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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
0-3幕 龍の試練開幕、そして決戦へ
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54.《再誕》する混合食虫植物

「二枚目落ちた! 次、《八卦・氷》!」

「氷属性の人は前に! 土属性の人は下がって!」

「《チルドホーミング》」


 葉の三枚目が崩れ落ち、頭がウツボカズラへの変化を完了して酸の撒き散らし攻撃が始まりました。

 ほとんど地上に向いていた攻撃を空中で私が受け持ち、葉を落とす事で攻撃もほんの少し軟化するため地上部隊も建て直しが大分進んでゲージの減りもだんだんと早くなり始めてきています。

 始まった酸の散布攻撃ですが、そこまで広範囲というわけではなく、もっともプレイヤーが集まっている場所、または敵視(ヘイト)の高いプレイヤーを狙うようですね。

 建て直しが出来たのはおおよそ八割といったところですか。あと葉を一枚分落とす頃には攻勢に出られるでしょう。


「さっすがクレハ! 掛けれる人はクレハにも攻撃バフと回避バフを!」


 フリューの一声で各種バフが私に飛び、同時にメインで攻撃を受けていたタンクからもヘイトの受け渡しが飛んできます。

 酸液は着弾地点から飛散する都合、私が誘導して被害の少ない遠くに飛ばした方が足下が楽ですからね。タンク勢もそれを理解しての事でしょう。

 と、下の方から懐かしい声が聞こえました。葉の平手打ちを《居合術》のカウンターで弾きながら耳を傾けます。


「任せるのじゃ! クレハが来てくれるとは心強いのじゃ!」

「おや、カエデさん。こちらにいたんですね、っと!」

「私も、いる。建て直し、進んでるから。おねがい」


 建て直しを行う面々の中に《水田迷宮》でご一緒したカエデさんとルナさんの姿がありました。

 軽い声だけの挨拶をすれば、すぐに切り返して先程弾いて硬直している葉に対して《新月》からの《降月》を。強烈な氷属性の斬撃が炸裂すれば、葉の半分が凍り付いて動きがぎこちなくなります。

 表皮のモウセンゴケの露が凍り付いている間に《円月》を繰り出して葉の根元を切断。これで三枚目であり、ボスの方もまた大きく身体を仰け反らせて。

 各種バフの量が凄まじいのもあって、《新月》による威力増加を行うと凄まじいダメージが与えられるんですよね。もはやこれだけでゲージの二割ほどを削り落としています。


「クレハ、建て直しほとんど終わったからいける!」

「五分ですか、早いですね」

「後ろが優秀だからかも!? なのかな!?」

「では攻勢と行きましょう、残り八割削り落としますよ」


 残る葉は四枚ですが、残りは下方で攻撃も届く辺りでしょう。フリューからの報告を受ければ上昇し、ボスの頭付近へ。

 酸を溜め込んだウツボカズラの顎に、ハエトリソウの大口、モウセンゴケのトサカとなるほど食虫植物のキメラ。

 葉を半数落としたのもあって完全に敵視は私に向いているようです。こちらを向いたまま口元から垂らす酸液が音を立てていますしね。


「号令、出しちゃって!」

「あまり慣れてはいないのですが……皆さん! これより一気に畳みかけますよ!」

「「「うおおおおおお!!!!!」」」

「さっきの仕返しじゃあ!」

「覚悟せいやー!」

「わしもようやっと攻撃に加われるのじゃよー!」


 フリューから号令の指示が来たので、慣れないながらも上空から声を張り上げれば―――すぐに立て直しが終わった面々が声を張り上げてボスの足下に殺到し始めました。

 私のやることはこの頭の相手ですね。下に被害が行かないように、手早く削っていきましょうか。

 表面を覆うモウセンゴケが虹色に煌めき―――属性の変わる瞬間を目にすれば、対応した属性へと《八卦》を付け替えます。


「《八卦・雷》、《天鳴》!」


 私へと大口を開けて迫っていたところに、《三日月》の変化した雷属性の落雷《天鳴》を叩き込んで一瞬怯ませての突貫。

 元々頭を狙われる想定ではないのでしょうか。少し防御力が薄いような、はたまたこちらに掛かっているバフがあるからか。

 そのまま噛み付きを避けて無理矢理口を閉ざさせるように大葉の重なり合ったかのような上顎の上から急降下しつつ斬り付け。


「っ、はぁー……っ!」


 着地すれば刀をしっかりと握って一呼吸しつつ、モウセンゴケのトサカへと向けて《月天》を放ち、綺麗に生え揃っている繊毛を刈り取る様にしっかりと一撃一撃を加え。

 しっかりとダメージの入る手応えを感じながら、そのままトサカの根元を狙って《円月》。紫電を纏った斬撃が根元からトサカを斬り飛ばしました。

 続け様に足下へと再び《天鳴》を放ちつつ宙に浮かび、喉元に溜められていた酸弾を誰もいないフィールドの隅の方向へと飛ばさせて、《薄月》の乗った水平斬りでハエトリソウの歯の部分へと傷を入れます。

 私へと向けて大口を開き、身体を伸ばしたところで回避。地上で奮戦するレイドメンバー達が総攻撃を入れているため、ゲージの削りはとても早く、既に残り半分に達しかけています。


「クレハ! あと三分くらいで種に戻るから、それまでにダメージを!」

「っと、わかりました!」

「崩壊する時は全周囲にダメージを撒いて、再成長する種からハエトリソウに変化する時はやたら硬いから!」


 口下のウツボカズラをどう狙おうかと思案していれば、フリューからのパーティチャットを受け。そういえばこのボスが名前の通り《再誕》するのは十二分おきでしたね。

 私が到着したのが三分時点でしたから、すでにそこから六分。それまでに立て直して攻勢に出れたのですから良しとしましょうか。

 フリューの報告を聞く限りだと、トドメを刺すのであればハエトリソウのみの形態の時。確かにあの時であればトドメに畳みかけるのにはちょうどいいでしょう。

 先程よりも速いスピードでボス表面のモウセンゴケの固まった露が割れ、属性が本来の闇属性へと変化しました。総攻撃が始まると早いですね。


「それでは時間もないということなので……《八卦・光》」


 会話しながら避け続けていましたが、ほとんどのリキャストも帰って来たので私も攻めましょうか。まずは属性を付け替えてから、顎へと狙いを定めます。

 噛み付き攻撃とすれ違う様に《円月》を発動しながら丸鋸の様に縦回転をしながら顎のウツボカズラを斬り付け、そのまま突き刺しつつ《薄月》を使って引き裂き。

 中身が詰まっているのか、ばっくりと空いたウツボカズラの顎から無害な状態の酸液が垂れ落ち。これで事実上酸吐きを無力化したので、そのまま斬り上げて喉元まで引き裂きに掛かります。


「柔らかく表に出やすいという事は、部位破壊前提ですね、っと!」


 ギチギチギチギチ、と植物の軋む様な悲鳴を挙げさせながら顎部分を切り落とし。ゲージの残りは四割を切るを見て着実にゲージが削れているのも確認しながら詰めていきます。

 部位が壊せないのであれば、いくら傷付けても貫通はしませんからね、っと。身体を激しく揺するようにして攻撃を仕掛けてきたので一時離脱。

 してからすぐに《行月》で接近してからその顔面へと向けて《新月》を加えてからの大きく横振りの《斬月》で葉脈の歯を引き裂き。適度に《薄月》を使ってダメージを重ねていけば―――


「おっと」

「ボスが生え変わるから、一時撤退!」


 一振りがやたら軽く、ぐしゃりと枯れ葉を切ったような感覚。直後にボスが枯れ始めて、生え変わりの準備が始まったように思えます。

 私も空中で一時的にボスから離れれば、元々枯れ葉で出来ていたかのようにその破片を吹き散らせながらボスの身体が崩れ落ちて、中から大粒の種が姿を見せました。

 これが生まれ変わる為の種なのでしょう。そこを狙って攻撃をする遠隔もいますが、ゲージを見ても削れているとしてもかなり遅々としています。

 こちらからも《三日月》の光属性版……《閃耀(センヨウ)》を放ってみましたが、やはりダメージが通った様子はなく、種はそのまま地中へと潜っていきました。


「近くの人は離れて! 地震が来るよ!」


 フリューからの声の後、私は空中にいるのであまり実感は出来ませんが《再誕の祠》が全体が一瞬揺れ……

 ボスの種が埋まった場所から最初に見た大蛇のような長さのハエトリソウ形態のボスが生えてきました。しっかりと切り落とした葉も再生しているようですね。

 地中からボスが飛び出した瞬間に近くにいた人が衝撃で多少ダメージを貰ったようで、すぐにヒールが飛んでいるのも確認できましたが―――ボスも微量ですが回復していますか。


「葉を破壊してたからかな、そんなに回復してないみたい」

「養分を全部種に回して、修復にも養分が必要だったからじゃないかしら? かも?」

「そんな変化もあるんですね、と、それでもこれを見るのは最後になりそうですけれど、っと!」


 再びボスが全快した葉を振り回して攻撃をし始めれば、レイドパーティも総力を上げて攻勢に出ます。もう一度生え変わる十二分まで掛かる事無く撃破することは容易でしょう。

 真っ先に切り込み、引き続いて頭を相手取る様に《行月》で接近してからすぐに《月天》。ほっとくと地上部隊を上から啄む様な攻撃をするので、早いうちに気を引いておきます。

 私一人で与えられるダメージこそ微々たるものですが、それでも塵も積もれば。私がいくらかの攻撃を受け持つだけで地上への負担は減って、その分複数の人が火力を出せますからね。


「残り一割!」

「畳みかけますよ!」


 私が声を張り上げて号令をすれば、この場にいる全員が削り切る為に攻撃を集中させて。一部は葉も狙っていますが、集中砲火ゆえに一瞬で葉が無力化されてますね。

 ぼんやりしているわけにはいかないので、思いつく最大火力を叩き込むために《新月》を入れてフィールドの最大高度まで上がっての―――



「《降月》、もとい……流星落し!」



 急降下による速度増加も掛けた《降月》。光属性の刃が煌めき、まるで一直線の流星の様にボスの頭から根元まで両断。

 あと一撃、というところにまで来ていたところに直撃したのでしょう、意図せずラストアタックを貰ってしまったようです。

 体力ゲージが空になったボスが悶えるようにすれば、ゆっくりと頭の先から光の粉となって消え始めていき……中から狐耳を持ったアルラウネが現れました。


「あら、かわい……っとと、なるほど、こんな風に」


 あの子が本来の姿なのでしょうね、と眺めていると。足下に生えてきた樹の洞へと取り込まれてしまいました。

 その姿をゆっくりと視認はできませんでしたけれど、おそらくあの子が《稲花》ちゃんなのでしょうね。

 同時にジュリアの方も討伐を終えたようで、部屋の奥に道が開き―――いよいよ最後のボスへの道が開かれたようです。


「クレハ、お疲れ様!」

「まだ早いですよ、今からが本番なんですから」

「ベータのラスボスはこれからだもの、ねえ」


 第7レイドの参加者の面々にすれ違い様に肩を叩かれながら、フリューとルプストと合流。カエデさんとルナさんも一緒ですね。

 ほとんどが治療をしてから向かっているようで、殺到する事無くちゃんと順序良く更に奥へと向かっているようです。

 私達も合流すれば、掠り傷程度のところにヒールを貰ってからボスのところへと歩き始めます。


「のじゃー。それにしても進化ってすごいのう」

「まるで別人。配信、見てなかったら見間違えてた」

「あはは。進化の時に少し外見が弄れたのもありますから」

「尻尾と髪がおそろいの白なのねぇ。私も進化したら角の形が弄れたりしないかしら」

「悪魔はできそうですよね。あとは翼とか……」

「私はどうなるんだろ……やっぱり翼が増える?」

「《天使》は増えそうじゃよなー。狐も尻尾が増えそうじゃし」


 そういえば、進化してからここに辿り付くまでほぼほぼ大忙しでしたから落ち着いて話とか出来なかったんでしたよね。

 やっぱりこうしてちょっと落ち着くと、進化した事の方へと話題が向きます。特にここにいる面々は進化しそうな種族が多いですから。

 カエデさんは間違いなくこのまま進化を重ねれば九尾に、フリューは熾天使とか、ルプストは……どこまで格が上がるか未知数ですが、大悪魔、魔王になったりして。

 ルナさんだけ未知数ですけれど、《紗那》様や《夜霧》さんを見る限りは猫又への道もありそうですからね。どこかしらで進化の糸口が見つかるのでしょう。


 道なりに歩いていれば、他のレイドの面々とも合流し……回廊から出れば、そこは《夜草神社》本殿の境内。


「……ここが、本殿境内……ですね」


 そして、その中央に鎮座する巨大アルラウネと、天まで届きそうなほどの大きさの大樹。

 彼女が《デュアル・クロニクル・オンライン バージョン0》の最後のボス《植物神の娘・梨華》の姿でした。

実質ベータ編最後のボス戦でした。今後もクレハ流の必殺剣は時々出てきます。

属性+これまでの剣技で色々思いついちゃいますからね。どんなものが出て来るかはご期待あれ。


次回、ベータテスト編ラストボス。とはいえもう『魔剣精霊』側では決着がついてしまっているのですが。

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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜
相方、杜若スイセン氏によるDualChronicleOnlineのルヴィア側のストーリーです。よろしければこちらもどうぞ。
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