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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
1-5幕 求める刀は何処へ/Dungeon maker

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210.Eclair Dragonute 6

「最後まで気を抜かずやりますわよ!」

「ここまで詰めといて倒せないのは流石にマズいのだな!」


 残り僅かに残る、数値にして数パーセント程度の体力。それでもなお対峙する相手《雷鳴竜ハツネ》はそれを感じさせない力強い咆哮を上げます。

 ほんの少し、一息をしたかと思えば再び飛んで溜めなし、地を滑る様な蹴りを繰り出してきたのをフリュー姉様が引き付けて横っ飛びに回避。

 同時に振り回される翼から伸びる鉤爪に関してはトトラちゃん達がロア系を撃つことで弾き。私は隙間を縫うように距離を詰めて双剣で一閃。

 避けられカウンターされても今度は着地間際にカエデちゃんを狙ったところで《トリプル・ダークプロード》が炸裂。ばっちりですわね。


「ふぅっ、危ないところだったわねえ」

「ありがとじゃよ、流石に真上から降ってくるのは怖いのう」

「不意にヘイト管理しているタンク以外を狙うのは反則だってばっ!」


 今度は軽く翼をゆすってから大きく広げ、漏電部位が発光―――変則雷撃ブレス!

 地を這うように放たれた雷撃のブレスですが、急に角度を変える変則的な動きをする雷光が放たれます。

 変則的だけれど一定の軌跡を辿るそれを皆悠々と避ければ、再びカウンターとして魔術を叩き込んで更に体力を削りに掛かり。

 私も飛び込んで連続で斬り付ける最中、不意にハツネの額、他でも見られた変質したであろう歪な一角が輝き。

 全身の漏電部位が輝いているということは雷を使った攻撃なのですが、ここに来て新モーションの二つ目。こんな時に……


「全員真正面から離れましてよ!」

「うおっ、ここに来てまた新モーションなのだな!?」


 挙動から見て前方への攻撃だと察し、《スライドステップ》を使い背面に滑り込み。正面はフリュー姉様が構えていますわね。

 それでも真正面ではなく、少し斜めの方向。これなら何が来ても対処は出来る筈。

 そう身構え、背面から一撃を加えながらどう動くかを観察します。もちろん、何かあればすぐに飛び下がれるようにしながら。


 頭を大きく振り上げたと思えば、その歪な一角をフリュー姉様に向けての振り下ろし。

 同時に雷光が閃き、まるで雷の刃のようにすら見えるそれを一角に纏っての斬撃。

 それなりに距離があるはずでしたが、それでもその刃はフリュー姉様に届き、察したのか横っ飛びで回避していました。

 着弾した位置は黒焦げているあたり、当たっていれば防御を抜いて大ダメージを与えたことでしょう。そう考えるととんでもないですわねコイツ……


「最早なんでもアリですわね……!」

「流石にちょっと今のは肝が冷えたかな……!」


 一角から伸びた雷の刃は一振りで消えてしまい、もう一度頭を振るう素振りを見せましたが空振り。

 全身各所からの漏電が影響して威力と持続力が薄らいでいる……のでしょうか。本調子で振るわれたらこの程度じゃ済まなさそうですわね。

 すぐに次の攻撃を繰り出そうとしますが、一歩踏み出そうとしてぐらりと体を揺らします。やはりここまで削っていればダメージも隠し切れませんか。

 皆隙を見つけたりと一斉に攻撃を仕掛ければ、じわじわとハツネの残り僅かな体力ゲージが削れて行きます。


「あとちょっと!」

「こっちは切れる手は全て切ってありますの!」

「その分頑張るしかないわねえ……! 回復役も残り僅かよぉ!」


 流石にもう一度はないでしょうが、あの極太ブレスをもう一度されると今度こそ誰か落ちかねません。

 何なら残り一割を切った所から、俊敏な動きで翻弄してきたハツネの動きが少しばかり崩れている様子すら見えますわね。

 イチョウさんがいたらそれこそ喜々として狙い撃っているくらいには。お陰で彼女ほど精密な射撃をしないルプスト姉様やトトラちゃんですら足を止めた瞬間に畳みかけてますし。

 私も足を止めた隙に双剣の機動力を活かしての多段攻撃で削り、動きに応じて距離を取り―――《竜眼》を使っての魔術攻撃で確実に体力を減らします。

 動きが緩慢になったとはいえ、威力は据え置き。とにかく当たらないようにしながら戦闘を続け、そして、遂にそのハツネの体力が削れ切り―――


「クルルルルァァァ……ァァァァ……!」


 体力ゲージが消失するのと同時に、ハツネが甲高い咆哮を上げました。

 しかしそれでもなお抵抗を続けようと翼を広げて上空へ。息も荒く巨体を支えて飛んでいるのすらやっとのようであり。


「削り切ったというのにまだ元気じゃのう!」

「ここから第二ラウンドとかあったらちょーっと流石に勘弁ねえ……」

「相手はやる気満々の素振りだけどね!」


 まだ戦闘体勢を続けながらその動きを見続ければ、全身を震わせてつつその大口を開け―――挙動からさっきの雷ブレスを放とうとして。

 その挙動を見て慌てて皆散開して備えた矢先、溜めにおいて見られるハツネの各部で漏電する箇所から大きく火花が散り……嫌に激しいですわね。


「何だか様子がおかしいような……?」


 そう思った矢先、破裂音と閃光が視界を埋めて目を覆えば、凄まじい雷の爆発が起こり、その身焼いたハツネは墜落していきました。

 最後っ屁の様にブレスがもう一度放たれていれば大惨事でしたけれど、まさかここに来て爆発するとは。


「うっは、危ないなーと思ってたらやっぱりショートしたのだ……」

「操ってた雷は魔術的なものじゃなくて、制御しているものだったんですねー」

「まあ漏電するってことはそういうことだったんでしょうね……今回は回収のようですわね、それなら拾いに行かないと」


 そう思って足を踏み出した矢先、一瞬気絶していたのであろうハツネは空中で翼を閉じ。

 直ぐにもう一度開けばその巨躯が縮んで少女の姿へ。シグレの時と同じく、あれが彼女本来の姿なのでしょう。

 薄桃色を帯びた金髪サイドテールの少女であり、格好こそシグレと似通っていますがやはり全く違う印象を受けます。

 全身傷だらけでありとても痛ましい姿に見えますが……それに関しては今し方私達がボッコボコにしたので何も言えませんわね。

 縮んだからこそ、今の姿で飛べているのでしょう。こちらを一睨みすれば、南の方へと向けて飛んで行ってしまいました。 


「……今回は追わないのだな?」

「あれ、追い掛けられます?」

「無理なのだな。普段見てるジュリアのスピードと比較しても無理なのだ」


 遠目から眺めていても物凄いスピードで飛んでいますからね。あえて比較するのなら以前追撃を仕掛けたシグレ以上のスピードですから。

 先日話を聞いた暮奈は単純に破壊力が怖すぎて追い掛けなかったということですし……そういえば、シグレも含んで全員南東方面へと逃走していますわね。

 南側に何かあるのでしょうか。まあ、そういった考察はお姉様に丸投げしたいと思いますけれど。


「お、撃退報酬の配布じゃな」

「雷属性っぽい素材が多いね」

「とはいえ。これはまだ素材として使えない」

「その辺は前と同じなのよねえ。私も暮奈の素材がまだ余ってるし」


 さてさて、素材……は、なるほど。種類が多いですが、用途がちゃんと見えるラインナップ。

 《鳴雷竜の雷液》は特に使い道多そうですね。説明を読む限りは腐食性の強い液体だそうなので、ある意味では扱いづらいのかも。

 その他としては《雷玉》と《歪な雷角》……後者、最後に放ってきた雷ブレードの媒介になっていたものでしょうね。

 現時点でも竜達の素材は加工できないそうなので、多分出来るとすれば終わった後でしょう。素材そのままを雑に括り付けるとかはできるそうですが。


 各所からも連絡があり、一度集合の為に峡谷出入り口に集合することに。

 とはいっても軽い事後報告と結果報告のようなものですから、そう長く時間は取られませんから。

 九露ちゃんの回収もありますからね。長時間集中していて疲れたのか、回収するなりまた鞄の中へと戻って行ってしまいましたが。

 それより……終わったという事は、すぐに向かわなければいけない場所があるわけで。


「思っていたよりも時間を取られてしまいましたわね……」

「ジュリア殿、王都からいべんと会場まではどれほど掛かりますか?」

「お姉様が飛んで来た時は二時間かそこらでしたか。今ならポルトから船が出ているはずですから、一時間少々かと」

「船旅って事は魚か……何が沸いた?」

「サメですわね。涼さんの護衛任務で狩り競争してましたわ」

「「「サメ! フカヒレ!」」」

「そうと決まれば海路で行くぞ!」


 ……相変わらず食に関しては皆貪欲ですわね。話を聞いた面々は続々と《ポルト》に向けて《転移》をし始めました。

 一応、海上戦になるんですけれど大丈夫なのでしょうか。一応海上戦は何度か行われているので、経験者はいるかとは思うのですけれど。

 さて、私達も向かいましょうか。エアリーの面々は一度イベント会場である《ティレイオ島》に行ったことがあるので転移で行けますし。

 なんて思えばお姉様も現在ポルトの海上にいますわね。そういえば、ヒルデさん達も行ったことなかったんでしたね。


「あー、ジュリアちゃん。私達も船で行かないとなのよねぇ」

「あそこは低レベル帯のところだったからね。ルヴィアも行かなかったし、私も行ってないから」

「直接依頼で向かった私達と、火山素材狙いで動いた人達くらいですものね。それくらいなら同行しますわ」

「助かるわぁ。それじゃあ……もう直接向かっていいかしら?」

「ええ、構いませんの。こちらの報告は後でいいですし」


 ハツネ討伐隊ももう解散の流れのようですし、サーニャちゃんへの討伐報告も後でいいでしょう。

 何なら転移でひとっ飛びできますから、報告自体はすぐ終わりますからね。

 目前の風景がぐるりと変われば、あっと言う間に港町の風景……ポルトへと切り替わります。

 そしてまず目に入るのが……


「……すっごい人の数」

「ある程度は想像していましたけれど、まあそれはそうなりますわよねぇ」


 うん、ちょっとわかってた。前日だから仕方ないよね、そりゃあ殺到しますでしょうよ。

 港の方には長蛇の列で、出港する船の群れは最早船団のようになっていますわね。これだとサメの群れも瞬殺されそうな勢い。

 一応乗る事はできそうですけれど……お姉様はもう先に向かっているようですし。


「天使の飛行速度、もうちょっと早かったら並行で飛ぶんだけれどね……」

「早く悪魔になりたいわぁ。私も飛びたいわよー」

「ふふん! 峡谷みたいに風が強くなければ私も飛べますもんね!」

「何だか先に飛べるようになってるのがちょっと申し訳ないのだ」


 とりあえず乗船。カエデちゃんとルナちゃんは先に行っているとのことで、同行するキユリちゃんとトトラちゃんは飛べるので乗船というか、並走と言うか。

 船上も船上で大分ギチギチになっているので、こっちの方が気が楽という状況ですし。飛べる妖精や翼人は率先して飛んでいるようですからね。

 残念ながら同族はトトラちゃん以外見当たらない様子。いやまあ、あの難度を突破出来ている人の方が珍しいので何ともなのですが。

 それゆえかやっぱり注目の的にはなっているようで、目立つのもあって視線を結構集めていますわね……


「サメがいたら退治よろしくよぉー? ねぇー?」

「フカヒレ! フカヒレ!」

「いたらですわよ。それに水属性もいるのでその辺はご了承してくださいませ」


 こういう時のルプスト姉様はほんっと……まあいいですわね。サメ狩りは速度も相まって飛べないと話になりませんから。

 動きが早すぎるので、魔銃でなら狙い撃ち……あ、出来ますわね。是非やって貰いましょうか。


「ルプスト姉様、後方支援お願いしますわね?」

「うふふ、じゃあジュリアちゃんの今日のライバルは私とトトラちゃんねぇ?」

「えへへー、負けないのだな」


 ……お姉様の代わりというわけですか。他にもサメの話を聞いてる人は少なからずいるので、もはや競争ですわね。

 この時の報酬って船単位になるので、まあ多分負ける気はしないと思いますが……

 キユリちゃんも構えてるところを見るに参加する気満々のようですけど、追いつけるんでしょうか……まあいいでしょう。

 数時間ぶりの愛槍を握って一息、翼を広げて見回し。さあて、やりますか。

 出港を報せると同時に船が進み始めるのと同時、帆を蹴って一足先に海上へ。


「さーて、サメ狩りの開幕ですわ!」

「うおっしゃー! あたしも参加するぞー!」

「っちょ!? 涼さん!?」


 飛行速度随一を活かして一番乗り、かと思えば見覚えのある銀翼を持つ竜少女が並走してきました。

 《露喰涼》……さっき戦っていたハツネさんの妹であり、斬炎竜という二つ名を持つ鉄を操る竜です。

 既に本調子に戻ったのか周囲にその二つ名が示す銀刃を浮かせていますし、その銀刃も赤熱させているのを見るに臨戦体制の様子。

 あ、やっばいですわねこれ。一番キツいライバルが出てきました。

 

「どうしてここに……」

「ん、そりゃあティレイオで祭りをするって聞いたからだよ。あたしらも行こうって言ってたらジュリアを見つけてさー」

「……あたし、ら?」

「おーい、出て来いよー。海の中からこっそり狩るのはずるいぜー?」


 私が疑問に思って頭を傾げた矢先、海中から顔を出した少女が一人……あ、こちらは初対面ですわね。

 薄く青み掛かった髪を三つ編みにしており、比較的小さな翼を持ち、滑らかな尾を持つ少女。手にしているのは……杖ですか。

 まるで人魚のようだ、とも思えますけれど……凄い綺麗ですわね。


「こっそりではありませんよ、私のやり方ですから」

「だからって海の中だとサメ狩りに有利過ぎるだろー?」

「あ、初めまして。お噂は色々聞いております、海佳と申します」

「私も有名になりましたわね……ジュリアですわ、よろしくお願いします」


 海佳……というと、以前ルヴィア姉様が大海戦を繰り広げて倒したと言っていた露喰姉妹の方でしたか。ということはフルネームでは《露喰 海佳》さんで、二つ名は海蛇竜ですね。

 ついこないだ倒されたと聞いていたのに、もう戦線復帰とはこれまた。それを出すと一日寝ただけで復活した涼さんもなかなかでしたけれど。

 ともかく、彼女達と競い合うのですの……?


「あっはっは! 大丈夫だってー、ジュリアの腕ならなんとかなるだろー」

「……やるだけやるしかありませんわね」


 こうして、到着までの間苛烈な競争を始めることになりましたとさ。

クレハ「で、勝てたんですか?」

ジュリア「結果的にはほとんどイーブンですわね……」

クレハ「さっすが!」


次回からハロウィンイベント編。長いですヨー!

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