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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
1-4章 いざ海を越えた先の島で/Volcanic Eruption

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166.《八卦・術撃》

「何にもないですねー……」

「海はとても綺麗なんですけどね。波が静かで、月が海面に綺麗に映っていますし」

『そのあたり、結構クラゲ浮いてませんでしたこと?』

「クラゲさんならキラキラと輝いて綺麗ですよねー!」

「先程からイチョウさんが遮るものだけ撃ち抜いてますよ」

「クレハさんこそさり気なく蹴り落としたりしてるじゃないですかー」


 ジュリアと通話を繋いだまま賑やかに海沿いを移動中。時折行く手を塞ぐクラゲを踏みつぶしたり蹴とばしたり殴り飛ばしたり。

 途中なんだか巨大なクラゲが襲い掛かってきましたが、あれも話を聞く限りは道中ボスらしいです。パーティで挑めたので二人で瞬殺となりましたけれど。

 目下ではつられて南下してきた初心者達がクラゲたち相手に奮闘している姿もちらほら。私達はそんなところの上空を悠々と飛んでいます。


 昼界の海は少しばかり大きめの波がありましたが、夜界の海は少し凪いでいるのもあって波が立たず、それ故にまるで湖面のような印象を受けます。

 なので、大きな月が静かな海に映り込み。静かな夜景としては特上のものなのではないでしょうか。

 ……高空から見れるのは、今現在飛行持ちだけの特権ですね。


「そちらの状況はどうですか、ジュリア?」

『第二波が片付いたところですわ。各々補充をしつつ、竜の襲来がないかどうかをチェックしていますの』

「結構敏感になってますねー……」

『ある意味では初心者達を落ち着かせるためですわよ。掲示板を見ていても過去三度強襲された事実がありますもの』

「一応、竜が棲むアガフィヤが近い事は?」

『もちろん周知済みですわよ。ですから海の方は重点的に見ていますわ』

「周期的におそらく出現するのは週に一度あるかどうかで、《シグレ》との戦闘があった九月第一周から以降順々ですから……多分先週は《モンテッチ》の《暮奈》ですよね」

「そうだとするとまだ日曜日ですし来ない筈ではー……?」

『念の為ですわよ。それに防衛戦開始前に街の方に話を窺いましたが、そういった話は全くありませんでしたもの』


 《ヴォログ》と《モンテッチ》に現れた折には大暴れし、前者の際はジュリア達の奮闘があって撤退に追い込めましたが後者では防衛自体が失敗していますからね。

 それに最初に遭遇した竜である《火燐》に関してはルヴィアを追い込んですらいます。なので、後方でレベリングやゲームシステムに慣れようとする初心者達にとっては全力で警戒する対象でしょうし。

 絶対的な敗北、失敗というのはちょっと初心者にキツいものがありますから、わからなくもありませんが。


『今回の竜はアガフィヤの山中に潜んでいて、話を総合しても出て来た形跡もなさそうなのですわ』

「火山内部でのみ活動可能になっているか、それとも出てこれない理由があるのか……」

「どちらにせよ、現地で探さないといけないのは変わりないですしー……うーん……」

『トトラちゃん、やはり来る気配はありませんわ! このまま第三波を叩き潰しに行きますわ!』


 今回相手となる竜について特定は出来てませんが、火山内部という環境で戦うのは大変そうですね……風属性のイチョウさんは特に弱点属性のフィールドですし。

 私は逆に有利属性の水属性ですが、ある程度相手の体力を吸収できる《八卦・闇》でカバーは出来るとはいえ、ボスには通用しなさそうですから……どうしたものか。

 カエデさんがいれば良かったのですが、今は別方面。ジュリアもジュリアなりに何かしら手筈を準備はしていそうなのですけども。

 そんなジュリアは今から第三波の対応に回る様子。通話越しにトトラちゃん達の声も聞こえる辺り、楽しそうにやっているようです。


「こちらは今南端を越えたところですね。もうあと一時間ほどでそちらに到着できそうです」

『皆! あと一時間以内に終わらせますわよ! 何としても姉様が来る前に終わらせますわよ!』

「……元気ですねー……」


 何故か物凄く楽しそうに盛り上がる声が薄っすらと。……団結力、しっかりし過ぎてません?

 ジュリアは明日の準備もあるので、到着したらちょっと早いですが今日は切り上げとなるでしょう。解放から一日経たないと船の準備も出来ないそうですし。

 私も来週からまた学校が始まりますからね、ある程度は予習もしておかないと。進行速度もちょっと鈍りそうです。

 だからこそ、しっかりと今回のアガフィヤ攻略の期間をしっかりと取ったわけですが。広々とした島丸々ではないのがちょっと救いとも言えますけど……



――◇――◇――◇――◇――◇――



「お、見えてきましたねー」

「夜界でもしっかりと島影が見えるのは、戦闘での不利を無くすためでしょうしね」


 北上し始めてしばらく。左手側に目的地であるアガフィヤ火山を擁する《ティレイオ島》が見えてきました。

 この位置からでも見える活火山は薄っすらと噴煙を上げており、活動しているのが遠目からでもよくわかります。

 夜界での実戦を行うのは初めてでしたが、感覚としては昼世界と同じ程度に視界は確保できているので何ら違和感はなく。

 そして、まだまだ遠いのですが大規模な戦闘の気配も。……いえまあ、現在進行形で道中に立ち塞がっている《ハイゴブリン》を蹴り飛ばしてはいるのですけどね。


「……そー、れっと。おや」

「クレハさん、どうかしましたかー?」


 そのハイゴブリンの頭に踵落しを喰らわせて残体力をゼロに、倒したと同時にスキルレベルがアップしました。

 この道中だけでも《格闘術》のスキルレベルが結構上がっていましたが、同時並行して使っていた《八卦》……こちらがレベル80に到達したようで。

 こちらはレベルが10上がるごとに属性付与の倍率が少しずつ上がっていっていましたが、ようやくとも予想していたともですが、ここに来て大幅な変化がありました。

 《八卦・術撃》の解放。お陰様で大量の通知ログが視界端を埋め尽くしました。一気に出過ぎですってば。


○《八卦》

・《八卦・術撃》

 八卦を付与した武器で攻撃を行った際、属性に対応した魔術攻撃を追加で発動できる。

 近接武器の場合:攻撃を行った際に任意で魔術攻撃を含んだ追撃を行うことが出来る。

 遠隔武器の場合:攻撃を行う際に《八卦》専用遠隔魔術に置き換えて発動することが出来る。

 魔術武器の場合:クールタイム毎に現在一番高いスキルレベルの《魔術》に応じて使用可能な魔術のうち、任意の属性に置き換えて2/3の威力で放つことが出来る。

 また、付与しているものとは別属性を放つ場合は威力が半減する。《並行詠唱》および《連唱》との併用は不可能。


 つまり、攻撃した際に追加で魔術攻撃の扱いで追撃が仕掛けられるということですね。適応ステータスは《(STR)》か《知力(INT)》の高い方が適応されると。

 連続でダメージが与えられる場合であれば、MPの消費とクールタイムが無く連続攻撃が仕掛けられるという事で……アーツ間のスキルクールタイムの間に挟めます。

 接近戦においては《月天》や《花月》も絡めれば怒涛の連続攻撃が仕掛けられるということで。今まではその間にアーツ無しでの攻撃を挟んでいましたが、それがより威力の高い物に置き換わりますし。

 そしてログを流したのは武器に応じて追加された属性攻撃アーツですね。名前は簡略化されているので覚えやすくはなっている様子。


 ちなみにですが、遠隔武器の場合は……今まで近接武器での遠隔攻撃が置き換わって使えていた《焦熱》や《鎌鼬》など近接仕様のそれらが撃てるようになるようで。

 こちらと魔術武器側での強みは《八卦》によって属性を変えずとも、威力は半減しますが様々な属性がすぐに撃てるということでしょう。

 運動会の折でも見せて貰っていましたが、同名であれ遠隔で放つものは性質が変わっているのでブラフとして混ぜることが出来るややトリッキー染みたものになったようです。

 魔術攻撃においては流石にルヴィアの《虹魔術》の劣化に近いですが、あちらと違って《治癒魔術》にも変化できるようですね。うーん、後方に欲しい……


「実際に試してみましょうか。ちょうどいいのは……」

「あそこにちょうどいい《サンドストーンゴーレム》がいますねー」

「では、あちらを相手にしてみましょうか。《八卦・風》、っと」


 手近な砂浜に砂岩で出来たゴーレムがうろついていたので、それをターゲットにしつつ、まず弱点属性の風属性を拳に付与。

 飛行状態の急降下で急襲しつつ、まずは踵落し。ヘイトがこちらに向いてゴーレムがこちらに振り返ると同時に右拳による一撃。

 その殴った勢いのまま、《術撃》を発動して一瞬だけ火属性に切り替えて回し蹴り。火属性の攻撃を喰らわせた一部が崩れ、防御力が低下しました。

 サンドストーンゴーレムは海水によって固まった砂岩が元なので、火属性攻撃を当てて乾かせるとその部分が崩れて防御力が下がるみたいなんですよね。

 ちなみに道中教わりましたが、ジュリアは《ソルブレス》を連射して倒した結果……なんとガラス片をドロップしたとかなんとか。乾燥させるどころか融解させてるじゃないですか。


「ここから……《氷拳》!」


 立て続けに崩れた部分へと左拳に氷属性を宿しての左ストレートから、蹴り飛ばしてから一瞬飛行での加速を使っての飛び蹴り。

 放った蹴りでゴーレムの体力を削り切って、元の砂へと戻るように崩れ落ちていきました。もう少し試したかったのですが、レベル差もあるので耐久面では致し方なし。

 ですが、おおよその動きは掴めました。クールタイムが結構短いので、アーツの少ない《格闘術》であれば短い間隔で叩き込めますね。

 ちなみに属性を変えずとも、同一属性による《術撃》攻撃は出来るようです。先程の動きに合わせれば、風属性を纏わせたままに風属性の《術撃》である《風拳》を繰り出せたり、とか。


「わー、すごいですー!」

「絶え間なく攻撃が出来るのはいいですね。短時間に最大火力を叩き込めますし」

「弱点属性が複数あったりとかー……例えば、《魔鉱山》のボスとかにも有効そうですねー」

「あの時は逐一属性を変更して戦っていましたからね……その手間が無くなるというのは大きいですし、今度機会があればTAしに行ってみましょうか」

「はいー、チヨちゃんにあげる武器も作るのに、ちょうどいいかもですねー?」


 機会があれば……ですね。何かしらルヴィア周りでイベントが起きそうな場所ですし、本当に何か用事があればになりそうですが。

 あとは普段の持ち回りである刀の方でもどれだけ使いこなせるかにもなってきそうです。時間的には試すのは明日になりそうですけども。


 なんて話しているうちに……ようやく見えてきました、本日の到達目標である《カラドゥリア》の街。

 防衛戦はまだ終わっていないのですが、ほとんど大詰めのような状況ですね。超大型サンドストーンゴーレムとゴブリン隊を包囲し集中攻撃をしているようです。

 ジュリア達が先頭に立って飛び回り、絶え間なく攻撃を仕掛けているようで。体力は残り三割といったところで、ゴブリン達は間もなく殲滅されるでしょう。


「ふふ、時間までには終わりませんでしたね?」

「はいー、それじゃあ美味しいところもらっちゃいますかー!」


 道中でスキルレベルを存分に上げた拳をインベントリに納め、いつものように控えに《水蛇》《稲穂》の二本をセットし、手には《白雲》を握り《八卦・風》を付与。

 イチョウさんも弓を手にすれば同じように《八卦・風》を付与。鼻歌を歌いながら射程距離に収まるまで接近し、お得意の《ペネトレイトショット》の構えを取ります。

 飛来する私を見つけたジュリアとトトラちゃんが一瞬動きを止め、初心者達がざわつき。おや、舞台が整いすぎではありませんかね?


『うぇ、間に合わなかったのですの!?』

「私が到着するまでに終わりませんでしたね?」

『むああ思ったより早かったなのだ!?』


 高空まで飛び上がってから斜めに落下しつつ。《静月》から《新月》、そして両手に刀を手にし、尾にも一本を握り。

 ジュリアがやらせるかと言いたげに、見慣れた組み合わせである飛行からの《ダスクラッシュ》。そこに《トリプル・フレアプロード》を絡めた突貫攻撃を繰り出し。

 イチョウさんが放った《ペネトレイトショット》が一閃、ゴーレムの弱点部位を指し示すように穿ち貫いて一割大きく削ったところに、先にジュリアの大技が炸裂してさらに一割。


「貰いました―――《狐八葉(トドメ)》!」


 その直後にイチョウさんが示した弱点部位へと私の必殺アーツが炸裂し。薄くなっていたゴーレムの胴体へと大穴が穿たれてトドメを刺し。

 体力の尽きた超大型サンドゴーレムが崩れ、足下にいたゴブリン隊へと大量の砂岩を降り注ぎながら崩壊していきました。

 ラストアタックこそ頂きましたが、ここまで削れたのはジュリア達の奮戦あってのもの。ちょっと大人げない事をした気分ですが、それはそれ。

 ゆっくりとゴーレムの瓦礫の上へとイチョウさんと共に降り立ち、腕を組んで少しむすっとした顔を浮かべているジュリアに一言。


「というわけで到着しましたよ、ジュリア」

「ようこそですわよ。夜世界南部方面最前線のカラドゥリアへ」

イチョウ「つまり術撃の攻撃動作ってどういう原理になるのですー?」

クレハ「かいつまんで説明すると、通常のアーツはそれぞれのクールタイムがあって、一つ使用するとそれぞれ次のアーツを繰り出せるまでの動作間にも使用待機時間といった要素があるわけです」

イチョウ「《アロースナイプ》から立て続けに《ストレートショット》を撃とうにも、一射後のちょっとした合間とかのことですねー?」

クレハ「はい、その通り。慣れちゃうとそこの合間で蹴ったりアーツ不使用で通常攻撃を出来たする合間のことですね。」

イチョウ「あの妙な間のところですねー?」

クレハ「術撃はその合間に限って、属性を纏った追撃が加えられるということですね」

イチョウ「べんり!」

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