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殺人事務所 コーヒー淹れたて

作者: 嘉田さん

なんか思ってたのと違う結末

男は暇そうにタバコを咥え、気だるそうに火をつけ、大きく吸い、大きく吐いた。


「今日も客は無しっと。実に平和でいいことだ。」


客が一人も来ないことを男は、自嘲気味に喜んだ。


「いいんですか?このままだと事務所すら維持できないですよ。」


一人の少女がつぶやいた。助手であろうか。パソコンを叩いている。


「いいんだよ。うちは一回の収益が大きいし、副業もやってるからね。」


「はぁ。所長を警察に差し出していくらかもらったほうがいいですかね?」


「よっちゃん、それはないでしょ。ちゃんとお給料だって払ってるんだから。」


少女は優しく微笑み


「先月3日ほど遅れましたよね?」


男はバツが悪そうに


「あれは悪かったって今月は3日前に払うから勘弁してくれよ。」


「ならいいんですけれど、今月まだ入金なかったと思いましたけれど?」


男の顔はほろ苦くなる。


しばらくすると、ノックのあと事務所の扉が空いた。


扉の前には一人の女性が立っていた。


「札人事務所ってこちらでよろしかったですか?」


「はいそうですが。なにか御用ですか?」


「ええでも、やっぱりいいです。すみませんでした。」


女性が振り向くとこの所長と呼ばれている男が一言つぶやき、女性は止まった。


「誰か殺したいからここに来た・・・ですね?」


「・・・本当に、そういう場所なのですか?ここは。」


「ええ。最も表向きは、何でも相談所ですけれどね。あなたのように理解して来るお客さんは、よほどの殺意か恨みと言った負の感情がないとここまでは辿り着けないし、ましてそういったお客さんはすぐわかる。」


「・・・信用していいんでしょうか?」


確認するかのように女性は、言葉を吐いた。


「伺いましょう。その前に、よっちゃんコーヒー二人分いや三人分か入れてくれる。」


応接間に案内され彼らは席についた。そして3つのコーヒーも。


「改めまして所長の無月光と申します。それとこっちの娘は助手の星影夜と申します。失礼ですがお名前い頂いても?」


「武藤桜と申します。えっとなんと言えばいいのか・・・」


この武藤と名乗る女性まだ煮え切らないようだ。もっとも殺人の依頼を赤の他人にするなんて人生で初めてなんだろう。


「まあうちはどんなオーダーでも引き受けますよ。ただし条件は、3つこれをのんでいただければ契約は成立です。」


「条件とは?」


「そっちが先。」


よほど条件が厳しいのだろうか・・・


「わかりました。この女性、田中依織を消してください。」


桜はそっと写真を出した。


「彼女とは幼馴染ですが、もう殺すしか方法がないんです。彼女は、私の婚約者を奪いその上、奪い取ったと思ったら彼を借金漬けにして、自殺に追い込んで・・・」


「なるほど・・・それで復讐を・・・」


無月は桜をじっと見つめた。


「なるほど。ちなみに伺いたいのですが、あなたに何か落ち度のようなものは心当たりありませんか?」


「あるわけないじゃないですか!彼女はいつだって一方的に私から奪って行くんです。今までだって・・・」


桜は語気を強め吐いた。それを諭すように見つめる無月はコーヒーを一口。


「まっず。よっちゃん僕のコーヒーに塩入れたでしょ」


「ええ美味しいでしょう。私からのサプライズです。」


「前から言ってるでしょ。僕甘党なんだから砂糖たっぷりで頼むよ。」


「そのうち甘くしますよ。」


桜は、怒鳴った。


「ふざけないでください。こっちは真剣なんです。早くそちらの3つの条件を話してください。」


「まあまあそう怒らず。ではその条件ですが、1つは秘密を守ること。まあこれは当然ですね。お互い殺人という重罪を犯すわけですから。2つめは決してこの結果に後悔しないこと。3つめは仕事が終えたら私の入れたコーヒーを飲む、この3つです。納得いただけるのであれば、料金500万現金払いでお受けいたします。」


「わかりました。その程度の条件であれば・・・、結婚資金で貯めた500万もう相手がいないのですから、あっても意味がないです。これで彼女を、お願いします。」


「お引き受けいたします。重ねて申し上げますが秘密の厳守と、後悔のないように・・・」


時間にして30分程度だろうか、人を殺す相談にしては、あっさりと終わり桜は出ていった。


「よっちゃん・・・本当に残酷だね、長い付き合いでも理解されないってのは・・・」


「それで食べている所長が言います?」


「だよね・・・」


無月は入れられたコーヒーを飲み干した。


二日後無月は、桜より知らされていた依織の家へと忍び込み依織の帰りを静かに待った。


「ただいまって誰もいな・・・あなた達誰よ!警察呼ぶわよ。」


鍵を開け、いるはずのない家に来訪者、当然だろう。


「田中依織さんですね。不法侵入は謝罪します。私達は、武藤桜さんの依頼で参りました。」


「桜が?・・・一体なんの依頼よ!そんな依頼あっても要らないわ。出てって。」


「わかりました。夜、行くよ」


「はい・・・」


無月と夜がすれ違うと、依織の目から大量の涙が流れ、十分ほど泣いたあと彼女は息絶えた。


一時間後に警察に匿名の電話が入り、彼女は発見された。変死ということもあり、少々時間はかかったが、田中依織の死が確定した。


数日後、無月は桜を呼び出した。


応接間には以前のようにコーヒーが3つ置かれていた。桜を正面に無月は切り出した。


「彼女は、ご要望通り始末しました。警察も変死として処理しておりあなたや私たちが疑われる事はないでしょう。」


「おせわになりました。復讐を果たしたのに意外と達成感ってないんですね。もう少しくらい喜びとかあるかと思ったんですけれど・・・結局事実だけでまだ認識できないというか・・・」


依頼が達成され、殺人の嫌疑もかけられず安堵したように心中をさらす桜を見る無月と星影の目は暗い。


「これで契約は履行されました。あとはあなたが3つの約束を守っていただければこの件は終わりです。」


「・・・毒とか入っていないでしょうね。」


「ご安心を。お疑いなら先に一口私が頂きましょう。」


別の容器に少し取り無月は毒味をした。特に何もない。


桜は、まだ怪しんでいる。


だがこれ以上得体のしれない殺人犯のそばにいるのも危険だ。


仮に飲まないで帰れば何をされるかわからない。


「私もそちらのカップに移して呑んでいいかしら?」


「構いませんよ。ご随意に。」


桜は、無月が飲んだカップ手間ではあったが一度洗い流し一口だけ飲み干した。


桜は、言葉を失い立ち尽くした。


「え・・・そんな・・・」


「わかりましたか?依織さんは今まであなたのためにやっていたのですよ。」


無月が諭すように言う。


「あなたにしていた嫌がらせも実はあなたを守るため、そしてあなたの婚約者は結婚詐欺師だった。それであなたから引き離し破滅させた。なぜこうも彼女はあなたを守ろうとしたか、それは彼女が実の姉だったから。最も依織さんが姉であると理解したのはあなたの婚約を知ったときだったようですが。」


「どうして、その事実を教えてくれなかったの?知っていればこんなことには・・・」


その時、無月は、小さく一言つぶやいた。


「約束を守ってはいただけなかったようですね。残念です。」


そうつぶやくと彼女は消えた・・・彼女は秘密厳守は、守っていたようだ。


武藤桜に捜索願いが出されたが警察はこの事務所には来なかった。それが証拠だ。


数日後


「結局今回の事件犠牲者は二人か、まあ最悪ではないと、諦めよう。」


「そうですね、でもせめて一人にしたかったです。」


「仕方ないよ、よっちゃんの能力は憎しみを持つものを引き寄せてしまい、その結果でコーヒーの味が僕だけ変わる、その上憎まれた相手が一人犠牲がないとその力は暴走してしまう、死の直前犠牲者はその憎しみの理由を知る、ぼくの力は見ることであらかたすべてがわかる、そして結果が起きたあと憎んだものに事実を知らせるコーヒーを入れられる、飲ませられなければ憎んだ者が死ぬ。憎んだものが3つのルールを守れば犠牲者は一人で済む、もしよっちゃんの力が暴走すれば街一つくらい消える、そしてこの呪いは二人で一つ、離れても暴走する、とんでもない呪いさ。」


「・・・この呪いいつ消えるんですかね。」


「考えたって意味ないんじゃない?・・・さて飯でも食いに行こう。よっちゃんの入れたコーヒーの味がまだ残ってるからうまいもんでも食べなきゃやってらんないよ」


「私だって入れたくて入れてるわけじゃ・・・っきゃ!!」


ふくれっ面の夜をお姫様抱っこして部屋から出ようとすると


「光ちゃんやめて恥ずかしいからふくれっ面やめるからお願い!!」


「よっちゃんのこのギャップを楽しむのが仕事の後の楽しみさ。」


「バカバカバカ!!」




どんまい

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