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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
1-2章 竜達の咆哮、蔓延る猫霊

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114.Roar of wolves 4

「多いですわね」

「多すぎるのだ」

「ひぃ、ひぃ、多すぎですぅ」

「流石に、私も、疲れてきましたっ」

「それじゃあ一度休憩しましょうか」

「賛成ですー、皆さん一息つきましょうー」


 ダンジョンに潜り始めて二時間。おおよそ十五分刻みくらいで戦闘を繰り返していましたが、回数を重ねるごとに数が多くなってきました。

 最初こそ剣二、弓一、杖一でしたが、この辺まで来ると夜狼四、剣二、弓二、杖二とどんどん増えて行っているんですわよね。このペースで行くともしかして十二を越えるのでは。

 そう思ったのが一時間ほど前で、十体前後の数で纏まっているようであり狼の数が増減するくらいですか。それでも、少し高い頻度で遭遇しているので流石に疲れも見えますか。

 少し道を外れたところで足を止めて、武器を一度降ろし一息。まだまだ道半ばといったところですが、そろそろ奥が見えてもいい頃合い。


「最前線の人達、いつもこんな感じなんですかぁ……?」

「いつもではないですが、難度としてはこのくらいですわね」

「これが、最前線との、差ですか……」

「二人は特にやる事が多い役割だから、疲れるのは仕方ないのだ」


 紫陽花さんとアカラギさんは本来前線と中堅の間ですから、最前線の動きを求められる今回の攻略は相当なハードワークでしょう。

 本人たちも最前線に来たがっているようには思えますが、立ち回りをまだ学び切れていないので出られていないといったところ。

 動きには何となしですが、最前線に出て来ても光るものが少しばかり見えていますし。今後も彼女達が付いてきたい、と思うのならある意味これはふるいにもなるでしょう。


「そういえば、お兄さん……カルンさんはどれくらい戦えるのですか?」

「はい! 兄さんは一人でアタッカーを務めてあのへんに来られるくらいには!」

「カルンにぃ、槍と光魔術の扱いがとても上手いから。要所を守れればぁ、あとは……」

「ふむ……二人を引っ張っていけるとなると、相当の手練れですね」

「おや、新しいパーティメンバーの勧誘ですか?」

「三人が大丈夫でしたら、ですわね。イチョウさんもいつまでもこちらに居るわけでもないですし」

「はいー、本来は私はクレハさんのものですからねー?」


 カエデさんとルナさんという候補もいますが、あの二人はあちこち飛び回っているフリーランスですからね……飛ばしても来てくれるかどうかなので、出逢えた時に組むのが一番いいですもの。

 なので、いつでも気軽に組める相手というのはありがたいものなのです。トトラさんとウケタさん、この場にはいませんがフロクスさんは一番組みやすい相手ですし。

 それに大所帯ともなれば、こないだの《水葵》戦のように複数パーティでダンジョンやレイドの攻略も視野に入ってきますから。

 ……そうなればギルドを組むのも手ですが、単独主義の姉様が嫌がりますものねえ。誰か発破を掛けてもらえれば皆を連れてそちらに入るのですが。


「さて、勧誘の面談に合格するかどうかはこのダンジョンをクリアしてからですわよ」

「念願の最前線組の仲間入り! はい! アカラギ頑張ります!」

「私もぉ、頑張りますよぉ」

「二人共いい返事なのだ! では先に行くのだ!」

「トトラさんが先に行くのは危ないですから、私の後ろに居てくださいね」

「わかってるのだ!」


 二十分足らずの休息でしたが、リラックスは出来たようですね。トトラさんは底抜けに元気なので、ほっといても数体くらいは狩って来そうですが。

 それでは進軍再開。ウケタさんを先頭にしてその後ろにやる気満々のトトラさん、アカラギさんと私、紫陽花さんとイチョウさんといった順となっています。

 最後方にイチョウさんがいるのは、私と同格の力量がある事を見込まれての事。観察力、洞察力に関しては私より上であると思っていますので。

 彼女よりもさらに警戒を高めるとなれば……昼界で今修行しているというより斥候に特化したアマジナさんくらいでは?

 まあ、レベルから見るにここは最前線ではなく前線組が攻略することを前提とした場所ですからね。そこまで高めなくてもいいでしょう。


 さて、再び進む事三十分ほど。二度ほど戦闘を挟みましたが……ダンジョンの様相が変わってきましたね。

 ゴテゴテとした岩肌から、粗削りの土レンガを積み上げた壁に変わり始めました。足場が整って歩きやすくはなりましたが、反面隠れる場所が無くなり魔物と遭遇しやすくなっていますね。

 魔物側はこういった場所での戦闘は住処でもあるため当然のことながら得意、先に相手の方が見つけて来る事考えなければ。


「……雰囲気が変わりましたわね」

「ラストスパートになりそうですね。そろそろポーションの残りの確認を」

「ふえぇ、もしかしてこのままボスにまで挑むですぅ?」

「勿論なのだ! 紫陽花は今までのペースで大丈夫なのだ、難しいのはイチョウがしてくれるのだ!」

「確かに手は回りますけどもー……メインのヒーラーは務めますから、サブの役割をしっかり果たしてくださいねー?」

「はうっ、頑張りますぅ……」


 紫陽花さんの実力については、最初にイチョウさんに指示されたとおりに完璧にこなせている辺り素地はあったと考えるべきでしょう。

 アカラギさんも装備自体はしっかりしていますし、立場と役割的に防御に特化した動きは出来ているので後は攻撃に切り替わるタイミングですわね。

 二人共粗削りですがパーティには欲しい人材ですけれど、ボスでの動き見てからになりますかね。最前線組は前情報抜きで大物を狩る事が増えますから、ある程度の対応力も必要になりますし。

 ……前方に一団が見えますわね。ボスも近いともなればパーティにあまり負担は掛けたくないものですが……特に、中堅を無理に引き上げようというのですから。

 アレのリキャストは……大丈夫ですわね。半日というのは流石に長すぎですけれども、その分威力が極大ですから致し方なしですわね。


「前方に狼が四、剣が三、弓二の杖一……では、お二人共。最前線の実力をとくとご覧くださいませ」

「お、ジュリアはアレやるのだな!? トトラの支援は必要ー?」

「トトラさんはマズいと思ったら狙撃してくださいせ。まあ問題はないと思いますが」

「一体何する気ですぅ……?」

「まあまあ、見ていてください。私達のリーダーの実力を」


 二人は完全に戸惑っていますが、それぞれの先輩役が頭を撫でながら止めておいてくれています。ええ、下手に飛び込まれると面倒ですし。

 翼を大きく広げて槍を構え、《飛行》の最大加速準備。隠しか何かだと思いますが、間違いなく竜翼に飛行の加速度の補正乗ってますわよね?

 まだ魔物の一団に視認されてないのを確認し、目を閉じて呼吸をひとつ、ふたつ。見開いてから地を蹴ると同時に《飛行》をオンにして飛翔、魔物の一団目掛けて飛び掛かり。


「《ダスクラッシュ》《トリプル・フレアプロード》」


 相手がこちらを視認した瞬間に狼の一団に対して先手、火属性の三連(トリプル・)爆破魔術(フレアプロード)で吹き飛ばして体力を一気に削り取りつつ槍の突進技(ダスクラッシュ)で巻き添えを喰らい瀕死になっていた一番手前にいた剣持ちを仕留め。

 そのまま突然の襲撃に対応が遅れた残りの剣二体と運悪く間近にいた弓の一体をまとめて叩き上げるように薙ぐ《ボーパルスラスト》。続けて叩き上げた弓を先に仕留めるためにアーツを使わず全力の突き攻撃。

 串刺しになって体力が空になった弓の身体を後方にいる杖に投げつけて牽制。吹き飛ばした狼達がこちらに再び襲い掛かって来ていますが……承知の上。

 あとは先の薙ぎで剣二体が割と後方に吹き飛んでしまいましたか、それも問題はないでしょう。火槍を大鎌へと切り替えて構え、貰ったもうひとつの《想装》の効果を発動します。


「《八葉の巫女:豊穣》発動―――ッ!」


 太陽の如き向日葵を模した耳飾りが輝き、ステータスに大幅なバフが掛かり。その強化が乗ったままに先日もお披露目した《鬼一葉》を繰り出します。

 私を軸として、次の命を芽吹かせるための刈り取りの意を冠した鬼の一刈が繰り出され。それはまるで独楽のように一回転してまとめて狼四匹と……ついでに残っていた片割れの弓持ちを両断。

 これら二つ、今だ《想装》の成長途上とはいえ両方半日以上のクールタイムがあるのでおいそれとは使えないシロモノ。《豊穣》は超強化のバフが掛かりますが、たったの十数秒の間だけですし。

 すぐさま火槍(プロメテウス)へと持ち替えてから、バフが僅かに残る二秒のうちに私に向けて魔術を唱えようとした杖持ちは槍の投擲(ピアシングスロウ)で仕留め。


「残り、二ですわね」


 《豊穣》のバフが切れ手元に火槍が戻って来たところで一息、叩き飛ばされた先で体勢を整え直している剣持ち二匹を視認。その様子には怯えのようなものが見て取れますが、まあそれは当然の事。

 あれだけいた一団が一瞬で壊滅したのですもの、それはまあ、当然と言いますか。ですが、だからと容赦するわけではないのですが。

 二匹が斬りかかってくる前に《ハイジャンプ》し、速度の補正も相まって易々と天井に達し。そこから狙いを定めて一気に降下して一匹を易々と穿ち抜き。

 残る一体は―――だいぶ体力が残ってますわね、一番初撃の《フレアプロード》の爆心地から離れていたのでしょう。おおよそ七割残っているといったところですか。

 ええ、単騎であれば余裕ですわね。まだ他にも色々残っておりますし。


「これで仕舞いですわ!」


 斬りかかって来た剣持ち狼に対して《ブレイクポイント》を叩き込み、仰け反らせた上で防御力低下のデバフを付けさせます。

 姉様の剣に比べれば鋭さも無く、速さも足りてない。これくらい避けてカウンターを叩き込むのですら余裕というものですわよ。

 そして追撃にトドメとなる、先の防御低下(ブレイクポイント)からの連携技である《バーストストライク》を叩き込めば体力を削り取り切って力尽き、その場に倒れ伏しました。


「……ふうっ、こんなものですわね」


 終わってみれば一方的。まあ、半数ぐらいは《想装》による超強力なアーツありきなのですけれど。

 本当はせめてものの《豊穣》ナシでここまでやれれば良いのですが、多分なかったら《鬼一葉》振りの遅さもあって狼に何発か貰っていたかも知れないのですわよね。

 弓一匹が巻き添えになったのもラッキーみたいなものですし、おそらく姉様なら無傷とは言いませんけれどやり切るでしょうね。うーん、やはりもう一つ取り回しの効く《双剣》を解放しておくべきでしょうか。

 次に王都に戻った時にもののついでに解放しに行きましょうか。長物ばかりだと細かいところが詰められませんし。


「え、えぅぇ……化け物ぉ……」

「これが最前線……」

「流石クレハさんの妹さんです、がー……」

「追いつきましたか。こうにも解体対象が多いと大変ですので、手伝ってくださいませ」

「わはー、相変わらずの腕なのだ! 夜狼の肉はテキトー調理でも美味しいから剥ぐのだー!」

「今回の攻略で大量に肉が出来ていますものねえ、焼き肉パーティもいいかも知れませんわ」


 戦闘が終わったのを確認して、五人も追い掛けて来たようです。半分が引いている? 知ったことではありませんとも。

 全員で大量の死骸から剥ぎ取り。食用ではないのですが、夜狼の肉って結構美味しいんですよね。引き締まっているので独特の旨味があるというか。

 というか、相手が素早くなければ同じ事が出来るだろうイチョウさんにも引かれているのはちょっと心外ですわね。ぷくーですわよ、ぷくー。

 ……ウケタさんは都合無理だとしても、多分トトラさんも出来ますわよね。数日前にルヴィア姉様も、昼側で《猫幽霊》の大群相手に似たようなことをしていましたし。

 次に行く予定であるトトラさんの見つけた《唯装》ダンジョンでちょっとやれるかどうか見て見ますか、ふふふ。


 剥ぎ取りを終えてから再度進軍。そうすれば―――


「……どうやらゴール地点のようですわね」

「如何にもボスエリアなのだ、みんな大丈夫なのだ?」

「ふ、ふぁいぃ。大丈夫ですぅ、きっとやれますぅ」

「はいっ、やれます! やってみせます!」

「二人共もうちょっとリラックスしておくべきですよー」


 行き止まり、そしてダンジョン名の通りに大きな石造りの祭壇のある間へと辿り着きました。煌々と祭壇の上には大火が燃え盛り、この一室全体を照らしています。

 周辺には魔物の姿もなく、ボスが仲間を呼んだり……ということも無さそうですわね。ボスであるという炎狼の姿も見えないところを見るに、開始したら姿を見せるのでしょうか。

 全員ひと休憩と回復できるものは回復を終えれば確認し合い、名前と属性からある程度の対策と作戦も立てて……準備完了。

 紫陽花さんとアカラギさんは緊張でガッチガチですが、まあやっているうちに肩の力が抜けてくれればいいのですけれど。


「ではいざ、ボス戦に参りましょう!」

「「「おー!」」」


 そうして一歩進み、ボス部屋である祭壇の間に突入するのでした。

ジュリア「多分技量的に私より上なら同じ事は出来る……はずですわ」

トトラ「自信があるのかないのかわからないのだ!」

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