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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
1-2章 竜達の咆哮、蔓延る猫霊

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118.Frozen Forest In Totora 2

「さむいのだ」

「さむいですわね」

「さむいですね」

「さむいのじゃ」

「さむいんですが……いつもこんなノリなんですか?」

「みんながノッて合わせたのだ。たまたまなのだ」

「たまたまなんですか……」


 トトラさんに先導されて《唯装》ダンジョンの中へ入った私達を待っていたのは、一面を凍り付いた樹と真っ白な雪で埋め尽くされた森。

 どうやら《水田迷宮》と同じく、異界に繋がるタイプのダンジョンのようですわね。入口は凍った二本の樹の間でしたから。

 入り口のセーフティから見る限り一本道になっているようですから、真っ直ぐ進むだけになるでしょう。とはいえ、視覚的には寒くてたまらないのですけれど。


「昨日とは真逆ですわね、ボス戦は灼熱地獄のようなものでしたのに」

「全くなのだ。でもここ綺麗なのだ!」

「ダンジョン名はどうなっているのじゃ?」

「えーっと……《氷結樹の白森》なのだ。名前から氷属性なのが丸わかりなのだ!」

「トトラさんの《唯装》にお似合いの名前ですね、期待しても良さそうです」


 凍った獣道の先を眺めれば―――ああ、いますね。外でも見かけた氷狼(フロストウルフ)です。

 それと口の付いたリンゴが凍った樹へとくっ付いたままに下を通る獲物を狙っているのと、花……のように見えて、わさりわさりと動いている奇妙なモノが見えますね?

 このダンジョンの主な敵はこれらと寒さでしょうね。寒さの方はゲームであるという都合、昨日の《ソウルバーン・ウルフ》のように攻撃に転用されない限りは寒さは感じないようです。視覚的には寒いですが。

 なかなか氷属性の様々な素材が獲れそうですから、スピードクリアを目指すよりかじっくり行った方が良さそうな気配。


「皆さん、スピードクリアではなくじっくりと倒して行きませんこと? 素材になりそうな魔物が結構見えますわ」

「トトラとしても、このダンジョンの素材で装備一新したさはあるのだな。思ってたより使えそうな素材が多いのだ」

「外よりも氷狼が多いなら、毛皮も多く狙えそうですね……わかりました、賛成です」

「うむ。ちょっと趣旨が変わってしまうが……こうなったら外のルナとどっちが稼げるか競争じゃ!」

「では、そのように行きましょう。いつもどおり私が先頭を歩きますので、カルンさん私の直衛を頼めますか?」

「わかりました。ジュリアさんは……妹たちから聞いていた通り、遊撃の役回りを?」

「そうなりますわね。今回の場合は私が眼の役割もするので、私の立ち位置はあまり気にしなくていいですわ」


 カルンさん、意外と情報が早いですね。話が早くて助かります。

 今回はイチョウさんのように眼のいい人……敵の早期発見を行える斥候役がいないので。まあ、トトラさんとカエデさんにもその素養がありますが、飛べる私がやるのが一番でしょう。

 飛翔してからの奇襲と遊撃をする都合、先にもう飛んでいた方がいいことありますし。見渡す限りだと、空中にはいないようですわね。

 対空は……花がしてきそうですが、様子を見ないと何とも言えません。実際に交戦して……あら?


「おっと、出発前に姉様からお返事が来ましたわ。例のダンジョン解放についてですの」

「どういう理由だったのだ?」

「ええ、解放する方法が知れ渡ったそうなのですが、コアを使用して解放するにあたって浄化してからしばらく日を置かないと駄目なのだそうですわ」

「へぇ……そんな仕様だったんですか」

「現在浄化済みのコアを持っている人は大半が待機時間なのだそうで、待機が終わる来週過ぎくらいから一気に開き始めますわ。そうなると、早めに武具転用をしたいので昨日手に入れたものとトトラさんが手に入れるここのダンジョンコアも早々に浄化しておいてもらった方が良さそうですわね」

「なのだ! となると今日中に攻略は絶対事項になるのだ!」

「……あ、でも相当前から浄化だけ終わっていた幽霊街の方は今日解放のためのアタックがされているそうですわよ」

「幽霊街……確か、持っていたのはトップ勢のブランさん達でしたか。当時は配信で見るしかなかったですが、いずれあそこは私も行ってみたかったんですよね」


 メタ的に考えれば浄化をすることでダンジョンの再構成のフラグが立ち、再構成完了で入れるようになる……と言ったところでしょうか?

 ある意味では管理という面では一番楽でいいでしょう。ダンジョンコアを持っている人も決まっているわけですし、浄化をフラグにするのは楽なはず。

 なるべく早くダンジョンコアを素材に使いたいのなら、早めに浄化しなさい……ということでしょう。

 幸い私達はルヴィア姉様という最短路があるので、浄化もすんなりとできるのですが。まあ、普通に浄化用の聖水を購入してもいいわけで、タラムさんはそれで浄化したのだとか。

 優秀な武具に転用できるのなら、それはもう早くダンジョンコアの浄化及び解放を行った方がいいでしょうからね。ただまあ、私達の場合は最前線級の難度を持つダンジョンのコアなのて、再攻略時のボスもそれ相応なのを覚悟しないとですが。


「さてお待たせしましたわ。改めて出発しましょう」

「いえいえ、有益な情報でした。何れ私達も関わりがある事ですから」

「ここに居るメンバー、誰が何時ダンジョンコアを手に入れてもおかしくない技量はあるしのう」


 では改めて出発。それと同時に様子見をしていたでしょう魔物達がより奥に引いていきましたわね、もう少し数を引き連れて来るつもりでしょうか?

 というかあの花、動きましたね? 地中で固定されているかと思えばそうではない……リンゴもどきはすぐに果実へと擬態したのですけれど。

 ウケタさんを先頭に氷の森……《氷結樹の白森》を進み、まずはそのリンゴもどきが付いた樹の近くへ。

 そこには小さく広場があり、引いていったと思われた氷狼が仲間を引き連れ三匹ほどそこで待ち構えていました。先への道は氷の茨で塞がれており、どうやら地点ごとに敵を倒せば進める形式のようですわね。

 さて、とりあえず《鑑定》してみましょうか。花も一匹だけひっそりと待ち構えるように、リンゴもどきが付いた樹の根元にいますし。


フローズンフラワー Lv.42

属性:氷

状態:汚染


フローズンアップル Lv.42

属性:氷

状態:汚染


フロストウルフ Lv.42

属性:氷

状態:汚染


 ……昨日に比べて一気に敵のレベルが上がりましたわね。《唯装》ダンジョンは発見主のステータスを元に作られる傾向があるそうなので、トトラさんのレベルを基に設定されたのでしょう。

 私やトトラさん達ずっと一緒にいた組のレベルは既に40を超えていますから、何とでも対処は出来ます。問題があるとすれば、カルンさんだけちょっと低いところですか。


「カルンさん、やれますか?」

「……慣れてますので。最前線の方のお眼鏡に叶うかどうか、御覧なさってください」

「期待していますわ。では、掛かりましょう」


 全員、武器を構えていつものスリーカウント。ゼロと同時に私とカルンさんウケタさんが飛び掛かり、後方からはトトラさんとカエデさんによる三連(トリプル)魔術が放たれました。

 対峙する魔物達も対応するように動き始めます。狼達が私達を狙いますが、既に近接組は繰り出した接近アーツによって氷狼達を先制して一撃入れました。

 後方からの《三撃・爆焔》と《トリプル・フリーズロア》はそれぞれ花と果実に炸裂。火魔術の方は果実に直撃し焼け焦げたのか甘ったるい香りが漂い……そのまま牙を剥き出してガチガチと鳴らしました。

 一方氷魔術が直撃した花の方はというと、反応してにょこりと茎と根が地中から出てきました。より花弁が大きく開き、花の膨れた部分にはアニメ調にデフォルメされたかのような可愛らしい黒点のような眼がついており、きょろりとこちらを視認します。


「っ、とっ!」

「そぉ、れっ!」


 ウケタさんはそのまま《威嚇(ヘイトスキル)》を使って魔物達の視線を引き寄せ。一瞬注意が引かれた隙に私は対峙している氷狼へと《ランスピアシング》から《ダブル・フレアプロード》を叩き込み。

 その私の横ではカルンさんは最初の《ダスクラッシュ》を繰り出した姿勢から槍を引き戻せば、身体を半歩引くようにし、踏み込みと同時に全身を使って槍を突き出す様な《ヘヴィスラスト》を繰り出します。

 普通の突きであればしっかりと槍を握ったまま突き出しますが、カルンさんの突き方はその動作に加えてまるで銛突きのように手の内を滑らせ槍を投げるような強烈な突き。

 こうすることで威力が上がり、確実に一体一体を屠るのであれば確実に仕留められるでしょう。なるほど、紫陽花さんとアカラギさんがロールの動きに特化していた理由に納得も行きます。

 それをまともに喰らった氷狼はその一撃で体力五割を一気に削り抜いています。私なんてプロードと合わせて七割だというのに。


「成程、合点も納得もいきましたわ」

「あはは、ちょっとした癖もあってこちらの振い方の方が性に合ってるんです。妹達はこの動きに付き合わせてるようなものですが……そいっと」

「いえいえ、その威力であればお二人の動き方も納得ですわ。むしろ、一体一体確実に仕留めるならあの動き方は正解ですもの」

「お陰で、なかなか他の人達とも組み辛かったというか。攻略組では多対一も当然になりますし」


 会話を交わしつつ、氷狼を次の槍撃で仕留めます。残る一体の氷狼も、冷たい息を《ヘイルフレア》のように放ってきますが余裕の回避。

 二人で挟み込むようにしつつ同時に《スパイクラッシュ》。槍の連撃を左右から撃ち込まれた氷狼は一瞬で体力を削り落として残る花と果実の方へと視線を向けます。

 ……まあ、向く頃にはとうに決着はついていたのですが。半分焦げて半分凍った果実と、地中から根っこごと引き摺り出された花が転がっており、どちらも体力は尽きていますわね。


「わっはっはっは! カエデはもうヒーラーなのかキャスターなのか分からないのだ!」

「トトラ殿の魔銃の扱いもばっちりじゃのう! そろそろ狙撃も出来るんではないかの?」

「ふふん、とっくのとうにある程度は出来るようになってるのだ!」

「トトラさん、爆発(プロード)弾の投擲弾道の命中率も桁外れに良いですわよ。貫通(ロア)弾の狙撃はまだ甘いですが……」

「まだ練習中なのだ! でももう結構当たるのだぞ!」

「相当練習したのじゃなぁ……」


 トトラさん、念願の魔銃を手に入れてからずっと使い込んでいますものねえ。休憩時間中でも射線を計算してみたり、たまに石を投げて軌道を確かめてみたり。

 おかげでプロード弾頭の命中率は他の方々に比べて非常に高く、特に最近は変則的な撃ち方も研究しているようですから。その距離計測の訓練のおまけで狙撃も出来ますし。

 癖が強い魔銃をここまで使いこなしているのはかなり珍しいのではないでしょうか。まあ、それ以上に上手い人が……万能に使いこなしているルプスト姉様がいるのですけれど。


「さて、さっさと素材を剥ぎ取って先に行きましょう。じっくりやるにしてもこの先も長そうですからね」

「あいあいさーなのだ。果実ゲットーなのだ!」

「こっちは花弁じゃのう。こっちもかなり高値で取引されそうじゃなー」

「レベルが高い分、剥ぎ取れる毛皮もなかなか質が良いですね。防具に加工するのもいいかもですが……」

「前線級なら懐へ入る金額も大きいですからね。大丈夫ですよ、取れ過ぎたらお分けしますし」

「えっ、いいんですか……? ありがとうございます」


 それぞれ倒したばかりの魔物へ《解体》を使い素材を剥ぎ取った後、魔物達の死骸が粒子となって消えていけば、中央にある氷の樹が砕け、先に進む道を塞いていた茨も溶けて消えます。

 こうして区切り区切りの戦闘をクリアしていくことで先に進めるという仕組みでしょう。こうなると早々と進むには如何に手早く殲滅できるかになってきますわね。

 入った時はゆっくり素材集めしながらとでも言いましたけれど、この形式だと戦える以上に素材は集まりそうにないですし、どうやってもペースは一緒になりますか。

 ここの素材は魅力的ですが、私としては親和性もありそうな外の炎狼素材はより欲しいので……うーん、こうしましょうか。


「トトラさん、そろそろ装備更新も必要でしょう。いっそここで取れる氷系素材を使って武器防具を新調するというのは?」

「お。確かにそういえばそうなのだ。《フィーレン》の防衛戦の時に稼いだお金で作ったこの黒フード付きローブのままなのだ」

「えぇ、ですからここの素材はお譲りしますわ。その代わり……」

「あっ、そういうことなのだ? えへへ、いいのだいいのだ、その条件なら飲むのだ」

「私もそろそろ新調するなり改良するなりしないとですからね。バージョン0の時からの一張羅ですし」


 思えば最初の専売契約の時からの装備でしたか。一応バージョン1になった時に或る程度は弄ったとはいえ、防御力も性能も制作時の頃からの据え置き。

 武器は《唯装(プロメテウス)》や《大鎌》に変化したり、耳飾りに限れば《向日葵模様の耳飾り》に換えてはありますが……他はそのままですものねえ。

 ウケタさんは新しい素材を常に探していますが、鉱石系は現在でもなかなか出ないので新しい加工法が出るの待ちになっていますもの。しかし、あのダンジョンが解放されればワンチャンスありますか。

 ついでに外にいる剣持ちの二足狼が落とす剣を鋳溶かしたものも新素材として使えそうだとかなんとか。しばらくしたら一度装備の新調の期間も考えないとですね。


「さて、次が見えてきましたわよ。皆さん戦闘準備!」

トトラ「入口から想像はしてたけどあっちもこっちもかっちこっちなのだ!」

ジュリア「一応まだ八月終わりですもの。残暑にはちょうどいいダンジョン……ではないですわね」

カエデ「避暑どころか氷の森じゃ! 寒すぎるのじゃ!」

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