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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
2-1章 いざ目指すは西方の地/Go to West!

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377.Q.何時弟子入りしたの? A.バージョン1終盤頃から

「やーっ!」

「にゃはは、にゃあ達は遠く眺めてるだけだったから新鮮にゃあねえ!」

「でも手応えがあるにゃ!」


 月曜日。夜界の最前線はレベルの高さからちょっと停滞気味であり、私達は十分にレベルが上がっているのでちょっと後方にひと休憩。

 そんな折にジュリアが引率する《オペレーション・ジェミナイア》、オペジェミの面々がバージョン0のクライマックスである夜草神社解放戦に挑むのを見物していました。

 いつもはバラバラに動く面々も今日は六人一緒。ついでに祖父が連れてきた二人のゲストとエアリーで決戦の時にいなかった面々たちも参戦。

 それに折角だからとヒルデ達も参戦したうえで《@ぷろじぇくと》所属の手が空いているVtuberに集合を掛けての大規模コラボの様相になっています。


 事の始まりは先週の木曜日。バージョン2も開始早々ながら、開発が追い付いていなかったクロニクルクエスト決戦の《追想》。

 父リブラスからインスタンスサーバーで実機テストしたいということで参加者を募り、短い募集期間ながら結構な人数が集まったため早期に決行に踏み切ったということです。

 ただテストというだけあって当時あったような報酬は無し。純粋に当時の空気とボス戦を楽しめるだけというにも関わらず、それなりに集まったということはそれだけ需要があったのかも。


 なるべく早くに行うことになったのは、最前線組と可能な限り離れないためであるのですが……最前線に遅れることを危惧しレベル上げを優先した電ファンの方からは比べて少数の参加になっています。

 上手くいけば今後はイベントのような形で再演できるかもしれないとのことですし、そう焦ることはないのかも、というところではあるんですけれど。

 結果的に早期テストという希少性、そしてベータテスト時の1000人という枠に入れなかった面々達は嬉々として参加し、当時味わえなかったリアルタイムの雰囲気を楽しんでいます。

 特に配信に関しては《@ぷろじぇくと》のほぼ独占配信という形になっており、どのチャンネルでもバージョン1から知ったという人が多いためか結構な数の視聴者が付いてるとか。


「いやあ懐かしいですね。本陣はこんなことになってたんですか」

「私とお姉様は《竜の試練》真っ只中でしたものねぇ。合流できたのも最後の最後でしたし」

「あの時は間に合うかどうかの瀬戸際でしたけど……まあ、結果的には間に合いましたし、いいとこどりできたんですけどね」

「当時進化していたというだけで、結構な注目の的だったしのう」

「それに。天使と妖精以外に空を飛べたのも、珍しい」

「……まあ、その代わりに相応の難易度を叩き付けられていたわけですが」


 数十人ほどの規模をトップ勢の多いエアリーで統制しているという形になっており、思ったよりもマナーのいい人達であるので誘導に従ってくれているのも大きいかも。

 リノが私の出番とも言いたげに裏方として誘導や統率を引き受けてくれているので、私達は思い出しつつもただ眺めるだけという形に落ち着いています。

 ちなみに一度クリアした人達は今回は控えておいて欲しい、とのことでエアリーギルドハウスで実況席を設けて観戦と洒落込んでいます。いつも賑やかなハウスに4人だけはちょっと広いかも。

 あの時にいたエアリー勢は私達とカエデちゃんとルナちゃん、今回は仕事で来られなかったサスタさんとアマジナさんだけですからね。30人近くがバージョン1からの参戦でしたし。


 それにしても。私達はこの決戦は最後だけの参戦だったので、改めて実際の場で見ていれば色々と見るところがありました。

 《竜の試練》の道中に掛かり切りで、こちらへの参加がほぼ全くといっていいほどありませんでしたからね。ボス戦だけ参加したという形になりはしたのですが。

 翠華さんがゴスロリ服で外を歩いているところや、こっちでしか出てきていなかった魔物の編成だとかの見所もありますが、今改めて見るとリーダーが変わるだけでも結構違って見えますね。

 当時ルヴィアが座っていた総司令官の席にはヒイロさんが座っていますし、それを補佐するリノやどうやってかついてきた夜霧さんもいますし。一度手本を見ているからか、結構スムーズに進んでもいます。

 まあ当時の切り抜きではルヴィアに変な声を上げさせたフリューの切り抜きがそこそこ人気になっていましたっけ。懐かしい話ではあります。


「それにしても、流石私達が知る最高峰の使い手に教わっただけありますわね」

「もう一人増えているとは聞いていませんでしたが……周囲と隔絶した実力が際立っていますね」

「噂には聞いておったが、やはり実物を見るととんでもない腕前をしておるの……」

「前衛二人が特に異常ですが、それを支え切るあの子も相当突出しているというか……キユリちゃんクラスの逸材では?」

「攻撃面は流石に違いは見えますけれど、それでも十分すぎますね。機動力に全力を振ってサポートに特化しているようです」

「あれは、今度キユリが稽古を付けてみるとか。化け物がまた生まれる可能性が、出てきた」

「カエデちゃんルナちゃんも一般プレイヤーから見ればもう立派に怪物の仲間でしてよ……?」


 さて、一番の見どころと言えば先日祖父が言っていた彼らの弟子となる姉妹ですね。最前列でヒイロさん達と共に魔物達を蹴散らしています。

 姉の方は私と同じで刀を佩いていて、妹は双剣を、そして二人に付き添っている子は杖ですね。様になり過ぎてて怖いくらいですが……

 しかも隣に並び立っているのが祖父祖母、そしてクモナギさんなので向かうところ敵なしなんですけどもね。実力的には今の最前線に立っていてもおかしくないほど。


「行くぞ、ハク。楽しくなってきた」

「うん、サヨねえ。遅れないでね」

「おふたりさま、ま、まってくださいーっ」

「レトラも遅れるなよ」


 シリュウとクモナギさんは育て上げた弟子を見る目でほぼ後方腕組で見ているだけだけですが、二人をカバーする天使娘はまだ祖母カタクラの指導をちょっとだけ受けているようですけども。

 他の青空道場の弟子たちも参戦していますが、やはり際立っているのはこの三人のようですね。他の弟子たちはもう少し後方でストーリーを楽しんでいるようで。


 姉、狐娘のサヨさんの方は踏み込みの力が突出していおり、剣の腕前も抜き打ちの速度であれば私以上でしょう。

 ただし一撃一撃の剣閃の精度はそこまで良くないようで、クリティカルはそこまでないのがそれを物語っているようです。

 祖父の育成方針としては、技量での必殺を狙いつつ中~長期戦を行う私とは違う、短期決戦……やや力押し気味の神速の一撃必殺でしょうか。

 妹のハクと呼ばれた子も姉と同じく狐。ですが、手にしている双剣の動きはフキノのそれよりも研ぎ澄まされたそれ。クモナギさん直伝といった形ですね。

 ただこっちはルヴィアとはまた違った目の良さが目立ちますね。姉と同じく機動力型ではありますが、受け流すことと回避に長けているようで。

 現にここまで来るのに相当数戦っていますが、体力をミリも減らしてないところにその実力が現れているようです。チヨちゃんみたいな物量型にどう対処するかはちょっと見てみたいところがありますが。


「……ジュリアはどう見ます?」

「対人の話であれば、十分対処可能ですわね。どっちにも全然勝算はありますわ」

「でしょうね。私もどちらにもまだ負ける気はしませんね」

「ただ真面目にやらないと首を搔っ切られそうですわ。動きだけは本物でしてよ」

「エアリーには欲しい人材ですが、素直に私達の前に出さなかったということは……」

「……ええ、ちょっとだけ鼻っ柱をへし折れということでしょうね。目立ってはいませんが、その節がちょっと目に付きますもの」

「確かにのう。なーんかちょっと格好付けているのが気になるのじゃ」

「慢心、ダメ、絶対」


 ジュリアも察しているようですね。私達はお互いで鼻をへし折り合う仲でしたし、フリューとルプストも追随する形にもなっていましたのでそうはなっていないのですが。

 私には最近は特にルヴィアという対抗馬が出てきたので腕を落とさないようにしないといけませんし、ジュリアは常に傍にライカというライバルがいますからね。

 二人ともに共通するちょっとした弱点が見えるとすれば……実力は推して知るべしではあるのですが、まるで演劇をやっているかのような格好つけが見て取れるところでしょうか。

 元々女優業のついでとしてやっているミスティアはともかく、ちょっとした隙になりかねないところではあります。

 若い子特有ではありそうなので、近い私達が一度上には上がいるところを見せておけというところかも。動きを見ているだけでもだいたい意図は察しましたが。


「さ、そろそろ本殿突入でしてよ。当時いなかったイチョウさんやチヨ、トトラとキユリも張り切っていますわ」

「ほぼ一年前の出来事にしれっと今の最前線級が混じってるのは面白い絵面ですね……」

「そんなこと言ったら、エアリーのバージョン1組がほとんど参戦しているので過剰戦力もいいところだと思いましてよ」

「……八面六臂の活躍したルヴィアの役は、今回は不要かも知れませんね」


 夜草神社の麓に到着した面々が我先と階段を駆け上がり始めます。先頭はヒイロさんで、その後ろに夜霧さんを連れたスウェルさんを含めたオペジェミの面々。

 その後ろにエアリーバージョン1組、祖父たち青空道場組、その後ろにしれっと混ざっている巴さんを含めたVtuber達が続く形ですね。

 にしても、たぶんこれ《@ぷろじぇくと》所属はほとんどいるんじゃないでしょうか。当時の大規模よりは人数が格段に少ないとはいえ、それでもレベル面から見れば十分カバーできるほどですし。

 ここを上がれば普段であれば大きな境内なのですが、改めて見ると中腹に謎の広場が出来上がっており。そこに《八葉の間》が出て来ている形になっていました。


「ダンジョン仕様になってるので、普段は地下にある八葉の間がこんなところに」

「あの時は時間が無くて直行でしたものね。あんまり覚えないのですわ」

「当時は唯一の飛行持ちだったので、ホーネッツさんの指示で飛んでいったのがもう懐かしくて」

「飛行持ち、今ではたくさんいますもんねえ」


 リノによって振り分けられた七つのレイドパーティがそれぞれの部屋へと進んでいきます。ボスとして異形へと変化した《八葉の巫女》たちとの戦いですね。

 当時は稲花さんと戦い、ジュリアは陽華さんと戦ったんでしたっけ。それもあってそれぞれに好かれている気もしますが。

 オペジェミは綺麗に各レイドのリーダーとして割り振られ、残りふたつにイチョウチヨ組、トトラキユリ組が分けられているようで。

 あとは仲のいい組がそれぞれ割り振られているようですが……うん、それでも戦力過多過ぎるかも。


 揃ったところでヒイロさんの一声と共に開戦。一斉に戦闘が始まります。

 私が唯一見覚えがあったのは八番の再誕の部屋にいる稲花さんだけなのでちょっと新鮮ですね。


「陽華さん、あんな感じだったんですね」

「ええ、結構厄介でしたのよ。一撃当たるだけでも結構マズイので、飛行の慣熟訓練ついでにやらせてもらいましたの」

「パワータイプは汚染で変質してもパワータイプでしたか……」

「そう言うお姉様が相手にした当時の稲花さんはどうだったんですの?」

「……あー、見ての通りです。今ちょうど例の姉の方が相手にしているとおりに」


 リノがそのあたりちょっと意識したのか、ご丁寧にサヨさんが稲花さんのところへ、陽華さんのところにハクさんが割り振られています。

 サポートのレトラさんはサヨさんのところに回されていますね。ハクさんは被ダメージがゼロだったので、別に大丈夫だろうという判断なのかも。


 稲花戦は私達が挑んだ初見時に比べてギミック自体は割れているので、そこまで苦戦はないようですが……

 ずるずると育っていく食肉植物に、一瞬の踏み込みで距離を詰めてから斬り付けるサヨさん。確かAGIに比例して《瞬歩》の距離が延びるので、相当振っているのかも。

 そうでなくてもかなりの前傾姿勢で突っ込んでいるので結構な突貫力を持ち、そこに一振りの刀へ威力を乗せているようですね。


「うわあなんですのアレ」

「成長してから種に戻るを繰り返すんですよ。ほっといても攻撃パターンが変わるので、全形態まとめて1パターンといったところですね」

「よくもまあ対応できましたわね……ああでも、当時換算なら強さはそこまでですか」

「種に戻る前に仕留めきってしまえばいいだけですから……サヨさんはしっかり予習してきたようですが」


 この仕組みは初見でこそ厄介でしたが、サヨさんは判ってしまえばという勢いで斬り付け続けていますね。

 攻撃自体は他の人達が受け持っていますし、今はあの子に暴れさせればさせるだけゴリゴリと削れていくのでその判断は正解でしょう。

 ちょっと落ち着きのないレトラさんがあわあわとしながらサポートはしていますが、だからとミスはないのでちょうどいいでしょうし。


「あの子も傍から見てると危なっかしいですが、ミスはないので素質はありそうですね」

「ですわね。見ていてどういう方向に化けていくのかちょっと楽しみになりましたの」

「……とんでもない方向に進化するの間違いではなく?」

「そうなってしまったら責任は取りますわよ? でもその分また尖った人材が手に入ると考えれば、面白いことでありませんこと?」

「それはそう。面白い人材を引っ張ってきてくれてものですね」

「カエデみたいに、ヒーラーなのにアタッカーも、面白いかも知れない」

「それはもう前例が多くて何も言えんのう……」


 ただこのあと、あの二人と手合わせすることになると考えるとちょっとだけ大変なことになりそうですけどね。

 そのあたりの下見も含めて、今日のイベントに巻き込んだのでしょうが……まあこういったところは当人達も楽しんでいるので、今は眺めているだけとしましょう。

 ジュリア自身は人が増えれば楽しいの方針ですし、私としてもこれだけ強いのなら彼女らが加入するのであれば今後も楽しくなってきそう。

 レトラさんも今でも光るものがありますが、磨けばより一層輝くか、或いは化けの皮が剥がれるか……楽しみですね、これは。


 ヒイロさん達オペジェミの面々も真正面からボス達と張り合っているところを見るに、以前よりもより一層腕も上がっているようですね。

 武器の扱いもしっかりと習熟してきたようですし、個性も見え始める頃になってきています。ロンさんは五人の中で一番突出しているので、先に個性が伸びていましたが。

 初回に比べてギミックが割れている分、特に崩れることもなくどこも順調に進んでいるので私達の出番も無さそう。


「さーて、こうなるとお姉様。二人とはどこで戦うことになるのでしょうか?」

「それに関しても祖父から指定されていますよ。ずっと行く機会が無かったので、ちょうどいいのですが」

「なるほど。それはちょうどいいですね、どれだけのものになっているのか気になっていますし」

「本当は先に女禍さんの泥人形ともし合わせてもいい気がするのですが」

「あ、私のも暗路に配置されたと聞いたので、昨日戦って来ましてよ。最下層の道を外れた先にありましたの」

「……どうでした?」

「スピードはありませんが……まあ、あれなら大抵のものに負けないでしょう、というくらいでしたわね」


 ちょっと話が逸れますが、夜津さんのダンジョン改装計画は結構進んでいるようで次々とエアリーの上位勢を泥人形化して取り込んでいっているようです。

 思っている以上にみんな乗り気で協力しているようで、次から次へと追加されているのだそう。既に私とジュリアを含めてトップ六人は出来上がって配置されているのだとか。

 しかも女禍さんから見た私達を双界人ナイズしたものが配置されているので、自分とはまた違った動きをして戦ってくれるので新鮮味もあるそうな。

 以前私も戦った時も、似てはいれど結構違う挙動をしていましたからね。その時よりも調整されているそうですし、折を見て見に行くか、ヒイロさん達が暗路に挑みに行くときに見に行くか……ちょっと楽しみではあります。


「もうそろそろ終わりそうですね」

「あとはあの物量戦ですわね。この勢いならすぐに終わりそうですが」

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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜
相方、杜若スイセン氏によるDualChronicleOnlineのルヴィア側のストーリーです。よろしければこちらもどうぞ。
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