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Dual Chronicle Online Another Side ~異世界剣客の物語帳~  作者: 狐花にとら
0-1幕 ゲームスタート、王都への道のり
10/383

10.装備更新をした後は木人殴りに行きたくなりません?

装備更新後、残り秒数がどんどん増えていくの楽しいですよね。

書き溜めが良い感じに溜まっているのでしばらく隔日更新になります。

 次の街、《及波》に着きました。随分先行組に遅れた到着となってしまいましたが、仕方ありません。

 その足で向かうのはまず冒険者ギルドでの登録手続きです。特に見どころというか、手順は配信で見たものと同一でした。

 クエストの受注も……明日にしましょうか。装備更新をしていくらか試したら今日は御終いですからね。

 受け取った冒険者カードを仕舞い、商店街へと向かいましょう。装備の更新の時間です。


「やっぱり装備が更新されると見栄えが変わりますわね」

「それはそうですね、多少外見は差別化したいですからね……」


 商店街へとやってきました。妹の言う通り、顔だけ違って同じ装備……というのはどことなく嫌ですからね。

 すれ違う人々は各々手持ちの武器に合った装備をしており、多少なりとも任意のデザインに弄れるようで、だんだんと人によって差異が出るようになっています。

 どんなデザインにして貰うか、元の衣装がどんな形なのかを考えつつまずは武器屋へ。武器の更新は最優先ですから。

 銅武器はどれも早く買い替えるように推奨する一文が付いているのもありますからね。さてさて……


「すみません、青銅の刀と槍を一本ずつ」

「あいよ!相当銅の武器を使い込んだみたいだな」

「おや、わかりますか?」

「おうよ、だいたいは一回か一度もないって程度の修理だからな。それに比べて結構使ってある」

「そこまで判るんですか……」

「ははっ、最初の武器とはいえここまでしっかり使って貰ってるんなら繋ぎの武器としてでも満足だろうさ」


 都度二度、一度は消耗する限界近くまで使って修理しましたからね。NPCからすればそういうのも判りますか……。

 5000エルをそれぞれ支払って、新しい武器を購入。古いものは下取りして貰いました。意外と安価でありながら攻撃力2の差は大きい……。

 早速装備すれば青い刀身の刀へと変わります。青銅ですからそこまで悪いものでもないでしょう。

 ……暫く雨風に晒していたら鈍って攻撃力が下がる代わりに、毒属性とか付いたりしません?駄目ですか。

 購入した武器のステータスがこちら。やっぱり一日と使ってませんが新しい武器はいいですね。


○青銅打刀

品質:E

ATK+3 DEF+1

・店売りの青銅剣。武器としては充分な性能を持っており、初心者には扱いやすい。


「本当に銅の武器はチュートリアルでしたわね……」

「でも武器の取り扱いのチュートリアルくらいしておかないと、危ないですから……」


 重量もそこまで変わりませんが、ゲームとはいえやはり刃物を使う訳ですからね。しかもそれで戦います。

 多少なりとも心得が無いと怪我をしてしまいかねませんから……とはいえ、多少のアシストもありますから、ゲームの戦闘に慣れましょうということですか。

 そんなチュートリアル用の武器を使い込んだのですから、褒められるのも道理、ということでしょう。


「おっと、そうだ。《幻夜界》へのゲートが封鎖されたせいで、幾らかあちらの技術者が王都で帰れずに立往生してるらしい」

「ということは、しばらく先で手に入るはずの武器も王都に行けば、ということですか」

「そういうことだな、運が良ければあっちの技術が見れるかも知れないな。それと修理はここでやれるから、また来いよ」

「はい、しばらくお世話になります」


 王都に行けばもうひとつの世界である《幻夜界》製の武器が見れる、ということですか。魔銃はどう見ても《幻夜界》産ですから、それもあるでしょうね……。

 他にも洋風武器の多くはそちらのものでしょうし、特に魔術が関わる大半はあちらでしょう。巫術は《幻昼界》の方が専門だと思われますが。

 他と言うと……ちらりと見ただけですが、双剣もあるようです。忍術もあるとすればそれも、でしょうかね。今後が楽しみです。

 それでは次にお待ちかね、防具を整えに行きましょうか。こちらも多少の注文はしたいところですが……出来るのでしょうか。


「というわけでやってきました、防具店です」

「ふむ、いらっしゃい。どんなのが欲しいかな」

「そうですね……刀が取り扱いやすく、このレベルでも使える防具はありますか?」


 あるか判らないものはさらりと必要なワードを添えて聞くのが一番いいですからね。折角高性能AI搭載のNPCが相手なのですから。

 店主さんが少しばかり悩んだ後、というよりは私達を交互に交互に見つめた後、品物の提示をしてきました。


「あるとも。刀のお嬢さんにはこっちの着流しと篭手、それに草鞋。槍のお嬢さんにはブレストプレートと鹿革のグローブ、あとブーツだな」

「ありがとうございます。ではそれを頂きましょう」

「毎度あり。片方ずつ、合わせて一万エルずつだ。デザインはある程度指定できるが……それと、鹿革や兎革などの品は余ってないか?」

「はい、何かに使えるかも……と、一応」


 先に代金を出し、防具デザイン設定用のコンソールの開け方を教わりつつ。意外な申し出をしてきた防具屋の店員さんを見つめます。

 確かに私達は肉だけを売って、出来る限り革など他ドロップ品は何かに使えるかもと手持ちインベントリを圧迫しない程度に所持はしています。

 必要になれば売り払いますし、もし納品のクエストなどがあればそちらに流すつもりでしたが。


「こちらでやや高値に買い取らせて貰うよ。防具の素材に使えるからね」

「そうなんですか? ありがとうございます」

「とはいっても、ウチは革類で、歯や角は素材屋にだね。とりあえず革の方を買い取ろう」


 というわけで、姉妹で交代で防具のデザインを決めながら、有り余らせていた革類を売却。買った金額がそのまま帰って来ました。

 量が量だったので店主さんも驚いてましたが、それはそれ。ついでに面白い話も聞きました。

 道具屋に製作品のための初級セットがあるらしいです。多少値が張りますが買っておきたいですね。

 というわけで次は素材屋で売却です。アクセサリショップは流石にまだ先の街のようですが、先の通り《細工》などクラフタースキルのための素材売り場だそうです。


「改めてインベントリに入ってた量を引き出すと、凄まじい量ですね……」

「素材になりそうなものはほとんど溜め込んだままでしたからね。《世束》で売り払っている方が多いらしいですけど……」

「毎度。しっかしこんだけ持って来たのはあんたらが初めてだよ……」

「「あはは……」」


 山のような歯と角を売り払って得た金額は二万でした。ジュリアと折半して所持金に入れておきます。武器代も返って来ました。

 収支は増減ゼロで33000エルになりました。さて、問題はこれから買いに行く初級セットの値段ですが…。

 ジュリアは調合に手を出すらしいのですが、まだ雑草しか取れないらしいです。ちょっと試してはいたらしいのですが、それでも一応《採取》が上がっているとかなんとかなそうなので……私も石ころとか拾ってたら上がりませんかね?

 とりあえず買うべきは調理キットですね。焼きと燻製が出来ればベストです、実際に動作を挟むそうなのですが、燻製もやり方は知らないわけではありません。

 お父さんがたまの休日に作るんですよ、職場でも食べられるおつまみとして、サラミとか色々。職場でも好評なそうですよ。


「すみません、調理キットっておいくらですか?」

「お、それを注文するとは珍しい客だねえ。初級キットだけどひとつ12500エルだよ」

「やっぱり値が張りますね……ちなみにレシピ本とかもありますか?」

「あるぞ、初歩のものだから焼くか湯がくしか出来ないがな。王都まで行けば炒めとか煮るとかの調理本もあるんだがな」

「なるほど。ではそれをひとつ頂きましょうか」

「あいよ、毎度あり」


 凝った料理は王都まで待て、ということですね。炒めぐらいはしたいですから、ちまちま焼いて食べて上げていきましょうか。

 15000エルの出費で残金は18000エル。ちょっと頑張って稼がないといけませんね、まあでも、その分今後の食糧事情が改善すると思えば……。

 小箱のようなものとレシピ本がインベントリに入りました。明日実際に調理をする際にゆっくり中身を検分するとしましょう。

 さて、買った防具を確認して二番道路を覗いてみましょう。


○木綿の着流し

品質:G+

DEF+2


・店売りの着流し。軽くて丈夫な布地で作られていて非常に動きやすい。


○木製の篭手

品質:G+

DEF+2


・店売りの木造篭手。金属が使われていない分軽く頑丈だが火に弱い。


○藁の草鞋

品質:G+

DEF+1

AGI+1


・店売りの草鞋。とても丈夫で作られていて町民にも人気の品。


 それなりに防御力が上がりましたし、外見もそれっぽくなりました。デザイン設定は……出来ましたがカラーバリエーションくらいでしたね。

 折角なので黒を基調として赤を差し色に設定しておきました。……しかし、今までDEF+1の布の服だけだったんですよね。この1の差がどれだけ響くか……。

 着流しに着替えた事で布の服以上に布地面積が広がり、野武士っぽくなりました。篭手も木製ですが、特に違和感がありませんし、草鞋も革の靴以上に履いている感が出ています。

 属性耐性が欲しいですが……うーん、それは求めすぎですね。弱点属性の相手には手に入るまで気を付けていくとしましょう。

 ジュリアの方も装備を整えればようやく槍使いっぽくなってきました。騎士っぽく広い場所で槍をぶんぶんとり回して恰好を付けてみたりしています。

 ですが妹よ、まだ外見は姫には程遠い平民兵士ですよ。妹と似た格好はそれなりに見ますが、私の様に和装になっている人は……少ないですね、ほぼ仲間がいません。

 アクセサリーの購入もしたいですが……後にしましょうか、それにジュリアがそろそろ先にタイムリミットですから。


「それでは姉様。私は先に行きます」

「うん、また後で」


 紫音ちゃんとの待ち合わせに遅れないよう、先にログアウトしていきます。もう一人を加えて、私達と同じように仲良しグループを形成しているそうです。

 そんなところに私もあとで行くわけなのですが……フリューとルプストもちゃんと課題やってるのでしょうか?

 あの二人もゲーム好きですからね、あとで釘を刺すついでに聞いてみましょう。古文問題があればルプストの知恵を借りたいですし。

 私は先に二番道路に向かいましょう。明日攻略予定の場所を様子見したいですからね。


 ……そんなわけで来ましたが……なんというか……はい、鹿です。鹿だらけです。

 一番道路は兎だらけでしたが、こちらは鹿だらけです。

 もうすぐ深夜に差し掛かろうかという時間ですが、オンラインゲームでは一番人の多い時間なのもあるでしょう。プレイヤーもちらほら見られます。

 ですが、並みの腕では手間取る鹿が大量にいる為、おいそれと先にも進めなくなっているようです。あ、今また一人鹿に蹴られて死に戻りしましたね……。

 とりあえず数匹ほど試し狩り……をしようとして、なんだか妙な兎を見つけました。ここにも沸くんですね……なんて思っていたら。

 おかしな動きをする兎でした、やたらすばしっこいです。明らかに別物ですし、ステータス、一応確認しておきましょうか。


 パープルクレイジーラビット Lv.7

 属性:氷

 状態:狂化


 ……あっ、やばいやつですねこれ。ベルセルクです、バーサーカーです。

 これはひょっとして《DCO》のシナリオが始まる切っ掛けとなった、溢れ出した呪いの一端となったものの影響でしょうか?

 そうだとするなら、こんなにレベルが跳ね上がるなら人々に害が出るのも全く以て納得の一言です。しかもこの移動速度、慣れていないと見えませんね。

 ひゅん、ひゅんと音がしそうな、それこそこれぞ兎と言った動きをしています。一番道路の兎とは格の違いがちらほらと…カウンター、入りますよねこれ。

 とりあえず一匹、寄せてみましょうか。まず試してみないと何ともなりませんし、ついでに試し斬りです。


 納刀状態に移行して、適度に近寄って引きつけるように……と。

 それにしても動きが素早いです。体色と夜という条件下もありますが、気を抜くと見失いそうなほどには。

 兎がこちらを捉えた瞬間、ロケットのような飛び込みタックルを仕掛けてきました。危ないですね!?

 そして上手く居合カウンターに反応し水平に刃が振るわれ、兎を両断―――したはずでした。


「っ、浅い。レベルはこちらが上ですが……!」


 刃がすれ違いざまに兎の首を捉えますが、両断とはいかず浅く切りつけた程度となりました。

 削れたHPゲージは半分ほど。すれ違い様に防御力が上がっているとはいえ、こちらも少量とはいえダメージも負います。

 なんとか倒せはしますが、一度で仕留めようなどとは考えない方がよさそうですね。先のようなまとめ狩りの仕方は最初だけなようです。

 もう一度飛び掛かってきたところに再びカウンター……と見せかけて自己発動をして合わせて一閃、クリティカルではないようでギリギリ残りました。

 今度はこちらから。動きを冷静に見極め…飛んだ後、着地の瞬間に合わせて《行月》……綺麗に兎を両断し、無事倒せたようです。

 ちゃんと剥ぎ取りも行えますが……、ドロップ品はほとんど前半の兎とは変わりません。ですが、なんだか紫色の水晶のようなものが取れました。


○紫の魔化石・極小

 属性:氷

・変質した魔力がこもった石。生物と結びつくと魔力を暴走させる。来訪者には無効。適切に加工すれば錬金術などに使用可能。


 ……やっぱり、こういうことですか……。今後はこういった、一般モンスターが狂化、いえ強化されたものが出てくる、ということでしょうね。

 きっと鹿の狂化版もそのうち出て来るでしょう。気を引き締めていかないと。

 と、本題。本題を試す前に新モンスターを相手にしてしまっていました。

 改めて、わんさかといる鹿の方へと今度は近寄ります。比較するならこちらが一番ですからね。

 一応ポップが出て、一番道路後半にいたものと同じものだということを確認しておきます。それから戦闘状態へ。

 ゆっくりと近寄っていき、鹿ことディアホーンに感知されれば角を使った攻撃を待って、それから。


「ほっ!」


 カウンターが発動し、鹿の角だけが綺麗に跳ね飛んでいきます。青銅ですからね、切断にはしっかりと適してはいないようですが斬り飛ばせるようです。

 柔らかい銅打刀だと喰い込むだけで弾かれ、下手してたら折れかけました。危なかったですがジュリアのいる間、先の狩りの際に試してはいました。

 角を失って困惑するディアホーンに、《行月》を仕掛けて首を一撃。そこから補正は乗りませんが、トドメを刺すように逆袈裟に刀を振り抜いて見事に首を両断。

 こちらも前は三撃必要でしたが、二度で済みました、兎の次は鹿狩りの時間ですね。多分、狂化兎の方を狙った方が効率はいいかもですが…。

 切り落とした角は先と違って確実にドロップ品となるようです。金策的には僅かにこちらを狙う方が利益は大きいですね、どちらも旨味がありますね。

 ……おっと。今ので《刀術》のスキルレベルが10になったようで、アーツを習得しました。どれどれ。


○刀術

円月(えんげつ)

 その場で回転斬りを繰り出す。威力:小


 回転斬りですね! いいものを覚えました。

 当然と言えば当然ですが、範囲攻撃があれば狩りもしやすく……いえ、VRMMOでは実際試さないと難しそうですが。

 鹿など格下の相手はこちらで、同格、やや上などはきちんと使い分けて対処をしましょう。


 試しに早速、その《円月》を試してみます。

 アーツを実行すれば、上半身を捻る様に刀を抜き放ち、手元から大きく薙ぎ払いつつ一回転しました。

 刀身もあるので意外と範囲は広い……ですが、これ、使ったあとの隙が大きすぎます。確実に仕留められる相手に囲まれた時専用といったところでしょうか。

 《歩法》が少し上がれば、もしかしたらより安定して出せるようになるかもしれませんが……今は保留。

 鹿を相手に上手く使いどころを探すようにしていきましょう。使い辛さはありますが、範囲攻撃が出来るのは貴重ですし。


 それではそろそろ今日は撤退……なんて思いながら見回せば、鹿を狩っていたプレイヤーが何かに衝突して吹き飛んでいきました。

 何が、と視線を向ければそこには茶色の毛皮に覆われた猪の姿が。わかりやすくワイルドボアです。

 目の前のものに突進したのでこちらには気づかなかったのでしょうけれど、猪の突進は車の衝突威力と同格です。もはや交通事故です、南無。

 ……こちらの相手は明日にするとしましょうか。ウサギほどでないにせよ、素早い相手は難しいですからね。


 そんなわけで本日は《及波》に戻り、フリューとルプストに課題の件について、ついでに配信外なのを確認してルヴィアにもフレンドも送っておいてから《DCO》からログアウト。

 ジュリア……千夏も待っている事ですし、《VRクラブハウス》でお勉強会といきましょうか。

一日目がようやく終わりました。やっとですよ。

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