5.キャラクターメイキング!
「プログラムスタート、《デュアル・クロニクル・オンライン アルファテスト》」
『《デュアル・クロニクル・オンライン アルファテスト》起動します』
《VRクラブハウス》で適当に雑談をした後、インストールが終われば各自起動します。
自動でVRチャットルームから一度ログアウトされ、視界が暗転。
その暗闇の中に浮かんだ小さな社のモデルに小さな子狐が九匹駆け込み、《九津堂》のロゴが表示されます。いつも見るロゴですが、三次元的に動いています。
ロゴが光輝く球となって消えれば、一筋の光となって《幻双界》、昼側の風景がゆっくりと描き出されていき、きらびやかなエフェクトと共にタイトルが表示されました。
改めてキャラクターメイクだけとはいえ、タイトル画面だけは見せてくれるようです。まあ、アルファ版ですからここまで出来ていてもおかしくはないでしょうね……。
タイトル画面にはまだゲームスタートとログアウトしか表示されていません。おそらくゲームスタートを選択すればキャラクターメイクが始まるのでしょう。
私は躊躇うことなくゲームスタートを選択します。テストプレイはもう慣れっこですからね、もし駄目でしたら父が見ているのでしょうから、連絡してきますし。
幾つかの四角いウィンドウと人型モデルの素体が表示されて、ぽんっ、という音と共にオレンジの髪を後ろで左右で結ったメイドの女性がガイドキャラクターとしてSDで現れました。
頭の左右に付いた彼岸花が可愛らしく揺れ、クラシカルな黒のロングスカート、白地に薄くオレンジを帯びた温かみのあるシャツを着用していますね。
『デュアル・クロニクル・オンラインへようこそ。
ゲームを開始するにあたってのキャラクターメイクのお手伝いをさせていただきます、みつひめといいます。よろしくお願いしますね』
「はい、よろしくお願いします」
みつひめさんというAIキャラクターのようですね、キャラクターメイクのサポートが付いてくるとは、朱音が作った時に味気なかった印象があったのでしょうか。
パッと見は人間のメイド……に見えますが、少しだけ耳が長く、頭の横の花は飾り……に見えて直接生えてますね。
……妖花であるアルラウネさんでしょうか? 確か公式サイトには基本種族にアルラウネはなかったので、きっと何かからの派生種族でしょう。
『それでは、VR機器から身体データを読み込みます、しばらくお待ちください。
………完了しました、キャラクターメイキングを開始します。まず種族を選択してください』
私のVR内でのアバターが読み込まれ、目の前の人型モデルが私そっくりのものが表示されます。なんだか少し不思議な気分ですが、実際に鏡を見ているかのように私の身体としても動かせます。
四角のウィンドウ内にはずらり、と選択のできる種族が並びます。結構な種類もありますし、外見も弄れるので被った見た目というものはまずないでしょう。
選ぶ前にステータスの分類だけ聞いておいて、システム面の用語についてはあとで聞くとしましょう。ゲームによっては同じ言葉でも中身の意味が違うというのもありますからね。
ステータスは……VIT、STR、AGI、DEX、INT、MNDの六種類。順に耐久、筋力、敏捷、器用、知力、精神……のはず。その辺も聞いておくとしましょうか。
「まず、ステータスについて解説を」
『レベルアップで上昇するステータスは、種族特性として上がる種族値、ポイントとして保有し自由に振り分けることのできる自由値の二つに分かれます。種族一覧には、このうち種族値が記載されております。
六種類のステータスは、各マスクデータの計算式などに当てはめられます。また、ステータスの名称は上から順に耐久、筋力、敏捷、器用、知力、精神となっています。』
あ、もののついで、という風にその後聞こうとしていた事も答えてくれました。ありがたいですね。
種族によってやはり成長適正が異なり、偏る事もある、と。私がやりたいのは近接火力。
STRとAGI寄りのステータスであり、ついでにDEXに補正があると嬉しいくらいですね。では、それを踏まえて各種族を見ていきましょうか。
○人間
平均的な種族。癖がなく扱いやすいが、特化した分野では他の種族にはかなわない。
ステータス:ALL+2
出ました人間、スタンダートなバランスタイプですね。むしろないと困ります。
先陣を切り、かつ下手な事や人柱をしない限りはこの人間一択でしょう。とはいえ誰であれど、最初は人間ですら人柱に成らざるを得ない訳ですが。
他にやりたいと思うものがなければ人間にしましょうか。そうでなくても考えてるスタイルは下手に偏ると成長度合いで変に傾きかねませんからね。
○獣人
獣の特徴を持った種族。耳や尻尾のみの変化の者から、二足歩行で服を着た獣まで存在する。獣の特徴を合わせ持ち、身体能力に秀でる傾向にある。
ステータス:
狼 VIT+3、STR+3、AGI+3、DEX+3
猫 AGI+3、DEX+3、INT+3、MND+3
兎 VIT+3、AGI+6、DEX+3
狐 DEX+3、INT+6、MND+3
おや、獣人は種類があるのですね。狐に猫、狼あたりは予想していましたが兎まであるとは。
獣化ゲージでその度合いも変更可能ですか。好きな人には好まれそうですね……。
試しに選択してみますが……なるほど、殆ど人寄りですか。これくらいならVRに、感覚的に対応はしやすいから、でしょうね。
それにしても一括りで四種類、この時点で派生があると知った今は少し気になりますが……狼が理想に近いくらいで、他は好みのステータスではありません。
進化したらまた少し変わるかもしれませんが……うーん、慣れている人間の身とは勝手が変わりそうなので私には合いそうにありません。パスですね。
○鬼
大きな角を持つ力持ちな種族。肉弾戦は非常に強いが、魔法は使用も防御も苦手。
ステータス:VIT+4、STR+8、AGI+4
デメリット:魔法攻撃、魔法防御減衰
鬼族ですか。これこそ物理攻撃特化、物理メレー向けでしょうね。角の数も弄れるようで、一本から……四本までですか。
適性も合わせてSTR特化で近接タイプ向きのステータス振りが出来るでしょう。大雑把に重い武器とか振り回したい人でしょうね。
……ただし弱点として魔法系が苦手ですか。タンクとしての運用はできなさそうです、振り方として攻撃寄りのタンクとか面白そうな事が出来そうですが。
一応候補には入れますか、このステータスは私のスタイルにとても近いですからね。
○エルフ
自然を愛する森の民。能力は高いが打たれ弱く、火には弱い。
ステータス:STR+3、AGI+4、DEX+3、INT+3、MND+3
デメリット:火属性取得不可、被火2倍
エルフ、ファンタジー世界の定番ですね。しかもなかなかにステータスの補正が高い。
数値の分け方を見るとこれは遠隔型でしょうか。いえ、近接もいける……万能型ですね、朱音が選んだのも納得です。
そのデメリットが火属性取得不可能と火ダメージ倍化。属性の概念もあとで聞いておきましょう。
確かに私も選びたくなるくらいですが……うーん、朱音が選んでいる以上は別の種族にした方がよさそうです。
○ドワーフ
主に鉱山などに住む小柄な種族。エルフとは仲が悪く、対照的に加工品を好む性質がある。当人達も加工生産が得意。
ステータス:VIT+2、STR+4、DEX+6
備考:サイズ・小
ドワーフですね。思わず言いたくなりますね、ラリホー。
器用さも補正があり、まさにクラフター向けの種族ですね。生産職の方々に大人気になりそうです。
あとは自分の本来の身長からもかなり小さくできるようですね。面白そうですが、獣人同様に少し操作の勝手がズレそうです。
生産職の方々、頑張ってください。私は遠慮しておきます。
○妖精族
世界中に存在する羽の生えた小さな種族。魔術の扱いが得意で、俊敏に飛び回るが非常に打たれ弱い。属性の影響を受けやすく、持つ属性によって色が変わる。
昼夜適性:なし
ステータス:AGI+5、DEX+2、INT+6、MND+4
デメリット:最大HP減少
備考:飛行可能、サイズ・フェアリー
これもファンタジーの定番、妖精ですね。ドワーフよりもさらに小さく……おっと、こちらは更にHPにまで補正がありますか。
体躯からして仕方ないでしょう、試しに選択してみても小さいですね、当たらなければどうとういうことはない、ということでしょうか。
妖精らしく魔法が得意、ですか。秋華あたり好きそうですね、本当にこれで選んでいそうです。
ですが私は物理近接タイプが得意なので、フェアリーは向きませんね、次です次。
○魔族
夜の世界に誇り高き悪魔の血を受け継いだ者達。血が濃いほど祖先の力を色濃く受け継ぐが、悪魔の因子はそう簡単には発現しない。
ステータス:VIT+4、STR+4、AGI+3、INT+3
備考:飛行可能
デメリット:SP自然回復速度減少
夜と言えば、ですね。そりゃああるでしょうよ、魔族。
しかもフレーバーから察するに悪魔にも発展しそうですね、ただ条件が少し厳しそうです。その代わりのリターンもとても大きそうではありますが。
ただ魔族というからには魔法も……って思っていれば、なんとも物理寄りの性能。鬼よりは小回りが利きそうな割り振りですね、千夏にも勧めたいものです。
SP……スタミナポイントですか、強力ですがお腹が減りやすい、と。序盤は厳しそうですね、大器晩成タイプでしょうか。
○天使
神に仕える天のしもべ。地上に住んでいるのは中でも下位の天使たちである。守りに秀で、歌が特徴的な旋律魔術を操る者もいる。
ステータス:VIT+5、DEX+2、INT+2、MND+4
備考:飛行可能
悪魔がいるなら確かにいるでしょうね、天使です。選択してみても、小さな白い羽がぱたぱた、可愛いですね。
天使と言えばそれこそ遠隔の印象が強いですが、天使騎士と言ったところでしょうか。VITに補正があるのでタンク向けの性能をしています。
MNDにも補正があるので辛うじてヒーラーも出来……そうですね、主運用からは少し外れでしょうけれども。上手く伸ばせば自己回復するタンクの完成でしょうか。
ヒールで敵視を稼ぎわざと引きつけながらタンクの役割をする……あれ、どこかの誰かがそんなことしてましたね……。
さて、これで一通り見終わったわけですが、候補にするなら人間か鬼ですね。
鬼は強力なステータス補正がありますが……うーん。ちょっと聞いてみましょうか。実際のシステムが気になりますからね。
「属性概念について聞きたいのですが。」
『はい。属性は全部で九つで、三すくみが二つでまず火と風と水、雷と氷と土で、相克関係が一つ、光と闇、最後に無属性の幻となります。
選んだ属性の魔術が若干ながら強化されますが、弱点属性、風に対する火、雷に対する土の属性であっても習得は可能です。』
なるほど、思った通りの物でした。これは弱点に当たるものの対策も考えておいたほうがいいということですね。
であればエルフはますます候補から除外、鬼も弱点属性のモンスターと相対した際、すぐに逃げ帰る羽目になってしまいそうです。
そうなれば各地を回りたい私とすれば、癖の無く尖った事もあまりない人間の方がよさそうですね、そうしましょう。……多分、後悔はしない筈。
「では、人間を選択します」
『人間が選択されました。それでは、細かい外見調整を行ってください。
注意事項です、ゲーム内アバターと現実での姿と似通わせるとトラブルの元となる可能性もあります。できるだけ、現実の姿と離すように調整するのをお勧めします。』
丁寧に注意をされましたが、確かにその手のトラブルもあり得ますから、そうしておいた方がいいと。
実際にVRチャットルームでもその手のトラブルがありましたからね、知り合いでの利用以外ではアバター利用推奨でしたから。
では、外見のメイキングに取り掛かるとしましょう。デザイナーの母からたぶん受け継いだと思われる腕の見せ所です。
ベータテスト版ではこのキャラクターメイキングお手伝いAI機能は外されてしまいました。南無。
ちなみに朱音ことルヴィアがキャラクターメイクをした際にもいなかったので、アルファテスト版のみの機能になっています。