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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
1-7幕 猫鎮めの神器 / Go to Vanaheim East

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251/390

251.ドラゴン素材はやっぱり期待しちゃうもの

「登山も三度目ですわね……」

「しかもひとつは直近なのだな、火燐を思い出すのだ」

「そういえばジュリアさん達は直前攻略のダンジョンも火山でしたねー、どうだったんですかー?」

「どうもこうも、条件満たしたみたいでエクストラハードモードでしたわ」

「まさか海佳さんを連れて行くとイベントがあると思わなかったし……」


 十月二十五日、案の定クレーター攻略は二日目に突入していました。再開地点は火山地帯の入り口、火炎森林地帯との境目ですね。

 今日はNYXメンバーについては練習もあって欠席となりましたが、他の顔触れは変わらず。集まっている面々は待っている間に森で出現する魔物の素材を集めていた様子。

 ただやはり六人でないと辛いようで、足りない面子を補充してから挑むという形を取っていたようですが。


 ちなみに折角解放されたので私達がクリアするまでの間、誰でも入って来れるようにはしているのですが、やはり高難易度であることを配信を通して伝えてあるからかそう安易には入ってこない様子。

 何故かと言えば、怖いもの見たさに入って来た人には第一魔物であるサラマンダーが容赦なく火炎ブレスの洗礼を浴びせているのだそう。

 一気に仕留めないと特有の動きの速さと火炎ブレスで大惨事になっていたというのは昨日時点ではありませんでしたからね。それだけ皆手慣れているということですが。

 しかも入って来た圏外組ですら簡単に火達磨にして死に戻りさせていたところから察するに……現状エアリー全員、最前線に行けてもおかしくないということですけど。


 まあ、これから挑むのはそんな極悪ダンジョンの後半戦なのですが。火口への道は昨日よりは短いとはいえ、ここから見える範囲でもワイバーンに加えて更に二種、新顔が見えますね。

 それによくよく見れば山頂の火口付近に大きな岩塊が浮いており、そこから出っ張った屋敷らしきものも見えますが……あまりにも不釣り合いなのですけれど、なんでしょうね、あれ。

 ちなみに神奈さんから伝え聞くにここ自体がツィルさんの領域の一角なのだそう。となれば、解放するか対応する属性の《夜竜人(ドラゴニュート)》が武器を手に入れ解放すれば繋がる可能性がある……のかも。


「ではそろそろ行きましょう。今日はボスまで倒しますわよ」

「「「おー!」」」


 遅れて来たウケタさんを迎えて出発。すぐに新顔と遭遇しそうですが……なんて思ったら近づいて来てますね、いやちょっと待って、いきなり大物過ぎませんか?

 遠くからでもちらほらとその姿は見えていたのですが、二分ほど歩けばそれは私達の前に立ち塞がりました。ご丁寧に空飛ぶワイバーンの群れも近いくらいの位置で。

 重い足音をさせつつ。遠目から私達を見つけていたのか、待ち構えていたかのように私達の前へと立ちはだかりました。


ファイアドレイク Lv82

属性:火

状態:


「恐竜!」

「ティラノサウルス!」

「ちょっと違いますわね、翼が退化した地走竜ですわ」

「それでも少し近いですから、あながち間違いではないのですが」

「うぇ、デフォルトで体力ゲージが二本あるのだ。本当にごろごろいていいやつなのか?」


 図体もそれなりに大きく、大きな二脚で地を踏みしめながらその巨体を以て私達を見下ろしています。結構な間近で、私達を見下ろすように。

 サイズとはいえば四メートル強ほどあり、遠くから見ていてもそれは見えていましたが。間近で見ると更に大きく見えますね。

 チヨちゃんの第一声の通り外観は恐竜、キユリちゃんのティラノサウルスという表現は間違っておらず、よりティラノサウルスの骨格でありながらそれを肥大化させたような姿。

 咆哮を上げて近くにいたワイバーンを呼び寄せつつ、大きくその口を開いたままに薙ぎ払いの炎ブレス。全員が散開して避け各々が相手を決めて―――まあ、わかってはいましたが私達はドレイクを任されたようですね。


「ジュリア、着実に行きます。わかりますね?」

「動きを止めなさいということですわね! わかりましたわ!」


 構えつつ、すぐに言葉の意図を読み取ったジュリアはすぐに直上に飛翔。こちらもいつも通りのようですね。

 続けてトトラちゃんとイチョウさんが先を争うかのように射撃、チヨちゃんはドレイクの攻撃を避けつつダメージを与え、キユリちゃんは……あれ、どこに?

 まあいいです、ともかく私も仕掛けましょう。距離をいつも通り詰めつつ、愛刀白雲へと水属性を付与しながら抜き打ち、《剣閃一刀》で首を狙って一閃。

 一瞬怯んだところにジュリアが上空から降ってきて背中に一撃を加え、更に魔術を置き土産に。同時に小さな妖精がちらりと。なるほど、ジュリアと一緒に飛んでっていたのですか。

 ジュリアの落下速度そのままに、勢いそのまま撃ち出されるように降りて来ながら茨の《クリーパーヴァイン》二本を叩き付け、其処から締め上げて……だいぶ変幻自在な戦い方になってますね?

 ともかくこれでしっかりと動きが止まったので、チヨちゃんに目配せ。意図をすぐに察してくれたようで、影分身して私に合わせるようにして飛び掛かります。


「「《重月》、《斬月》!」」


 強烈な斬撃が合わせて六発放たれ、一ゲージ叩き割った上で更にもう半分を一気に。直後に狙い澄ましたイチョウさんの一撃が額を射抜き、トトラちゃんもロアを叩き込みました。

 その巨体が揺らぎ、倒れそうになりますがまだ体力は残っています。そしてそこにトドメを刺したのが……ドレイクが不意に動かした足先で起きた闇色の多重爆発。

 キユリちゃんが仕掛けたトラップですね。なんとも目ざとい設置方法ですが、トドメにもなっているので流石とも言いましょうか……トラップマスターをしっかり目指してますね。

 というかいつ仕掛けたのでしょう。不意打ちの茨鞭二連の時にブランコしてましたから、その時でしょうか。


 倒したドレイクから素材を剥ぎ取り……という名のドロップ確認。サラマンダー素材は相当いいものが揃っていましたからね、性質から高騰間違いなしでしたし、さて竜そのものであるこちらは……

 

「《紅地走竜の鱗》!」

「《竜骨》!」

「《竜の牙》!」

「……数が少ないので素材にこそはなりますが、装備にするには数が必要そうですね」


 うーん、なんというか汎用素材感が強い。今までの竜との戦いで手に入った素材に比べると固有名詞感がありませんね。

 先程のワイバーンともほぼほぼ被っていて、あちらの鱗は《飛竜の鱗》。差別化という点では説明(フレーバー)で触れられている硬度と軽さの違いくらいでしょうか。

 地を疾駆する分地走竜の方がやや重みがあって頑丈、飛竜の方は空を舞うために軽さがあり、属性防御をつけやすいだとかなんとか。これだけでも結構使えそうではありますが。

 ただ、鱗一枚で作れるかと言えば……うん。結構な数が必要になってくるでしょうね。その為にここの高レベルを相手に出来るかと言われれば、結構骨が折れそうな。

 作れても少なめの材料で作れそうな小さめの盾くらいでしょうね。地走竜の方はやや大きいので、そこまで苦労は……と思いましたが、私達だから瞬殺できたわけで。

 しかもそれ相応に大威力の《斬月》や二度繰り出す《重月》を併用しているので猶更。ある意味では火力(DPS)チェックの門番とも言えましょう。


「塵も積もれば強力な防具、みたいですねー……」

「単純に私達のレベルが足りないか、《解体》がまだ上がり切っていないか、からだとは思いたいですが」

「そっちの方だと考えたいのだな。甲殻が取れれば……」

「あくまで爬虫類系が多く、甲殻が無いものが多いから……それはなさそう」


 どのみちレベルをより上げないと素材集めの対象としては効率悪そうですね。上げても少し良くなるだけで、装備が作れるかどうか……ついでに製作業でも装備自体が製作できるかどうか。

 ちょっとその筋に詳しいトットに聞いてみましょう。一番確実どころか、確かガインさんの弟子でもあったはずです。


 では実際に話を聞いてみよう……とトットの方を見れば、ちょうど担当した最後の一体を相手取っている様子。

 空中に飛び上がったライカが思い切りワイバーンの頭を蹴り落とし、そこをリノが撃ち抜き、ついでにトットのゴーレムが思い切り殴ります。

 一度伏せば、ルナちゃんの操る雷鳥と共にフキノが剣舞のように舞いながら切り刻み、トドメに突き刺せば対峙していたワイバーンはがっくりとその場で崩れ落ちました。

 連携の上手さもありますが、それぞれが伸びに伸びた一芸を持っているのが大きいですね。そして、それを理解してしっかりと生かしているといいますか。


「トット、ちょっと聞きたいことが」

「んぅ? なになにー?」

「この竜素材、装備に使えそうです?」

「ちょっと待ってねえ」


 トットに竜の鱗を渡して見て貰っている間、ライカはジュリアに飛びついていますね。多分、次に竜に進化するなら彼女かキユリちゃんでしょうか。

 確かどちらも、狼人からも妖精からも竜に進化した人はいなかったはずなので、新しい進化の形が見れるとなれば楽しみではありますね。

 そろそろ私の方からも候補者をどんどん探してみましょうか。幅広い選択が出来るこのゲームで龍と竜へ進化できるとはいえネームバリューだけでは限界はあると思いますし。

 その前の試練もなかなかにハードなのもありますからね。こちらからも助力できるように立ち回れば、もう少し人口も増えそうな気もするのですが。

 ……精霊の方も狭き門とはいえ、あれはあれで窓口があるため進化するための準備はすぐにできますし。なんて思案していると、トットのチェックも終わったようですね。


「あー、ええっとねぇ……うん、飛竜であればざっと最低でも百枚はいるかな。地走竜の方は七十……鎧とかに使うならそれ以上だねぇ」

「流石にそれは骨が折れますね。集めたところで作成は……」

「ガインのお師匠さんならギリギリもうちょっといって作れるかどうか、ってところだね。竜素材はカンストしてなお確率半々かも」

「このバージョンの最終装備、或いはやり込み装備というところですか」

「わたしはこれ作ってみたいねえ。面白いものになりそうだしねー」

「希少価値が高ければ高く売れるというもの。お小遣い稼ぎにはちょうどよいかも知れませんわね?」

「え、なに? ライカがいっぱい倒したらお金持ち?」

「ある意味では。ちょっとしたビジネスになりますが、フキノ様いかがです?」


 配信に映ってるんですけどね、コレ。そんなこと言ってたら……って思いましたが、そもそも製作も限られた人しか出来ないとなれば製作費で大分取られそう。

 それに確実と言えないということは失敗の可能性もあるということ。ついでに相当なリスクもあるということは、相応にハイレベルな装備も見込めるわけですが……多分、エンドコンテンツ級かも。

 唯一の救いというなら、レベルが相応に高いのでレベリングとしては格好の相手というところですか。一体一体にかかる手間を考えると……やっぱりもう少しレベルを上げてからでしょう。


 話の傍ら、金策と聞いて意気揚々と挑んできたリスナーがまた一人サラマンダーに焼かれたという報告が。やっぱり圏外組上位でもなければ対処が追い付きませんか。

 なんとか森の途中までは進めたという話もありますが、あの森はサラマンダーとワイバーンだけでなくもう一つ伏兵がいるんですよね。

 イチョウさん、ミスティア、リノ。それに斥候役のアマジナさんとホカゲさんが見つけてくれていたのですぐに処理していましたが《フレイムフェアリー》が潜んでいたり。

 物理防御力は低いのですが、木々に隠れて撃ってくる魔術が結構痛かったんですよね。あれも非汚染状態だったところを見るに、ここは汚染されていないダンジョンのようですけれど。


「あたしはここで修行するのもいいかも!」

「ライカはそう言うだろうと思ってましたの。ただ……お姉様が夜界東の攻略に徹するように言っておりませんでしたの?」

「最前線はここだけではないからのう。ジュリアに勝つならここだけでなく色んなところに行って経験を積んだ方が早いかもじゃ」

「うぐっ……ジュリアに勝つなら……がんばる……」

「まあまあー、お金があればみんなから牙と骨買い取って武器くらいは作ってあげるさぁ」


 それだけでも相応に強い武具になりそうな気はするんですが……実際私とジュリアの唯装は、芯材としてサクさんとツィルさんの牙が使われているそうですし。

 とはいえこの辺りにいる様なワイバーンやドレイクとは別格ですから、その分ランクは大分下がるのでしょう。それでも結構な手間が掛かりそうですが……

 しかし、こういった素材を見せると喜々としてそういうことをしたがるのはトットらしいですね。思いついたらすぐに作って試す、いつものことですし。

 そのうちライカの装備が竜骨装備に変わっていても何ら不思議には思いませんよ。カルパさんみたいな蛮族姿になるでしょうけど。


 して、雑談を繰り返しながら頂上を目指すこと二時間ほど。ようやく山頂が見えてきました。

 火口に近づけば近づくほどわかりますが、やはり活火山なのか熱気が凄まじい。ジュリア達曰く、こんな短期間で二度も火山を経験するとは思わなかった、らしいですが。

 同時に遠目から見えた空に浮く岩塊も見えてきますが―――なんでしょうあれ。洋風の屋敷が乗っているように見えるんですけども。

 ……同時に、今一瞬だけ遠くから誰かに見られたような。私達の他には、今のところ入り口付近で進めていない後続だけかと思いますが……


「そろそろボス戦でしょうから、皆さん気を引き締めて」

「道中がアレでしたものね、とてもヤバげな予感がしますの」

「姉妹以上の竜種とか来そうなのだ!」

「それはちょっと洒落にならないですねー……」


 そう軽い会話をしながら頂上へと踏み込むと、ムービーシーンが始まって私達の視界はそちらへと移りました。

 えっ、ちょっと、ムービー付きだなんて聞いてませんってば!

記憶集め……FATE周回……ディルーブラム周回……エウレカレベリング……うっ頭が。

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