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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
1-2章 竜達の咆哮、蔓延る猫霊
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100.振り返りとパーティメンバー

祝100話、ゆっくりまったり続けていくのでこれからもよろしくお願いします。

「よっ、と」

「相変わらず姉妹揃って凄い運動神経よねえ……」


 下から見上げる秋華が、丸太を使ったアスレチック平均台の上を渡りながらぼやきます。

 流石にゲームばかりでは、朝の鍛錬だけでは体が鈍るということで、祖父が家のある山に作ったアスレチックに挑んでいました。

 難易度分けされていて、軽い坂道トレーニングになるコースとそれに多少丸太による足場を付けた軽いアスレチック、私達が行っている本格的なアスレチックコースの三つがあります。

 朱音は軽い坂道コースで、私と千夏は本格的コース。他のみんなは軽アスレチックコースを進んでいます。

 どれも大きく離れているわけではないので、軽い会話くらいは出来ます。もっとも、普段から運動不足の面々は息も切れ切れですが……


「これでもちょっと遅い方なんだ、よっ、と」

「あちらだとこういった事出来ませんからね、ちょっと鈍ってるのが嫌でも……ぉっと」

「でも毎朝やるにはこれはいいかも……」

「橙乃はそれなりに体力あるもんね……朱音、大丈夫?」

「これくらいなら平気だよ、そう長くないから」


 ロープ登りをしつつ、離れた道を歩く朱音の様子を見ます。この中で一番運動が苦手なのは朱音ですからね、常に春菜が気にかけています。

 以前軽い徒競走ですら朱音は倒れていましたからね。気に掛けるのも分かりますし……春菜がそういう際のサポートに適してもいます。

 秋華たちの歩くコースは軽い飛び木の足場や、ちょっとだけ不安定な台などが設置されています。あとは、平均台の足場とか。

 この中では体格もあって結構運動が出来る方である橙乃は余裕そうにひょいひょいとこなしている一方、秋華は時々引っかかっていますね。春菜は……よくもまあ朱音の方を見ながらノーミスでできますね。

 橙乃は気に入ったようで、こちらのコースをちらちらと見ています。ですが……


「橙乃姉、見ててもこっちのコースはやめといた方がいいと思うよ?」

「半分スポーツ特番でやる障害物競走みたいなコースしてるものねぇ……あれよりはちょっと緩いけどもお」

「私でどこまで行けるのか試しものだよ。今度、うちの局がやる時に二人共出てみる?」

「賞金あるなら出る!」

「私は目立つから遠慮して……ううん、でも賞金が出るなら……」

「現金だね……わかんなくもないけど」


 そりゃあもう、ちょっとは悩みますよね。ただ今ではVR上で仮想コースを走ってみたりも出来るので、それで試して諦める人も多いそうですが。

 ですが、VRとリアルでの体力差というものはまるで違うものです。それだけで諦めてしまうは勿体ないものだとは思いますけれど。


「むしろVRで開催してもみるのはどうなの?」

「あっ、それいい案。お父さんに相談してみっ、ぎゃ!」

「……正面注意ですよ。確かにそれなら朱音も挑戦できそう」

「VR上なら出来るかもだけれど、私は顔が売れすぎてるし……それに《DCO》でのステータス補正ありきなのもあるから」

「そうよねぇ、魔力視とか第六感を作るくらいだもの。私も大分助けられてるところはあるしぃ」

「その話で思い出したけど、二人共昨日のアレ、よくやるねー」

「昨日の……? ああ、稲花さんとの」

「陽華さんとのだね!」

「どっちもよお、他の人の録画で見たけど大概ねえ。ルヴィアは見たの?かしら?」

「まだかな。昨日もダンジョンアタックしてたし……」

 

 昨日の戦い……稲花さんとの、ですね。観客だったプレイヤーが昨日の戦いの様子を録画していたらしく、とっくにSNSで拡散されているとか。

 お陰様でまた私達の異質さが広がっているとかなんとか……いえ、多分しようと思えば春菜は秋華も出来そうなものなのですけれど。

 アスレチックの話からだんだんとそちらの話に移り始め、そろそろ道半ばを越えて家のある山頂が見えてきます。


「稲花さんはまだしも、陽華さんの方は無理……大振りでの一撃必殺は流石に一発で召喚物が壊れちゃう」

「全部回避しろ、って言われると流石に千夏ちゃん並みの回避力は欲しいわねえ? わよー?」

「そもそもあれ、喰らったとしても回復追いつくの?」

「無理だと思うなー、私が喰らった最後の強攻撃は一撃必殺だったし……体力はちょっと高い方だから、びっくりだったよ」

「流石に私もあれをいなすは無理ですね。避ける事は出来るかもですけど」

「こうなってくると他の子も気になってくるわねえ……白菜ちゃんとの交流を考えてみようかしらあ……」

「私も参加した時は雪花ちゃんがいるし、頑張ってみよーっと」

「それなら確か今日もあるって言ってましたね。行ってみたらどうです?」

「行ってみよっか、今日はまだ特にイベントないし……」

「イベントって言ったら、今日はあるよね。ほら、クレハは海イベントの時のパーティ全員と決闘するんでしょ?」

「ええ、まあ。とは言っても……」

「私はちょっと今日中に北方の視察しないとだから、私を除く、なんだよね」

「そこが残念なんですよね、やっと久し振りにやれるとは思ったんですが」


 最後に戦ったのが公式お達しの配信の時でしたから、久々にやりたいという心持ちはあるんですよね。

 ただ夜界の方もそろそろ派手に動きそうな前兆があるのもあって、夜界側でのキーマンになりつつあるジュリアはあちこち動かされているようです。

 特に例の"竜"についての目撃報告から、次の報告はないようですけれど……南方でも動きが始まっているようですし。


「それに、今回はお爺ちゃんも見に来るそうですからね。余計に手が抜けないんですよね」

「えっ、お爺ちゃんもう動けるの?」

「ええ。もうばっちりと。今は万葉までの道の方で熊と取っ組み合いしてますよ」

「素の動きが良いと、当たって僅かでも削れさえすれば倒せる、ですからね。まあ効率は悪いので、主に目的は狼だそうですけど」

「この孫にしてあのお爺ちゃんあり……よねぇ」



――◇――◇――◇――◇――◇――



「皆さん、揃っているようですね」

「あっはっはっは、それ有名人二人をボコってから言う台詞じゃないと思うんだがねえ?」


 場所は移って《DCO》内。

 最早恒例となったウサギ広場で今日の手合わせの約束をしていました。が……海イベントの際にお約束していた通り、先に呼び出していたイノシシコンビを相手に手合わせ。

 そのついでに先にお爺ちゃんにこのゲームでの対人……《決闘》がどのようなものかを見せていました。魔術戦になるとさっぱりと言った顔でしたが、それでも見た数分で既にコツを掴んでいるようです。

 とりあえず私が無言で三枚に下した二人組は、予め武術の達人だと説明しておいた祖父(シリュウ)から懇切丁寧に動きのアドバイスを受けています。


「動きは悪くないようじゃが、詰めが甘いし雑じゃのう……もうちっと最速で振る動作を練習した方がいいかの」

「まあ、皆さんもあのように実戦の後にアドバイスを受けられるので、今後の動きの参考までに」

「本人の癖も考えた上でってのが本格的だな……」


 さて、祖父のアドバイスについて私以外も参考になりそうと聞き入っているうちに、配信準備を兼ねて自分のステータスを見直しておきましょうか。

 そういえば自分のステータスを見直すのは何時振りだったか……それだけあちこち走り回っていたのですけれど。


 クレハ Lv.36

 性別:女

 種族:龍人

 属性:水

 特殊:


 VIT:128

 STR:380

 AGI:236

 DEX:164

 INT:92

 MND:92

 種族スキル:《飛行》Lv.32 《八卦》Lv.56 《宝玉鑑定》Lv.1

 汎用スキル:《格闘術》Lv.28 《弓術》Lv.35《剣術》Lv.71 《刀術》Lv.71 《歩法》Lv.61 《跳躍》Lv.52 《居合術》Lv.65

       《解体》Lv.55 《索敵》Lv.55 《攻撃予測》Lv.60 《直感》Lv.60 《採掘》Lv.8 《回避》Lv.66 《調理》Lv.23 《釣り》Lv.20

 《刀術》……《薄月》 《行月》 《円月》 《斬月》 《月天》 《月輪》 《花月》

 《居合術》…《抜刀術》 《弾き返し》 《すり足》 《瞬歩》 《新月》

 《跳躍》……《降月》 《乱月》

 《想装》……《狐八葉》 《再誕の加護》


 《八卦》のレベルはずっと多用していたのもあって一番伸びが良いですね。《刀術》はメインウェポンなのでこちらも伸び続けています。

 回避に類する物はひたすら避けているからでしょうね。特にかなりの格上である昨日の稲花さんとの戦いの影響もあって《攻撃予測》《直感》《回避》がかなり大きく上がっていますし。

 しかし未だに宝玉を見ないために《宝玉鑑定》がほとんど上がらず。《釣り》と《採掘》は時たましていたのでちょっと上がっていますね。

 他も順当に上がっているのですが、聞くところにいるとジュリアの《飛行》に関しては50を越えているとか。何やら常時飛行しているからだとか、なんだとか。


 それと、昨日あのあとの軽いレベリングで二つほど新しいアーツを覚えました。とはいえ、これから相手にする面々に使えるかどうか。

 ……使うと割とオーバーキルになりそうな気配がするんですよね、先のイノシシコンビの二人に使ったところ加減しないとちょっと一方的でしたし。


 ひとつめは《乱月(らんげつ)》。《跳躍》との兼ね合わせ、もしくは飛行状態で発動できる《月天》の飛行版ですね。

 しかしこちらは飛行状態で発動するに限り、結構動きが自由ですし。何より足運びで縺れる事がないのでそれなりに威力を保ったまま四連撃を繰り出せます。

 《月天》も割と使い勝手はいいので、二つ目の、という扱い方が中心となりますか。《降月》と似たものになりそうですね。


 もうひとつは《花月(かげつ)》。こちらは先の《月天》と《乱月》より威力は下がりますが、より高速の六連撃を放ちます。

 総ダメージを考えても《斬月》や《降月》などの必殺級には届きませんが、こちらも《月輪》と同じバフが付きます。それも、攻撃速度上昇の。

 なのでまあ、その……実験体になって貰った二人に関してはこれの発動後に際し、以前処刑された時より酷い事になりました。

 武器を振る前に全部弾き返してましたし、なんならそのついでに一撃入るくらいには一方的でした。あくまで私の感覚で、でしたが。

 ……さて、配信の準備も出来ましたし、そろそろ始めましょうか。


「皆さん、私と戦う際のちょっとしたアドバイスは得られましたか?」

「はっはっは、何の成果も得られませんでしたァ!」

「ちょっとはわかるけど話が高度すぎるのだー」

「如何にクレハさん達が凄い人なのかってくらいしかわかりませんねー……」

「まあでも、聞いてるだけで参考になるとこはあったな。どれだけ生かせるかはわかんねえが」

「とりあえず、二人ペアで組んで順番決めお願いしますね。イチョウさんは一人で挑みたいと聞いていますが」


 今回私に挑む面々が声を上げてジャンケンを始めました。とは言っても、何度か手合わせした面々は一方的に終わるかもしれませんね。

 なので、真っ当に勝負になるとすれば……ペアで相手にするとしても、半数でしょうね。ただ、まあ……そうですね。どうあっても、面白い事になるのには間違いないでしょう。

 これだけの面々と戦う事になる訳ですからね。


「みふ……ふむ、クレハや」

「なんですか、おじいちゃん」

「去年までと変わって、いい顔をするようになったのう?」


 ふと傍に寄ってきた祖父にそう言われ、びっくりとした顔を思わず浮かべてしましました。


「い、いきなりまた……そう変わってませんよ」

「そうかの? 前はフリュちゃん達と一緒ではあったが、どこか一人でいることが多かったからかのう」

「あー……んん、そうでしたっけ」

「そうじゃよ。何というか、寄せ付けんというかな、そんな感じがあったしの」


 言われて思い返しますが……まあ、以前やっていたVRではないMMOでもジュリアや幼馴染の面々と組むことはあれど、殆どその場限りでしたからね。

 こうやって、同じ面々と長く付き合ったのはそういえば初めてでしたっけ。割と常人離れした技術があったりで、リアルでも喜々として寄ってくるのは幼馴染だけでしたから。

 知らない間にそれに慣れてしまって、ひとりでいる期間がちょっと長かったのかもしれません。ですけど……


「ジュリアも前より更に元気になっとるし、だからこそワシも《DCO(ここ)》が気になったんじゃよ」

「……そんな理由でしたか。まあこっちだとお爺ちゃんも慣れれば、もっと元気に動けるでしょうから」

「そうじゃな。まー……ワシとしては、教えた事を活かして褒められている姿を見るのが嬉しくての、それをもっと間近で見たかったのもあるのじゃが」

「も、もうっ、そろそろ照れくさいですからそこまでにしてくださいっ!」

「ははは、そうやって怒るのも前はせんかったじゃろ。やはり人と人の触れ合いは人を変えるの、いいもんじゃ」

「むむむむ……」

「剣の腕も上がっておる。それも、ルヴィアちゃんだけじゃなくてお友達達の影響もあるやも知れんなあ」


 ……お爺ちゃんの言う通りかも知れませんね。私も、ジュリアも、周りにも変化が出始めているので。

 まあですけど! 自分で気付くより、ジュリアにも言われるよりも先にお爺ちゃんに言われたっていうのはちょっとびっくりでしたが!


「ほれ、そろそろ順番決めの話し合いも終わりそうじゃ。しっかり見せる……いいや、それだけでなく、楽しむのじゃぞ」

「……わかりました、しっかり楽しんできますし、見せてあげますよ」


 それぞれ順番が決まって整列した面々の前へと立ち、配信用のカメラを起動します。


「さて、それではどの組からお相手しましょうか」

クレハは以前、身内以外から見ればソロ気質強めのプレイヤーであり文学少女でした。

ある程度の社交性はありますが、リアルで格闘術の仕込みと頭一つ抜けた運動神経もあってちょっと薄いながらも壁を作っていたのです。

ゲーム内で活動を続けるうちに、その壁も無くなり始めているようですね。或る意味では真価を認められた、ともいう感じでしょうか。


クレハ「それではパーティメンバーフルボッコ編の開始です」

ジュリア「本当にそうなるのかは気になりますわねえ……」

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相方、杜若スイセン氏によるDualChronicleOnlineのルヴィア側のストーリーです。よろしければこちらもどうぞ。
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