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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
0-3幕 龍の試練開幕、そして決戦へ
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44.後にこのダンジョンは肉ロードと呼ばれる事になる

 さて、おはようございます。今日も早めの午前中ログインをしてから《夜霧》さんと物々交換。

 MPポーションを使う機会が多いのが伝わったのか、今日は結構多めでした。とはいってもジュリアは槌を使っていると《火魔術》あんまり使わないんですけれどね……

 まああるには越した事はありませんか。というわけで余裕もあるので全部交換。


「全部とは太っ腹にゃあねぇ。あ、もしかして片っ端から倒してるにゃーか?」

「武器の扱いに慣れておきたいのもありまして。それに少しでも渡そうと思いまして」

「良い心掛けにゃあねー……じゃあもうひとつ、《八葉の巫女》について教えてやるにゃ」


 お、来ましたね。さり気に好感度かなり高くなっているんじゃないのでしょうか。

 ルヴィアは《紗那》様からの好感度がかなり高くなってると聞いていますし、私達は夜霧さんとサクさんからの好感度が高くなっているのでは。

 《八葉の巫女》といえば今回のバージョンでの原因或いはボスとされている子達ですね。元は《翠華》さんの力を分けて貰った八人のアルラウネさん達なのですが。


「にゃ。どうやっているのか分からないにゃあが、翠華は人をアルラウネにする術を持っているにゃ。おっかないにゃあけど」

「……それは、端的に言ってしまえば人間からアルラウネに進化できる、と?」

「それは人間に限らず、あらゆる種族からにゃ。酷い時は《ドリアード》や《トレント》になってしまうらしいにゃあが……」

「おっかないですね、流石植物神……」

「で、本題はここからにゃ。《八葉の巫女》達も例に漏れず元何らかの種族だったものがアルラウネと化しているのにゃん」


 かみさまこわい。何となしにちょっとした進化の条件を聞けましたが、あらゆる種族から眷属である植物系種族に変異させる、ですか。

 この話を知っているかどうかで、ちょっとふわっとした雰囲気のある美女に見える翠華さんが全くの別人に見えそうになります。アルラウネに進化したい方は頑張ってくださいね……

 これでこっそりと《アルラウネ》《ドリアード》《トレント》への進化方法が分かりましたね。私達はなるつもりはないのですけれど。


「その八人は、最も強く元の種族の姿を残した八人らしいにゃあよ。ある意味では、適性が強かったのかもにゃあね」

「ああでは、ひょっとして《四方浜》の《蓮華》さんは……」

「にゃん。多分あれの元は人間にゃあね、なる前後の記憶なんて聞きたくはないにゃんが……」

「される、ということは何か罰当たりなことをしたってことでしょうしね……」

「ま、今回の情報はこんな感じにゃ」


 アルラウネとしても、外見が少し差異が出ている子達。ということは、よく観察すればその子達であるというのがすぐ見抜けるということでもあります。

 うーん、一体どんな外見をしている子達なのでしょうか。蓮華さんは元が人間ということで、そんな気配は全くなかったのですけれども。

 とりあえずお礼を言っておかないといけませんね。私がこういう細かい設定が好きだと知って振っているような気すらしてきますけど。


「いつもたくさん情報ありがとうございます」

「いいのにゃーよ。にゃあ達もそれで糸口が掴めるのにゃーら……って思ったにゃけど、おみゃーらそもそも間に合うかどうか微妙だしにゃあ……」

「……え? もうそんなに進行が……?」

「にゃん。多分今日の午後には西進……《夜草神社奪還作戦》が始まるにゃんよ」


 そういえば今日は木曜日。御触書の三番目が発令されて三日以上経過しているのでした。

 うーん、仕方ないとはいえ出遅れますか……出遅れどころかこれ、大ボス戦参加できるんでしょうか……

 ちょっとばかり急いだ方が良さげですね。どのみち今日はなるべく先へ先へと進む予定でしたけれど。

 これに関しては《サク》さんが何かしら手を考えていると思っておきましょう。とにかく到達してからですね……


「お待たせしましたわ、お姉様」

「にゃ。ジュリアも来たにゃあね、修理するものはあるかにゃ?」

「では、先立って刀の修理を頼んでおきましょうか」

「私も槍をお願いしますわ。明日はまた全力で試練に挑まないとでしょうから」

「あいわかったにゃ。モノは……大丈夫にゃあね、それじゃあ頑張るにゃあよー」


 《鉄刀》と《鉄槍》、そしてお肉を少々渡すと夜霧さんはいつものように駆け出していきました。

 見送ればすぐに振り返り、昨日《調理》のために外していた装備を付け直して道の先へと向かいます。

 修理に預けた弓と大剣も返ってきていますが、SLがちょっと低くてもこちらの方が早いでしょう。何より急ぐのであれば馴染みがいいですから。


「ジュリア、ちょっと急ぎますよ。午後にクロニクルクエストが始まるそうです」

「ふぇ!? これ間に合いますの!?」

「分かりませんが……最悪配信のみで追いますか。とにかく、急ぐ理由が出来ましたのでできるだけ」

「わかりましたわ。ちょっと効率的にやっていきますの」


 とはいえ、今の時点でも大分効率的に進めてはいるのですけれども。なるようになれ精神で進めていくしかありませんか……

 サクさんもこれを見越して振ったと考えておくしかありませんし、ダンジョンを突破さえすれば《転移》を使えるようになるのならそれに越したことはないのですが。

 踏み込んだ次の道は、獣道に草道と来てちょっと狭めの街道となりました。早々にここ湧く相手を確認します。


「コケーコッコー」

「鶏ですわね」

「鶏ですね」


 見るも立派な鶏です。鶏冠も付いていれば嘴も、丸い目はぱちぱちとまばたきしながらその辺の草を突っついています。

 名前は《クレイジーチキン》、そして一回り大きく身が締まり、鶏足がしっかりしているのが《マッスルチキン》。どちらも風属性でジュリアの獲物でしょう。

 ついでに一緒に湧いているのはこれまた懐かしい《クレイジーラビット》と、一回り大きくもぼすうさぎ程の大きさはない《ハイラビット》で、こちらは火属性。

 一番突破は楽な部類と見ましょうか。属性的には合致していますし、何より昨日の《ディアホーン》達、あれ水属性と氷属性だったんですよね。


「ではさくさくと行きましょう、っと」

「ナイスシュー。っていうか早速蹴とばしてるの笑うからやめてくださいません?」

「とうっ。襲ってくるのだけ対処して回りましょう、両方弱点が突けるとはいえ相手のレベルが高いですからね」

「……はあ、わかりました。ただ《解体》だけはしっかりやっていきますわよ」


 こちらを察知して寄ってきた《クレイジーラビット》三体のうち、先頭の一体が飛び掛かって来たので蹴りを喰らわせて後続の一体にシュート。勢いが付いて直撃した兎は無残にふっとびました。

 それでも起き上がって来たので、二体で伸びているところに三匹目もシュート。三匹とも体力ゲージが空になったので、迅速に《解体》して素材を回収。

 ここまで来るとMobのレベルが余裕で三十を越えるのもちらほらと。振れ幅としてはおおよそ四前後なのですが、それでも先ほど蹴とばした兎は三十レベルですからね。

 体格差と勢いが乗ったので二発でしたが《ハイラビット》となると数発は耐えそうです。出来る限りさくさくと進めていきましょう。



――◇――◇――◇――◇――◇――



「おおおぅっ、っと!」

「流石鶏、動きが素早い……」

「それでも、んおいしょっ、からの《フレイムスロア》!」


 飛び掛かり啄み攻撃を仕掛けてきた《マッスルチキン》に対してジュリアが覚えたての《ハイスイング》で顔面を殴り飛ばしますが、残った体力のままに《鉄槌》を連続で啄みます。

 鉄を硬い嘴でつつき快音が鳴りますが、そこに《フレイムスロア》を当てて思い切り焼き上げていきました。うーん、ちょっと香ばしい香りがしていますが。

 二時間ほど進んだ辺り、ようやく鶏と兎の対処に手が慣れ始めてきました。兎はどうとでもなるのですが、鶏がちょっと厄介ですね。

 基本的な行動としては飛び掛かると啄み、時々砂掛けの動作で草飛ばし程度なのですが、とにかくどの行動も出が早い。特に啄みは単純に一度つっつくパターンと連続でついばんでくるの二通りがありました。

 連続啄みは当たると一気に体力を削られますし、特に《マッスルチキン》は子供ほどの体格に近い大きさのため圧が……凄い……


「ふぅ……進むとほとんど見つかるので、結局全部倒しているみたいものになってますわね」

「そこは仕方ありませんよ、これでも割と見逃してくれているのがいますし……」

「え、そうなんですの?」

「鶏は全部こっちに向かってきてますけど、兎はちょくちょくと」


 おかげで鶏肉だけたっぷり集まってるんですよね。コシネさんへ届けたら歓喜しそうですが、流石の夜霧さんでも宅配便はしてくれないでしょう。

 兎は警戒心が強いのもあって、こちらから積極的に仕掛けなければ早々襲い掛かってくる事がありません。鶏は縄張り意識が強いのか、すぐに襲い掛かってくるんですよね。

 ただ《ハイラビット》が命令して襲い掛かるということもあるので、《ハイラビット》だけは見つけ次第最優先して叩かないといけないくらいでしょうか。

 一度大丈夫と思って見逃そうと思ったら、五匹にまとめて襲われてちょっとびっくりしたんですよね……なんとか叩けたのですが。


「まあとにかく、見えてきましたわね。あれが五番目の……おや」

「これまでと違ってかなり華やいでいますし、祠自体もとても綺麗ですね?」


 ようやく到達した五番目の祠ですが、これまでの四つの祠……稲の花、桜、蒲公英、蕗の薹の祠と違い、この祠はとても綺麗で緑が生い茂っていて……

 そして小さな池に咲き誇る花と、祠の祭壇に掲げられた木版に記された華で、その理由は察する事が出来ました。

 その祠の印は、蓮の花。そう、ここはおそらく《蓮華》さんの祠なのでしょう。ただ、他の祠よりは綺麗とは言え、どことなく咲いている蓮の花は元気が無さそうに見えますが。

 これはやはり……《魔力汚染》の所為なのでしょうか。そうなると、何れ蓮華さんの汚染も祓ってあげないといけませんね……


「まだ無事な《八葉の巫女》の祠は綺麗、と考えると……これまでの四人は既に」

「哀しいですわね……奪還作戦で元に戻れるといいのですけれども……」


 と、少し祠へと触れると……体力とMPが全快にまで回復しました。セーフティに入ると回復はする仕様にはなっていますが、これまでがこれまでだったので、気分的にはようやく落ち着けるといいますか。

 ……折角ですから、最初の方で《タンコロリン》からドロップした柿でもお供えしておきましょう。本来はそういうところだったのでしょうし。


「それにしても、どうしてこの一帯は獣がこうも跋扈しているのでしょう?」

「確かに。入ってから熊に狼と来て鹿と猪、で先程が鶏と兎と」

「ある意味では料理人には垂涎のような場所ですけれど……森林地帯なのもあるからなのでしょうか?」

「かも知れませんわね。それにしては、ですけれど」


 確かに食肉足り得るものがびっしりと湧くもこれまた珍しいというか。多分《調理》伸ばしをしたい場合は肉の調理が一番なので、後々この辺は調理人の縄張りになりそうですね……

 兎肉や鹿肉もそれまでとレベルが違うので少し品質がいいんですよね。持って行けば高値で売れそうですが……うーん、今は戻る時間が惜しい……

 特に鶏肉は未だ出回ってない品の筈。調理できる幅が広いですし、面倒な絞めや解体作業もないので火さえしっかり通せば簡単に食べられますからかなり値上がりしそうですけれど。

 終わったら持って行ってあげますか……今の時点でもスタックしている肉の数がそこそことんでもないことになっているんですよね……


「これ、もうひとつ先は牛が湧いたりして」

「牛肉ですか……そうなるといよいよもって食肉ロードとなんて呼ばれかねませんわよ?」

「そう言いながらもおいしそうとか思ってますよね、ジュリア?」

「……そりゃあもう当然ですわよ。ゲーム内であれど美味しい物が食べられるに越したことはありませんわ」


 果たして本当に湧くかどうかは神のみぞ知る……と言ったところですが。いえ、本当に湧いたらびっくりですけれど。

 私としてもあんまり《調理》は伸ばしていませんが、野宿飯が作れる具材が増すのはいいことですからね。肉巻きおにぎりとか、チキンフレーク入りおにぎりとか。

 ちょっと手を入れて雑煮とか、鳥皮焼きとか……うーん、夢が広がります。ジュリアは夜側に行くのでむくれそうですけれども。

 とりあえず、昼の休憩に一回ログアウトしましょうか。夜霧さんもまだ来ていないようですからね。

私は鶏肉料理、大好きです。自分で調理方法を色々研究するくらいには。

他のMobにウサギをシュート!超エキサイティング!ってしてますが別に不可能ではありません。

ただし時々レベル差もあるのでスカします。このあたり、Mobのレベルは29~34なので。

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