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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
2-1章 いざ目指すは西方の地/Go to West!

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384/390

384.画家と心惑わせる妖の精

「……では、《水龍の祟 水葉之神》を召喚します」

「ううっ、嫌なカードを……デッキ上からクリーチャーが出るまで捲ります。うわ、《ソニックウェイブ・シンガー》が出ました」

「では、4コスト以下を全部手札に戻してもらって、パワー一定値以下はロックですね」


〈お、昨日の続きか?〉

〈ユエさんの引き良くて草〉

〈この捲れ方はクレハのデッキには致命傷では?〉

〈メタ引けてないっぽいな〉


「ドロー……ああ、これは半分詰みましたね、これはシールドに賭けるしか。何もできないのでターン終了です」

「ふふふ。では私のターン……これをチャージして、《龍喰蟲の櫛》でクレハ様の墓地からカードを三枚除外、《水葉之神》で攻撃時にチェンジ宣言……《波剣竜タイダルブレイド・ドラゴン》!」

「……くっ、これだと指定除去だから選べない!」

「ついでに《水葉之神》の能力が発動しますよ、クレハ様!」


 とまあ、配信開始ちょっとまでユエさんと《デュエコマ》を行い、私が負けを喫したところで改めて配信開始の挨拶を一通り。

 昨日のあれそれを見ていたユエさんや女禍さんが興味を持ったらしく、祖父と祖母が帰るために一日開けるついで昨日教えたところこの強さです。流石というかなんというか……

 意外にも一番これにドハマリしたのはツィルさんとノアさんらしく、ユエさんからサクを経由して渡された大量のリストからあれやこれやと紙片にカードを転写してデッキを組んで延々と戦っているのだとか。

 いずれ誰かしらに挑みかかりそうですが、さすがにDCO内だと出来ないので……シトラスが九鬼と共謀して何かしらそのあたり考えていそうな気もしますけれど。


 さて気を取り直して、本日の配信ですね。日曜日ということでブルーフロントラインの第三章となります。

 第三章は次の島……自然豊かな芸術の町。妖精たちに手伝ってもらいながら多くの芸術家か数々の作品を生み出しているところ。

 ここには新しく仲間になる子が二人いますが、非常に癖が強いのでユエさんが扱いきれるか楽しみですね。


「ちゃんとユニットを覚えてきました。魔物ユニットはだいぶ尖ったものが多いですね……」

「レベルも必要以上に上げているあたり、しっかりとしています。今日進めるところも問題無さそう」


 進める前にユエさんの進行度チェック。今週は頼ることも少なかったので、先週の攻略で追加された魔物ユニット達のレベル上げも済んでいます。

 おそらくフリーバトルでしっかりとユニットの扱いも習熟していると見えます。これなら問題なさそうですし、ユエさんに先に進むように進言。

 淡い桃色の霞に覆われた森と、大きな街。二章の時のような不穏さはなく、上陸しても明るい場所で何事も問題なさそうですが……

 主人公のリュナーとチグサ、ヤチヨは帝国の近況を探るために情報収集へ。他のメンバーは船で留守番、或いは買い出しと手分けをすることになりました。


「芸術祭……なるほど、そういった催しですか」

「ですが、何やら残念そうな顔をしている人達がいますね」


 言わずともユエさんもそれは感じ取っていたようで、街での情報収集もそこそこにそちらの方へ。

 進め方として間違っておらず、むしろこの件を受けないと先に進めませんからね。近づくだけでその話が聞こえてきます。



――◇――◇――◇――◇――◇――



「今年はファルカリア様の出展がないのですね……」

「毎年この祭りにだけは出展なされていたのに……」

「ファルカリア様、というと?」

「ああ、聞いたことがある。芸術の都にはファルカリアという天才画家がいて、毎年大作を一つ出すという。絵一枚に何千万という価値が付くとかなんとか」

「それは、すごいですね……私も一度見てみたいのですが」

「なんか、今年は出されていないのが騒ぎになってる、みたいだけど」

「……ふーむ、私も一度見てみたいと思ってたんだけど……」


 展示されている他の絵も負け劣らずの力作、名画揃い。それを遥かに超える名画を生み出す画家というのも気になってくるが……

 あくまで次の島を目指すに当たっての補給、経由地として考えていたが、少し寄り道してみるのもよさそうだ。


「すみません、ファルカリアさんの絵を見たくて来たのですが」

「おや、旅の者かね。ようこそ、芸術の街へ。ファルカリア様の絵は、今年は出展されておらんでな……過去描いたものは美術館に展示されているはずだよ」

「美術館に、ですか……実際に逢ってみたいのですが、何処にいるかなどは」

「奇特な方ですな。ですが、誰にも会いたがらない方でしてなぁ……旅の方となれば、話くらいは聞いてくれるやもしれぬな」



――◇――◇――◇――◇――◇――



「……ファルカリア様と仰いましたか?」


 名前を聞いた途端、ユエさんの目の色が一瞬変わったような。

 驚いたような、どこか嬉しそうな。こういった反応をするということは、おそらく……夜界に実際にいますね?

 リスナーの方々もいつもと違うこの反応に気づいたようで、フリューを中心に盛り上がり始めています。


「ええ。この街にいる画家さんで、結構人気のキャラクターでして……」

「まさかとは思いましたけれど、このゲームで実際に御目に掛かれるとは……! 私、感激です!」

「そ、そんなに……?」

「はい! 我が家にもファルカリア様の絵画が一枚ありまして、とても素晴らしい運河の夜景画なのです」


〈トトラ:ユエさんが見たことない顔してるのだ……〉

〈キユリ:ちょっと私も気になります!〉

〈なんかやっぱりユエさんって〉

〈ほんのりクレハ要素感じたぞ今〉

〈フリュー:どこかに私達のもいるってあたり、ちょっとこわいねあれ……〉


 一瞬で目を輝かせ、ちょっとだらしない顔を浮かべつつものすごい勢いゲームを進め始めます。

 うん、ちょっとあんまり人前に出したくない顔してるあたり、これが私がたまに見せるという顔なんですね……

 ちょっとフリューが気になる事を言っていますけれど、それはあとで問い詰めるとして。

 場面は移り、郊外にあるというファルカリアの邸宅へ。邸宅といっても少し寂れたもので、森の中にある小さな小屋です。

 ユエさんは、「そうそうこういうところに住んでいるのがイメージ通りなんですよ」と頷いています。なんだかこれはこれで面白いのでちょっと置いておきましょう。

 いや、実際のファルカリアさんを知っているのであれば色々と聞き出したいのですが……リュムさんについて知らなかったということは、彼女についても知らないのかも。


 リュナ達がノックし、気だるげな声と共に出てきたのはベレー帽に長いサイドテールの少女。飛び散った絵具が衣服に付いていたりしているのが、少し画家らしいと言いますか。

 ちょっとだらしなさそうなところがそうっぽいというか。ただ、普通の人間とは少し違う印象があるのが特徴的というか……


「ファルカリア様です! すごい、本物そっくりです!」

「ということは、本人もいるんですね……」

「はい、リュナーさんのところで好きに絵を描いていると。先の絵画を下さった際は、珍しい風景だと一夜で仕上げて来られたんですよ」

「速筆なのもゲーム中通り……」

「ただその、元気がないように思えますが。二言三言交わした程度でしたが、こんなに暗い方ではなかったハズですが」


 ……おや、鋭い。ファルカリアさんは目の前の様子とはまるで変わったものが本来の性格です。

 ということは、色々と乗り越えた後の彼女の姿を知っているのでしょうね。となれば少し楽しみですが。


 さて、今回彼女が出展をしなかった理由というのは……部屋の中を見れば一目瞭然。絵自体が出来上がっておらず、当人はどこか熱に魘されているかのような顔。

 リュナー達は何かしらの傷病かと驚くも……アイデアが出て来ないのに合わせ、一ヵ月前から熱が引かずに悩んでいるとのこと。ただ、その理由については……



――◇――◇――◇――◇――◇――



「これは……」

「何かの呪いでしょうか?」

「あー、うん、そんなんじゃなくてね。あんまり言わないで欲しいんだけど、あたし、妖精とのハーフなんだ」

「妖精とのハーフ……それで、腕の紋様だけでなくて眼の色が珍しい色をしているんだ……」

「にひひ。まあそんなわけで、普通の薬だと効きが悪くてね。それで妖精の友達に頼んで森の奥の妖精たちに薬を貰いに行ってもらったんだけど、かれこれ一週間帰ってこなくてね……」

「そんなに……そうなると、確かに絵も出来ないか。それなら私達がその薬を貰いに……」

「ああ、だめだよ。妖精郷は妖精がいないと入れない、それどころか下手をすると飲まれちゃうから。ちょっと悪いんだけど、連れて行ってくれないかな」

「そんな体で動いたら余計に。ですけれど、彼女がいないと入れないとなると……」

「チグサ、ヤチヨ。すまないが、手を貸してやってくれないだろうか」

「リュナーがそう言うのなら……」

「ファルカリアさんは私が背負いましょう」

「大丈夫だ、何事も無ければ行って帰ってくるだけだろうから、そう心配することもないしね」

「ま、万が一魔物に襲われても、まあ結構力は入らないけど戦えはするからさ。安心してよ」



――◇――◇――◇――◇――◇――



「ここまでほとんどそのままだとより一層使ってあげたくなりますね……」

「ちゃんと妖精とのハーフであると」

「いえ、幻双界の彼女は妖精ではなく精霊です。なんでも特別な力を持っているとかで、リュナーさんにとても重宝されていると」

「えっ……、妖精からクラスアップしていませんか?」

「ふふふ。おそらくですが、すべてを終えた後、なのでしょうね、皆さん」


 ……あぶないあぶない。この後のファルカリアさんを知っている皆さんは上手くお口チャックしてくださいましたが、そこまで再現されているとは。

 リュナーさんの側近であるということは、そのうち私達も会う機会があるということですね。ともかく、熱の入ったユエさんはどんどんシナリオを進めていきます。

 ファルカリアさんを介護しつつ、街の西にある森……妖精郷へ。高い木立、濃い霧の向こうに桃色の風と共に視界が開け……ると同時に戦闘が始まりました。

 流石にユエさんも面食らったようですが、入った途端に襲われて戦闘が始まるのです。うん、割ともうちょっと準備できるだろう、予兆くらいはあるだろうと身構えている人へのストレートパンチですね。


 襲ってきた理由というのは、相手となる妖精たちの様相を見れば一目瞭然。すべてのユニットに《狂乱》という特殊ステータスが付与されていますからね。

 そのうえ本来あるべきクラスもぐちゃぐちゃで、妖精郷自体がまともに機能しなくなっていることが一瞬で判明します。ちゃんとユエさんもそのあたりをすぐ読み取ってくれたようで、驚きながらもユニットの配置を行います。

 ここで明かされるファルカリアさんのステータスはキャスターであり、妖精熱というステータスデバフも掛かってはいますが……デバフあってなお火力、めちゃくちゃ高いんですよね。


「船番組は編成不可で、ファルカリアさんは魔術アタッカーとして扱うのが良さそうですね。なので、リュナーさんと……チグサさんと同じ隊に配置制限が掛かっているので、少し偏重しますが」

「ふふふ。編成制限がちょっとキツいステージですからね。ここでもユニットの育成を疎かにすると痛い目を見るんですよ」

「確かに。メインキャラクターが強いからとそちらだけ使っていると、強いユニットがひと固まりになるので上手く動かせなくなりますね」


 だからこそ補助であるチグサはファルカリアさんと組んでいても全く問題なかったりはします。が、今度はまだヒーラーユニットが少ないので、どうしても頭数が足りない。

 特にリュナーさんは体力も高くアタッカークラスのため、被ダメージが多くヒールし切れるのはチグサさんくらい。なのでどうしても一緒に編成したくなります。

 一応なりこの特化パーティだけで突破はできるのですが、結構時間が掛かったりするのでスムーズに進めるのであれば、やはり多くのユニットが使えるようになっているのが一番いいですね。

 配置も終わったところでステージスタート。前哨戦なので、軽く突破してほしくはありますが。


「クレハさん。この中にファルカリア様のご友人はいたりするのでしょうか?」

「いえ、ここにはいませんね。というと……」

「はい。よく一緒におられるという妖精の方はご存じなのですが、何分お会いしたことはなくて」

「ユエさんが知らないというと、機密の扱いなのでしょうか」

「単純にあちこちを飛び回っているからかも知れませんが、リュナーさんの配下だと一番情報が知られていない方なんです」

「知られていない……というと」

「どうやらファルカリア様とリュナーさん以外とは慣れ合わない変わり者らしくて。二人のどちらかのお願い、または彼女でしかできない任務でないと受けてくれないというのです」

「なるほど。それは……この先を知っていると少し納得ともいえますけれど」


 さくさくとおかしくなった妖精たちを殲滅しながらユエさんがひとつひとつ見ながら小さく口にします。

 この後の展開を知っている都合、「ああ、やっぱり」としか言いようがないのですが、そのあたりも再現しているようですね。

 ただ、そうなると下手すれば彼女が関わってくるイベントがあるとしたら、ルヴィアの力を借りて精霊界へ行かないといけないかも。

 

「となると……これ見よがしに立っているあの妖精の城の関係でしょうか……」


 雑談のうちにステージを終えたリュナー達。その背後にあるのは如何にもな、妖精の翼で飾られた白亜の城。

 煌びやかで妖精らしい、湖の中心、崖の上に立つ派手で幻想的な城ですが、今はちょっとした魔の城のようにすら見えます。

 一度気絶させた妖精たちもチグサ達の手当で気を取り戻し、ファルカリアさんが貰う筈だった解熱の薬も改めて貰いつつ話を聞いているようですが……


――◇――◇――◇――◇――◇――



「大変なの! 大変なの! エルシャナ様が大変なの!」

「エルシャナちゃんが、どうしてまた!?」

「ファルカリアちゃんにお薬を持っていく前にお祭りだからって、先王さまに妖精女王様に召し上げられてしまったの! そうしたら、そうしたら!」

「妖精姫さんだったんですか!?」

「そうだった忘れてた、あの子は妖精女王の候補だったんだ! それにこの時期だから……まさか、そういうこと?」

「ファルカリアちゃんは知ってると思うけど、新しい女王様はなりたての頃は倍増した力が暴走しがちなの。わたしたちもそれに当てられて……!」

「あー、やっぱりか……リュナーさん、説明するね」


「エルシャナちゃんは次期女王様候補で、その力は"誘惑"と"狂乱"に特化した力を持っていたの。それが、戴冠の折に暴走したんだ」



――◇――◇――◇――◇――◇――


 それを聞いたリュナーさん達は顔を見合わせて、すぐに船に連絡を取り始めます。

 ファルカリアさんの友人、《"乱れ咲き"のエルシャナ》さんは妖精女王。そう、だからこそ、彼女は精霊界と関わりがあるのかもしれないのです。

 そうなれば、もしかしたら精霊界の方にまで行かなければいけないかも知れませんからね。現にコメント欄では既に精霊となっているタラムさんとキユリちゃんがしっかりと反応していますし。


「―――なるほど。それは大事です!」

「というわけで、次の目的地は城になりますね」

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