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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
1-3章 猫殺しの一刀を求めて/Dragon's Stampede

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148.キラキラの洞窟の中で

 さて日も変わって翌日、九月六日の金曜日。掲示板に書き込まれていた通り朝方に王都の北にある《虹彩魔鉱山》が解放されました。

 この洞窟で目的の鉱石である《魔水鉄鉱》が取れれば次にガインさんがいる《フィーレン》へと向かい、ミズチさんから預かった錆びた刀を復元できますね。

 そして他の理由……主に農具や武器防具の一新を目的として、昨日に続き祖父シリュウ達も一緒です。


「おおクレハや、おはようじゃな」

「おはようとはいっても、もうお昼過ぎてますよ」

「ふぉっふぉっ、まあ気にするでないよ」

「それで、昨日のアレは使えそうでしたか?」

「うむ。問題なく使えるそうじゃから、まず簡単に水田を作っておいた」


 昨日は《水田迷宮》をクリアした後にドロップ品を山分けしてから解散となりました。

 私の目的だった《燃藁人形の火石》はもちろんのこと手に入っていましたが、副産物として獲れたものに《種籾》があったのです。

 すぐに祖父は育成法を調べるために神社に向かったのですが、この様子だと生育はちゃんと出来るみたいですね。


「ただまあうむ。他のものと違ってそれなりに時間が掛かるようじゃな」

「他がどれくらいのかわかりませんけれど、おおよそ二週間といったところですか?」

「それくらいじゃのう。他は三日とか四日じゃが、神社の巫女さん達がその分手間を掛けてやれば品質が上がるとな」

「米は手間を掛ければ掛けるほどの価値はありますか……未だに販売しているところも《翡翠堂》だけで、種籾自体もあのボスドロップだけのようですし」

「作るにしても元手が欲しいからの、しばらくはあの藁人形と戦う日が続きそうじゃのう。道中は訓練に良さそうじゃが」


 あの道中を訓練だと言い切る祖父も祖父ですが……さておき、供給が安定するまでは現在におけるプレイヤー間における米の価値は非常に高い物になりそうですか。

 良品質の米を作る為にも良い鉄を持ち帰ってガインさんに加工してもらわなければいけませんね。


「それじゃあ洞窟に入りますが……今回もホカゲさんのご助力の元、ある程度内部を調べて貰った地図があります」

「あの人すごく貢いでくださってますねー……すごく助かりますー」

「水田迷宮のボスを討伐してくれたお礼だそうなので有り難く受け取りましたが……ほとんど一本道のようですね」

「一本道なら判り易くて助かりますね、はい!」

「ちゃんと採掘とピッケル、買ってきた! いっぱい掘る……」

「各属性の《魔鉄鉱》は道中の魔物から採れるそうですが……採掘用の坑道はボスを倒さないと解放されないようですので、まずはそちらですね」

「「「やっぱり……」」」


 現在パーティメンバーも揃ったところで《虹彩魔鉱山》の前にして、突入前のミーティングのようなものを行っていました。

 先に入って行った人もそれなりにいますが、やはり今は水田迷宮の《唯装》探しが白熱しているらしく。そちらに人が流れてこちらにはあまり人がいないようですね。

 マップ埋めも九十パーセントほどまで終わっているので、残り十%のところにあるのではないかという噂。

 ついでに《天竜十二水回廊》の方も、ハイムさんがそちらに湧く魔物の素材を使った新しい回復剤のレシピを発見したらしく、こちらにも金策をしたがる人が流れてるとか。

 ……と、逸れてしまいましたが改めて。本日はこの《虹彩魔鉱山》を攻略します。まずはボスの撃破をした後に採掘坑道が開くというので、まずは倒すところから始まるようです。

 ただ道中に湧く魔物から目的の魔鉄は手に入るそうです。そこそこ多く要求されていたので、ひょっとして周回か採掘タイムアタック……とか考えましたが、そんなことはなかったようで。

 ドロップしてくれる魔物については教えてくれなかったので、それこそ見てからのお楽しみということでしょう。大方予想ついてたりもしますけれど。


「洞窟内は広いですけど、腕は使えますか?」

「はい! ある程度サイズの可変も出来るみたいですのでご心配なく!」

「それなら安心ですね。シリュウとカタクラは……まあ、心配するまでもないですか」

「多少狭いくらいで文句は出ないよ。むしろ狙い易くていいさね」

「さっすがおばあさまですー!」

「何時の間にかイチョウさん、弟子入りしてません?」

「気のせいですよー、私はクレハさん一筋ですしー」


 私の目の前でそれ言っちゃいますか……と乾いた笑いをしつつ。先導するように洞窟の中へと入れば、続いて皆が入り始めました。

 内部は王都から直近の魔石が採れる鉱山というだけあって、松明が取り付けられているので明るくなっていますね。別の洞窟のように手に持たなくてもいいというは大きいです。

 広さは鉱物を掘り出し運ぶ必要がある以上、結構広くなっています。戦闘をするのにも困ら無さそうですが……


「わぁ……」

「綺麗! です!」

「これはなかなか……イイねぇ」


 その洞窟の内部は、小さな色とりどりの宝石が壁面に生え。松明の灯りを反射してまるで宝の山のようでした。

 事前に調べたことなのですがこの壁面にある宝石が魔力結晶……加工すれば《魔石》といい、この世界の住人達が使う器具の魔力燃料になっているものなのだとか。

 各属性の魔力が結晶化したものでそれぞれ八色あり、様々な用途に使われる……とのことで。クラフター達も加工の折に魔力燃料として使うので、ある意味馴染み深い物になります。

 この洞窟に生える魔力結晶は大地に蓄えられた魔力が純化、結晶化したものなので《魔力汚染》の影響は少ない筈だそうで。今でも王都内の住人が使っているのを見ますね。

 私達の目的の品である《魔鉄鉱》は、これらの結晶の生成の過程でその土地の鉱物を取り込みつつ物質化したもの。この一帯のものは鉄分を含むため《魔鉄鉱》となっているそうです。

 はしゃぐアカラギさんと紫陽花ちゃんを横目に先へ……と、土を踏みしめる様な足音と短く甲高い鳴き声が。第一魔物発見のようですね。


「……ゴーレムがいるって聞いてましたけど、結構小さいですねー?」

「小さくとも体当たりが強力だそうですから気をつけてくださいね……まずは、《鑑定》」



レッドストーンゴーレム・ミニ Lv40

属性:火

状態:正常


ケイブバット Lv39

属性:闇

状態:汚染


 洞窟の向かい側から、人間の子供くらいの大きさをした赤い宝石が付いたゴーレムとその上を飛ぶ二匹の蝙蝠が現れました。

 レベルはおおよそ水田迷宮と同程度ですが……レッドストーンで火属性、バージョン0中はレア遭遇だった属性を持ったゴーレムのようですね。

 殆どの場合、以前の攻略の際に見つかっていたのは土属性のストーンゴーレム・ミニだそうですが、再解放によりレアだったものが普通に出るよう変化した部分でしょう。

 属性も考慮して戦おうということでしょうし……それに成程、もしかして《魔鉄鉱》を落とす魔物というのは。

 こうして考察をしている合間に既にイチョウさんが弓を構えて蝙蝠を射落しに掛かる横で、紫陽花さんは早速ゴーレムの弱点属性である水属性の魔術で先手を打ちに掛かりました。


「《八卦・水》」


 腰に佩いた《白雲》の刀身が水属性を帯び、すぐに《瞬歩》で距離を詰めて赤ゴーレムを《斬月》で一閃。

 すぐに攻撃動作を取る赤ゴーレムの前から飛び退くと、紫陽花さんが放った《トリプル・ブルーエッジ》が直撃し残りの体力ごと千切れ飛んでいきました。

 それなりに強いアーツは使ったつもりですが、まさか紫陽花さんの追撃で吹き飛ぶとは。そういえば昨日解散したあと、カタクラと一緒に水田迷宮で撃ち落とす練習してましたっけ……

 容易く蝙蝠の方を処理したそのカタクラとイチョウさんと合流しつつ、改めて三人のレベルを確認……アカラギさん達と開いてたレベル差が相当埋まって私達と二か三ほどしか変わらなくなっています。

 一番下だったカタクラとのレベル差も大きく縮み、既に三十近くにまで上がってきているんですけど……同じ事は繰り返された、みたいですね。

 であればスキルレベルの上昇と先程の事も納得できます。進化のために人探しをしているカルンさん、妹たちと差が出来てますよ……


「やっぱり昨日で目が慣れちゃって、蝙蝠くらいならどうとでもなっちゃいますねー……」

「あっちは倍ぐらい速かったもんねえ。昨日の今日だし、問題は石像さんだねえ」

「もうちょっと数叩かないと何ともですが、多分皆さん歯牙にもかけずとも倒せると思います。ただ属性相性だけ気を付けてもらえれば」

「あれかの。ただ儂は殴るだけじゃからのう……人型の人形にしては割と重そうじゃし、次見かけたら投げでも叩き込んでやろうかの」

「普通に戦うだけでいいと思うけどねぇ……私は蝙蝠を落とせばいいかい?」

「それがいいかと……ドロップは《魔火鉄鉱》ですね。ということは……」


 赤のゴーレムから《魔火鉄鉱》が落ちるという事は……とぐるりと一度見回してみます。ですが、おそらく私の目標ともなる青のストーンゴーレムは見つからず。

 一応これは老夫婦の目的の品でもあるのでそちらに渡して、ボスのいる下層を目指しつつ探しに行ってみましょうか。



――◇――◇――◇――◇――◇――



「うーん……やはり奥の坑道か、下層かでしょうかね」

「だと思いますねー、こうなってくると」

「儂らは美味しいのじゃがな、なんというか、うむ、すまぬな」


 下層へと折る階段口まで進んだところでひと休憩。ドロップした各魔鉄鉱含め素材を山分けしていました。

 この上層で見かけたゴーレムは四種類……火と風に氷、そして光の四属性。このうち風はイチョウさんに多めに分配、火は老夫婦に渡し氷と光は均等になっていました。

 出現する比率は均等で、おまけでケイブバットとケイブニュートが出て来るくらいですか。こそこそ岩がいれば、ルヴィアと初攻略したダンジョンだったのですけれど。

 その《聖石の洞窟》はまた別の日に解放される予定だそうですが、私達はその頃には《城宿》に向けて発つ予定ですので攻略参加は見送りですね。


「水の防具だったらアルラウネ、着れるかな?」

「土属性のを見つけたら、いっぱい倒してナックルにしようと思います!」

「あはは、下層に残りがいるといいんですけれどね」


 つまり下層にいるのは……予想ですけれど水と雷に土、それと闇ですね。

 シリュウは確か雷属性ですから渡すとして、水は私と紫陽花ちゃんで二分、土はアカラギさんに渡しましょう。闇を均等にとなりますか。

 ある程度集めて売り捌くのも手ですけれど、少なくない人達が先に行ってますから……そうするなら仲間内で分けるのがいいでしょうね。

 近く、ジュリアの発案でギルドを立てる事になりますし。そうなったらすぐギルドハウスの購入に踏み切るでしょうから、共有ストレージがあればそこに入れておくのもアリですね。


「さ、そろそろ行きましょうー」

「残り半分ですから、狩り尽くす勢い……はちょっと不味いですけど、それなりに倒しながら進みましょうか」

「賛成です! 賛成!」


 下層に繋がる通路は下り坂になっていて、ここの前後を含めてセーフティになっているようです。

 広い通路の真ん中には線路が引かれており、トロッコが下の方にあります。下層から掘り出した魔石を運ぶ役目を持っているのでしょうね。

 坂を下り切れば、またも一直線……に見えて、行き止まりロープの引かれた入れない脇道がちょこちょことあります。

 上層もそうでしたが、プレイヤーは判りやすい一本道を進む事になっているのを見るに迷わないようにという配慮もされているのでしょうけれど……こう、フレーバー的な物は気になるというか……

 この鉱山が解放されればたぶん、NPCの入りもあるので内部の様子も伺えるかもしれませんが。

 ……なんて見廻りながら進んでいれば、求めていた色をしたミニゴーレムの姿が。


「……下層の第一モンスター……かかれー!」

「見つけましたー! クレハさんの素材ぃー!」


 私が《八卦・風》で風属性を付与して斬りかかる手前、先に背面から《ストレートショット》から《アロースナイプ》。

 まあ、その。確かに純粋に風属性のイチョウさんなら弱点を突いて大ダメージを当たられるのは確実なのですが。

 ……それにしては気合が入り過ぎてませんか、イチョウさん? 先程から皆が一撃を加える前に、的確に青色のミニゴーレムだけ射貫いてるんですけれど。

 寄って来た青ゴーレムはアカラギさんが《威圧(ヘイトスキル)》でまとめ、私とシリュウが範囲攻撃で仕留め……他の属性のゴーレムに対してもこんな調子で進んでいくのでした。

イチョウ「クレハさんが!欲しい物!なんですから!がんばります!」


ちゃんと他の人が戦闘中のものは横取りしてないので、ご安心(?)を。

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