは魔導書を手に。ジュリアも初手は槍で行くようですね。

 ジュリアも連敗は喫したくないので明確に勝ちに行くとは思いますが……さて、どこまでルプストの搦め手を捌けるか。

 それに新武器もあるのでどう転ぶか。どちらもある程度使い慣れた武器を装備していますからね、目の離せない戦いになりそうです。

 準備が出来たのかカウントが表示され、進み……0になると同時にジュリアが駆け出しました。


「《ダスクラッシュ》!」

「《フリーズロア》」


 開幕早々、私に見舞ったそれと同じ超高速の突進。ルプストは余裕の笑みを浮かべて回避しつつ、氷属性の光線である《ロア》を放ち、通り過ぎたジュリアへ追撃。

 本来の《ロア》系は貫通力の高い光線を放つものですが、ジュリアが多用する火魔術のロア、《フレイムスロア》は可変で炎を吹き散らすモードも持つんですよね。

 他の属性魔術もいくつか別モードを持つものがあるようですが、一番目にしているのがこちらなんですよね。火炎放射(フレイムスロアー)と掛けているのでしょうから。

 ルプストによる追撃の《フリーズロア》をジュリアは急上昇して回避しつつ、槍を突き立てての落下……《ジャンプアタック》を仕掛けます。


「飛んで跳ねて元気ねえ、《バイスホーミング》」

「ふふ、それが取り柄ですもの! 《ファイアバレット》!」

「なっ、むぅ……っ!?」


 《ファイアバレット》を先読みしての闇属性追尾弾の《バイスホーミング》で迎撃しながら、ジュリアの落下攻撃は強めに地を蹴ってひらりと回避。

 速度があってなお着実に攻撃を避けるルプストの技量も凄まじいというか。攻め方としてはルプストもジュリアと同じであるため、避けて確実に当てるを徹底しています。

 普段は盾でありヒーラーを兼ねるフリューと組んでいるため、攻撃一辺倒に集中できているのが強みですが、それでも回避をしなければならないのでそこも鍛えているのでしょう。


「でもその眼は羨ましいわね? わよ?」

「ふふ、それならルプ姉も竜になればいいのですわ!」

「おおっと! でも私はもう見定めて動いてるものねえ」


 繰り広げられる槍技と魔術の応酬。やはり純粋に魔術師となればとても派手で決闘も見栄えが良くなります。

 ……ほぼノータイム、出が見えない《竜眼》はルプストにとっては垂涎でしょう。一属性に限られるとしてもメリットが多いですからね。

 と、ルプストが先に魔術書を引き《クイックチェンジ》の素振りを見せます。ジュリアは―――いえ、こちらの方が先ですね、槍を振るうにしては妙に振りかぶっていますから。


「「《クイックチェンジ》!」」


 次の瞬間、ルプストの手には《鞭》が。ジュリアの手には《大鎌》が握られていました。コメントの方も新しい武器の登場にざわめき立っています。

 さて、まだ調整中ながらある程度アーツも搭載されているそうですが、どうなることか……


「《サイズスラッシュ》!」

「おおっと、危ないわねぇ……《ウィップアンカー》」


 先に動いたのはジュリアで、大きく鎌を振りかぶっての横一閃。ルプストがいる一帯を丸ごと刈り取るかのような範囲は流石に簡単には避けられなさそうです。

 対するルプストは決闘フィールドの壁面に向かって鞭を振るえば、その鞭の先端が張り付き、縮んでルプストの身体を引き上げてジュリアの攻撃を回避。

 鎌の方は大振りながら大範囲の攻撃が出来るのが特徴で、鞭の方は随分トリッキーな動きが出来るようですね。どちらも使える人が使えば強力そうですが。


「ふふ、慣れるとこれ楽しいのよね……《ウィップショット》からのー《アンカー》」

「ちょっ、ちょこまかと動き過ぎですの!?」

「回避は常套手段よお? そっちだって飛べるわけだしい? だもの?」


 ルプストはしっかりと使いこなしているようで、自在に鞭を振ってジュリアに対して的確に先端で叩くような《ウィップショット》を放って牽制してから、先程の《アンカー》ですれ違うように移動。

 鎌を振るうジュリアにとっては瞬間的にでも自分以上の速度で周囲をちょこまかと動かれるのは狙いが定まらず、厄介極まりない様子。

 こういう動き、ルプストにやらせるとピカイチですね……《火魔術》でも対応できず、動きが早いために上手く鎌でも振り切れていないですね。

 それで引き下がる自慢の妹でもないわけで……おっと、動きを見せましたか。


「《ローリングサイズ》!」

「ふぁうふっ!? 危ないわねえ!? 《ブラックエッジ》!」

「当たらないのならまとめてですわ!」


 ルプストが離れて魔術を撃とうとした矢先、その移動先を先読みし突っ込んでいってから一回転するかのように周囲丸ごとを刈り取るかのような一薙ぎ。

 すれすれでその大鎌の一閃をしゃがんで避けつつルプストは魔術を撃ち返して抗議の声を上げます。構わずジュリアも追撃を掛けているのですが。

 ちょろちょろ動くのであればと実にジュリアらしいのですが、それでも普段の槍とは取り回しが辛く使いづらい様子を見せていています……まあ、ルプストの立ち回りによるものでしょうね。


「そろそろ次行っちゃいましょ! 《クイックチェンジ》!」

「奇遇ですわね、私もですわよ! 《クイックチェンジ》!」


 二人同時に再びクイックチェンジ。三つめ、四つめの新武器は互いに元々得手とする武器であり―――


「《シャドウバレット》!」

「《デュアルスラッシュ》!」


 《双剣》を手に飛び掛かるジュリアとそれを《魔銃》で迎撃するルプスト。お互い武器を切り替えた途端、先程よりも激しい接戦が始まりました。

 ジュリアが《バージョン0》中にあればいいなと口にしていた双剣であり、ルプストが手にする魔銃は住民から示唆されていた武器ですね。

 魔銃は《ポイント・キャスト》が使えず明確な射程がある代わり、威力と速射性に補正がかかるのが特徴なのだとか。

 今思い出せば、初日にルヴィアの配信で触れられた時からルプストの魔術の行使方法はそれっぽい動きを意識していた気がします。露骨に《プロード》使っていませんでしたからね……


「んーふふ、馴染むわぁ、とても馴染むわぁ……《グルームロア・リロード》《ダブルショット》」

「っと、厄介ですわねぇ!?」

「ずーっとこれを手にするのを待っていたもの? だもの?」


 ルプストが構える魔銃から闇色の光線が二本。ジュリアは一発目は避けますが二発目が掠り、接戦もだんだんとルプストが優位に傾いていき始めます。

 ジュリアの方はずっと槍を握っていたのもあって、精密な動きに慣れ切っていないのもあるのでしょうね。アーツもルプストほど使い切れている感じが動きから感じられません。

 なんていうか、本当にジュリアの弱い部分を的確に押さえた戦い方をしているのがよくわかります。それがルプストの戦い方なのですが……


「っぐぅ、相変わらずルプ姉、やりづらっ……!」

「手の内が見えてるからよお。クレハほどではないでしょ? よね?」

「って言いながら距離を維持したままバスバス撃ってくるの辛いんですわよ!」


 飛行能力を駆使してまで何とか間合いに入れようとしているところ、ルプストは的確にその間合いからひとつ離れたところを維持していますね。

 時折《竜眼》による《レッドエッジ》の不意打ちも絡めているのが何とか当たっているようですが、HPの差はみるみる内に開いています。

 ジュリアが得意とする手数を使っての怒涛の連続攻撃、そして一撃離脱の戦術のそのどちらをも封じる動き。やり辛いことこの上ないのは間違いないでしょう。

 決着がつくのにもそう時間は掛からず……


「これでトドメよぉ! 《バイスホーミング・リロード》からの《トリプルショット》!」

「これ、ぐらい、ならっ!」


 一際遠くにルプストが飛び下がりながら闇属性誘導弾の三連射。

 自分でも扱っている以上、ジュリアも避けるのはそう苦ではないはずで丁寧に避けつつ、再び間合いへと飛び込み双剣を振るおうとした矢先―――


「こっちが本命、《ダークプロード》」

「ふにゃっ!?」


 今の今まで使う事の無かった《プロード》を魔銃を使わずにジュリアの足下で発動し爆破。えげつない……

 散々使わないのを印象付けておいてから、最後の最後に使うとは。本当に策略家ですね、ルプスト。

 爆発魔術が直撃したジュリアは結構削られていたためにもちろん耐えきれるはずもなく、その場で撃沈。そのまま新武器を使用した《決闘》の決着は付いたのでした。

ルプスト、実は魔銃に関してはかなり早期に情報を集めていたようです。なので、早期から意識した戦い方をしていたとかなんとか。

使おうと思った理由は格好いいからという物凄く単純なものだそうで。そのうち魔弾の舞踏が見れるかも知れませんね。


おそらくクイックチェンジに関しては既にあちらで出てきたもので、仕組みはこのような感じとなります。

まだ二ヶ月時点なので、もし双剣のアーツが整っていればルプストにも一泡吹かせられたのに、というのはジュリアの談。

さて次回は今回使った武器種についての雑談。それぞれの使い手からの武器評価が垣間見れます。


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