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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
1-2章 竜達の咆哮、蔓延る猫霊

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105/390

105.私はクレハさんのお隣を離れたくないのです!

「では、リザルトです」

「報酬はねぇけどな!」

「結構な経験と戦術の見直しがあっただろうがよォ、がっはっは」


 またも私達に当てられて《決闘》を始めた観戦勢はさておいて、今日試合をした面々と祖父シリュウは一旦集まっていました。

 結果を見れば三勝二敗。全部勝つつもりだったのですが、遠隔組との勝負が異様に不利に傾きましたね。こればっかりは何かしらの新しいアーツやスキルを覚えないと難しいです。

 対人でのバランスはあんまり考慮されていない……と考えたいところですけれどね。改めて世界設定を考えれば、戦う相手が違う、とも言えますし。

 もっとも、まず今回に至っては前提条件……二対一という条件がキツい、というかほとんど無理に作ってありますか。低いレベルの方と《決闘》するとき専用のハンデと考えた方が良さそうですね。


「結果は私の五戦三勝二敗、皆さん総じて連携は上手いので細かいところを詰めていきましょう。得手不得手もしっかり把握出来たと思いますし」

「盾役の面々はクレハの攻撃をしっかり耐えれておったからのう。もっと効率のいい受け流し方を教えておいた」

「大変参考になりました。特に私は鎧一つで受けますから、そういった心得が身に付くのは嬉しいことなので」

「ウケタ……だったかの、一番飲み込みが早かったからのう。あとは実戦で慣らすだけじゃな」

「俺とカルパはもうちょい教わってからだな。特に俺は盾があるからな、また違った受け方が出来る」

「タラムのとこに通しちまったのが俺の敗因だからよ、爺さんもうちょっと耐え方を教えてくれ」

「どっちも素質はあるからの、久々にわくわくするわい。その代わりこのへんの魔物を教えてほしいかのう」

「その程度ならお安い御用だ」


 タンク組は試合だけを見れば、ほとんど私の圧勝と言った形でした。

 特にカルパさんとウケタさんの二人は私の攻撃を耐えることが目的で、それでいて試合時間の大半を耐えきっていましたからね。

 《新月》によって威力の上がった攻撃だけはしっかり防がれてましたから、そこまで時間が掛かってしまいました。

 それにタンク用の装備なので素が硬く、他のアーツも通りは良くなかったのもひとつ。なんとか削り切れたので良かったのですが……


「弓使いのお二人は、骨弓使いの方はまだまだじゃな。いうて、イチョウの嬢ちゃんの方が卓越し過ぎてたというのもあるがのう」

「あはは……もっと修業します」

「前に盾役がいるに慣れ切っておるうえ過信しておるのう。いない戦い方も考えておくべきじゃ」

「カルパとは常にペアだったからなあ。そろそろ僕も一人で戦う訓練もした方がいいかな」

「それなら俺ァしばらく爺さんのところで修行をする。その間はその一人で戦う訓練ってのはどうだい?」

「あ、それいいかも。骨弓(こいつ)ももっと慣らしたいところだしね」

「決まったようじゃな」


 タラムさん、話に聞くと開始時からずっと二人で組んでいたそうですからね。これはまたとない良い機会となるでしょう。

 特に骨弓の持つアーツも考えれば、ひとりで戦う術も経験も大事。本当は《召喚術》に似たものであれば、フリューに師事するのが一番なのですけど……

 当の本人については今はルヴィアのところにいますし、忙しそうですからね。それに大分勝手が違うかも知れないので、何とも。


「んで……イチョウのお嬢ちゃんは、言うことないのう」

「えへへー、褒められちゃいました」

「ただ、クレハにだけ特化しておるからのう。もっといろんな相手の癖を見抜いて隙を射るといいぞ」

「はいっ、精進しますっ!」

「片鱗は見えてましたけど、あそこまで詰められるっていうのはちょっと予想外でした」

「組んでたトトラもびっくりしたのだ……言った通りのこと、予想したとおりの動きをするから……」

「クレハや、お主の課題ははっきりしたのう。できるだけ癖を無くすことと、遠距離に対応する手段じゃな」

「その辺は今後の課題にもなると思っていましたから、再確認できたのでちょうどいいかと」


 私から見てもイチョウさんは百点満点でしたから、課題とするならそれを他に活かせるかどうか。

 パーティプレイを前提とするならこれ以上ない逸材でしょう。なので、伸ばすとすればより相手の癖を見抜いて伝達、攻撃の阻止や回避に貢献できるか、ですから。

 さて、残りはキャスター組ですが……いやまあ、私言う事ないんですよね。


「ルナさんとカエデさんも言う事ほとんどないですね、最前線でのキャスターというものを見せ付けられました」

「ふふん、当然じゃぞ。クレハに近づかれた時は冷や汗ものだったがの……」

「やっぱり、近接に関しては一番相手にしたくない」

「トトラも同感なのだ。ジュリアとはまた違って堅牢さがあるから別の方向で相手にしたくないのだ」

「ジュリアは三人からすると何がやり辛いんですか?」

「そうじゃの……まずほっとんど当たらないことかのう。飛行速度が桁外れなのじゃ」

「雷魔術でも、先読みしないと当たらない。どうなるってるのか、私が聞きたい」

「トトラも同じなのだ。置きをしてもまーったく当たらないのだ……って言ってたら一気に近づかれて大ダメージなのだ……」

「……皆同じ意見ですね」


 祖父はまだ魔術に関してはからっきしですし、私も遠距離での立ち回りが詳しい訳ではないのであまり言える事がないんですよね。

 遠距離……それこそ投げモノや弓術であれば対応はできるのでしょうけれど、またそれとは違いますから。

 それでも三人の動きに関しては、私もちょっと参考となるところがありました。こればっかりは逆に教わることになりました。

 ジュリアの使い方も特殊ですから、実際の使い手の動きを対峙した上で見れるというのは結構な収穫でもありますし。

 そして最後、近接の二人ですね。


「アマジナさんとフロクスさんもしばらく弟子入りですか」

「おう。サスタも一緒にだからしばらくは、だな。次は負けねえよ」

「次こそ一対一で、ですね。もちろん負けはしませんけども」

「私も次は負けないさね。私が突けるクレハの弱点も見えたからねえ」

「ふふふ、次も突けるとは思わない事ですよ」

「バフありきだったが、俺も突破口は見えたな。へへ、ちったあ嬉しかったからやる気は出たぞ」

「おっと、二人共勘違いはして欲しくないのですけれど……」

「ん?」

「なんだい?」

「お爺ちゃん、人相手というより熊などの獣相手が中心ですからね。私相手に絞るより、色んな相手を想定するといいですよ」


 二人からは怪訝な顔をされてしまいましたが、どこかしら、なんとなく納得してくれたような。お爺ちゃんの武術は対人用じゃないですからね。

 最初に学んだ武術を熊や猪などの山の獣から畑を守るために弄って行った結果だったそうですので、私達が対人に活かしてるのはその逆発展。

 何の因果かこの《DCO》ではお爺ちゃんが目指した原点に戻っているのですけれど。獣って言葉が通じない分、容赦がないですし……

 弟子を取るつもりはないとは言ってましたけど、おだてればやる気は出すので、門下生、なんだかんだと増えそうですね。


「さて、それでは本題ですが。ジュリアから何人か夜界北方の攻略のお伴が欲しいと言われているんですよね」

「半数はシリュウさんにしばらく弟子入りだからな。残ってるのはカエデとルナ、それにイチョウとトトラ……あとはタラムか」


 残っている面々から考えるとイチョウさんは適任なんですよね。なのですが、それを言った矢先にイチョウさんからは潤んだ目でこちらを見られ……

 ううん、イチョウさんからすれば私と組むために今まで努力をしてきたんですから、そろそろ二人で行動してもいい頃。

 ですけれど、夜界の方はこれから活発化しそうな兆しがあるのでそれなりに腕の良かった人をお願いと言われているんですよね。

 私自身も久々にひとりで歩いてみたさはあるので……さて、どう誘導したものでしょうか。


「タンクが欲しいのであれば、私が行きましょう。あとは実戦で経験を積んでみるだけですから、その方がいいでしょうし」

「ウケタさんなら大丈夫そうですね、あとはトトラさんと……カエデさんとルナさんはどうでしょうか?」

「私とルナはちょっと《如良》の方に行ってみたいのじゃ。トトラならジュリアとの連携もし易いはずじゃし」

「ですか、それならイチョウさん、お願いできますか……?」

「えぅぅ……私はクレハさんのお傍を離れたくないのですけどもー……」


 わかってはいましたが、やっぱりうるうるとした目をこちらに向けて、訴えられかけるような目を向けられました。

 いえ、別に一緒でもいいのですがカエデさんとルナさんは別方面に行くそうですし、厳密に四人の方がいいと言われていますから……

 どう言ったものかと僅かに考えて、ふと思いついたように。


「では、私のライバルであるルヴィアとあちらで逢う事があるでしょう。その時に、私の代わりに彼女を助けてあげてください」


 そう言うと、一瞬、逡巡するような目を見せて。それから……私を見つめて、もう一度考えて。

 何度か考え込んだ仕草を繰り返し、コメント欄でかわいいかわいいと言われて一分ほど。それから考えを決めたのか、口を開きました。


「……そっ、そういうことならっ! 私いってきますっ!」


 おお、ちゃんと言う事を聞いてくれました。ルヴィアがフリューを宥めている時の様子を参考にしましたが、上手く行ったようです。

 ルヴィアがあちらに居るので、遠からず最前線に赴く事を見越しての頼みですが。もし出逢えれば絶大な力になってくれるでしょう。


「それとですが、ついでにジュリアの癖を色々見抜いて来て欲しいんです。これはちょっとした意趣返しで、私個人のお願いですけれど……」

「! クレハさんのお願いもあるならっ、是非! 私頑張ってきます!」

「はい。私対策は結構で自分で練習している分にはいいんですが、他人に吹き込むのはちょーっと許せませんので……」


 こちらに関してはちょっとした私怨ですが、そういうことに長けたイチョウさんなら出来るでしょう。

 ジュリアも配信を見ていたとしても、ほとんど知ってはいるはず。ですが、私でも知らなかった癖があるのである意味仕返しです。

 人読みし過ぎるのはあまりよくない、というのも先程指摘したばかりですが。これを機に他人でも、相手の癖を見抜くというスキルを伸ばしてくれればと思いますが。


「じゃ、これで方針は固まったってことだな」

「修業組はお爺ちゃんから進捗を聞いて、またパーティにお誘いしたりしますね」

「それで頼むさね。先生、お願いするよ」

「ほっほっほ、クレハとジュリア以来に弟子を取るのう。しっかり鍛えてやるぞう」


 お爺ちゃんもやる気ですね。昔も道場に学びに来る人もちらほらとはいたらしいのですが……開墾が進んで動物の被害が減ると学ぶ人が少なくなっていったとか。

 なので、今学んでいるのは本当に私達だけですからね。弟子が増えて張り切るのも判ると言いますか。


「クレハは明日からどこにいくのじゃ?」

「そうですね……まだ巷で噂の《猫幽霊》に接触したことが無いので、明日からは《神鞍》の方へ赴こうと思います」

「おー、あっちの方面かァ。結構すばしっこくてなァ、大振りだと当たんねェ当たんねェ……」


 カエデさんがふとこちらを向いて聞いてきました。少し考えてから、当面の目的を口に出します。

 そう実は私、昼世界側のグランドクエストが進展していたというのにメインである《猫幽霊》について全く触れていなかったのです。

 噂程度にカルパさんとタラムさんが幾らか戦ったという話と、お爺ちゃんが何度か見かけたと言っていたくらいですね。

 できれば《神鞍》から先を見てみたいものですが……まだ何も進展を聞かないので、そこで詰まっているのでしょう。


「それなら僕も途中までついていこうかな、一人で動いてみるならあそこがいいかなって」

「でしたら、明日は時間を合わせて行きましょうか」


 タラムさんも途中まで付いてくるとのことで、それならいざという時は組むことも出来ますね。

 意外と猫幽霊の情報は上がってくる事がなかった……というより、先日の海イベントが終わってから積極的に出てくる《神鞍》に進めるようになったとか。

 それに猫幽霊達自体も先に進めば……おそらくその先にあるであろう《函峰》に近づくにつれてレベルが上がっているとのこと。

 最前線組が攻略に乗り出しましたが、そちらへの到達はまた暫くかかりそうですね……


「では、私は今日はお先に失礼します。何分疲れたもので」

「はいっ、お疲れ様ですーっ!」


 一通りの話が終われば現地解散し、私は一足先にログアウト。

 流石に五連戦の《決闘》は疲れたので、ちょっとばかり休憩を……


イチョウ「頼まれてしまいました!」


というわけで身内対人編終わり!次回からまたストーリーを追っかけるクレハさんに戻ります。

夜界側に派遣した三人のジュリアのお伴隊がこの回と同時更新された回にて杜若スイセン氏の方に出ていますのでもしよろしければそちらの方も、是非。

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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜
相方、杜若スイセン氏によるDualChronicleOnlineのルヴィア側のストーリーです。よろしければこちらもどうぞ。
― 新着の感想 ―
[良い点] あっイチョウさんそんな感じでルヴィア嬢の元へ派遣されたんですね…w 二つ返事で了承したのかなぁ?と思ってましたが結構渋ってましたね…それもそうか。 お爺さんの流派、田舎の山とか本当にかな…
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