No.03 報告と依頼
僕は、アヴァロンの門の前に来ていた。この門は普通の人間には、門として認識出来ずただの大木に視えている。僕は「龍の目」で門を視認して門の扉を開ける。そして門の中を歩く。門の中は幾多もの罠が仕掛けられていて壁には古代龍言語が書かれている。しばらく門を歩くと太陽と月が同時に空に浮かび、精霊達が宙を舞っていて光に満ち溢れた幻想的な場所に出た。
「やっと着いたか。さてとまずは龍帝様に報告をしないとな」
僕はアヴァロンの中央にある龍帝殿に向かった。
「龍帝様、オーガとゴブリン合計50体の討伐完了しました」
僕は龍帝様の前で跪き報告を行った。
「そうかご苦労、それにしても昨年、終結した戦争の後から魔獣どもの数が増え続けているな」
「ええ僕もそう思います。ヘルヘイムの魔族との戦争が終結し同盟を結んだ辺りから人狼やゴブリンにオーガ等が増え続けています。僕も今回の任務にむかう途中で、知り合いの魔族から聞いた話ですが、詳しい原因は解らないとのことでした」
「そうか、ハル今後も頼むぞ。それと記憶の手掛かりはみつかったか」
「いえ、今回も収穫なしでした。それでは失礼します」
僕は龍帝様に報告を終えてアヴァロンの市街地を歩いていると、龍人の女性に声をかけられた。
「ハル君、お帰り。頼みたいことがあるんだけどいい」
「アリス先生、ただいま戻りました。ところで頼み事とはなんでしょうか」
「アカデミーでの講師なんだけど、頼めるかな」
「僕が教えられることなんてないんですけど僕でいいんですか」
「何を言ってるのかなぁ。アカデミーを首席で卒業してるんだよ。充分に教えられることがあるっていつもこれを頼む度に言っているじゃない」
「わかりました。それで科目はいつもどおりの魔工学と古術でいいんですよね」
「本当は種族間の能力の差異についての歴史と群体制御術も教えて欲しいんだけどね」
「群体制御術は、貴女の姉である母にお願いしてください。他はお引き受け致しますので、では明日から1週間よろしくお願いします」
僕は直ぐにその場を離れた。あのままあそこの場所にいたら強引に押し切られて他の科目まで教えないといけない可能性がある。さてと疲れを癒す為に家に帰ろう。ぼくはそう思いながら家まで歩いた。